2013年度立教大学英米文学会
「フォークナーと私」
平石貴樹先生(東京大学名誉教授)略歴>>
  日時:2013年12月21日(土)
  場所:立教大学池袋キャンパス 太刀川記念館3階 多目的ホール
  時間:16:30~18:00
  当日その他プログラム:
        
【研究発表】












【講演】
13:10~13:50 朝倉 さやか
(本学大学院博士課程後期課程在学)
Robert Frostが描いた反抗者たち――North of Bostonの対話詩を中心に
14:00~14:40 横山 晃
(本学大学院博士課程後期課程在学)
異邦人が見た内戦のトラウマ――Pagan Spainにおける「異教」のパラドクス
14:50~15:30 小笠原 清香
(本学大学院博士課程後期課程在学)
動詞の段階性と強意副詞:中英語から現代英語にかけてのfastの意味変化
15:40~16:20 竹内 理矢
(東洋大学専任講師)
フォークナーと「近代」
 
                小説家の一般的実力

 「フォークナーに殺された者のダイイング・メッセージ、そういう風に受け取ってください」――壇上の演者はこう言われ、会場を和ませた。東京大学名誉教授の平石貴樹先生である。およそ四半世紀にわたり本学にて「フォークナー研究者養成講座」を開いてきた先生が、師走の寒さ深まるこの日、その最終講演をおこなわれた。演目は「フォークナーと私」、主題は「小説家の一般的実力」である。
 曰く、フォークナーは、「小説家とは」との問いにたいする「理想の答え」にして、すなわち「一般的実力の結晶」である、と。白痴の男ベンジーの語りが自然に見えるよう、如何に精緻な配慮が散りばめられているか。複数の人物が一場面に同居し、それが如何に「同時多発的にいきいきと」描き込まれていることか。本年度、立教のクラスでとり上げた『響きと怒り』を引きながら、先生は熱烈な語気でフォークナーの力量を語られた。
 一般にウィリアム・フォークナーというと、とかくアメリカ文学の中でも飛び抜けて難解な作家と見なされ、ともすれば敬遠すらされる。これは一つには、彼が採用した「意識の流れ」と呼ばれる複雑怪奇な描写の技法をはじめとする、モダニズム的な作品の構成に起因する。しかし平石先生はそこに驚きを見いだし、多様な登場人物を巧みに描き分けるフォークナーの観察力・想像力・描写力を、絶賛された。「尋常ではない」と。どれだけの人間を、限られた場面に活かすことができるか——これこそがまさにこの講演で掲げられた「小説家の一般的実力」の、いわば試金石なのである。
 講演の最後に、研究者であると同時に一小説家でもある平石先生は、「少しでもフォークナーに近づいていきたい」と秘かな念願を明かされた。この日この場に集まった人の多くもまた、これからは専業作家としての道を歩まれる先生のさらなるご活躍を、心待ちにしながら、そのあとを追うこととなるだろう。
2014/02/17
英米文学専攻前期課程1年 伊東 泰幸

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