立教スポーツ第162号
<6月2日>
六大戦優勝 「二人」の愛が紡ぐ  馬術部

 まさに人馬一体―。その時、彼らは大きく跳躍した。

 4月1日・2日に馬事公苑にて行われた、第58回東京六大学馬術競技大会。明大などの強豪校が集まる中で、山本(社3・ファーストレコード騎乗)が中障害飛越競技で優勝に輝いた。

 初めて与えられた覇者の称号。昨年は惜しくも届かなかった頂点に、ついに上り詰めたのである。

 これから迎える関東大会・全日本大会に向けて、確かな足掛かりを得た本学。六大王者となった山本とファーストレコード。彼らが部に希望の光をもたらした。


勇者への道のり
「うれしいです。良い大会でした」と話す山本の顔から笑みがこぼれる。関東大会への前哨戦として出場した今回の大会。思いがけない素晴らしい結果に、喜びは大きくなった。

 今回山本が制した中障害飛越競技とは、規定時間内に高さ130a以下の障害をいかに失敗せず通過できるかを競う。馬があらゆる障害物を飛び超えられるように調教することが求められる。関東大会・全日本大会と同じ種類の障害を使用するためどの大学も力を入れている種目だ。

 今大会に向け、山本は馬を指示通りに走らせることに重点を置き練習を積んだ。ファーストレコードは普段は臆病な馬だが、障害競技では力を発揮する。なかなか命令を聞かず苦労したこともあったが、全身のバネを使って飛ぶ雄姿は他大の馬にもひけをとらない。勝算は十分にあった。

 山本とファーストレコードは一番手で出走した。「欲を出さずに挑むことができた」と山本は語る。絶好調で走り出した彼らは、減点ゼロで他の選手にプレッシャーをかける作戦を見事成功させた。それでもまだ、同点の選手による決勝競技が行われる可能性がある。目前に迫った優勝に祈るような思いで結果を待った。減点なしで走り終えたのは山本ただ一人。彼らの1位が決定した。

 山本とファーストレコードは共に生活し、互いの関係を築き上げてきた。今回の優勝は、努力が実を結んだ結果である。本学は、全国の猛者と互角に戦える確信を手に入れた。


ここが出発点
今大会を振り返り「関東大会へのモチベーションが上がった」と語った主将・神保(観4)。うれしさの中にも次の舞台を見据える姿勢がある。本学馬術部が抱く、馬術競技に対する実直な思いが、強豪明大を破り優勝という快挙に結びついた。

 明大の強さには目を見張るものがある。現在、全日本大会で連覇中など、大学馬術界において王者として君臨。活躍は国内にとどまることなく世界大会でも入賞を果たす選手がおり、騎手も馬の質もずばぬけている。さらに部員間でも出場を懸けて競うほど。そこで培われたハングリー精神の強さが実力に比例している。

 その明大勢を下した山本とファーストレコードの強さとは何なのか。山本は高校からの経験者であり実績がある。さらに神保は「馬に対しての取り組みがまじめ」と山本を称す。知識の豊富さと馬への思いがファーストレコードとの距離を縮め、きずなを強めていった。

 「馬の負担にならないように、いかに馬の力を引き出すか」。これが今大会で見えた課題だ。乗り手の感情を敏感に感じとる馬に小細工は通用しない。騎手の安定が勝利へのカギとなるのだ。コーチには「もっと自信をもて」と以前から言われてきた山本。だが今回の優勝が確かな自信となって山本の後押しとなる。

 六大戦で優勝者を輩出することが本学の最終目標ではない。部員不足など厳しい状況の中、山本は今後の抱負を「全日本大会で団体出場すること」と語った。いかなる逆風が吹いていようとも彼らは立ち止まることはない。頭の仲間とともに、さらなる高い壁を越えていく。
  (川上・中村) 

フェンシング部 熾烈な大接戦 男子エペ2部2位

広い会場に、剣が渡り合う金属音と応援の声が響く。そこで繰り広げられるのは、一瞬に懸ける騎士たちの熱き戦い――。

 4月15日〜29日に駒沢公園屋内球技場にて開催された、第59回関東学生フェンシングリーグ戦。フルーレ、サーブル、エペの3種目を各2日間計6日間かけて戦う。先に行われた2種目で思うような結果が残せなかった本学。だが最終種目のエペで、2部2位の好成績を収めた。熱戦の舞台は、緊張と興奮に包まれた。



戦い抜いた初日
 エペ初戦の相手は昨季1部から降格した東農大。本学は序盤から試合を優勢に進め、40−37と3ポイント差をつけて最後の伊波(いなみ=法3)につないだ。しかし44 −45と逆転され、惜しくも敗れてしまう。届かなかった1ポイントに、落胆を隠せない選手たち。だが逃した勝利の代わりに、確かに手にしたものがあった。

 初めて団体戦のメンバーとして戦った丸茂(まるも=社3)。不安とプレッシャーで硬くなる彼の背中を、頼もしい仲間たちが優しく押した。強豪相手に互角の勝負を展開し「自信になった」と語った丸茂。彼の成長が一つの光となって、本学に差し込んだ。

 2戦目は格下の国学院大に45−22と快勝。次に待ち受けていたのは、東農大と並んで「2部の2強」と名高い拓大である。ここが最大のヤマ場だった。本学は波に乗れないまま、中盤までに10 ポイントのリードを許してしまう。このままでは終われない。本学の反撃が始まった。

 まずは「流れを変える」と宣言して臨んだ丸茂が2ポイント詰め、25−33とする。続く主将・蘭(社4)も巧みなフェイントで着実にポイントを重ねていく。「できるだけいい形でつなげよう」と描いた通り、 36−39と3ポイント差まで詰め、伊波に託した。メンバーの思いを受けた伊波は強気の攻めを見せ、怒とうの5ポイント連続奪取でついに逆転する。結果は45−41。信頼で結ばれた3人がつかんだ、価値ある勝利であった。

 初日を最高の形で締め、優勝の望みを残した本学。ただ勝利を目指し、戦いは続く。



力を合わせ
 2日目、まず横浜商科大との対戦を迎えた。試合開始から伊波が連続ポイントでリードを奪う。優位に立った本学は、終始その差を保ったまま45−38で勝利を収めた。

 そしてエペのリーグ戦も大詰めに差しかかる。残るは本学対明大と東農大対拓大の2試合。この時点で優勝争いは4勝の東農大、 3勝1敗の本学と拓大に絞られていた。本学が優勝の可能性を得るためには明大に勝利し、さらに拓大が東農大に勝つ必要がある。運命の試合がほぼ時を同じくして始まった。

 実力は互角の本学と明大。試合前は接戦が予想された。しかし3連勝で勢いに乗る本学が着実にポイントを重ね、明大に差をつけていく。最後まで相手を攻め続け 45−34で勝利を手にした。

 一方、隣では東農大と拓大が一進一退の攻防を繰り広げる。終盤に東農大が昨年1部の意地を見せ45−42 で拓大を下した。この結果本学は惜しくも2位となる。

 優勝こそ逃したものの、堂堂たる戦いで存在感を放った本学の選手たち。彼らの強みはチームワークの良さだ。伊波は団体戦について「一人ではなく皆で戦っている。試合中、味方の声援で精神的に強くなれる」と言う。また蘭はリーグ戦を振り返り「自分は主将としてチームを盛り上げ周りがそれを支えてくれた」と語った。本学が見せた気迫あふれる戦い。それは彼らの強い結束力が生み出したものだった。 
(古屋、鎌田)

少林寺拳法部 会場に際立つ気炎

日本武道館が拳士たちの熱気に沸く――。5月4日に行われた第43回少林寺拳法関東学生大会。数ある部門の中でも最難関である男子三段以上の部で、笠原(コ4)・高橋(社4)組が優良賞を獲得した。また、女子単独段外の部で林(文2)が最優秀賞を、男子単独段外の部で浅間(法2)が優良賞を受賞。さらに女子三人掛けの部で高木(観3)・福田(法3)・相馬(文3)が敢闘賞に選ばれるなど、本学は4部門入賞という誇らしい成績を残した。

 主将・笠原は「それぞれがいい演武をした」と笑顔を見せる。一つひとつの技に込められた今大会への思いが、賞という形となって表れた。

熱情を燃やし

 大会の中でも実力者ばかりが名を連ねる、男子三段以上の部。笠原は「4年生として、また三段として後輩の見本となるようにしなければ」という心持ちで挑んだ。本選1回限りの勝負となるこの部門。ついに本番の時を迎えた。

 広い会場が静寂に包まれコートには会場全体の注目が集まった。演武は、技術点と表現点の合計により評価される。「リラックスして、集中できた」と高橋が語るように、二人は伸びやかでありつつ切れのある動きを見せる。一つひとつ指先まで研ぎ澄まされた技は観客を魅了した。ポイントとなった構えの切り替えもスムーズに決まる。全身全霊の力を解き放ち、演武を終えた瞬間、彼らの顔には充実感があふれていた。結果は事実上3位の優良賞。二人の魂のこもった演武がこのような素晴らしい結果をもたらしたのだ。

 しかし、ここに至るまでの道のりは平たんではなかった。二人は身長差もあり最初は無理に合わせてしまう部分もあった。そんな状況下、互いに「本気で、思いきりやろう」という気持ちが生まれた。この気持ちの変化により、思い描く演武へと少しずつ近づいていく。そして前日の練習において、今までで一番の演武ができたのである。この練習が彼らの自信につながり輝かしい結果へと至った。

 大学で少林寺拳法を始めた高橋にとって、今回が初受賞。「努力次第で結果が残せるということを見せられた」と語る。笠原も「自分たちのためになってよかった」と言うように、結果以上のものが残った。

 最高学年として、チームの核となった4年生。彼らの熱い思いが、後輩たちの演武にも伝わっていった。

拳士たちの功績

 

4年生の活躍を筆頭に本学は多くの部門で成績を残した。女子単独段外の部で事実上1位となる最優秀賞に輝いた林。彼女にとって単独演武の練習は試行錯誤の連続だった。

 自分の中で相手をイメージし、十分な気合を出して時間内に演武を行う。取り組むべき課題の多さに林は不安をぬぐえずにいた。だが前日の練習で仲間に勇気づけられ、心が晴れた。

 予選では高回し蹴り(げり)の際に体勢を崩すも、コート順位3位で通過。林は「演武中は頭の中が真っ白だった」と振り返る。そして本選、軸のぶれない動きで技を繰り出していく。林の今まで取り組んできた練習が、この1分間の演武に凝縮されていた。

 林と同期の浅間は男子単独段外の部に出場。大きく速く正確な動きを心掛けた浅間。本選で披露した力みのない演武は本人も納得の出来栄えで、見事優良賞を飾った。

 そして女子三人掛けの部は事実上4位の敢闘賞を受賞した。3人で行うこの演武は間の取り方が難しい。いかに気迫を出せるかが重要となるが、三人は物おじせずに演武開始から十分な気合を発揮。敢闘賞に見合う演武を見せた。

 4部門での受賞を果たした今大会。2年生の林と浅間は「新入生の指導も頑張りたい」と語る。少林寺拳法部で代々培われてきた熱意を後輩に伝えようとする意識が強まった。「ただ受賞を目指すのではなく、自分で納得のいく演武をすることが大切だ」。志すのは純粋な自身の成長。主将・笠原の言葉がそれを表していた。
(桜井・川添)












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