2012年度立教大学英米文学会
「これが“New Literary History of America”ですか?」
渡辺利雄先生(東京大学名誉教授)略歴>>
  日時:2012年12月15日(土)
  場所:立教大学池袋キャンパス12号館第1・第2会議室
  時間:16:30~18:00
  当日その他プログラム:
        
研究発表






講演
13:40~14:20 小笠原 清香
(本学大学院博士課程後期課程在学)
「強意副詞の通時的意味変化に見られるに位置的制約」
13:45~14:25 小椋 道晃
(本学大学院博士課程後期課程在学)
「『白鯨』における親密さの諸相―男同士の友愛とナショナリズム」
15:30~16:10 藤村 希
(亜細亜大学専任講師)
「ナサニエル・ホーソーンの南北戦争―“Chiefly about War-Matters”を読む」
 
          「文学史」から浮かびあがる「文学」の魅力

  今回ご講演いただいた渡辺利雄先生は、『講義アメリカ文学史[全三巻+補遺版]』を、おひとりで(ということは単独の視点で)執筆されました。それは、多文化主義の時代における文学史の「見直し」に対する、いわゆる「伝統的」な立場からの(再)修正の試みであるように思われます。今回のご講演は、その演題からも伝わってきますように、先生ならではの観点から、近年新たに刊行された文学史A New Literary History of America (Harvard UP, 2009)をめぐるお話をしていただきました。
 さて、この「新しい」文学史はアメリカ文学研究者に限定されない201名の執筆者によって、文学作品だけではなく様々な文化的、社会的事項を取り入れています。とりわけ特徴的なのは、重要な項目がその年月日を章題にして編まれていることです。これ自体、非常に興味深い文学史となっているように思いますが、先生がご指摘されたのは、黒人(作家)が偏重される傾向があるのではないかという点でした。たとえば「1838年9月3日」という項目は、黒人奴隷であったフレデリック・ダグラスがメリーランドの主人のもとから逃亡した日を扱っています。また、そのことは、フォークナーの項目である「1928年4月8日」の項目が、『響きと怒り』における「クエンティンが自殺した日」ではなく、第4章の視点人物でもある黒人乳母のディルシーが「初めて教会に行った日」をとりあげていることからも理解されるということです。
 あらためて言うまでもなく、文学史で扱われる作家・作品の数は限られるゆえ、その取捨選択には執筆者あるいは編者の、ひいては時代のイデオロギーが反映される傾向があります。「文学」とは「言葉の魅力」だと述べられた渡辺先生は、これまで積み重ねられた伝統を無視することなく、あくまでも文学作品と真摯に向き合うことの重要性とその魅力を、文学史について語ることでわれわれに説かれたように思います。
2013/02/17
英米文学専攻後期課程3年 小椋 道晃

BACK