立教スポーツ第152号
<6月4日更新>

硬式野球部・日野ノーヒットノーラン
            東京六大学史上20人目の快挙


 「まさかできるとは思わなかった」と語った日野(コ3)。予期せぬ大記録によって、神宮に興奮が渦巻いた。
 5月2日、東京六大学春季リーグ戦対早大2回戦。この日、日野が自身リーグ戦通算2つ目の勝ち星を無安打無得点でつかみ取った。無安打無得点試合は2000年秋に本学の上重(02年度卒)が完全試合を達成して以来、リーグ史上20人目。早大相手には本学の杉浦(57年度卒)以来となる47年ぶり二度目の快挙であった。試合を終えた日野に監督は祝福の声を掛けた。 
 「ナイスピッチング、おめでとう」

(写真=キレのある速球と変化球を巧みに使い分けた日野。早大打線を見事に封じた)


140球の軌跡
 対早大1回戦、エース・小林(コ3)が延長十二回引き分けという死闘を演じた。そして、勝ち点を得るために何としても先勝したい2回戦。初戦を一人で投げ抜いた小林に続き、この日は日野が先発のマウンドに立った。
 この日は得意の変化球がさえていた。強打線を誇る早大へ物おじせず、果敢に攻めてゆく。その好投に本学の打線も応えた。四回までに友永(観4)の2点本塁打などで5−0とリードを奪い日野を後押しする。大量点をもらった日野は四死球で走者を出すものの、野手陣の好守に助けられながら要所を締める。だが、眠れる獅子・早大がいつ目を覚ますかは分からない。プロ注目の選手である田中(浩)をはじめ、武内など四連覇の立役者たちは今季も健在だ。
 だが、日野を前に早大のバットから快音は聞こえない。そして一度も三塁を踏ませることなく迎えた九回裏。一番から始まる早大の上位打線を右飛と三振で抑え、二死。次の打者を2ストライクまで追い込むが、四球で塁に出してしまう。そして四番・米田への3球目。放たれた打球は遊撃手のグラブをはじく。観衆が息をのんだ――。スコアボードに表示されたのは、失策を意味する「E」という文字。球場がどよめきで揺れた。そして続く島原に対し、日野が力強いスライダーを投げた。高く舞い上がった白球が一塁手のミットに収まったとき、神宮に新たなる英雄が誕生した。

光り始めた原石
 歴史に残る偉業を成し遂げた日野。だが、これまでの道のりは決して平たんなものではなかった。
 宮崎・日向高から立大へ入学した日野は入部当初から期待されていた。しかし登板の機会を与えられるもののなかなか結果を残すことができず、昨季までわずか1勝にとどまっていた。そして昨秋は故障の悪化に泣き、一度も投げることなくシーズンを終えた。 
今季も日野は開幕前に右足を痛め、満足に投げられない状態でシーズンを迎えた。また、活躍が期待された大川(経3)の故障もあり、確実に先発できるのは小林ただ一人だった。  
その小林は対慶大、対法大の初戦を共に白星で飾った。レベルの高い東京六大学の中でエースとしての使命を果たしている彼の姿を見て日野は強い刺激を受ける。日野が対法大2回戦に次ぐ二度目の先発を言い渡された試合は優勝争いに絡む対早大2回戦。「小林が今まで一人で投げてきた。(彼の)負担を軽くさせるためにも勝たなければ」。日野はその思いを胸にマウンドに向かった。序盤の大量得点によって気負いも消えひたすら高橋(泰)(コ3)のリードを信じ、ミットを目がけて投げた。七回裏ベンチに戻ったとき、初めて無安打無得点の可能性に気付く。試合後もなかなか実感がわかず、派手なポーズを見せることもなかった。 
自らの快挙を謙虚な姿勢で受けとめた日野。だが、多くの人の心に忘れられない記憶を刻んだ。(金澤)



水泳部・小さな巨人根岸 日本選手権10位
             
 
(写真=自信みなぎる迫力の泳ぎ)
 
 アテネオリンピック日本代表の選考を兼ねた日本選手権。競泳界のトップクラスの選手が集まり競い合うこの大会で、本学水泳部の根岸(社1)が誇るべき記録を残した。
根岸は50b、100b、200bバタフライに出場。そのうち200bバタフライで予選を通過した。準決勝では10位という好成績を収め、決勝の補欠選手に選ばれた。高い標準記録を切らねばならず、出場することさえ困難であるこの大会で新戦力が早くも本領を発揮。小さな体の大型新人・根岸が立大水泳部女子の発展への道を切り開いた。

鮮烈なデビュー

 オリンピックイヤーということもあり、異例の観客数で埋め尽くされた東京辰巳国際水泳場。4月20日〜25日に第80回日本選手権水泳競技大会が行われた。この大会のために北島康介(東京SC)など、日本屈指の選手が辰巳に集結。その中に本学の根岸の姿があった。
大会4日目の23日、午前に行われた200bバタフライの予選5組に根岸は登場。レースが始まると、序盤の50bで7人中5位と出遅れる。しかし次の50bでは4番手へ、150bの時点では3番手へと徐徐に周りを追い抜いていく。結果、2位と100分の9秒差の第3位でゴール。予選16位までが準決勝に進める中、全体で11位に入り、余裕の予選通過となった。
準決勝が行われるのはその日の夜。それまで根岸はホテルの自室に戻り休養を取った。緊張している彼女を尻目に試合の時間は容赦なく訪れる。根岸が泳ぐのは準決勝2組目。スタート直後、またも出遅れ最下位に。しかし持ち前のスタミナを武器に、次の折り返しでは二人を一気に抜かし6位に浮上。そのまま順位を維持した。惜しくも決勝へ進む8人には入れなかったが、16人中10位と非凡な才能を見せた。


チームの中で
 根岸は名門・春日部共栄高出身。高校在学中は1年生のときからインターハイの表彰台に登り二度の国体と日本選手権出場を果たしている。そんな輝かしい実績を持つ彼女は本学への進学に伴い大きな転機を迎えた。
今春、根岸は水泳を始めて以来所属してきたイトマンスイミングスクールを退会することにした。部活一本に絞れば練習時間は減り環境も一変する。これまで一人の指導者の下で水泳を続けてきただけに、退会には大きな不安と抵抗があった。だが最終的に彼女は部のチームワークを優先した。「立教はチームの和を大切にしているからみんなで楽しくやっていきたい」。そう語り彼女は笑顔を見せた。
楽しく水泳をする。それが大学で根岸の志すものだ。本学に進学したのも、立大でなら楽しく水泳ができると思ったからである。もちろん楽しむだけでなく、チームに貢献しようという思いも人一倍だ。現在本学の女子選手は5人しかいないが、彼女は「少数なりに上を目指したい」と言う。目標にメドレーリレーでのインカレ標準記録の突破を挙げていることからもその意気込みが分かる。さらに彼女が与える影響は男子選手にも及んでいる。主将の清水(法4)は、彼女の入部でバタフライを専門とする1年生が良い刺激を受けていると語った。
 入学早々、大舞台で驚くべき結果を出した根岸。だが今回のタイムは自己ベストでない上、夏の方が良い記録が出ると言う彼女だけに今後の活躍にますます期待が高まる。在学中に彼女がどれだけの記録を残すのか。まだ1年生である彼女の可能性は未知数だ。 (若林、宮下)




バドミントン部・3部昇格 鋭気を放つ

 今、本学バドミントン部は大きな躍進のときを迎えようとしている。
4月25日〜5月4日に中央学大体育館で行われた関東大学バドミントン4部Bブロック春季リーグ戦。そこで本学は全勝優勝を成し遂げ、さらに続く入れ替え戦で見事3部の座を勝ち取った。
昨春の4部昇格を皮切りに、「強者」への道を歩み出した本学が、また大きな足跡を刻んだ

(写真=本学の要・茂木が多彩な技で相手を翻弄し続けた)

見せつけた実力
  昨年の秋季リーグ戦では惜しくも3部昇格を逃した本学。4部で戦う厳しさを痛感した彼らだが、「絶対に3部へ行く」と誓い、強化を重ねてきた。
 目指すところは一つ。彼らには自信があった。チームの中心である2年生レギュラー陣の茂木(もてぎ=経2)、小原(おばら=文2)、大渕(経2)らの成長。さらに実力のある新人浅井(経1)が加入したことにより、本学は一層の力を得て戦いに臨んだ。
そして迎えた春季リーグ戦。彼らの強さは初戦からはっきりと表れた。山梨学大を相手にゲームカウント5−0と圧勝。続く一橋大戦も3−2で勝利するが、この試合を茂木は「ミスが多く、出来が悪かった」と振り返る。この試合の反省を生かして本学は次の中央学大戦でより洗練された動きを見せ、4−1と快勝した。さらに学習院大戦も3−2と連勝を続ける。そして入れ替え戦出場が懸かる最終戦の日大経済学部戦。ここでも茂木と浅井がシングルスで圧倒的な強さを見せつけた。小原・大渕組のダブルスも3セット目までもつれ込む激戦を制し、3−2で勝利。本学は4部Bブロック全勝優勝という最高の形で入れ替え戦出場を決めた。
 「まだこれから」と語る茂木。彼らの目に映るのは「昇格」の二文字だけだ。

絶やさぬ熱意
 優勝に気を緩めることなく、本学は5月8日・9日入れ替え戦の舞台、千葉商大体育館に乗り込んだ。
初日、本学は4部Cブロック優勝の獨協大と対戦。浅井、茂木のシングルスはストレートで下す。次の小原・大渕組のダブルスは勝ちを急ぎ敗れるも、茂木・浅井組のダブルスが勝ち3−1。翌日、3部最下位校の慶大に挑むことになる。
2日目の一戦。この試合に勝てば、3部昇格が決まる。だが、浅井のシングルスで早くも危機が訪れた。2セット目の序盤に右足を負傷、集中できずに決着を最終セットに持ち越してしまったのだ。「最悪」と吐き捨てた試合内容ながら、最後は気持ちで勝ちをもぎ取った。続く茂木のシングルスは余裕の勝利。
試合は小原・大渕組のダブルスへ。1セット目はまさかの2−15。二人が負ければ、けがを負った浅井に出番が回る。「自分たちで(昇格を)決めたい」。ここから、二人は底力を発揮する。2、3セットを奪取し逆転勝利。昇格決定の瞬間、ベンチから誰もが二人に駆け寄り、笑顔と歓声がコート上に広がった。
「3部に行きたい」という強い思いがチームの結束を高め、念願の昇格を生んだ。攻撃力、スピード、ダブルスなど課題は山積みだが、「古豪復活」と自負するように本学の成長は著しい。3年ぶりの3部をどう戦い抜くか。そして狙うは2部――。彼らの本当の戦いは、まだ始まったばかりだ。  (津布久、落合)














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