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  我々理論物理学研究室では、宇宙に関連した理論的な研究活動と、素粒子に関連した研究活動の二つに分かれています。宇宙については大雑把に分けて、高密度天体に関する研究と銀河形成に関する研究が盛んである。素粒子の分野については、主に弦理論に関する研究と高エネルギー反応についての研究といった具合に、純粋理論と現象論の両方を研究しております。高密度天体にはブラックホールや中性子星などが上げられるが、これについては世界トップレベルの研究成果を出してきている。他に我が研究室の特徴として、他の研究機関とのつながりも強く、共同研究を行っている。宇宙グループでは理論的に研究を進めているが、観測的研究とのつながりが重要であるという視点から、同じ物理教室の宇宙地球系研究室のX線観測グループとも共同でゼミなどを開いてお互いの研究を深めたりしている。外部の研究機関としては銀河形成においては筑波大学やその他の大学と共同で研究を行っており、高エネルギー反応ではKEKのグループとも深い関係をもちながら理論的な研究を行っている。
  では以下で、宇宙と素粒子のそれぞれのスタッフが行っている研究について、簡単に紹介していきます。
[宇宙]  柴崎 徳明 高エネルギー天体物理学の理論的研究
[宇宙]  原田 知広 一般相対論とその宇宙物理学・宇宙論への応用
[宇宙]  西條 統之 時空の動力学と宇宙物理学
[素粒子]  田中 秀和 高エネルギー素粒子反応の理論的研究
[素粒子]  矢彦沢 茂明 素粒子論、超弦理論
[素粒子]  黒木 経秀 弦理論、場の理論
宇宙グループ







   
1.マグネター
X線・ガンマ線を繰り返し爆発的に放射する天体である。中心星は1000兆ガウスという超強磁場をもつ中性子星である。X線・ガンマ線のエネルギー源は磁場のエネルギーそのものと考えられる。しかし、爆発的なエネルギー解放のメカニズムはまだ分かっていない。中性子星の内部にある量子化された磁束管が表面層にストレスを与え、星震を起こすためと考え調べている。さらに、中性子星誕生の際、このような超強磁場を作る原因についても研究を進めたいと考えている。

   
2.パルサーグリッチ
パルサーグリッチとは、電波パルサーでパルス周期が突然変化する現象である。中性子星外殻の回転速度が突然変化するのである。その原因は中性子星の内部にあるとする説が有力である。超高密度の内部は超流動、超伝導の状態にあると考えられる。そこで現在、超流動渦糸や量子化された磁束管の振る舞いを調べている。グリッチを通して中性子星内部の性質と構造を明らかにしたいと考える。

   
3.パルサー風と星風の相互作用
Be星と連星系を組んでいるパルサーがあり、この系からX線やガンマ線が観測されている。Be星風とパルサー風の衝突による衝撃波の形成、衝撃波での粒子加速、相対論的な電子・陽電子によるシンクロトロン放射および逆コンプトン効果というシナリオでX線・ガンマ線の放射を調べている。計算結果と観測とを比較し、パルサー風の性質について重要な知見を得たいと考えている。また、この研究はガンマ線バーストや活動銀河核の研究にも応用できると考えている。

   
4.降着円盤
X線星や活動銀河核では、ブラックホールのまわりをプラズマ円盤が取り囲み、そこからX線が放射されていると考えられる。しかし、標準的な円盤モデルでは温度が低く、高エネルギーのX線は放射されない。そこで、私たちは冷たい円盤モデルを熱い円盤がサンドイッチ上にはさんだモデルを考え、その構造と放射されるX線のスペクトルを計算している。まず低質量X線連星に応用し、モデルの有用性を調べる予定である。

 










一般相対論に代表される重力法則は、宇宙の誕生間際から現在そして未来への進化を記述し、原子核程度の高密度物質からなる中性子星の重力を記述し、光さえも出てこれないブラックホールの構造を記述し、さらに時空のゆがみの伝播としての重力波を記述します。一般相対論は、時空の曲率と物質場の関係式によって時空の動力学を与えます。一般相対論は、単に理論的に美しいだけでなく、重力法則をきわめて精密に記述することが実証されており、宇宙論・宇宙物理学の様々な極限的な状況において非常におもしろい応用を持っています。最近の観測技術の進展は、宇宙が現在加速膨張していることを発見しましたし、近い将来には重力波の直接検出が可能となるでしょう。さらに、他の物理学や数学と関連した幅広い研究がなされています。また、ワームホールやタイムマシンなど空想科学的対象を物理として扱うこともできます。そうした様々な研究が有機的に結びついた総体が、Einsteinが提案した重力理論を踏まえつつそれを遙かに超えた、現代の「一般相対論」分野として認識されています。
そうした中で、次のような課題を主要な研究課題としています。
   
1.膨張宇宙におけるブラックホール
原始ブラックホールは1971年にHawkingによって示唆された理論的な天体で、初期宇宙の密度揺らぎによって現れ、Hawking輻射によってガンマ線・粒子線などを放射して蒸発します。原始ブラックホールは原理的に観測可能なので、現在の観測的制限からきわめて初期の宇宙の姿に関する情報を得ることができます。これまで私は、数値相対論や解析的手法によって、原始ブラックホールの最大質量や質量降着、さらに宇宙論的なホライズンより大きなブラックホールの構造に関する研究を行ってきました。今後さらに、加速膨張宇宙におけるブラックホールの進化を調べていく予定です。また、より一般的な文脈で、膨張宇宙におけるブラックホールに関する研究を行う予定です。    
2.数値相対論
ここ10年ほどの間に世界各国の重力波観測器の感度は飛躍的に向上しており、1918年のEinsteinの予言以来初めての重力波直接検出が期待されています。検出技術の進歩とあいまって、重力波の理論研究が進んでいます。こうした中で、Einstein方程式の数値的な解を求める数値相対論とよばれる方法が、日本の研究者などを中心にして大成功を収めつつあ ります。数値相対論は、重力波波形計算だけでなく、強い重力場の非線形現象の解明や宇宙現象のシミュレーションなどにも非常な威力を発揮しています。これまで私は、数値相対論を用いた重力波波形計算や、ブラックホールの成長問題・重力崩壊シミュレーションなどを行ってきました。今後、数値相対論の数値技術的な研究やその応用的な研究などを行う予定です。    
3.重力崩壊・自己相似解・臨界現象・時空特異点
1970年前後に完成した特異点定理によって、一般相対論が自らの適用限界点である時空特異点を予言することが明らかになりました。Penroseは、時空特異点はブラックホールの中に隠れていて見えないので無害だという仮説を立てましたが、この仮説が成り立たない例(裸の特異点)が発見されるなど、現在の状況は混沌としています。こうした中で、1993年、Choptuikは数値相対論によって臨界現象と呼ばれる現象を自己重力系において発見し、自己相似解が重力崩壊時空において本質的に重要な役割を果たすことを示しました。私はこれまで、裸の特異点の安定性に関する研究や、裸の特異点の量子論的な効果に関する研究、アトラクターとしての自己相似解の発見などの研究を行ってきました。今後、臨界現象の完全な解明に向けての研究を行っていきます。

 










 宇宙を舞台に,中性子星やブラックホール等の宇宙における局所的で激変的な描像から宇宙全体の構造を知る手がかりとなる現象まで,現在多種多様な形で私たちに提供されています。
 一般相対論が予言するブラックホールや重力波等の研究は,ここ近年理論模型の構築および数値シミュレーションの成功によって実際に作り出すことが可能になり,またそれらの結果を抽出することにより,その物理的に本質的な理解が可能な段階に到達してきました。
 私は近年,相対論的天体物理学,数値相対論,重力波物理学,の研究分野でわくわくしながら研究に取り組んでいます。

   
1. 相対論的天体物理学
 一般相対論は太陽系における重力理論のテストを見事にパスし続け,宇宙物理学において確固たる地位を築き上げました。また宇宙物理学ではブラックホールや中性子星などのコンパクト天体の激変的な現象が我々に提供されています。銀河中心に超大質量ブラックホールの存在が観測にも明らかにされ,宇宙でもっとも光度の高いガンマ線バーストも観測され,マグネーターや磁気的な巨大フレアの観測もされています。宇宙論では,インフレーション理論が予言する初期宇宙の原始密度ゆらぎがスケール不変であることがWMAPにより検証され,この分野は文字通り精密科学の時代に突入しはじめています.宇宙物理における中性子星やブラックホール等の相対論的天体の激変的な描像を,物理学の知識を総動員して解き明かし,新たな知見を得ることを目指しています。    
2. 数値相対論
 強重力場の基礎方程式であるEinstein方程式は,重力場と物質場を結ぶ非線形偏微分方程式です。この複雑な基礎方程式の厳密解は,限られた場合(定常解,球対称系,軸対称系,円筒対称系など時空の対称性が高い場合)でしか知られておらず,重力の非線形的な性質や一般の時間進化を伴う性質の本質的な理解は数値解に頼らざるを得ません。一般相対論は一般座標変換に対して共変性をもつ美しい理論ですが,その性質が数値計算を行うにあたって大きな弊害となっていました。連星中性子星や連星ブラックホールの合体をはじめとする一般相対論の数値シミュレーションは21世紀に入って完成の域を迎え,現在ではその手法を用いて宇宙物理学に適用する研究が主流になりつつあります。非線形動力学的見地から一般相対論を見つめ直し,その存在が一般相対論において本質的になる重力波の生成や伝搬の研究を推進しています。そのことを通して,宇宙を新しい観点から解き明かすことを目指しています。    
3. 重力波物理学
 一般相対性理論では重力場自身の振動を表す重力波の存在が,重力場の基礎方程式であるEinstein方程式そのものより予言され,その間接的な存在はすでに実証されています。重力波の直接検出には時空の歪みを1e-23のオーダーで特定する必要があり,技術的にも非常に挑戦的です。科学技術の進展により21世紀に入り,重力波を直接観測する世界規模のプロジェクトが日本を含めて次々に実現しています。理論サイドからも様々な知見が得られるでしょう。重力物理学的には,重力理論の直接検証や時空構造の検証など,天体物理学的には天体の質量や半径の直接決定など,またその透過性の高さにより高密度天体の内核の物理に対する示唆などがあります。また,宇宙論的には距離を測る直接的な手段となりうるでしょうし,インフレーションシナリオやダークエネルギー,高次元重力理論(例えばブレーンワールドシナリオ) に関する示唆が得られるかも知れません。一般相対論の基本的な性質としての重力波を用いて,まだ我々が知らない様々な宇宙の素顔に迫り,解き明かし,そして理解することを目指しています。

 

素粒子グループ








物質は何で出来ているのだろうかという古代からの素朴な疑問に対して、現時点までに人類は、「物質はクォークとレプトンで出来ており、それらの間の相互作用はゲージ粒子と呼ばれる粒子によって媒介されている」という物質像までたどり着いた。これは「素粒子の標準理論」と呼ばれているが、物質界や宇宙の現象を理解するための最も基礎的な理論体系の一つである。

しかし、標準理論が物質の究極の姿を全て説明してくれるわけではなく、もっと深いレベルでの構造の反映であろうと考えられている。例えば、標準理論においては質量を持たない粒子として取り扱われてきたニュートリノは質量を持っているであろうと考えられるようになってきている。また、質量の起源であると考えられているヒッグス機構や素粒子の世代についても、多くの不明な点が残されている。

この様な、物質構造の研究は理論的研究と実験的検証とによって進められている。理論的な研究としては、標準理論が成立する起因をより深く理解するための統一理論などの試みとともに、複雑な素粒子反応をどこまで標準理論によって説明可能かを探る試みが挙げられる。

現在は、大学院生とともに「次世代の超高エネルギー加速器における素粒子反応で何が起こりそうか?」について理論的研究を行っている。素粒子の標準理論の枠組みは、学部4年次生でも(ちゃんと勉強すれば)理解できる体系であり、この分野は卒業研究で取り組むことも可能である。


 









素粒子論とは物質を構成している基本粒子とその相互作用及び時空の構造を研究する学問分野です。広い意味では、素粒子論は今までに知られた個々の自然法則や原理を、現在未解決な問題を手がかりにして、より簡潔な形で理解することを目指していると言ってよいでしょう。ベータ崩壊に代表されるような弱い相互作用、ハドロンを構成しているクォークやグルオンの強い相互作用、一般相対性理論によって記述される重力理論、そして電磁気力、と言った四つの力とその力を感じる物質を量子論と矛盾なく統一的に記述する理論として、現在最も有望な理論が「超弦理論」です。この理論の素朴な見方は、まず振動している紐を考えて、その各振動モードを「素粒子」とみなし、次にそれが分裂したり結合したりする過程を考えることです。この見方からゲージ場や重力場の導出などの重要な性質が導けます。しかし、真空の構造や紐の多体問題等を調べるにはそのような素朴な摂動論的な描像だけでは不十分であり、非摂動論的な見方が必要になってきます。上で、「超弦理論」として「」を付けたのは、非摂動論的な見方及び定式化においては素朴に紐を基本要素とする見方を離れる必要があるかも知れないからです。

近年、双対性、D-ブレイン、行列模型、時空の非可換性、AdS/CFTなどをキーワードとして少しずつ「超弦理論」に進展が見られ、私も非摂動論的な 「超弦理論」の定式化に大いに興味をもって研究しています。特に最近行った研究は、非臨界弦におけるD-インスタントンの研究、衝撃波を通過するときの弦の励起状態の研究、時空特異点の解消およびその安定性についての研究などです。またそれ以前には、「超弦理論」に密接に関係していると考えられる、超流体中の量子渦や宇宙紐のダイナミクス、膜(membrane)の理論、ブラックホール近傍の弦の場の理論、位相項を持つゲージ理論、超弦理論の有限性、超対称共形場理論などなどを研究してきました。これからは柔軟な発想を大切にして、さらなる革新を目指そうと思っています。


 









私の研究の目標は、究極的には二つしかありません。

1. 宇宙はなぜ現在のような構造を持っているか

2. 物質は究極的には何から構成されているのか

を明らかにすることです。

これら二つの問題は、現時点ではまったく違うレベルの問題に見えるかもしれません。 前者は宇宙全体の問題であり、後者は極小の世界の問題だからです。実際、前者は相対 性理論の問題、後者は量子力学の問題に見えます。

ところが、例えば前者の問題に取り組む場合、「宇宙はどのように始まったのか」、あ るいは「宇宙の始まりはどのような様子だったのか」を解明することが必要不可欠です。 宇宙が膨張していることは観測事実ですから、宇宙は始まって間もないころ、非常に小 さかったと思われます。宇宙初期を解明するためには、宇宙全体を扱う相対性理論と、 極小の世界を扱う量子力学両方を考慮しなければいけないことが分かります。

ところが、残念なことに、相対性理論と量子力学を一緒に考えようとすると、くりこ み不可能性という、理論としての矛盾があることが分かっています。理論的矛盾を来た すということは、この両方の理論がまだ完全でなく、その背後にさらにこの二つの理論 を統合する究極の理論があることを意味しています。そこで、相対性理論と量子力学を 統合する理論の最有力候補として考えられているのが弦理論と呼ばれる理論です。弦理 論は、宇宙のあらゆる物質、力の根源、それらがすべて極微の弦の振動によって生ずる とする理論です。このようにして、1 番目の問題を考えることは、自動的に2 番目の問 題も考えることになります。このような宇宙開闢を通して極大の世界と極小の世界が繋 がることは、とても示唆的であるし、物理学の進歩が最終段階に来ていることを意味し ていると考えています。

弦理論は確かに、その振動を詳しく調べてみると現在私達の周りにある様々な素粒子 を含んでいることが分かります。また、エネルギーが低いときは相対性理論を含んでい ることも分かっています。弦理論は量子力学に基づいて構成されていますので、弦理論 こそ、相対性理論を含み、量子力学的に記述された、両者を統合する理論に見えます。

しかしながら、弦理論には致命的な欠陥があることが分かっていて、それがこの20 年 以上も未解決のまま残されています。実は弦理論が定義できる空間は無限個あります。 また、その中には私達が住んでいるような4 次元の時空だけではなく、10 次元の時空や 0 次元の時空(点) のような、私達の宇宙とは似ても似つかないようなものさえあります。 これでは1 番目の問題に答えることができません。たくさんある時空の中で、なぜ私達 の宇宙が実現されたのかを説明できていないからです。

私達の時空がなぜ4 次元に選ばれたのか、という問いは謎のまま残されていると述べ ましたが、まったく手がかりがないわけではありません。弦理論を詳しく調べてみると、 弦理論は弦だけで構成されていると考えるべきではないことが分かってきました。弦と、 弦が張り付いている壁のような物体(ブレーン) 両方を考えた方が自然であるというこ とが分かってきたのです。ブレーンを記述するには行列を使うとよいことが知られてい ます。そうすると、弦ではなく、行列をむしろ基本的な存在として弦理論を記述し直し てみたらどうかと考えたくなります。私の研究内容は、大雑把に言うと、このように行 列こそが基本的な存在と仮定して、弦理論そのものを再構築しようとする試みです。こ のような立場から、なぜ我々の時空が4 次元であるか等、宇宙の始まりと成り立ちを基 本原理から解明する研究を行っています。


 

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