立教スポーツ第160号
<12月2日更新>
 準硬式野球部・たどり着いた優勝 41年ぶりの完全制覇
 主将・猿田(法4)の体が宙に舞う。歓喜に沸くグラウンドでの夢にまで見た瞬間だった。
 9月3日〜10月30日に早大東伏見グラウンドなどで行われた東京六大学準硬式野球秋季リーグ戦。数々の激戦を制し、勝ち星を重ねてきた本学は、41年ぶりの完全優勝という快挙を成し遂げた。
 春季、最終週に勝ち点を逃し優勝を目前にして4位に転落した雪辱を果たした本学。だがその道のりは決して平たんではなかった。


見え始めた栄冠

 試練は突然訪れた。慶大を相手に迎えた開幕戦を白星で飾った本学。しかし2戦目、無安打無得点試合でまさかの敗北。沈みがちな気持ちを一掃したの、上原(経4)と猿田のバッテリーだった。築き上げた信頼関係で守備からリズムを作る。屈辱を乗り越え勝ち点を手にした本学。優勝手の快進撃はここから始まった。
 東大戦では、夏合宿以降力をつけてきた新鋭の活躍が光った。折原(理1)の好投や磯部(経1)の本塁打。部の未来を担う若い力が、2つ目の勝ち点を呼び込んだ。 
 次の相手は春を制した早大。1戦目は春のMVP・川口(早大)を打線が打ち崩せない。本学はエース・上原で初戦を落としてしまう。続く2戦目は延長十四回までもつれ息の詰まる熱戦となった。チャンスでの1本が出ないまま、試合は引き分けに終わる。だが、流れは確実に本学に向いていた。
 初戦と同じ両先発で始まった3戦目は、上原に軍配が上がる。攻守のかみ合った理想の野球で、勝負は振り出しに戻った。
 勝ち点を掛けた4戦目、本学は石井(経2)をマウンドに送る。投手戦のまま延長に突入した十回裏、二死二塁で打者は石井。「気合で打った」と話した打球は中堅手の前に落ち本学は劇的な勝利を収めた。気迫のこもった走塁でサヨナラの本塁を踏んだ猿田は「練習と仲間を信じ、勝ちたいという気持ちを前面に出して戦った」と語った。
 ついに得た王者からの勝ち点。優勝への思いを心に秘め、次なる戦いに挑む。
(写真=感動の渦の中胴上げされる猿田。主将としてこれ以上の喜びはない)



夢をかなえた男達
 そしてリーグ戦最大のヤマ場がやってきた。相手は無敗の6連勝で本学と同じく勝ち点3の法大。ここが勝負どころと両軍の優勝への熱き思いがぶつかり合った。
雨の中での対決となった初戦は上原、吉井(法大)の両先発で始まった。試合が動いたのは六回。二死二塁から上原の三塁打で本学が先制する。さらに相手の暴投で1点を加えて大事な初戦を物にした。しかし、法大もこのまま引き下がらず2戦目は0−7と大敗を喫してしまう。
 天下分け目の3戦目。本学は儘田(ままだ=経4)や中村(法4)らの好守で先発・上原を援護し、強打の法大に得点を許さない。0−0のまま九回表を終了する。その裏、本学は一死二塁のチャンスを作る。ここで勝負強さに定評のある加茂谷(かもや=法3)が登場。期待に応えるサヨナラ適時打を放ち、本学は3戦にわたる法大との頂上決戦を制した。それでも猿田は「気持ちの勝利。次も開幕戦のつもりでいく」と全く油断しなかった。
 残すは明大戦のみ。本学は初戦を圧勝する。優勝の懸かった2戦目、両校無得点で迎えた八回裏、中村が決勝点となる犠飛を放つ。1−0と投手戦に勝利した。今季を象徴する勝ち方で、見事8季ぶりの優勝を手にした。


全員野球の賜物
リーグ戦で完全優勝を果たした本学。猿田は好守の要としての活躍が評価されMVPを獲得した。
他大と異なり体育会推薦制度を持たない本学には、飛び抜けた能力を持つ選手がいるわけではない。そこで、試合ごとに打順を組み替えることにより、猿田が「どの選手も、打順に関係なく役割を果たせる」と表現するチームになった。さらに走者を盗塁や犠打で送り、確実に得点を重ねる。そして守備からもリズムを作り、良い雰囲気の中で試合をこなす事ができた。すべての選手が活躍したことが、優勝に結び付いた。
 リーグ戦優勝により本学は、11月3日〜6日に横須賀スタジアムなどで行われた第27回関東地区大学・社会人リーグ準硬式野球王座決定戦への出場権を得た。初戦から勝ち進み、本学は決勝に進出した。しかし専大との決勝戦は、3−4で惜敗してしまう。
 今季で部を引退する猿田は「このメンバーで最後までやってこられて誇りに思っている」と語る。そして「今回の成績が重圧になるとは思うが、主将を中心に頑張ってほしい」と期待を寄せる。猿田の意志を受け継ぎ、本学は再び動き出す。


(古屋(ま)、古矢、石井)

バスケットボール部 悲願達成の昇格

体育館に選手たちの歓喜の声がこだまする。
 9月4日〜10月16日に本学武蔵野新座体育館などで第81回関東大学バスケットボールリーグ戦が行われた。勝利を重ねた本学。届きそうで届かなかった昇格の扉をついにこじ開け喜びを共に分かち合った。

思わぬ苦戦
 24校もの大学が所属する激戦区4部。4つのブロックで行う1次リーグの結果を踏まえ、上・中・下位リーグに分かれて二次リーグを行う。昇格の対象は上位4校のみ。全11戦の長丁場を本学は突き進む。
 何としても1位で通過したい1次リーグ。初戦で成蹊大が立ちはだかる。開始早々リードを奪うが、第2Q(クオーター)終了時で5点のリードを許してしまう。「負けられない」。第3Qのコートに立った選手の目は明らかに前半とは違っていた。開始直後に同点に追いつくも試合はこう着状態へ。それでも吉井(経3)が力強いシュートを決め、逆転に成功する

 流れに乗った第4Qは開始5分で15点差をつけた。だが、相手のどとうの攻めに遭う。1点リードの残り30秒、岩田(周)(社1)が意表を突く3ポイントシュートを放つ――。ボールはきれいな弧を描いてリングに吸い込まれていった。気が引き締まる選手たち。その後は点を与えず、87−81で競り勝った。
 本学は勢いに乗り、残り4戦を大差で勝利。全勝で意気揚々と上位リーグへ進出した。だが、リードすると集中力が切れる。ファウルが増え、退場者を出すなど、精神面での課題が残った。上位リーグのレベルは高い。主将・角田(法4)は「2次リーグは簡単には勝てないと思う。気持ちを切らさないようにしたい」と語った。昇格へ向け、真価が問われる戦いが続く。


迎えた正念場
 2次リーグ初戦の江戸川大戦ではかねてからの不安である精神面の弱さが露呈した。嫌な空気をはねのけられず敗北を喫する。次の千葉大戦、前半を2点リードされ折り返す。連敗の二文字が脳裏をよぎった。その時、選手たちの心に火が付いた。第3Qで逆転すると、一気に差を広げ勝利をつかむ。選手たちの表情から曇りが消え、チームに再び追い風が吹き始めた。
 続く防大を圧倒した本学は、ここまで全勝の難敵・一橋大との試合を迎える。序盤は一進一退の攻防が続く熱烈なものとなった。1点を追う展開で第2Qを終了する。それでも第3Qに気合の入ったDFを見せて4分間無失点。流れを手にしたかに見えた。だが、終了間際に岩田(周)が負傷。攻守のリズムが崩れ、第4Qに追いつかれてしまう。
 この局面をチームの得点源・原田(修)(経2)が打開した。周囲が浮き足立つ中冷静に3ポイントシュートを決め、3点リードした。相手も食らいつくがそのまま試合終了。息のつけない大接戦を制し、79−77で貴重な勝ち星を挙げた。
 これで昇格に王手をかけた。迎える相手は桐蔭横浜大。選手たちは気迫をまとっていた。相手のエースを抑え,主導権を握る。そして響いた終了のブザー。選手たちは高らかに拳を突きあげ、声を弾ませた。実に13年ぶりの昇格を果たした瞬間だった。
 最後の上智大戦も制し、4部での優勝を勝ち取った本学。今季を振り返り角田は「まとまりのあるいい雰囲気が勝利につながった」と話す。来季は3部Bブロックで戦う選手たち。彼らははっきりと次なる戦いをとらえている。(写真=原田(修)の切れ味抜群のドリブル。ここ一番で力を発揮する)
 


陰の立役者
 今回3部Bブロック昇格という輝かしい成績を収めた本学。試合に出たのは主に1、2年生だったが、ベンチにはいつも彼らを支え続けた4年生の姿があった。
 「常にチームをどのように良くしていこうか考えてきた」と主将の角田は語る。本学には集中力が途切れてしまうという問題があった。どんなに結果が良くても、昇格を確固たるものにするには妥協は許されない。角田は「このチームは、まだまだ若く集中力が切れやすい。それを改善しなければならない」と話し、後輩たちに練習から気持ちを切らさぬように伝え続けた。
 また2カ月半にわたる長いリーグ戦。選手たちはモチベーションの維持に苦しんだ。だが彼らは今までの体験を生かしたアドバイスでチームに活気を与えた。下級生も「昇格は先輩の力が大きい」と語る。
 縁の下でチームを支え続けた4年生は、最高の結果とともに選手生活を終えた。

(船越、石井)


ボート部・修練の集大成 山本4位 貫禄示したクォド6位

 
 頂点を目指して全国の選手たちが戸田漕艇場に集う。10月6日〜9日にかけて第32回全日本大学選手権大会が行われた。
 まず出場数56クルーの男子シングルスカル。その中で本学の主将山本(法4)が4位という偉業を成し遂げる。さらに女子舵手(だしゅ)付きクォドルプルも6位の好成績を収めた。
 本学はインカレのために日々、厳しい練習を積んできた。その努力の成果は、最高峰で見事な輝きを放ったのである。

最後の勇姿
 ついに最後のインカレが訪れた。山本の意気込みは生半可ではない。ボート部での四年間、そのすべてを懸けて大会へと挑んだ。
 初日の予選は、決勝を見据える山本にとって通過点でしかない。難なく1着で準決勝進出を決めた。
 そして2日後の準決勝、好スタートを切った山本は先頭に出た。「負ける気がしない」と序盤から強気にスピードを上げて他クルーを離す。終盤、茨城大・陶山がラストスパートを掛けるが、それにも動じることはない。最後は翌日の決勝に備えて余裕を残しながら1位でゴール。晴れの決勝へと上り詰めた。
 大会最終日、山本は王座を懸け最後のレースへ向かった。準決勝のタイムは2人の世界選手権日本代表ともほぼ互角である。山本はスタートでわずかの差で首位に立った。だがその瞬間気持ちが緩んでしまう。不意を突いて前に出る他艇。徐々に差が広がっていく。山本は持てる力を振り絞り必死の漕ぎ(こぎ)を見せる。ラストまで全力を尽くし4位となった。全国の実力者が出場するインカレで栄えある結果を残した。
 レース後、山本は「力と技術では競っていたがあと一歩、気持ちが入らなかった。悔しい」と満足した顔を見せなかった。その厳しい姿勢がインカレ4位へ導いたのである。今大会で引退した山本は、後輩たちへ「大学から始めた自分でも決勝へ行けた。それを見て頑張って欲しい」とエールを送る。真摯(しんし)にボート部を愛する山本。本学の誇りである。
(写真=一心不乱に漕ぐ山本。魂を込めてオールを漕ぐ)

思いを艇に乗せ
 一方の女子舵手付きクォドルプル。今大会は彼女たちが以前からずっと思い描いていた舞台だ。胸の高鳴りを感じる中、予選が始まった。本学は3位と20秒以上差をあけたが、惜しくも2着でのゴールとなった。
 絶対に負けないと誓った敗者復活戦。本学は序盤から1位となる。その後もじわじわと他クルーを離し、そのまま1着でゴール。
 迎えた準決勝は勝ち上がろうという気迫で空気が張り詰める。500b地点で他クルーを懸命に追う本学。最後まで勝負を捨てず食らいつく。しかし無念にも4位でゴール。順位決定戦出場が確定し、彼女たちは意気消沈してしまう。特にクルーリーダーの稀代(きたい=観4)は、「後輩たちに勝つ喜びを伝えたい」と思っていた。その中彼女は「ここで終わりにはできない」と自身を奮い立たせた。そんな彼女を見てクルー全体が「最後は稀代と一緒に1位になりたい」と再び士気をもり立てる。一層団結力を増し順位決定戦に臨む。
 スタートは好調に漕ぎ出し500b地点でほぼ横一線のレースとなる。1500b過ぎでそれまで出られていた東京外大に追い付き徐々に抜き去った。スピードに乗った本学は勢いを止めず2着でゴール。総合6位となった。ゴール後、彼女たちはお互いをたたえ合い、固い握手を交わした。共に水上での日々を過ごしてきた彼女たちの絆(きずな)は深い。
 「最後は艇速が上がったように感じた。一人も手を休めず力を出し切った証拠だと思う」と語る稀代。大学四年間をボートにささげた彼女の後ろ姿が後輩たちに情熱を与え美しいフィナーレを彩った。

万感の胸中
 部員の数だけドラマが生まれる――。
 総合8位でインカレを終えた女子舵手なしペアの家永(社4)は、ろっ骨の疲労骨折を押してレースに臨んでいた。今大会にすべてを注いできただけに、そのショックは計り知れない。そんな彼女を再び奮い起こしたのは、周りの人たちの応援。「完全に折れてもいい」。周囲の声援を受けた家永は驚異の精神力で最後のレースを漕ぎ切った。「いっぱい悔しい思いをしたが後悔はしていない」と自らの四年間を受け止めた。
 そしてもう一人、ボートに情熱を燃やしてきた男がいる。舵手(かじ取り役)と主務の二つの顔を持つ野中(理4)だ。成長著しい2年生中心の若いクルーをまとめ挑んだインカレ。しかしほんのわずかの差で、最後の大会の最終日に残ることはできなかった。最終レースを終えてもなおボートに対す熱き思いを持ち続けている野中。彼は卒業後も舵手としてボートを続ける決意をした。
 四年間、ひた向きにボートに打ち込んできた二人。その姿は、後輩の目にしっかりと焼き付いているはずだ。 
(鎌田、土山、大橋)

テニス部男子・栄光への扉開く 3部昇格 

 2年越しの悲願達成へ向け、彼らは勝利の道を走り続けた。
 9月11日〜27日に本学武蔵野新座テニスコートなどで行われた関東大学テニス4部リーグ戦。本学は圧倒的な強さで他大を寄せ付けず、5戦全勝で4部リーグを制覇した。そして10月9日に白子テニスコートで行われた3部4部入れ替え戦に、彼らは強固な決意を持って挑む。結果、すべての実力を出し切った本学は見事3部昇格を成し遂げた。
 昨年、一昨年ともに昇格できるチームと評されながらも壁に阻まれてきた本学。だがその悔しさをバネに、彼らは高い意識を持って練習に取り組み、そして試合で経験を重ねてきた。彼らが培ってきた強き力は、3部の壁を打ち砕いた。


広がる気勢
 1年生の時からレギュラーとして活躍してきた五味(法3)や高橋(泰)(法3)ら、経験豊富な3年生を多く擁する本学。十分な力を備えて、彼らは戦いに臨んだ。
 リーグ初戦、本学は実力が伯仲している上武大と対戦した。序盤のダブルスの試合はゲームカウント1−2でリードを許す苦しい展開となる。重い雰囲気がチームに漂うが監督とコーチから鼓舞され、気持ちを新たにシングルスに臨んだ。昇格へ向けて絶対に落とせないこの試合。選手たちの闘魂がプレーに表れ、一気に試合の流れをつかむ。途中、雨による翌日順延というハプニングも発生したが、彼らは気持ちを切らすことなく戦い、5−4で勝利。接線を物にした本学はリーグ最大の山場を乗り切った。
 「勝って勢いに乗れた」と五味が語るように、続く千葉大戦に7−2、城西大戦にも6−3で勝利。順調に白星を重ねていく。
続く第4戦の一橋大戦。選手・応援の全員が一体となり「チームで戦う」立大のテニスが存分に発揮された。選手個々の力だけでなく、チームの結束の強さも見せつけた本学は9−0で圧勝。この時点で入れ替え戦出場を確実なものとした。
 既に4部の中で頭一つ抜け出した本学であったが、全勝でのリーグ戦突破を前提としていた彼らの勢いは止まらない。最終戦で横市大を8−1で破った本学は4部全勝優勝を果たした。
 しかし彼らが目指すのはあくまで3部昇格。ここで気を緩めることなく、彼らは入れ替え戦の舞台へと向かう。
(写真=本学の主力選手・五味。絶妙なプレーでゲームを支配する)

再戦に燃える
 迎えた入れ替え戦当日。対戦する順大には深い因縁がある。2年前の入れ替え戦で一戦交え、4−5と惜しくも敗れていた。3部昇格と2年前の雪辱に燃える本学は、序盤から攻撃の手を緩めない。五味・高橋(泰)ペアは丁寧かつ粘りのあるテニスを展開し、終始試合をリードする。余裕のある試合運びでセットカウント6−0、6−1と連取し快勝した。
 流れに乗った本学はダブルス、シングルスともに連勝する。ラストを締めた高橋(泰)のシングルスは闘争心を前面に押し出したプレーで相手を追い詰め、勝負を決めた。結局本学はゲームカウント5−0で順大に快勝した。勝敗の決した瞬間に静寂のコートは一転、大歓声に包まれる。彼らは自然と肩を抱き合い、昇格の喜びを分かち合った。
 2年前を知る上級生は、特別な思いでここまでの道のりを振り返る。「2年前は期待されていた自分が最後に負けた。だから今回は絶対に勝ちたかった」と話す五味。エースとしての自覚が芽生えた彼はリーグ戦入れ替え戦通じて無敗と、存在感を示した。試合中は厳しい表情を見せる五味も、結果を残せた喜びに顔がほころんだ。
 3部昇格という目標の達成以上に収穫の多かった今秋。3年生の奮戦はもちろん、佐藤(観2)や林(大)(観1)の成長も著しい。充実期を迎えるテニス部男子。3部での戦いぶりにも期待だ。今後は試合で最大限の力を発揮できることが、勝利には不可欠となっていく。
 どこまでも上を目指す彼らにとり3部昇格は通過点。そのひた向きな姿勢が、来季に実を結ぶだろう。 

(上野、須部)

少林寺拳法部・笠原 奮迅の優秀賞


 今年もまた新たに一つの武勇伝が生まれた。11月6日に日本武道館で行われた第39回少林寺拳法全日本学生大会。全国から多くの拳士が集まり完成度の高い演武を披露する。その中で本学は主将の笠原(コ3)が男子単独有段の部で事実上2位の優秀賞に輝いた。同部門では6年ぶりとなる快挙だ。
 笠原にとって今回の受賞は、前大会の男子二段の部での優秀賞に引き続いての栄光である。主将となって臨んだ初めての大会。気迫あふれる彼の演武からは、これから部をまとめていく強さと自信が漂っていた。


新世代の勇士
 今大会、笠原は男子単独有段の部のほかに男子三段以上の部にも出場登録をしていた。練習に力をより注いでいたのは男子三段以上の部。しかし単独演武の出場も決めた以上、おろそかにはできない。自然と普段の練習の前後に孤独な鍛錬が積まれることになった。
 笠原の中に戸惑いもあった。前から興味があったこの部門に立候補するも、自信初の単独演武。「どれだけ練習すればどの程度のレベルに達するか分からなかった。」と暗中模索の練習が続く。大会前日に同大との演武発表会があったが振るわず、そのまま当日を迎えることになった。
 そんな不安も予選で吹き飛ばされる。課題であった体の小ささによる迫力の不足。だが、ほとばしる気合はそれを補って余りある迫力を発した。足刀(そくとう)の時にバランスを崩してなおコート順位1位で予選突破を果たす。
 そして本戦。男子三段以上の部は予選を通過できなかったが、その練習は単独演武にも生きる。組演武で慣らした動きとにらみは彼の前に見えない相手を存在させていた。気合と動きは気迫を生み出し、予選をしのぐ演武を決めた。
 表彰式で呼ばれる自分の名前に彼は込み上げる喜びを感じる。そして同時に、「ほっとした」と安堵(あんど)の笑みもこぼした。主将としての初めての大会で優秀賞を手にした笠原。彼の首に掛かるメダルは誇らしげに輝いていた。


将来を見据えて
 優秀賞という結果を残したが、笠原は「あまり練習ができていなかった」と語り、「自分の演武は70点」との評価をした。それは、組演武の練習に時間を割いたり、1、2年生の指導をしていたからだ。そのような中での優秀賞。今までの練習の積み重ねが、この見事な結果につながった。
 今大会、男子単独有段の部以外でも、本学は本戦への出場を果たしたが、あと一歩のところで入賞を逃した。苦戦を強いられた中、「『立大』としての面目を保つため、自分が賞を取れてよかった」と笠原は振り返る。自らの成績を誇る一面も見せた。
 4年生が引退し、中心となった笠原。「これからはもう少し自分に厳しく妥協はしない」と力強く答えた。同時に「部内で自分が一番強くなりたい」と決意を述べた彼の目には闘志がみなぎっていた。
 笠原が描くチーム像とは「苦しいことや厳しいことをしっかりやる中でも、楽しさを忘れないチーム」だという。少林寺拳法を楽しみながらも自主性を持ち、最終的には社会で通用する人間をつくることを目指している。「今年の雰囲気を受け継ぎながら、さらによいチームにしたい」と話す笠原。彼をはじめとする3年生によってつくられる、新たな少林寺拳法部の活躍に期待が持てる。
 「自分たちのベストの演武をする」ということを今大会の目標としていた本学。来季は、新しいチームの下で今季以上の自信と誇りを持った演武を見せてくれることだろう。
(写真=演舞を行う笠原。洗練された一挙一動が光る)




二人の宝物
 10月8日、9日にサンドーム福井で行われた2005少林寺拳法国際大会。この4年に一度の晴れ舞台に本学の坂井(社4)と森田(文4)が東京代表として選出された。今年5月の関東学生大会の女子二段の部での最優秀賞受賞が認められ、今回の出場に至ったのだ。予選通過はならなかったが、世界を目の前に納得のいく演武ができた。
 坂井と森田は、今まで何度も結果を出してきたペアだ。自身のペアについて坂井は「最後にもう一度組みたかった」と、森田も「練習しながら互いに指導し合えて、精神的にやりやすかった」と語った。
 特に森田にとっては最後の大会。「みんなの頑張っている姿を見て、続けて良かったと思った」と彼女は部に対する思いを口にした。11月の全国大会に出場した坂井もその思いは同じだ。楽しかった思い出や一緒に過ごしてきた仲間たち。大切なものが詰まっている部に掛ける思いはひとしおだ。二人は最高の四年間を締めくくった。 

(黒田、桜井、川上)

陸上競技部・高橋(香) 喜びのMVP


 着実に力を伸ばす本学。その勢いは加速し続ける――。
 9月24日・25日、国立競技場にて行われた第16回関東学生新人陸上競技選手権大会。これは、標準記録を突破し、前回の関東学生陸上競技対校選手権大会(以下関カレ)で入賞していない選手が出場する大会である。今大会で、本学の高橋(香)(社2)が女子百bで優勝。女子走り幅跳びでも2位となり、女子最優秀選手賞に輝いた。栄光目指し大会に挑んだ彼女は一走に思いを込め、羽ばたいた。


屈指の実力で
 躍進が止まらない本学陸上競技部。高橋(香)が今大会で最高の結果を残した。
 高橋(香)は大会初日に行われた女子百bと女子走り幅跳びに出場。「関カレ入賞者がいないので、上位の記録で決勝に残ろうと思っていた」という百bでは、予選から実力を存分に発揮。他の選手を圧倒する。結果は自己ベストであると同時に自身の持つ立教記録を更新する12秒14で、予選を1位で通過した。
 続く決勝は小雨の降る肌寒いコンディションでのレースであったが、彼女の集中力が途切れることはなかった。スタート台の合図とともに、選手たちが一斉に飛び出す。高橋香は得意のスタートで序盤から先頭に立った。追い風にも押されどんどん加速していく。そしてそのまま1着ゴールラインを駆け抜けた。記録は12秒11。再び自身のベストタイムを塗り替え、女子百b優勝を成し遂げた。
 また、トラックの百bと同時にフィールドでは走り幅跳びが行われた。高橋(香)は競技の都合上、1本目と2本目の間に百b挟むという厳しいスケジュールを強いられた。さらに、百bと走り幅跳びでは走り方が違うので、修正にも戸惑ったという。それでも予選2本目の跳躍で5b66を出し、決勝進出を決めた。決勝では記録を伸ばすことはできなかったが、予選の時に出した記録で見事2位入賞を果たした。百b優勝、走り幅跳び2位入賞という好成績が、女子MVPというこれ以上ない結果につながった。
(写真=尊い栄冠を手にした高橋(香)。輝く笑顔は勝者の証である。)



終わりなき進化
 大会を終えて、高橋(香)は「まさか自分がMVPをとれると思っていなかった」と率直な感想を口にした。しかし、この素晴らしい記録の裏には、ある苦労と努力があった。
 高校時代にも陸上競技をしていた彼女だが、大学に入った後、百bと走り幅跳びの日程が同じであることに困惑したという。一本のレース、跳躍に専念することができない。このことが、そのまま不本意な結果へとつながってしまった。
 これを機に高橋(香)の意識は変わった。夏休みに入ってからは「一本の練習をしっかりやろう、という気持ちを持った」という。練習を重ねていくことで集中力も持続するようになった。
 また彼女は練習だけでなく普段の生活もしっかりしようと心掛けている。「身近なところでもきちんとする」と話すように、規則正しい生活を送るよう努めているという。この結果、自分のリズムを確立することができた。今回の見事な結果は、彼女の努力から生まれたものであった。
 本学陸上競技部が抱える逸材は、高橋(香)だけではない。今大会、男子五千bで鈴木(康)(コ1)が3位、女子二百bで田中(コ3)が4位と入賞が相次いだ。また、男子4×四百bリレーでも8位となるなど、個人だけではなくチーム力の強さも見せた。
 1、2年生は着々を力をつけ、上級生も負けじと活躍している本学。高橋(香)も「今で満足せずに、これからも頑張る」と意識を高めた。今後さらなる成長が期待できる本学陸上競技部。頂点を目指しひたすら走り続けていく彼らの勇姿からますます目が離せなくなりそうだ。 
(石井、桜井)









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