立教スポーツ第176号
<4月1日更新>

スケート部アイスホッケー部門 
氷上に響く凱歌 Div.T‐B昇格

 

スケート部アイスホッケー部門 氷上に響く凱歌 Div.T‐B昇格
 
 会場が熱気に包まれる中、ついに迎えた最高の瞬間。氷上には選手たちの笑顔が輝いていた――。
 43年の時を経て、ディビジョンTBブロックへと返り咲いた本学。悲願を果たすため、部員全員でひたすら突き進んできた。チームが一つにまとまったことが、彼らをここまで導き、新たな歴史をつくり出した。

 

一致団結
 「春からディビジョンU全勝優勝を、ディビジョンTBブロック昇格を目指してやってきた」。主将の江島(社4)がそう語るように、今大会に懸ける思いには並々ならぬものがある。
 昨年度はリーグ6位と悔しい結果に終わった本学。しかし上級生の築き上げた土台に即戦力となる1年生が加わったことで、実力は格段に上がった。個性の強い部員たちがまとまるまでには長い時間がかかるが、同じ目標を掲げることできずなは深まっていった。試合を重ねるうち、本来あった強さに結束力が加わり自信へとつながってゆく。
 本来は1次リーグ開幕から6連勝を飾り、弾みをつけてヤマ場である最終戦へと臨む。対するは、長年勝てずに苦戦している上智大だ。積極的に攻めるも、思い通りのプレーができずに4−5と惜敗。あと一歩のところで全勝優勝には手が届かなかった。それでも1次リーグを首位で通過し、新たな関門へと挑む。
 2次リーグ初戦は、再び宿敵・上智大と対戦した。「もう悔しい思いはしたくない」とリベンジを誓った選手たち。彼らの闘志が気迫の込もったプレーを生み出した。第2ピリオドまでを無失点に抑え、5−2と見事に勝利を収める。長い間立ちはだかっていた壁を打ち破った。雪辱を果たした本学の勢いは、もう止まらない。
 波に乗って臨んだ神奈川大との一戦。優勝の懸かった大一番でも、終始敵を圧倒し6−2で快勝する。もはやディビジョンUに敵はいなかった。入れ替え戦出場が決定し喜びに満ち溢れる部員たち。しかし、「次も油断せずに絶対勝つ」と江島は意気込む。勝利のために妥協を許さない姿勢こそが、彼らをここまで強くした。この結果に甘んじることなく、次なる入れ替え戦を見据える。

 

劇的な一戦
  長きにわたるリーグ戦を戦い抜き、ようやくつかんだ昇格の好機。青学大を相手に迎え、運命の戦いが始まった。
 序盤はなかなか肝心のゴールが奪えず、開始8分で相手に先制点を許す。しかし、戸津(文1)がすぐさまロングシュートを決めて試合を振り出しに戻した。その後第1ピリオド終盤、反則により2人を欠き窮地に立たされる。ここで176-1.JPG - 96,447BYTES意地を見せたのはGK鈴木(社1)。DF陣との連携プレーで相手の猛攻からゴールを死守し、ピンチを切り抜ける。
 続く第2ピリオドは開始早々に江島が左サイドから切り込んでゴールし、2点目を挙げる。主将の好プレーがチームを勢いづけるが相手も食い下がり、第3ピリオドで同点に追い付かれた。試合は膠着(こうちゃく)状態へと突入。お互い得点する気配のないまま時間だけが過ぎていき、延長戦にもつれ込むかと思われた。しかしここで本学はタイムアウトをとり、士気を高めて最後の1分間に臨んだ。
 そして、ラスト25秒。勝利へのいちずな思いが待望の結末をもたらした。石川(済1)が素早くDFを抜き去りGKとの1対1という絶好のチャンスを作り出す。執念で、決勝点を力強くたたき込んだ。そのまま4−3で試合終了。昇格が決まった瞬間、選手たちはベンチを飛び出してきた仲間と抱き合い喜びを爆発させた。同時に観客席からわき上がる大歓声。場内に立教コールが響きわたった。
  「これほど幸せなことはない。チームのみんな、監督、すべての人に感謝したい」と、江島は試合後に語る。多くの人に支えられて残した結果であった。今までの努力が報われ、手にした栄冠。偉業を成し遂げた男たちの戦いは華々しく幕を閉じた。

                                             (本多)


陸上競技部 立教の誇り 中村(嘉)

 本学屈指の長距離エースが二度目となる箱根に挑んだ。昨年10月に行われた予選会の結果、関東学連選抜チーム(以下学連選抜)に2年連続で選出された中村(嘉)(コ4)。この日のために用意した紫色のユニホームに身を包み、光舞う湘南の街路を駆け抜けた。

 

「ありがとう」
 年々上がる予選会のレベル、新興大学の台頭など、箱根駅伝出場への道は日々険しさを増している。今大会、彼は出場する喜びと同時に、箱根の厳しさを誰よりも強く感じることになる――。
 1月3日。学連選抜は前日の往路を13位で終えていた。区間エントリーの段階では戦略的な理由により補欠登録だった中村(嘉)が、予定通り8区を任される。「シード権争いに絡みたい」。彼はそう意気込んでいた。
 昨年同様「事前に決め176-3.JPG - 112,641BYTESていた」と言うように7区梶原(松陰大)から笑顔でたすきを受け取り走り出した。序盤は中大・東農大と競り合う。だが「10`地点で苦しさを感じた」との言葉通り、徐徐に他の選手たちから離されてしまう。しばらく我慢のレースが続き、最後は粘りの走りで戸塚中継所へ。13位で駆け込みたすきをつないだ。
 「終わったというより悔しい」とレース後に感想を漏らすも、チームは10区佐野(麗沢大)の快走もあり9位でゴール。「駅伝は助け合いだと再確認をした。みんなに感謝したい」。中村(嘉)は照れくさそうに笑った。
 彼自身は満足のいく結果を得られなかったが、本学の選手が2年連続で箱根駅伝に出場したことは大変な偉業である。そんな彼のランニンググローブには部員一人一人からの熱いメッセージが書き込まれていた。レース中も仲間の存在を近くに感じていた中村(嘉)。「みんなが応援してくれた。一人だけではここまでやってこられなかった」と心から感謝した。

 

一人の男の物語
 昨年、そして今年と中村(嘉)が立大を背負って駆けた箱根路。選ばれし者だけが走れるあこがれの地だが、彼は最初から箱根駅伝出場を目標にしていたわけではなかった。
 中村(嘉)の陸上競技人生のスタートは中学の時だった。ここで駅伝の楽しさに目覚め、高校でも迷わず陸上部に入る。しかし長距離ブロックは短距離に比べ良い結果を出せず、肩身の狭い思いをしたという。「やらされていると感じて、陸上が嫌いだった」と当時を振り返る。箱根駅伝の中継も見たことがなかったと打ち明けた。
 本学に進学後、陸上を続ける気のなかった中村(嘉)は陸上競技部から勧誘を受ける。渋々ながらも見学に行った彼は自主的に練習をする部員の姿を見て「これならやれる」と入部届を出したのだ。
 そして転機は2年生の秋。部に勧誘してくれた先輩のために箱根駅伝出場を目指すも、予選通過はならず。補助員として沿道に立ちながら「選手として走りたい」という思いをかみしめた。箱根駅伝に出たい、箱根を走ることで周囲に感謝の気持ちを示したい。その一心で走り込んだ。長年指導者に恵まれず、練習は困難を極めたものの、着実に結果を残していった中村(嘉)。ついには二度の箱根駅伝出場を果たした彼は「最高の四年間だった」と笑みを浮かべた。
 今年も表情柔らかにたすきを渡していた。陸上人生を最後まで楽しんだ中村(嘉)。彼の笑顔と胸の「R」は今なお人々の目に色鮮やかに焼き付いている。

                                      (伊藤(聖)、太田)

 

 

サッカー部 悲願果たせず… 関東に散る

   最後の望みが断たれた時。選手たちの悲しみに呼応するかのように、空からは雨が降り始めていた。
 2ヵ月にわたるリーグ戦を戦い抜き、3位という結果を手にした本学。関東2部昇格を争う関東大会に15年ぶりの出場を決めた。だが強豪たちに力及ばず3戦全敗。昇格を果たすことはできなかった。
 それでも彼らはもう一度歩み始める。胸に刻み込まれた悔しさを、歓喜に変えるその日のために。

不協和音
 「ここはまだ通過点」。春季対抗戦の決勝で帝京大を破った後、そう話した主将の松田(社4)。チームの意識はすでに次なる戦いへと向けられていた。
 あの日から2ヵ月。今季の集大成となる戦いが始まった。リーグ戦上位4校が出場できる関東大会に向け幸先良くスタートを切りたかった本学。しかし初戦、二戦目と勝利を手にすることができず、出ばなをくじかれてしまう。
 転機が訪れたのは第3節の帝京大戦だった。前半6分に、ゴール前の混戦からFW大坪(観2)が得点を挙げると、その後も連携のとれた攻撃を見せる。後半に1点を返されるものの、目標としていた「つなぐサッカー」を展開し、4−1で初勝利を収めた。続く4戦も序盤の不振がうそのように次々と勝ち点を積み重ねていく。いよいよ関東大会出場に王手をかけた。
 だが第8節、流れは一変する。降格圏に沈んでいた武蔵大の守備を崩し切れないでいると、パスミスとCKから2失点。まさかの敗戦を喫したのだ。一度狂ったリズムを元に戻すのは難しく、最終節となる国学院大戦では1−1と引き分けてしまう。どうにか関東への切符をつかむことはできたが、終盤戦では連動性のない試合運びに終始した本学。現状に対し、チームの要である田中(舜)(済3)は「納得のいくサッカーができない」と吐露した。
 決戦の前に見失ってしまった自分たちのサッカー。待ち構えるのはまだ見ぬ強敵たちとの戦い。行く手には暗雲が立ち込めていた。


敗北という財産 
  打開策を見いだせないまま彼らは関東大会を迎えることとなった。「勝利へのイメージがない」と樋口(営3)が振り返ったように一戦目、二戦目と思うようなサッカーができず連敗。昇格の可能性は限りなくゼロに近くなってしまう。だが彼らはわずかな希望を信じ、運命の第3節・日大戦に挑んだ。
 勝利以外は許されないこの試合。開始直後から本学は果敢に攻撃を仕掛けて、2分、12分とシュートを放つ。この勢いを得点に結びつけたかったが、先にゴールネットを揺らしたのは日大だった。前半23分、深い位176-2.JPG - 87,400BYTES置から上がったクロスをゴール左隅に決められ痛恨の先制点を与えてしまう。その後、本学が試合の主導権を握ることはなかった。相手ベンチで歓声が上がるたびに、それとは対照的な様相を見せる本学ベンチ。1点、また1点と奪われるにつれ関東への扉は閉ざされていく。それでもあきらめずに走り続ける立大イレブン。しかし彼らの気持ちとは裏腹に、試合終了の笛は鳴らされた。瞬間、次々とピッチに崩れ落ちる選手たち。その光景は「関東昇格」という言葉にかけた思いの強さを、何よりも鮮明に表していた。
 全敗という形で幕を下ろした今大会。ただ、強豪たちと昇格を争った一ヵ月は彼らにとって大きな意味を持つはずだ。あの日流した涙を、決して無駄にはしない。必ずこの舞台に戻ってくると決めたのだから。     (北尾)


 






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