立教スポーツ第168号
<7月6日更新>

陸上競技部 4種目制覇
栄光への躍進

 
陸上競技部 4種目制覇 栄光への躍進

 本学のスポーツ推薦制度が廃止されてから30余年。一時期は低迷していた本学陸上競技部だが、今その頃に迫るほど力を取り戻している。
 第86回関東学生陸上競技対校選手権大会(以下関カレ)が5月12日~19日にかけて国立競技場で行われた。本学は男子2部百㍍、四百㍍ハードル、4×百㍍リレー、4×四百㍍リレーの4種目で優勝し、ほか3種目でも入賞する。
 優勝はどの種目でも数十年ぶりで、4×百㍍リレーは40年前までさかのぼる。加えて両リレー同時優勝は立教史上初だ。これらの快挙の中心となったのは3人の選手たちであった。


痛みに耐えて
 入部当初から数々の実績を挙げてきた岩国(文2)は、この大会でも素晴らしい成果を収める。しかし、彼の足の状態は万全とは程遠いものだった。
 大会初日のレースで彼は右太ももを痛めてしまう。歩くことでさえつらい中で岩国は男子2部四百㍍ハードル決勝に出場した。なぜなら、決勝を完走することで対校戦ポイントが入るからだ。そのスタート直後、彼の右足に痛みが走る。それでも、最後まで気持ちを切らすことなく走り抜き、見事1位となった。
 続く男子2部4×四百㍍リレー決勝。足に不安を残しながらも、岩国はチームのために走った。彼は第四走者として3位でバトンを受け取ると、けがを感じさせない走りで先頭との差をぐんぐん詰めていく。そして、最後の直線でついにトップをとらえ、そのまま抜き去りゴール。駆け寄ってきたメンバーと共に、優勝の喜びを分かち合った。
 けがを抱えつつも部のために大会4日間を走り切った岩国は、その足で二つの優勝を本学にもたらしたのだ。逆境を乗り越え、彼はさらにたくましくなった。


四年間の結実
 エースとして、ここ一年間は主将として部を引っ張ってきた樋口(法4)。彼の陸上競技人生のすべてが今回のレースで集成した。
 男子2部4×百㍍リレー予選は全体で3位のタイムで通過。昨年3位だったこの種目で樋口は第二走者を務める。「全員抜こうと思った」と言う通り、決勝ではトップでバトンをつなぎエースの仕事を果たす。レースは後続の選手も快走を見せ、優勝を飾った。
 個人種目の男子2部百㍍にも出場した樋口は予選、準決勝ともに組一着で通過し、調子の良さをうかがわせる。そして決勝、選手たちがそれぞれのレーンに入ると会場は静まり返った。張り詰めた空気を切り裂くスタートの合図とともに、1位に躍り出る樋口。彼はライバルたちの猛追をかわし、ゴールを駆け抜ける。場内に響くアナウンスの声が彼の優勝を告げた。
 樋口がこれほどの成績を残すようになったのは、大学に入ってからだ。自身も「自分は大学から花開いた選手」と話す。彼にとって最後となった関カレを、本人が望んでいた最高の形で締めくくった。

                                        
確かなる道筋
 これまでの成績から確固たる地位を築いてきた高橋(社4)。昨年2位となった女子百㍍で危なげなく予選、準決勝を突破する。そして迎えた女子百㍍決勝。「ばっちり決まった」と言う彼女の言葉通り最高のスタートを切る。力を振り絞りゴールに飛び込むと、11秒99で結果は5位。本人は「少し硬くなっていた」と悔やんだ。一方で女子走り幅跳びでは昨年の順位を上回る4位入賞。百㍍との走法の切り替えに苦しんだものの、高橋は2年連続で両種目入賞を果たした。
 さらに彼女は全日本インカレにも出場。かかとをけがしていたのにもかかわらず、女子百㍍に7位で入賞をする。「ベストな走りができた」という納得のレースに表情は明るかった。
 4種目制覇の達成は黄金時代の復活を意味する。樋口と高橋の両エースが抜けても、男子2部百十㍍ハードルで5位入賞の井上(法2)などの有望な若手も多い。彼らの成長は本学をさらなる発展へと導いていくだろう。

                                            (藤谷、清水)
                                           


自動車部 牛島 名声轟く関東NO.1

 風を切って高速で走るマシン。選手たちは最速の称号を求めて、ゴールへと突き進む――。
 5月26日、浅間台スポーツランドにて平成19年度全関東学生ジムカーナ選手権大会が行われた。本学からは牛島(社4)、甲原(観4)、加藤(観2)が出場。そこで見事、主将の牛島が男子個人の部で優勝を飾った。
 本学が最も力を入れてきた今大会。苦難を乗り越えて、ついに牛島が関東の頂点に立った。


誰よりも速く
 年間を通して続けたメンテナンス、磨いてきた技術。この日のためにすべてを注ぎ込む。
 ジムカーナではパイロン(カラーコーン)に接触することなく、どれだけ速くコースを完走するかを争う。また競い合うタイムは、2度の走行のうち速い方が採用される。本学は第一走者に加藤、第二走者に甲原、そして第三走者に主将の牛島という順番で競技に挑んだ。
 緊張感が漂う中、迎えた第一巡目。加藤は失格となったが、二走目の甲原が意地を見せ暫定5位となる。そして満を持して登場した牛島。パイロンに当たらないよう、絶妙にブレーキをかけて曲がっていく。少しでもタイムを縮めるべく、力強くアクセルを踏み込んだ。ミスを恐れず、スピードに乗って猛然とアスファルトを駆け抜ける。ゴールタイムは1分0秒07。並み居る強豪を押しのけて、暫定1位に躍り出た。
 続く第二巡目には加藤が完走。甲原は一巡目以上の好記録で走り切り、良い雰囲気で最後の牛島へとつなげた。残念ながらミスにより記録更新はならなかったものの、その後も一巡目の記録が塗り替えられることはなかった。
 戦いを終え、結果は加藤48位、甲原7位。そして牛島が66人中堂々の1位に輝く。団体の部では22校中5位となり、牛島の優勝に花を添えた。今回の勝利について「車を乗りこなせていたので負ける気がしなかった」と語る牛島。栄光を引き寄せたものは、自分を強く信じる思いだった。


苦境を超えて
 念願の優勝。それは大きな壁を打ち破って得たものだった。
 車体の性能が命運を分ける今大会。ここで生じてくる問題が資金力だ。強豪と呼ばれるチームは大学から多額の援助を受けていることが多く、搭載している部品もレベルが高い。中には総額数百万にも及ぶ車を持つチームもある。
 一方の本学は、その資金の大部分をOBからの援助金や部費に頼っており、時には4年生の自費で賄うことさえもある。車体の総額も数十万。どうしても他のチームとの性能差は否めない。1秒で大きく結果が左右されるタイムアタック競技では致命的だ。だからこそ「相手と同じコースを走っていては勝てるはずがない」と牛島も語るように、タイムを縮めるためにはパイロンぎりぎりのコースを走る必要がある。
 だがそれだけの運転技術を修得するのは決して容易ではない。部で所有している車は1台。一人の練習時間は限られる。そのため牛島は夜遅くに近所の河川敷で個人練習に励んできた。
 しかし「楽しかった」とレースを振り返る彼の表情からはそんな苦悩は全く感じられない。むしろこの状況を楽しんでいるようにも見える。「五、六十万の車で彼らに挑むのが面白い」と無邪気に話す牛島。不利になればなるほど燃えてくる。逆風も追い風に変えてしまう気持ちの強さが、彼を関東最強の座へと導いていった。その気概がある限り、牛島のスピードに困難という黒い影など追いつけない。 


                                         (尾形、今村)
準硬式野球部 やっと捕えた春季2位

 「全員野球」が本学の新たな歴史をつくり上げた。
 4月14日~6月10日、早大東伏見グラウンドなどにて行われた東京六大学準硬式野球春季リーグ戦で本学は準優勝。春では1984年優勝以来の快挙である。長いトンネルの先に光が見えた瞬間だった。

快心の始まり
 長年、満足のいく結果を残すことができなかった春季。それだけに、懸ける思いの強さは計り知れない。勝利への執念を燃やし、戦いに挑んだ。
 昨秋の覇者、早大との開幕戦。波に乗るためには、初戦を落とすわけにいかない。初回から、早大のエース・川口の不安定な立ち上がりを攻め、足を絡めた攻撃で得点を重ねていく。投手陣は序盤に4点を取られるも、四回以降は無失点に抑える。主将・石井(経4)が「投打がかみ合う理想の野球ができた」と語るように、10-4で勝負をつけた。迎えた2回戦。四回までに10点を挙げるが、早大も意地を見せ、点を取り合う乱打戦となる。そして壮絶な戦いの末に13-9で制し、王者から貴重な勝ち点をつかみ取った。
 好調な滑り出しを見せた本学。次なる相手、東大との対戦では打撃が光った。1回戦、中島(済2)の走塁本塁打が出るなど、六回までに15点と大量得点を奪う。その一方で、本学先発の西井戸(済2)は「試合を壊さないように」と丁寧な投球を心掛け、確実に打ち取っていく。味方の好守にも助けられ、18-0で無安打無得点試合を達成した。続く2回戦も初回から6点を取る猛攻を見せる。その後も打線の勢いは止まらず、32安打39得点。2戦連続で圧勝し力の差を見せつけた。
 4戦全勝と最高のスタートを切った本学。だが本当の戦いは、ここから始まる。


奮戦を経て
 東大戦から3週間後に行われた明大戦。本学はこの間、実戦感覚をなくさないように試合形式の練習を多く行ってきた。しかし1回戦、今季好投を続ける明大先発・井上の前に3安打に抑えられ0-2で敗れてしまう。続く2回戦、対法大1回戦にも敗れ、3連敗。嫌な流れを断ち切れない。
 そして迎えた対法大2回戦。本学はここまで捕手としてチームを支えてきた石井がマウンドに上がり、粘り強いピッチングを見せる。また、ここ数試合思うようにつながらなかった打線が復活。初回に先制されるも、新井田(にいだ=コ3)の適時打などで逆転し4-2とリードを奪う。さらに五回表二死二・三塁の場面。この好機に打席に立つのは、けがから復帰し石井に代わり先発捕手を務める竹内(営2)。本人も「気持ちが良かった」と語る3点本塁打で法大を突き放す。九回にも2本目の本塁打を放ちこの日6打点。起用に大きく応えた竹内や、石井の奮闘により、試合は10-3で勝利した。
 再び勢いを取り戻した本学。その後行われた対慶大1回戦では、好投手會田(あいだ)を打ち崩し、勝利。2回戦も柳沼(やぎぬま=文3)の4安打や中島の本塁打を含む3安打などで快勝し、準優勝を果たした。
 今春は柳沼が4割8分3厘の高打率で首位打者を獲得。ベストナインには捕手に石井、二塁手に磯部(経3)、三塁手に熊谷(くまがい=文3)、外野手に柳沼の4人が選出され、充実したシーズンとなった。個の働きを原動力としてチーム全体の士気が高まり、好結果へとつなげることができた本学。優勝こそ逃したが、秋季リーグ戦へ向け期待は膨らむばかりだ。 

                                        (今山、鈴木(理))


最大の功労者
 すべてはチームの勝利のために――。準優勝の裏には主将・石井の好采配(さいはい)があった。
 グラウンド上では自ら2つのポジションを兼任。開幕直前に捕手2人をけがで欠く苦しい状況に陥る中、捕手を務めて投手陣をリードした。また投手としても2度の完投勝利を挙げ、守備の中核を担った。
 試合中は積極的に選手交代を行い、より多くの選手に活躍できるチャンスを与える。個々が、試合に出場して結果を残したいという強い意志を持つことが、勝利へとつながった。
 勝つためには「一人ひとりが野球を考える気持ち」が必要であると語った石井。その姿勢は日々の練習を通して徐々に浸透し、チームは一つにまとまった。これからも石井を中心に、結束を強めていくだろう。   
                                              (大島)









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