立教スポーツ第174号
<10月3日更新>

水泳部 絆で掴んだ勲章
 

水泳部 絆で掴んだ勲章

  一人じゃない。歓喜の瞬間を分かち合う仲間たちがいる。その思いが、限界以上の力を生み出していく――。
 8月1日〜3日に東京辰巳国際水泳場にて開催された第81回関東学生選手権水泳競技大会。本学にとって最も重要なこの大会で、女子部が昨年より2つ順位を上げ1部3位という快挙を成し遂げた。また、男子部も強豪ぞろいの1部で5位と大健闘。すべてをささげて迎えた夏は、彼らにとって忘れられないものとなった。

確かな進化
 近年著しい成長を見せている女子部。そんな彼女たちが掲げた目標は、「1部3位」というものだった。過去最高順位の5位を上回る設定であったが、それを実現する力が今年の彼女たちには備わっていた。
 4月の日本選手権の活躍で今大会も期待されていた坂上(さかうえ=コ1)は百b自由形と、得意種目の二百b自由形に出場した。百bこそ惜しくも4位だったものの、二百bでは「大会新記録を狙っていた」と語るほどの力泳で2位を勝ち取った。
 八百b自由形には、小畑(営3)が登場。昨年調子を落としていたが、それを感じさせないスピードで飛ばしていく。終盤も安定したペースで進み、2位でゴール。この結果に「最高の締めくくり」と笑顔をのぞかせ、復活を印象づけた。
 圧巻の実力を披露したのは平山(瑛)(済1)。二百b個人メドレー、四百b個人メドレーに出場すると、圧倒的な速さで2冠を果たした。1年生にして堂々の快挙達成にも「全国でも戦える選手になりたい」と、強い向上心を見せた。
 そしてリレー競技3種目ではすべて立大新記録をたたき出し、大きく得点を伸ばした。これが決定的なものとなり、目指していた3位の座を獲得。1部昇格以来年々順位を上げている彼女たちの勢いは、まだ止まりそうにない。


全てを出し切り
 好調な女子部の勢いは、部全体の刺激となり、男子部へと伝わる。
 「上位入賞する」。虎谷(とらや=法2)は大会前そう言い切った。男子百b平泳ぎ決勝、序盤は先頭から離されるも、後半必死の追い上げを見せ5位に入り込む。同種目では山田(コ1)も決勝に進出し、自己ベストを更新した。
 さらに二百b平泳ぎでは虎谷、山田に坂井(コ4)を加えた3名が上位入賞。立教の平泳ぎの強さを存分に見せつけた。
 そして、千五百b自由形に出場した平川(営3)。「試合前はとても緊張していた」という彼を奮い立たせたのは、仲間の声援だった。前半から自らの泳ぎに徹し、後半は持てる力を振り絞る。結果は自身のベストを16秒近く更新し4位という好成績。まさに声援が力に変わった瞬間だった。
 また、平川は二百bバタフライにも出場。勢いそのままに気迫のこもった泳ぎを見せ、周囲の期待に3位という結果で応えた。
 仲間たちのために、それぞれがベストを尽くし5位をつかみとった男子部。力を出し切った部員たちの顔には充実感が溢れていた。

消えぬその勇姿

 男女共に、個々の実力に仲間の支えが加わり、1年間の有終の美を飾った今大会。その中心には4年生の存在があった。
 男子二百b平泳ぎで、4位に入った坂井。「ずっと目標にしていて、最後まで強かった」(虎谷)と言うように、本学の平泳ぎ陣を常にけん引してきた。
 女子エース・冷清水(ひやしみず=観4)。バタフライを専門とする彼女は今大会百bで準優勝、二百bで3位に入り、その役目を果たした。「仲間とのきずながあったから、ここまで来れた」。彼女はこの言葉で4年間を締めくくった。
 今大会を女子キャプテンの山本(済4)は「感無量でした」と振り返る。「もう悔いはない。すべてを出し切って引退できる」。力をつけてきた後輩たちへ、今後の期待を込め水泳部を託した。
 そして、主将として部をまとめてきた中紙(なかがみ=理4)は試合後に「この仲間だったから、最後まで楽しくやれた。ありがとう」と全体に伝えた。これまでの学生生活を水泳と共に過ごし、何より水泳が好きだという、彼らしい言葉は仲間たちの胸に深く刻み込まれた。
 この1年間部を引っ張ってきた4年生。彼らそれぞれの思いはしっかりと後輩たちに受け継がれ、本学は再び新体制の下スタートを切った。          (尾形、青山)

 


 


弓道部 前途照らす共栄

 常に高みを目指す本学弓道部。その思いは一本の矢に託された。全関東学生選手権では豊川(済4)が女子個人戦でベスト12と健闘を見せ、また全日本学生選手権の男子個人戦で、赤羽根(社3)が見事9位入賞。部全体の自信につながる快挙を成し遂げた。

 

 

 

上だけを見て
 全関東の女子個人戦には総勢706人の選手が参加した。3度にわたる予選を突破し、本戦へと勝ち進んだ36人の中に女子責任者・豊川の姿があった。その小さな体にみなぎる力は計り知れない――。
 一本のミスも許されない本戦。目を閉じて高まる気持ちを落ち着かせる豊川。確実に狙いを定めて、1本目、2本目と見事に命中させた。そして3本目、じっと的を見据え弓を構える。次の瞬間、会場内に矢が的を射る音が響き渡った。
 ここまでで豊川を含め残ったのは12人。ここから的が尺二的(36a)から八寸的(24a)と小さくなる。そのため難易度が上がり、惜しくも外してしまった。残すは8人による5位決定戦。的の中心により近い所を射た者が勝利する遠近競射で争われた。豊川の矢はわずかに中心から離れて、5位獲得を逃す。
 ベスト12まで勝ち進み喜ぶ一方、この結果に満足することはない。「自分は強くなると信じて、上ばかり見ている」。そう豊川は語った。彼女の向上心はとどまることを知らない。今大会で得た自信が、部全体のたくましさに磨きをかけることは言うまでもない。
 団体戦でも本学は12射中9中という好成績で予選を通過。決勝トーナメント2回戦で敗れるも、ベスト16入りを果たした。この団体戦では2・3年生も活躍している。下級生も力をつけ一層盛り上がりを見せる弓道部女子。秋のリーグ戦での昇格へ期待が高まる。

 

精神研ぎ澄まし
 最高峰の舞台で赤羽根の挑戦が始まった。東京で行われた2次予選までを通過して、赤羽根は最終予選へと駒を進めていた。次なる舞台は神戸。全国の予選を勝ち抜いてきた強者たちが互いにしのぎを削る。
 初日に行われた団体戦予選では赤羽根は本調子ではなく、予選通過はならなかった。それだけに個人戦により一層気合が入る。最終予選は2射中2中で決勝へと進むことができる。「弓を引くのを楽しんでこい」と先輩からの励ましを胸に弦を引く。一本一本集中して、狙いを定め放たれた矢は的へと吸い込まれていき決勝進出を決めた。
 そして迎えた決勝。予選で用いた尺二的から八寸的に変わり、的中させるのは至難の技となる。皆が一斉に矢を放ち、外した者から脱落していく。会場の空気はさらに張り詰めていったが、後ろから聞こえる部員の声援が赤羽根を後押しする。次々とライバルたちが姿を消す中、後は見事に3本目も的中させる。しかし「欲が出て集中を乱してしまった」と後に語ったように4本目は外してしまう。その時点で当初541人いた最終予選出場者はわずか9人まで数を減らしていた。そのまま勝負は遠近競射による順位決定戦へともつれ込んだ。その結果赤羽根は9位となり16年ぶりの入賞を果たした。
 「(入賞は)素直にうれしいし、自信が持てた」と語る一方、「まだ甘さがある。メンタルを鍛え、後輩の育成をして部の底上げをしたい」と意気込みも語った赤羽根。全日本で入賞した彼を軸とした男子、全関東の活躍が光った女子。男女そろっての昇格を射抜く日は近い。(岩本、片岡)


拳法部 東日本に轟く勇名 

   勝利に対する強い思いは彼らに輝かしい結果をもたらした。
 東日本学生最強を決める今大会。女子の部で岡田(文4)が本学初の優勝を遂げた。また級の部では仲川(社2)が優勝。豊(とよ=コ2)も3位につけ本学の力を見せつけた。

 


譲れぬ思い
 岡田には入部当初からの目標があった。「矢野杯優勝」。それは東日本学生の王者になることを意味する。4年生の彼女にとって今回が夢の称号を手にする、まさに最後のチャンスであった。
 女子の部は、段を取得しているいないにかかわらず出場者全員が同じトーナメントで戦う。そのため一度負ければ優勝への道は断たれる。岡田は三段の実力者だが油断することは許されなかった。「段が下の人たちに負けることはできない」。大きなプレッシャーが彼女にのしかかる。
 しかし、終始岡田は弱気な姿を見せなかった。まずは力強い面突きで初戦を制す。2回戦では、細尾(青学大)を相手に開始わずか21秒の間に立て続けに二本を奪う快勝で、実力を証明した。そして、後に彼女が大事な一戦となったと振り返る藤野(早大)との準決勝に挑む。開始早々一本を得るも2回戦のようには技が決まらない。それでも粘り強く攻め続け、残り26秒、渾身(こんしん)の一撃で、決勝へと駒を進めた。
 ついに決勝の村上(早大)との一戦へ。1週間前の試合で敗れた相手である。「悔いの残らないように」。強い気持ちを源に最後の一本、またも得意の面突きを決めた。求め続けた優勝を手にした瞬間だった。
 4年間抱き続けた夢。一つ一つ積み重ねた努力の末、彼女の願いはついにかなった。

 


切磋琢磨 
  級の部で順調に勝利を重ね、準決勝の舞台に進出した仲川。そんな彼の対戦相手は同期の豊だった。手加減なしの真剣勝負が繰り広げられる中、仲川が鋭い面突きにより先制。最後は豊を倒して再び面を突き、仲川が勝利する。「最も厳しい試合だった」(仲川)という一戦を制し、仲川が決勝へ、豊は3位決定戦に回ることとなった。
 浦口(明大)を相手に迎えた3位決定戦。「良い流れで仲川にまわしたい」と、豊は気迫を全面に出し戦った。試合開始から積極的に突きを繰り出し先手を取ると、一瞬のすきを突いて胴に蹴り(けり)をたたき込み完勝。豊にとって仲川以上の難敵はいなかった。
 「豊が勝ったので自分も勝てると思った」と、後ろで見ていた仲川の闘志に火が付く。決勝ではその勢いのままに松崎(明学大)を圧倒。近距離からの強烈なひざ蹴りが胴をとらえ、優勝に王手をかける。そして、仲川が力強く振り抜いた蹴りが再度松崎の胴へ。ついに決着の時を迎え、結局仲川は初戦から一本たりとも有効打を受けず、実力を存分に見せつけての完全優勝を果たした。
 試合後、「豊に勝てたからこそ優勝できた」と仲川が話せば、「隣に仲川がいて心強かった」と豊も言う。ライバルとして、仲間として共に戦い続けた2人の拳士。最高の関係が躍進の原動力となり、最高の形で実を結んだ。  
                                                         (村松、尾形)
 

 


 









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