立教スポーツ第154号
<10月1日更新>


水泳部・熱夏に挙がる凱歌 関カレ4位

 「創部史上最強のチーム」、そううたわれた今年度本学水泳部。彼らがまた偉業を成し遂げた。
 8月3日〜5日、東京辰巳国際水泳場にて行われた第77回関東学生選手権水泳競技大会(以下関カレ)。1部に属する本学男子は高い戦力を持つものの、他大の選手補強により混戦が予想された。しかし本学は一人ひとりの活躍により点数を着実に増やしていく。そして掲げていた「打倒・慶大」も見事に果たし、1部4位の座をつかみ取った。
3年前に1部昇格して以来、毎年確実に順位を上げてきた本学が今年、真価を発揮した。
(写真=一丸となって戦い抜いた部員たち。喜びに笑顔があふれる)

熱戦の行方
 昨年、本学は慶大に力及ばず5位に終わった。1部昇格を支えた選手たちが最高学年の今年、本学は「打倒・慶大」を掲げ上位校入りを目指した。
 各種目での順位点の合計で団体順位を決定する対校戦。本学は大会最初の競技五十b自由形で大久保(理2)が決勝6位に入り、最高のスタートを切る。さらに続く四百b個人メドレーでは鈴木(慎)(経2)と白垣(経2)が好成績を残す。本学をさらに勢いづけた。
 この2年生の活躍が主将清水(法4)を一つの重圧から解き放つ。昨年までは自分が得点を稼がなければという気負いがあった。しかし「今年は後輩が得点を取ってくれたから落ち着いて泳げた」と語った清水。二百b背泳ぎに出場し、この大会4年連続の自己ベスト更新で準優勝を収めた。一方、自由形のエース・福田(経4)は初日の五十b自由形で8位と伸び悩んでいた。昨年は調整不足で思うような結果を残せなかった福田。最後の夏に懸ける思いは人一倍強かった。
 大会2日目、初日に慶大を上回り波に乗る中、福田は百b自由形の予選を1位で通過。百b背泳ぎ・予選1位の清水とともに優勝への期待が高まった。しかし大接戦となった決勝で福田は小差で4位に終わり、清水も準優勝にとどまった。個人競技に悔いを残した二人は四百bメドレーリレーにすべてをぶつけた。この二人の気迫に残るメンバーも全力で応え、本学史上最高タイムで4位に輝いた。
 そして迎えた最終日、この時点で本学は総合4位。だが二百b個人メドレーで慶大が大量点を上げ、勝負は最終競技の四百bリレーにもつれ込んだ。部員たちの熱のこもった応援を背に第一泳者、福田がスタート台に立つ。「応援の価値があるレースにする」と誓った福田が自己ベストを出すと後の三人も死力を尽くし結果は4位。この瞬間、本学の総合4位が決まった。


思いは次代へ
 大会終了後「大学での四年間は今日のためだった」と喜色満面で語った福田。だが、ここに至るまでの道のりは決して平たんではなかった。1部昇格以来、順調に力をつけてきた本学。それにつれ、個々のこだわりが強くなりチームをまとめることが難しくなった。そこで関カレで自己ベストを出すという共通の目標を設定。それがチームの気持ちを一つの方向に向け、結束を生む。大会最終日のリレーで声を枯らし声援を送る部員の姿には確かなきずなが見えた。
 関カレ後に代替わりとなった水泳部。「勝ってかぶとの緒を締める。今回の結果に慢心せず、気合を入れて頑張ってほしい」。主将としての最後のあいさつを清水はそう締めくくった。また福田は「自分の可能性を制限しないで、自分を信じて練習してほしい」という言葉を後輩に送った。
 1部昇格を成し遂げた選手たちがいなくなる来年。新主将となる久保(経3)は「言葉では表せない大切なものが受け継がれた」と話し、偉大な先代から引き継ぐチームの重さをかみしめていた。また、7種目で決勝に進出するなど活躍が目立った2年生。「清水さんという精神的支柱が抜けてしまったので自分たちが盛り上げていかなくては」と白垣が語るなど、チームの軸としての自覚を強めている。
 1部昇格から3年という短期間で上位進出を果たした本学。追われる立場となる来年、1部での戦いは新たな局面を迎える。さらなる高みを目指し、上位校となっても本学の勢いは止まらない。


実力光る インカレ 根岸5位 清水12位
 関カレからちょうど1ヵ月後の9月3日〜5日、相模原市立総合水泳場にて第80回日本学生選手権水泳競技大会が行われた。本学からの出場は14人。その中でも異彩を放ったのが、根岸(社1)と清水だ。
 大会初日、女子二百bバタフライに根岸は出場。決勝に残れるのは8人だ。予選を何とか総合8位で通過するが、続く決勝はタイムが伸びず7位でゴール。この結果に根岸は満足しなかった。「応援してくれる人たちのために」、そうリベンジを誓い臨んだ2日目。女子百bバタフライを予選6位で通過する。そして決勝では2年間望んでいた自己ベスト更新を達成し、5位入賞を果たした。
 3日目は、今年で引退となる清水のレースだ。男子百b背泳ぎで、昨年進出できなかったB決勝(9位〜16位決定戦)出場を決めると4着でゴールする。総合順位で一昨年の13位を上回る12位という好成績を収め有終の美を飾った。
今大会で根岸は自己ベストタイムを、清水は自己最高順位を更新した。彼らの活躍は本学水泳部員の意識をより高めたはずだ。  
(宮下、若林)





相撲部・王者の意地 東日本連覇 小澤


 1年前、日本一の称号を手にした本学相撲部の小澤(法3)。彼が王者として臨む戦いがついにやってきた――。9月4日、靖国神社境内相撲場にて行われた第31回東日本学生相撲個人体重別選手権大会。前年度75`未満級を制してから、小澤は学内にとどまらず学外からも脚光を浴びるようになった。計り知れないほどの重圧がのし掛かったこの1年。しかし、それをはねのけることによって彼の精神力はさらに鍛え上げられた。連覇を狙い土俵へ上がる小澤。彼の頭の中を支配するものは「己を信じること」のみであった。

(写真=立ち合いの小澤。鍛え抜かれた肉体で勝利をつかみにいく)

早すぎる再戦
 8枚しかない全国大会への切符をかけて競う予選トーナメント。今年は昨年を大きく上回る32人の力士たちが栄えある舞台を目指し集まった。ここで2回戦に勝利すると、優秀8選手トーナメント進出と同時に全国大会出場権を獲得できる。昨年は圧倒的な強さで勝ち進んだ小澤にとって、それは一見たやすいもののように思われた。
 しかし、1回戦を突破すると早くも試練が訪れる。昨年の東日本、全日本両大会の決勝で優勝を争ったブヤンバト(防大)と、早くも2回戦で戦うことになったのだ。敗れた者が全日本への道を断たれてしまう両雄の対決。4年生のブヤンバトにとってはこの秋が日本一を目指す最後のチャンスであり、昨年の雪辱を期して挑んでくることは間違いない。しかし、その気迫に小澤は動じなかった。しこを踏むその姿は王者としての貫禄にあふれ、誰もを圧倒していた。
 集中力を最大限に高めた小澤は、立ち合いから即座にブヤンバトのまわしをつかみ、そのまま一気に土俵際まで追い詰める。必死の抵抗を許すことなく小澤の腕がブヤンバトの肩を力強く土俵にたたきつけたとき、生き残りを懸けた勝負の決着がついた。
 このとき小澤の視線の先はもう頂点を見据えていた。


執念が道を拓く
 優秀8選手トーナメントに進出した小澤だが、気の抜けない戦いが続く。初戦は高橋(日体大)との一番。小澤は上手投げで順当に勝ち上がるが、準決勝で今大会最大の苦境に立たされてしまう。
 彼の行く手を阻むのは、予選で本学の町田(社3)を下した日体大の中島。立ち合いで低く当たろうとした小澤だが、中島にさらにその下を入られてしまう。小澤はのけぞり、苦しい体勢を強いられる。しかし、ここで鍛え抜かれた足腰がその真価を見せた。中島は有利な状況であるにもかかわらず、巨岩を相手にしているかのように前進できない。小澤はすぐさま体勢を整え互角の勝負へ持ち直す。長い取り組みの末、両者は土俵に激しく倒れ込んだ。軍配が上がったのは小澤。勝敗を分ける瞬間、宙に浮く体を地に着かせまいとして頭から着地したのである。執念の勝利を収めた彼の額には鮮血がにじんでいた。
 二連覇まであと1勝。決勝の相手は、常に大会の上位を独占する日大勢の一角・仲宗根だ。だが小澤は得意の力相撲で仲宗根を一気に土俵際に追い込む。間髪入れずに強烈な押し出しで退け、完勝。度重なる危機を乗り越え、王座を守り抜いた。
 「自分にとって相撲とは自信を与えてくれるもの」と語る小澤の胸には、金色のメダルが光り輝いていた。だが、戦いはまだ終わらない。来る10月3日の全日本大会では、中島や仲宗根らに加え西日本の強豪が一堂に会する。果たして彼はどのような相撲を見せてくれるのか。小澤よ、さらなる栄光をつかみ取れ。
(金澤、黒田)





ボート部・未来担う若きクルー覚醒
        インカレ女子ダブル4位・なしフォア5位

暴風雨に見舞われた戸田漕艇場で漕手(そうしゅ)たちは実力を出し切った。
 8月26日〜29日にかけて行われた第31回全日本大学選手権大会。全国の大学が競い合うこの大会で本学ボート部は好成績を残した。主力となったのは女子ダブルスカルと男子舵手なしフォアである。2年生と3年生を中心に組まれた若いクルーは、この先まだまだ進化していく。快進撃への第一歩を今踏み出した。

(写真=最後まであきらめない。二人の気持ちを一つにして漕ぐ渡辺(左)と稀代)

夏の始まり
 同会場で8月14日・15日に第54回東日本選手権競漕大会が開催された。昨年の大会で優勝を果たした女子ダブルスカル(以下女子ダブル)の稀代(きたい=観3)が新たなパートナー・渡辺(経1)とともに再びこの舞台へ戻ってきた――。
 予選ではスタートでミスをしたものの、最後は他大との差を大幅に広げ1着でゴール。続く準決勝でも「力まず自分たちの漕ぎ(こぎ)ができた」という言葉通り、1着で決勝へと進んだ。
 スタート直前、二人は「優勝」しか頭になかった。しかし同時に、渡辺はこの二文字が意味する重圧に押しつぶされそうな自分と必死に戦っていたのである。その緊張は前で漕ぐ同じクルーの稀代にも伝わっていた。
 そして決勝。スタートで勢いよく飛び出す。そのまま最後まで粘り、東京医歯大Aをかわして1位でゴール。優勝をつかんだ。今までの重圧が吹き飛び二人の思いが一つになった瞬間だった。
 今大会でもう一つ注目すべきは男子舵手なしフォア(以下なしフォア)である。故障者が出たため彼らが練習を始めたのは、大会のわずか10日ほど前だった。そんな中、主将・本田(社4)が中心となりクルーをまとめ今大会に挑んだのだ。
 予選はゴール手前で勝負をかけるという、立大らしいレースを展開し1着で通過。翌日の決勝は今までで一番良いスタートを切るも、スピードに乗れず他大に付け込まれてしまう。他大との差が縮まらぬまま、3位でレースを終えた。
 好成績であったが、この二組のクルーは今大会の結果に満足することはない。目標はあくまでインカレ。この夏最後の大会に期待がかかる。


全てを懸けて
 ついに大舞台のインカレを迎えた。まず行われた女子ダブルの予選。本学は500bまで先頭にいたが、その後リズムを崩してしまう。そのままペースを上げられず、ゴール手前で鹿屋体大に抜かれ2着。続くなしフォアも接戦を落とし、両クルーとも敗者復活戦に回った。そこでは気持ちで勝利し、次へと望みをつないだ。
 そして女子ダブルの準決勝は鹿屋体大との再戦が待っていた。レース前、緊張していた本学だが、スタートから離されずについていく。さらに早めにスパートをかけ、宿敵を追い抜き1着でゴール。見事雪辱を晴らした。だが、決勝では思うように力を出し切れず総合4位。「この悔しさは忘れない」と、貴重な経験を手に、来年への決意を新たにした。
 一方、なしフォアの準決勝。スタート直後にミスで艇を止めてしまい、大幅に出遅れる。その差を埋めようと終盤怒とうの追い上げを見せるも及ばず3着。なしフォアのメンバーで唯一の4年生・本田の最後のレースは、順位決定戦となった。「他の3人に何か残せれば――」。その思いを胸に臨んだ最終レース。序盤明大に先を行かれるが「いつでも抜ける」と機会をうかがっていた。明大に疲れが見え始めた残り500bで本学は攻勢をかける。ピッチを上げ明大を振り切り1着でゴール。総合5位となった。「強い部をつくりたかった」と言う本田。その信念が形になる日は、遠くない。


勝利へと導く存在
 「最高のレースにする」。順位決定戦前、本田が女子マネジャーに誓った。「言葉通りになってうれしい」と女子マネジャーチーフの山本(菜)(文4)は顔をほころばせた。
 大会のとき合宿所の1階にある艇庫から艇を出す際に部員だけでなくOB、OGも大勢詰め掛け激励を送る。その数は狭い艇庫を埋め尽くすほどだ。多くの人に支えられている選手たちだが、一番身近な存在はやはり女子マネジャーだろう。
 練習があれば合宿所へ赴き、大会となれば自転車に乗りレース中のクルーを伴走する。そのほかにも年々仕事は増え、身を粉にして漕手に尽くしている。
 無論マネジャーのよりどころは選手だ。「選手が頑張っているから自分も頑張れる」「選手側の理解もあり立場も確立している」というのは、宮本(社4)と白沢(文4)。漕手から転向した井上(コ4)も「選手に感謝している」と話す。
 互いを理解し、尊敬し合える深い信頼関係が本学にはある。選手たちの勝利の裏には常にマネジャーが存在しその瞬間のために彼女たちがいる。
(大橋、落合)











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