2009年度立教大学英米文学会
本のある人生
高宮利行先生
高宮 利行先生(慶応義塾大学名誉教授)略歴>>
  日時:2009年12月5日(土)
  場所:太刀川記念館3階ホール
  時間:16:50~17:40
  当日その他プログラム:
【研究発表】 14:20~15:00 小笠原 清香
(本学大学院博士課程前期課程在学)
「強意の副詞fasteの多義性―中英語作品を通して」
15:10~15:50 高井 美紀子
(本学大学院博士課程後期課程在学)
「ワーズワスにおける海の表象」
16:00~16:40 松崎 武志
(本学大学院博士課程後期課程在学)
「『カンタベリー物語』におけるswearingについて」
 
 「本との出会い、人との出会い」
 このたびは、中世アーサー王物語や中世主義、写本研究において国際的に知られる高宮利行先生に御講演いただきました。先生の今回の題目は「本のある人生」。私たちはこの講演を通して、先生の研究の中に流れる書物への情熱の一端に触れることができました。

  高宮先生にとって、本との出会いは人との出会いでした。学生時代には西脇順三郎や厨川文夫といった日本の英文学研究の礎を築かれた先達に師事され、中世英文学と書物の世界へと導かれました。当代のそうした碩学の薫陶を受け、培われた知識と探求心は、“Golden years of my life”とご本人が称されるケンブリッジでの留学時代にも遺憾なく発揮されたといいます。私たちは、昨年惜しくも鬼籍に入られた中世英文学研究の泰斗Derek Brewer 教授への回想、古書愛好家クラブ入会、そして名代の古書店訪問や古・中英語写本授業など、先生のこれまでの書物の遍歴を共有させていただきました。

 また、今でも神保町の古本市に学生を連れて頻繁に通われるという先生は、効率よく本を入手するための一風変わった技を私たちに伝授してくださいました。必ず質素な身なりで行くことやよい本は閉店間際に見つかると念じること、そして古本屋の主人と親しくなることやそのために相手を説き伏せる英会話力を磨くことなど、臨場感溢れる雰囲気で熱弁されました。常に「本」と「人」が交錯するお話は大変興味深く、先生の語りのうまさと話の節々に散りばめられたユーモアにより、聴衆の注意と関心が最後まで途切れることはありませんでした。

 こうした多少技術的なことを力説されたのも、先生が本と人との出会いを大事にされてこられたからだと思います。利便性に富むGoogle Book 検索ではなく、生身の本に実際に触れて欲しいと切に願われるのは、こうした本を介した様々な人々との交流を重んじてこられたからに他なりません。文学を志す者にとってアカデミズムの名の下、テクストのみに独り向き合うことも重要ですが、そうした営みはテクストを共有する仲間と語らい、意見を交わし、対話を重ねることでより深い価値を帯びてきます。本講演では実際の書物を紐解き、それにじっくりと向き合う大切さとともに、世界の第一線で活躍していくための研究者としての姿勢とそれに欠かせない資質のようなものを教えていただきました。
2009/12/22
英米文学専攻後期課程1年 岡本広毅

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