立教スポーツ第158号
<7月1日更新>


陸上競技部待望の再生 短距離三種目入賞
 
本学の深緑のユニホームが栄光の表彰台に立った――。 
 5月8日、13日〜15日に国立競技場などで第84回関東学生陸上競技対校選手権大会が行われた。男子2部百bにおいて、樋口(慎)(経2)が見事3位入賞という歴史的快挙を成し遂げた。
 さらに男子2部二百bで楠田(利)(経4)が4位、男子2部4×百bでも本学は7位に入賞。厳しい参加標準記録があり、出場することも困難な同大会で本学は学内外に存在感を見せつけた。
 近年、明るい話題が少なかった本学陸上競技部。しかし、現在は再び活気が戻りつつある。かつての名門の誇りと勇気を取り戻す戦いが今、始まる。

苦境に打ち勝ち
 本学の短距離エース・樋口(慎)は不安を抱えたまま、13日の男子2部百b予選のスタートラインに立った。8日に行われた4×百b予選で脚を痛めてしまい、完調には程遠い。沼澤ヘッドコーチも「出場するだけでいい」と言って樋口(慎)を送り出した。
 けがの影響で出だしは抑え気味だったが、中盤から伸び、2着で予選通過。自己ベストの10秒94を大きく更新する10秒68で立大新記録を樹立する。だが樋口(慎)は「中盤以降は流した」と決して全力を出してはいなかった。「このタイムならば決勝に行ける」。彼は今まで気付かなかった自分の実力を悟った。
続く準決勝、樋口(慎)はけがを感じさせない力強い走りを見せて、2着で決勝進出を決めた。高まっていく仲間の期待を背負い、彼は決勝に臨んだ。
 迎えた決勝には予選と準決勝を勝ち抜いた精鋭8名が集結。言い知れぬ緊張感がトラック全体を包み込んだ。ここでフライングによって一人の選手が失格となる。それでも極限まで高められた彼の集中力が途切れることはなかった。
 スタートの号砲とともに樋口(慎)は誰よりも速く飛び出す。強敵たちを相手に今大会、自身最高の走りでゴールラインを3番目に駆け抜けた。電光掲示板に映し出されたタイムは予選を上回る10秒65。この瞬間、同種目では29年ぶりに本学の表彰台入りが決定した。
 底知れぬ潜在能力を秘めて、この大舞台で2度も自己記録を更新した樋口(慎)。3位入賞という偉業はけがという逆境を跳ねのけ達成されたものだった。(写真=果敢な走りを見せる樋口(慎)。手にしたバトンは部の未来にもつながる)

示した主将の姿
 樋口(慎)の3位入賞に続き楠田(利)も男子2部二百bで主将の意地を見せた。予選では直線で持ち前の加速力を発揮。他を圧倒し、1着で決勝に進出する。彼は昨年も同種目で7位に入賞しているが、「去年は決勝に出て浮かれていた。今年の目標は表彰台」と兜(かぶと)の緒を締め直した。
 主将として最後のレースとなる決勝。楠田(利)は「体がよく動いていた」と振り返るように見事な走りを見せた。目標の表彰台こそ逃すが、自己ベストタイ記録で4位入賞。部員からは惜しみない拍手が送られた。
 さらに男子2部4×百bでも本学は力を示す。「絶対に決勝へ行く」と樋口(慎)、牧島(経3)、楠田(利)、井上(理3)の四人は固く決意した。予選は鮮やかなバトンパスでスタートから一度もトップを譲らず1着。続く準決勝では脚を痛めた樋口(慎)に代わり、楠田(利)が第一走者の大役を務めた。負傷した樋口(慎)も痛みに耐えて激走し、本学は4着でゴール。この結果、ついに目標であった決勝に進出した。
 未知の領域、決勝。本学は最も不利とされる第一レーンということもあり、自分たちの力をすべて出し切ることはできなかった。それでも本学は7位と健闘。5年ぶりの入賞を決めた。
 個人競技が中心である陸上競技において、部全体をまとめることは容易ではない。「結果を出すためにリレーの練習に長時間費やした」と語る楠田(利)。リレーで好成績を残したことは部の団結の証明である。一選手として結果を出し、主将の重責も果たした彼の顔には充実感が漂っていた。

高揚するムード
 今大会、三種目で入賞し久々に二けた得点獲得を果たした本学。近年の大学陸上競技界では、1部と2部の差が徐々に縮まってきており、大会全体のレベルも上がっている。その中で収めたこの成績は、チームの力が整ってきたことを示している。そしてこれは、厳しい環境に置かれた選手の苦労が実を結んだ結果といえる。
 本学の選手は現在、立教新座高などのグラウンドを借りて練習を行っている。これは、ほとんどの大学が専用の競技場を持っている中ではまれなことだ。また本学には体育会推薦入試制度がないため実績のある選手が集まりずらい。これも本学が不利な立場にいる一つの要因になるだろう。しかし、選手全員が互いに競い合うことでこの状況を乗り越えてきた。今大会で短距離の選手が入賞したことは、種目の枠にとどまらず部全体の刺激となった。そしてさらに上位を目指すための自信を与えた。
 最近は部員の数も増え、ようやく競技部らしくなってきた本学。将来的な目標は2部総合優勝を果たすことだ。それには多種目での好成績が要求される。今回の短距離選手たちの結果により、部の士気は高まり続けている。これからの他種目の発展にもつながっていくだろう。大きな目標に向け、本学は新たな一歩を踏み出した。

(古矢・内田)

ボート部・水上で見せた情熱


力みなぎる声援が飛び交う水際に、本学ボート部のオールの白十字が鮮やかに輝く。選手たちの熱い思いがぶつかり合う戸田漕艇場で、第83回全日本選手権大会が6月2日〜5日に開催された。 
 男子シングルスカルに出場した山本(法4)は予選1位で準決勝進出。また女子舵手(だしゅ)つきクォドルプルも同じく順調に勝ち進んだ。
 全日本レベルの選手がそろった今大会。彼らは高まる鼓動を胸に準決勝へ挑む。

荒波に揉まれ

大会3日目、まずは男子シングルスカルの山本が準決勝に臨んだ。「レースを前に徐々に緊張感を高めていった」と言う山本は、好スタートを切り、序盤から2位につける。先を行くのは昨年インカレ覇者・名古屋工大の澤津。「挑戦者の気持ちで食らいつこう」と山本は、懸命に澤津を追う。だが、その差は思うように縮まらない。実力の差を見せつけられた山本は2着に終わり、順位決定戦への出場が決まった。
 続く女子舵手つきクォドルプル(以下女子クォド)の準決勝。本学は勝利を意識し、高い集中力を持ってレースに向かった。スタートは抑え気味に入り、そこから次第にピッチを上げていく。順調に見えた本学だが、750b付近で突如リズムを崩し遅れを取ってしまう。残り500bから巻き返しを図るも上位には追いつけず3着でゴール。女子クォドも順位決定戦に回ることになった。
 この日のレースで、翌日に向けての課題が見つかった。山本は「後半の伸び」であり、女子クォドは「常に自分のリズムで漕ぐ(こぐ)こと」である。それぞれが課題を克服し、好成績を残すことができるのか。舞台は最終日へ――。
(写真=1秒でも速くゴールするため、己の限界へと挑む主将・山本)

決戦の最終日
 昨日の惜敗から1日。気持ちを切り替えて順位決定戦に挑んだ山本はスタートで勢いよく飛び出した。500bを3位で通過。だが上位との差を少しでも詰めたい中盤でまさかの失速。全諏訪の牛山に抜かれ4位に後退してしまう。そしてレースはラスト500bに突入した。最後まで勝負を捨てない山本は、残された力を振り絞り他クルーを猛追。結果は一歩及ばず4着となる。だが、後半での伸びは昨日のレースを忘れさせる見事なものだった。
 「体づくりがうまくいきそれが漕ぎにつながった」と総合8位になった要因を語る山本。確かに彼の体は去年と見違えるほど鍛え上げられていた。中盤でのスピード維持が新たな課題として浮かんだ今大会。さらなる上を目指すべく、本学を背負う主将・山本に妥協の二文字はない。
 そしてもう1組、昨日の悔しさをバネに女子クォドがレースに挑んだ。予想以上に他クルーの気合を感じ序盤から気が抜けない。だがスタートで力みすぎた本学は、1000bを過ぎてもなかなかリズムを出せず1500bを3位通過。それでも徐々にスピードを上げ、1750b付近で東京外大を抜き去った。ラスト100bではそのままトップスピードに入り2着でゴール。総合6位の好成績でレースを終えた。

進化の序章

 レース終盤で自分たちの漕ぎを見せた女子クォド。今大会で彼女たちは確かな手応えを感じた。
 クルーを組んで1ヵ月。わずかな期間で彼女たちに目まぐるしい変化が起きていた。その台風の目となったのは、期待の新人・古崎(こざき=社1)である。コミュニケーションの質がレースを左右するといっても過言ではない。経験豊富な稀代(きたい=観4)に対しても意見をぶつける彼女を目の当たりにしメンバーの意識が変わった。「初めて全員が同じラインに立った」と語った稀代の言葉通り、艇の上では互いに声を出し合った。ボート部の最終目標は10月のインカレ。計り知れないスピードで進化を続ける若きクルー。今秋、彼女たちの真の力が戸田に放たれる。   

(鎌田、大橋)

硬式野球部・堂々の3位堅守

大混戦が予想された東京六大学春季リーグ戦。今年多くのリーグ戦経験者を抱える本学が狙うのは「優勝」のみ。頂点への挑戦が4月9日〜5月31日にかけて神宮球場にて行われた。
 本学は開幕カードで優勝候補の早大と対戦。2回戦で勝利するものの1勝2敗で敗れ不安な幕開けとなってしまう。翌週の明大戦で4回戦までもつれ込む激闘の末勝ち点を得たが続く慶大戦で連敗。早くも優勝戦線から脱落してしまった。だが、気持ちを切り替えた選手たちは力を発揮し法大、東大戦で連勝。早慶に敗れ3位という結果に終わったが彼らは今大会での悔しさを胸に、秋の栄冠へ向けもう歩み始めている。

立大を担う男達

 「バッテリーを中心とした守りの野球」をテーマに臨んだ春季リーグ戦。その言葉通りにチーム防御率2点台という数字を残した。
 その大きな原動力となったのは投手力の向上だ。昨季まで期待を背負いながらも結果を残せなかった大川(経4)が、目覚ましい活躍を見せた。大川は早大2回戦で今季初先発。度重なる危機を気迫の投球で乗り越え、完封勝利を収める。試合後、「気持ちを込めれば抑えられることが分かった」と語った大川は確かな自信を手に入れた。1敗で迎えた明大2回戦でも完投勝利を挙げ勝敗を五分に戻し、3回戦でも五回途中から登板。試合は延長十二回を終え2―2の引き分けとなるが大川は最後まで無失点で切り抜け、スタミナと精神力の強さを証明した。その後、法大、東大からも完投で勝ち星を挙げ、投手陣の柱に成長した。
 他にも、左腕の池田(コ3)と平田(観4)が頭角を現した。来年エースとして期待がかかる池田は法大2回戦に先発。緊迫した展開の中で七回を無失点に抑え手応えを得ると、最終戦の東大2回戦で念願のリーグ戦初勝利を飾った。平田も明大4回戦で完封勝利を決め、大きな信頼を得た。
 この三投手に加え、今季は不調に終わったが、通算8勝と実績のある小林(コ4)や昨年、無安打無得点を達成した日野(コ4)の復活があれば投手陣は万全だ。立大史上まれに見る力を誇る彼らが今秋、12季ぶりとなる優勝へチームを導いていく。
(写真=巧打者・高橋(泰)。渾身の一振りで快音を響かせる)

成熟の時

 今季、チームで最も大きな役割を担っていたのは主将の高橋(泰)(コ4)だ。彼は投手陣をまとめ上げる捕手、そして主軸打者としての責任も背負っていた。
 まず捕手として、六大学屈指との呼び声も高い本学投手陣を見事にけん引。大川、池田、平田といったチームを支える各投手の持ち味を最大限に生かした巧みなリードで試合を組み立てていった。
 そして彼は打席でも主将としての存在感を示す。けがを抱えたまま開幕を迎えたが試合を重ねていくとともに調子を取り戻し、各大学に好投手がそろう中、3割2分6厘の高打率で今季を終えた。ベストナインの座は惜しくも逃すこととなったが、「技の高橋(泰)」を磨きがかったことに変わりはない。流し打ちなどの小技や俊足を備えた従来のイメージを覆す新たな捕手像を彼は作り上げた。
 また今季は、鈴木(雄)(コ2)という新戦力も加入。堅実な打撃と安定した守備で、リーグ途中から二塁手の定位置を獲得すると、チーム2位の打率に加え、無失策という結果を残した。すでに他の選手からの信頼も厚く、今後打線の中軸となりうる存在である。
 来季への課題となったのは、勝負どころでの一打が出なかったことだ。高橋(佑)(法4)や川上(観4)ら打線の中核となる選手の決定打が、六大学を制するには不可欠なものとなってくる。
 「この夏、優勝するための練習をしていく」と力強く語った高橋(泰)。ひと夏を越えてさらなる成長を遂げた秋の彼らに注目だ。

活躍の先へ

大舞台への登竜門ともいえる東京六大学春季新人戦。6月1日〜3日にかけて神宮球場で行われたこの大会で、若き力の台頭が見られた。
 昨秋の新人戦優勝により得たシード権で2日目から登場の本学は慶大と対戦。この日は先発の高橋(信)(コ2)が投打に活躍。八回を投げて1点に抑えると、六回に自らの適時打で試合を決定づけた。また、打撃陣も吉田(経2)が先制本塁打を放つなど慶大投手陣を打ち崩し、7―1で快勝。決勝へと駒を進めた。
 決勝の明大戦では、東(ひがし=観2)の適時打のみに抑えられ、1−4で惜しくも敗れた。しかし先発の瓜田(経1)と桑鶴(法2)が共に三回を無失点で切り抜け、実力をアピールした。
 2年生の活躍が著しかった今回の新人戦。六大制覇の鍵となる若手の成長は間違いなく形として示すことができた。後は、彼らの飛躍の機会を待つのみだ。

(田井中・上野)











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