立教女学院小学校
小学校だより
第150号 2012年1月10日

本号の目次
●「スタート 小さきことから」
●郡山のセントポール幼稚園へ

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「スタート 小さきことから」         小学校校長 清水 良一

「スタート 小さきことから」 小学校校長 清水 良一
 新年あけましておめでとうございます。新しい年の幕開けとなりました。昇る太陽が背高の霜柱に陽光の最初の訪れを告げると、小鳥はそれを察知してか、我が身にもその恩恵あらんことを願いチッチとの鳴き声を発しながら素早い飛行術を披瀝しています。
 大震災からどう復旧復興するか。一段と寒さが加わる中、被災地の皆様は特に大変なご苦労のうちにおられます。ご家庭におかれましても、「私には、私たちには、何ができるだろうか」とお考えいただいてこられたかと存じます。村里にも街にも安心できる状態が再び確保され、穏やかな暮らしへと被災地の皆様がたが安堵される日が近からんことをお祈り申し上げます。
 新年にあたり、また3学期の初めにあたり、願うところを述べさせていただきます。
   原動力 「この一事」
 子どもは次の世代を担う尊い存在であります。世界は世の中を切り拓いていってくれることを期待と希望をもって子どもに托します。私たち親は「これもあれも必要。忘れてはならない」とつい口うるさくなります。「これが出来ればそれが波及するようにして、口うるさく言わずとも子どもが期待する方向に育ってくれる」という秘訣はないものでしょうか。その事をいつも考えます。
 秘訣とは「無意識のうちにも時と場所を選ばずできる事」であります。自動車のエンジンは、内燃機関が作り出した動力を駆動軸を通して後輪にも伝え、連続走行を可能ならしめます。エンジンは駆動し続ける「原動力」であります。そのようなエンジンを持っているかどうかであります。
 原動力になる大型エンジンを子ども達に期待することはできませんが、自分を内的に駆動し、その駆動の連続が更なるパーツの駆動をも呼び覚ますような原動力を私たちの子どもにも搭載させたいものです。 
   (1)持ち主の所作
 下校後の各階のシューコーナーを見ます。人間模様をその下駄箱の風景が語ってくれます。
 いつ見ても、@靴の踵(かかと)が揃い、「一日、ご苦労様」とねぎらいを受けているような感じの靴、A「ポーン」と投げ入れられたであろうことが伺える手綱から解き放たれた仔馬が跳び跳ねているような靴、B石鹸の香の心地よさを暫く味わった事がないのではないと思われるような靴 ―と様々です。 
 持ち主がそこにいなくとも、その靴の持ち主のことが想像できます。靴にねぎらいを差し上げられるような所作が吾が子に育ってもらいたいものです。
 この下駄箱に一晩収納する靴の「踵揃え」からは、波及効果たる駆動の連続が期待できます。「いくら酔っぱらっていても、トイレのサンダルは揃えろ。それが男だ。」と学生の頃に先輩から言われたことがあります。どこか男気(おとこぎ)が感じられます。背筋が伸びシャンとなるのであります。四十年も前に言われたことが、自分を呼び覚ませてくれます。
 下校をいくら急いていても、そこでグッとギアをチェンジし臍下丹田(せいかたんでん)に力して「踵揃え」をするのであります。丹田という器官が体の中にあるわけではありませんが、体の錐や重心たるところを意識し急いでいる時ほど所作を丁寧にするのであります。
   (2)誰が「手本」になるのか
 私もまさにそうでありましたが、このトイレのサンダル揃えにしても、そうしようとはしなかったでありましょう。時を得て、先輩が一言をかけてくれたのであります。先輩はサンダル揃えの実践者でありました。
 家庭にあっても、そのことは絶対に譲ることなく何が何でも実践するという一途な親の存在が大事であります。わが子の育ちにおいて、この「一事」の躾が「波及効果の元になる」、「駆動力になる」と言うものを家庭でも持ちたいと思います。私たち親が手本になり、親として保護者として実行に移したいものです。
   (3)3学期の生活課題
 学校では、自立のための三学期の大きな生活課題として、次の一点に全校で集中して取り組みます。毎朝の礼拝時、小学校校舎から礼拝堂へ移動します。礼拝終了後、礼拝堂から校舎へ移動します。この移動において、往路は「教室を出たらお喋りをなくして、礼拝堂に入る」。復路は、「教室までお喋りはしない」となっております。
 自主的な気付きや成長への期待感をもってこのようなある緩やかなきまりとしてきました。この緩やかさこそが自主性を育てるものと期待してきました。しかし、自主性への委任だけでは、曖昧な部分が達成を遅延させていることが見えてきました。
 三学期のスタートに当たり、この度は曖昧さを排除し生活課題をもっと明確に打ち出し、透明にすることになりました。先の往路は「校舎の玄関を出たら礼拝堂座席までお喋りをしない」とし、復路は、「礼拝堂座席から教室までお喋りをしない」としました。駄目なものは駄目とし、守るべきとした規律は守るという厳格さの小さき「一事」が成長への駆動力になり、波及的に効果をもたらせてくれることと考え、全体で取り組みます。
 今学期もまた、ご理解とご協力をいただきたくお願い申し上げます。



郡山のセントポール幼稚園へ  〜クライミングウォールを寄贈〜

 「こんな感じの、よじ登るような遊具があるといいんだけどね…」と6月にお渡しした立教女学院小学校のJoyPlatzが紹介されているパンフレットを指しながら、郡山のセントポール幼稚園の三宅理事長から相談をいただきました。
 3・11の大震災、そして原発事故以降、福島の子どもたちは外で思いっきり遊ぶという自由を奪われています。小学校ではこれまで、福島県にある四つの聖公会系列幼稚園、『みその幼稚園(福島市)』、『セントポール幼稚園(郡山市)』、『聖テモテ幼稚園(いわき市小名浜)』、『若松聖愛幼稚園(会津若松市)』にそれぞれ、昨年度の献金を用いて、子どもたちが室内で少しでも体を使って遊べるようにと、デンマークで開発された『サイバーホイール』(巨大なチューブ状のタイヤのような体育遊具)や高圧洗浄機などを提供させて頂いてきました。
 できるだけ多く現地へ足を運び、どのようなことに苦労されているのか?子どもたちの状況はどうだろうか?具体的なニーズは何か?コミュニケーションを取りながら立教女学院小学校としての支援の方法を探っています。
 そういった中で、電話やメールだけでなく、何度も伺ってお話をする機会に恵まれたセントポール幼稚園の先生方から具体的な『必要』についての相談をいただきました。震災以降9ヵ月以上、子どもたちが外で遊べなくなったために、握力や走力といった運動面での機能低下だけでなく、体重の伸びが減少しているという調査結果もあります。また線量が高く、県外へ避難する家庭も増えており、子どもたちのみならず福島に暮らす大人たちの不安やストレスも深刻になってきているということでした。
 「せめて、幼稚園にいる間は安心して身体を使って遊ばせてやりたい。」先生方の切実な声でした。JoyPlatzのような大型の物は室内には設置できないが、遊戯室の壁をうまく使えば、『クライミングウォール』にすることができるかもしれない。ならば、7月に小学校の子どもたちが取り組んだ『チャリティデー』で頂いた義援金約65万円を使って設置できないものだろうかということになりました。
 善は急げ。すぐにいくつかの業者に連絡をとり、見積もりを依頼しました。しかし、ホールドと呼ばれる岩の材料や壁のデザイン、ウレタンマットなど施工工事を含めると100万円近くかかるということがわかりました。安全性第一なので手抜きはできません。店舗設計や住宅建築などを手掛けるデュー・ワークスタジオさんに事情と予算をお伝えし、全面的に協力していただくことができました。12月上旬に大工工事で2日間かけて、幼稚園の先生方が描かれたイラストを元にデザインをおこし、オリジナルのクライミングウォールが完成しました。完成披露会では子どもたちのわくわくする表情と、楽しそうに壁をよじ登る姿が地元の福島テレビでも紹介されました。
 私たち一人一人の力は小さいものですが、『チャリティデー』での子どもたちの取り組みが、福島の子どもたちの笑顔につながったということに喜びを感じています。また、これまで献金や義援金という形でご支援くださった保護者の方々にもこの場を借りて感謝をもってご報告させていただきます。
 クライミングウォール設置の様子や、立教女学院復興支援室の活動については『復興支援室リポート』でもご覧いただけます。(吉田)
 (http://fukko-shienshitu.blogat.jp/)

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