立教スポーツ第135号
<12月5日更新>

東京六大学史上2人目 完全試合 上重
―硬式野球部―

 九回表二死。白球が今村(観3)のミットに吸い込まれた瞬間、マウンド上の背番号15は力強く両手をつき上げた――。本学硬式野球部の秋季リーグ最終戦、10月22日対東大2回戦で上重聡(コ2)が完全試合を達成。36年ぶり、リーグ史上2人目の大記録に特別賞も贈られた。引退する4年生に捧げた87球。魂の熱投が、今よみがえる。

最高の贈り物  

 一回裏、本学の攻撃から早くも試合が動く。先頭打者・戸川(法4)が四球で出塁すると、続く石田(拓)(法4)と法村(経4)の連続安打で先制点を挙げる。その後も連続安打で、この回一気に6点を奪った。

 上重は立ち上がりから非常にテンポが良い。持ち味の打たせて取る投球がさえ、東大打線に次々と凡打の山を築かせていく。五回までの投球はわずかに55球、そして被安打与四球ともにゼロだ。大記録の影が少しずつちらつき始める。だが「最終戦だから終始楽しもうというムードで出来た」と主将の石田(拓)が言うように選手たちの動きに気負いは見られない。

 石田(拓)、石田(泰)の鉄壁の二遊間を中心とする安定した守りにも支えられ、上重のリズムはしり上がりに良くなる。

 そして依然、東大の打者に一塁すら踏ませることなく、ついに上重は最終回のマウンドへ。その表情は、まるで球場全体を包む緊張感を楽しんでいるかのようだ。七番を一邪飛に仕留めると、八、九番は連続三振。見事87球で、上重は六大学史上2人目、36年ぶりの完全試合達成という快挙を成し遂げた。

 試合後の第一声は「複雑です」。この日で引退の4年生にもう一度登板して欲しかったのである。「でも贈り物ができて良かった」そう言うと、彼は満面の笑みを見せた。

エース格に成長

 上重の3季ぶり、そして初先発となるマウンドは、開幕連勝を狙う対早大2回戦だった。試合前、「八番、ピッチャー上重君」というアナウンスが流れると、スタンドから拍手が沸き起こる。3年前、甲子園で熱戦を繰り広げた右腕の復活を、スタンドのだれもが待ち望んでいた。

 しかし、初回から一死満塁のピンチを迎かえる。だが、そこは名門PL学園高のエースとして、何度となく修羅場をくぐり抜けてきた男。気合を押し出した強気の内角攻めと、低めに球を集めることでこの窮地を切り抜ける。そのまま九回一死まで粘り強く投げて、念願の初勝利をあげた。「ちょっと遅いが素直にうれしい」。上重の2年目の初勝利だった。対明大2回戦でも勝ち、向かえた法大戦では初戦に先発。勝ち点こそ逃したが、強力打線をわずか2安打に抑える好投を見せた。

 もうあとがない慶大2回戦では「最悪の調子」ながら、本人いわく「先発の勲章」という初の完投勝利をマークする。続く3回戦でも救援で連勝し、最終戦で完全試合。5勝2敗でシーズンを終えた。

 エース上野(法4)の卒業により、来年は投手陣の柱としてフル回転が予想される。その右腕は、チームのために投げ続ける。                     

(岡本、坂本)
〜記事抜粋〜
 

大混戦粘りの同率2位 復活果たす
―硬式野球部―

  10月10日、慶応との3回戦を本学がサヨナラで勝利した時点で、本学を含む5校が勝ち点2で並んだ。もう、どこも一敗すら許されない――。

 9月9日〜10月31日に神宮球場で行われた東京六大学秋季リーグ戦。大混戦となった今季、最終週の早慶戦を制した慶大が勝ち点4で優勝した。本学は法大に13季連続で勝ち点を奪われるなど苦しむが、8勝5敗の勝ち点3で2位に食い込んだ。

個々の活躍光る  

 早大との開幕戦、そのマウンドにいたのは春季、肩の故障からまったく自分の投球ができずに苦しんでいた上野であった。「投げられれば良い」という言葉とは裏腹に上野は4つの三振を奪う快投。打線の援護にも恵まれ6−0で完封し、完全復活を遂げた。

 明大、法大と連続して勝ち点を落としたあと、続く慶大戦でも初戦を落とし、このまま嫌なムードが続くかと思われた2回戦、ついに打線がつながり四回一挙3点を挙げ、投げては上重が好投。4−2で勝利し、勝ち点を懸けて3回戦に臨む。

 本学・上野、慶大・山本(省)六大屈指の好投手対決となったこの試合、序盤は両者ともに得点できず、勝負は終盤までもつれた。七回裏、本学が相手の守備の乱れにも助けられ3点を挙げると八回裏、粘る慶大も同点に追いつき試合はそのまま延長戦へ。十回裏本学の攻撃は二者凡退の後にドラマが待っていた。三番・法村、四番・今村が安打で出塁し、バッターボックスには途中出場の和田。ファウルで粘った六球目を見事にセンター前へ。劇的なサヨナラ勝ちであった。

 残る東大戦は打線が爆発、大記録も生まれ連勝。終わってみれば堂々の2位だった。また上野の復活や上重の完全試合を好リードで支えた今村はベストナインを受賞。加えて国際交流基金の中南米遠征チームのメンバーにも選出された。

2位浮上も・・・

 昨季4位に終わった本学にとって、2季連続の低迷は許されなかった。

 オープン戦では夏のキャンプの成果が発揮され快調に白星を重ねる。先発の一角に上重が台頭。野手人にも徹底的に振り込んだことが奏功したのか、春不振だった打撃で好調を維持する。「四年間で一番良いムード」と主務の山岸(経4)が言うほど、最高の状態で開幕を向かえた。

 そして開幕カードで早大を撃破。相手に付け入るすきを与えない試合運びは、優勝時のそれであった。だがその後は開幕戦の強さは影を潜めてしまう。勢いに乗れず、本来の力を出せないまま本学はシーズンを終える。それはまた、今季も「バッテリーを中心として守り勝つ野球」を実践できなかったことを意味していた。

 投手陣こそ、上野・上重の先発二本柱を中心に踏んばるが内野の摂取が足を引っ張る春のパターンが繰り返される。打線は完封負けを3度も喫するなど波が激しく、また勝負どころで犠打を失敗するなど、きめ細やかさを欠いた。

 それでも本学が2位と健闘した影には、乗り切れないチームを引っ張り続けた4年生の姿があった。好守と強烈なキャプテンシーで貢献した石田(拓)。上位打線を担った法村はその代表格といえる。

 優勝こそならなかったが、年間では14勝11敗と久々に勝ち越し、地力もついてきた。常勝軍団の礎は今築かれつつある。それを確かなものにするためにも、来年は本学にとって、まさに正念場である。                               

(喜多村、坂本)
〜記事抜粋〜
 

3部昇格 −女子バスケットボール部−

女子バスケットボール部の写真  喜びに沸いた2部昇格から3年。本学は転がるようにして最も下の4部にまで落ちていた。ある意味ゼロからのスタートだった。9月10日〜24日に行われたリーグ戦。6つのブロックのうちAブロックに属する本学は、圧倒的な強さで勝ち進んでいった。

全勝で迎えた川村学園女大との最終戦。相手の勢いに押されたのか珍しくミスを連発。得点は常にリードしているものの、自分達のペースをつかめない。苦しい時間帯が続いたが何とか勝利をあげ見事ブロック優勝と入れ替え戦出場を決めた。しかし主将の植西(理4)は「他のブロックの優勝校は勢いもあってさらに強い」と気を緩めない。

 9月30日からリーグは各ブロック優勝校による順位決定戦に突入。そこで決まった順位に応じて入れ替え戦の相手も決まる。初戦の相手はBブロック優勝校の鎌倉女大。やはりこれまでの相手とは格が違い、初めて先行される展開となった。本学はシュートの決定率が悪く、思うように点が取れない。守備も悪く、追い付くことが出来ないまま、前半は終了した。ところが後半になると状況は一変。前半の不調がうそのように次々とゴールが決まり逆転、そして点差を広げる。残り2秒の高山(社1)の見事なゴールもあり、終わってみれば68―45の勝利だった。その後も連勝した本学は4部優勝を果たし、入れ替え戦の相手も3部最下位・成城大に決定。理想的な形で、大事な一戦に臨むこととなった。

 「勝ちます。絶対に」。3部昇格の懸かった10月22日の入れ替え戦。いつもは物腰柔らかな主将・植西が試合前にこう断言した。本学は序盤から優勢を保ち続け、前半を折り返した時点で29―20。いつもスロースタートな本学としては、ボルテージが上がらずにはいられない。ゲームキャプテンで高身長の和氣(社4)が見せるゴール下での力強さに加え、後半は高山、田中(法1)がスリーポイントシュートを次々に決めた。インからもアウトからも攻められるようになった今年の本学は、爆発的に点を重ねつづけ、対する成城大の点は止まった。気付けば、76―43の快勝。3部昇格が決定した瞬間だった。

                             

(舟橋、新里)
〜記事抜粋〜
(写真=苦しい時にこそ和氣がいる!圧巻のシュート)


・快走 六大戦優勝 −自転車部−

 例年成績が振るわなかった東京六大学対抗自転車競技大会。しかし今回の本学は優勝を目指し、10月14日、伊東温泉競輪場で行われた第14回大会に挑んだ。

 この大会では個人種目が5つ、団体種目が2つの計7つが行われる。各種目の順位に応じて得点が与えられ、その総計を競う。初めに行われた二百bスプリントの予選。この種目を得意とする佐竹(経4)は1位で、また菅野(法2)も3位で通過し、好調ぶりをアピールする。

続く四`チームパーシュートは大会中、最初に得点が与えられる重要な種目。「ここで先制できれば一気に波に乗れる」という意気込みが結果につながった。本学は自己ベストを10秒近く縮める好タイムで1位。理想的なスタートを切った。しかし、ケーリンの予選で参加した3人中、通過することができたのは菅野1人。

続く四`の速度競走でも思い通りに得点できず、今ひとつ波に乗り切れない。そんな中でも佐竹の走りがチームを必死に引っ張る。彼は得意の先行逃げ切りの型で連戦の疲れを感じさせない走りを見せる。結果、一`タイムトライアル、スプリントの二つの種目で1位を記録し、他大の追随を許さない。だが、ケーリンの決勝、ポイントレースで他大を突き放すだけの大きな点を得ることもできなかった。一方、法大がポイントレースで大量得点し、ついに本学は逆転されてしまう。

 最終種目はチームワークを必要とするオリンピックスプリント。「勝ちたい」という気持ちがチームに集中力と一体感を生み出す。本学は会心の走りで自己ベストを記録し1位を勝ち取る。この結果法大を再逆転し、見事総合優勝を果たした。

 優勝のカギとなったのは自己ベストを記録した二つの団体種目。「今回はだれ一人欠けても優勝できなかった」。新主将となる阿部(理3)の言葉通り、団結力がチームを優勝へと導いた。まさにチーム全員が優勝の立役者だったと言えるだろう。

 (今井)
〜記事抜粋〜


・本学初逆指名 上野 巨人2位

上野の写真  ついに舞台はプロのマウンドへ!本学硬式野球部の上野裕平(法4)が11月1日、以前からファンだったという読売巨人軍を逆指名。それを受け、巨人は11月17日のドラフト会議で上野を2位で指名し、上野は夢への第一歩を踏み出した。 

舞台はプロへ

 「わたくし上野裕平は、読売巨人軍を逆指名させていただきます。」ズラリと並ぶカメラの放列を前に、緊張気味に宣言してから3週間。11月17日のドラフト会議当日を上野は、一緒に戦ってきた野球部の仲間たちと向かえた。

 本学太刀川記念館で会見に臨む上野の周りを、部員たちが取り囲む。最初は盛り上がっていた彼らも、次第に真剣なまなざしで生中継のテレビを見つめるようになる。

 「読売、2位、上野裕平。22歳、投手、立教大学」。14時11分、歓声と拍手が沸き起こる。子供のころからの夢を上野がその右腕でかなえた瞬間だった。

 「やっぱりうれしい」と指名直後の感想を語ったが、表情は引き締まったまま。報道陣の質問にも淡々と答えていく。「巨人の中に入っても負けないように、1年目から活躍したい。開幕一軍が目標」。実感は少ししかないと言うが、既にプロでの厳しい生存競争を視野に入れ、冷静に自分を見つめていた。

 その上野の口調が東京六大学のライバルについて問われると打って変って強くなった。同じくドラフト指名された慶大の山本(省)、早大の鎌田(祐)らに対し「良き友であり良きライバルでもある。(だがプロでは)結果がすべて。」と語り、特に高校時代から投げ合う山本(省)に「勝った覚えがないので、勝ちたい。」と力強く言った。

 本学から久々にプロ球界へ進む上野。「立教の名に恥じないプレーをしたい」と決意を語る。本学での四年間で野球だけではなく、人間的にも大きく成長できたと言う。しかし、この4年間は決して順風満帆とはいえなかった。

「18」の軌跡

 高校卒業時にもプロから誘われた快速右腕には、本学入学時から大きな期待が寄せられていた。2年生になると早くもエースナンバー「18」を背負う。

 そして昨秋、エースとしてフル回転し、ベストナインを受賞。8月に右ヒジを亜脱きゅうし、ぶっつけ本番で臨んだとは思えない最高の結果を残すが、本人はその投球内容に到底満足していなかった。

 「まっすぐでぐいぐい押すのが理想」と上野は常々語っている。それだけに、全体的に押さえ気味で、新球のカーブと120`程度の抜いた直球を駆使し緩急で打ち取る「勝つための投球」に、引っ掛かるものを感じていた。

 だからこそ、本来のスタイルを取り戻すべく今年に懸けていた。プロを狙う上でも期するものがあった。が、右肩を痛みが襲う。感じたことのない痛み―初めてのことに、調整は大幅に遅れた。

 それでも痛みが残るまま春季リーグに登板。それはエースの責任感、そして自身の夢のためだった。だが右肩はさらに悪化する。「野球をやめたい」とすら思ったという。そんな上野の糧となったのは、石田(拓)ら4年生の頑張りだった。もう一度、みんなのために。その思いで、何とか70lの状態ながら最後のシーズンに間に合わせた。

 今季開幕戦で「一番思い出に残っている」という復活の完封。その後は好不調の波が激しかったが、法大を初完封とエースの意地を見せた。

 大学時代の思い出は野球以外ないという上野。栄光も挫折も味わった中身の濃い四年間を胸に、エースは夢の舞台に挑戦する。

                           

 (坂本)
〜記事抜粋〜
(写真=部員たちから胴上げされる上野は、笑顔でガッツポーズ)







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