立教スポーツ第182号

<6月3日更新>
   

    
【陸上部】  
未来のメダリスト
岡田日本ジュニア優勝
 

  立大陸上競技部史上に残る偉業だ。岡田久美子(社1)が日本ジュニア女子一万b競歩で優勝。世界ジュニア進出を果たした。同部からの世界大会出場は1936年ベルリン五輪八百b代表の故・青地球磨男(36年度卒)以来、実に74年振りの快挙となる。「R」の超新星が世界に戦いを挑む。

”独歩”劇
 美しいフォームが生む滑らかな重心移動、スピードに乗った歩みで、他を寄せつけない圧巻のレース運びだった。
滑らかなフォームで力強く前進する岡田

  女子ジュニア一万b競歩で岡田が最高の結果を残した。全国の二十歳以下の有力選手が出場し世界ジュニア出場者の選考会を兼ねていた今大会。入学後初となる大会で見事優勝を果たし、世界への切符をつかんだ。  
  「勝ちにいった」という言葉通り、危なげないレース展開だった。スタートの号砲とともに集団のトップに立つと、レースを引っ張っていく。序盤は集団を形成していたが、3000b過ぎから全国大会で表彰台に立ったこともある実力者・浅田(DNP西日本)との一騎打ちとなった。  
  レース後半の7000b。それまで後ろにつけていた浅田が徐々に遅れをとり始める。岡田はペースを落とすことなく、美しいフォームで浅田との差を広げていく。"独歩"状態に入り、そのまま46分23秒18でフィニッシュ。終わってみれば一度も先頭を譲ることなく後続に圧倒的な差をつけてレースを制した。  
  今回の記録を受けて「まだまだです」と振り返る岡田。「遅いレース展開にはまってしまった。自分でペースをつくっていけるようにしていきたい」と彼女が現状に満足することは決してない。  
  「世界ジュニアで表彰台に立ちたい」。そう力強く語る岡田。目標は高く、大きく。彼女は真っすぐに前を見つめ、力強く歩みを続ける。

ひたむきな姿勢
 岡田が陸上競技を始めたきっかけは小学校のマラソン大会。中学では中距離を専門としていた。競歩を始めたのは高校1年時から。監督から勧められて競歩に転向した。  
  最初は練習についていくことができなかったと話す岡田。しかし、そこから徐々に力をつけていき、高校2年時にはインターハイの三千b競歩で優勝。翌年には大会新で連覇を果たす。また、2008年の世界ジュニアで8位入賞と世界に通用する実力も示している。  
  立大に入学した理由を「(競技と)勉強を両立したかったから」と答える岡田。しかし、立大は他大学と比べて陸上競技専用トラックがないなど練習環境が整っているとはいえない。だが、彼女は「環境に左右されていては世界大会で実力を発揮できない」とその逆境に負けることはない。  
  「競歩を珍しそうに見たり、ばかにしたように見る人もいる」と言うように、日本において競歩はまだまだメジャーな種目とは言えない。その状況の中、彼女は「自分が活躍することでもっと競歩を知ってもらいたい。競歩を見てこんなにもきれいに歩けるものなんだと思って欲しい」と語った。  
  「常に上を見ること」。これは岡田が普段から心掛け、大切にしている言葉である。オリンピックの表彰台に上ることを最終目標として見据える彼女の伝説はまだ始まったばかりだ。彼女の競技に対する姿勢、活躍は確実に陸上競技部に新しい風を吹き込み、部を勢いづけ、さらなる高みへと導くだろう。(中村賢太)      



【スケート部スピード部門】   トップクラスに名を連ね  日本代表河合アジア4位


   河合奏聖(かなみ=文2)が鮮烈なアジアデビューを果たした。11月に行われた日本ジュニアで入賞し、日本代表に選出。世界トップクラスの選手がそろう中、見事4位に輝いた。大学入学後にスピードスケートから競技を転向した河合。転向一年目とは思えない好成績でシーズンを締めくくった。大舞台に立った彼女は今、新たな「世界」が見えている。

価値ある入賞
  会場は色とりどりのユニホームで埋め尽くされていた。出場国は日本、中国、台湾、香港、カザフスタンそして強豪・韓国。
初めて日本代表のユニホームに袖を通した河合だが、大舞台にも臆(おく)することなく堂々とレースに臨んだ。  
  千五百b予選、日本代表伴野コーチの「韓国はとにかく速い。でもタイムで上がれることがあるからついていけ」との言葉を信じ、河合はスタートラインに立った。得意とするスタートで2番手につくが、中盤に差し掛かり韓国選手にかわされてしまう。しかし「焦ることなく自分なりに反応できた」と冷静さを保ち続け、必死に食らいつく。そして最後はほぼ同時にフィニッシュ。「ラスト抜けないで終わったと思った」と振り返るが結果は2着。3位との差は、わずか100分の3秒であった。「結果を知ったときはびっくりした」と驚きを隠せない様子だった。  
  迎えた決勝。順調な滑り出しをするが4周目、後続選手の仕掛けに反応できず5番手となる。しかしそこでもコーチの言葉を忘れることなく「ついていく」ことに集中した。ラスト1周徐々にスピードを上げ前方の選手を抜き去り、見事4位入賞を果たした。  
  「決勝にいけて満足している」と語る河合。しかし「海外選手に比べたら、まだまだコーナーを回る技術が足りないので補っていきたい」と国際レベルを体感し、新たな課題も見つかった。

頂点目指して 
  日本ジュニア総合5位、そしてアジア選手権千五百b4位入賞。大学入学後にスピードスケートからショートトラックに切り替えたとは思えないほどの好成績を残した。この結果も「コーチや監督の指導、支えてくれた両親や友人のおかげです」と感謝の気持ちを忘れてはいない。だが、その躍進の裏には彼女の並々ならぬ努力があった。   
  競技転向一年目の河合にとって一番の課題は技術不足。そのため、練習内容にコーチとマンツーマンでのコーナー練習を取り入れた。また体力不足も弱みであったため、滑り込みをし、自分を追い込んだ。「おとなしそうに見えて実は負けん気が強いです」とコーチは語る。その負けず嫌いな性格が彼女を日々進化させ、初の国際大会での大きな結果につながった。   
  誰もが認める好成績で大学一年目を締めくくることができた河合。だが、今シーズンを「80点」と本人は満足していない。「ショートトラックに切り替えて一年目で、自分に甘いところがあった。これからはもっと厳しく頑張りたい」と次のシーズンに向けて意気込みを見せた。   
  今後は「全日本で上位に入り世界にいけるようになりたい」と日本の頂点を目指す。そしてその先に待ち構える「世界」を見据えている。   
  河合の表情は、今シーズンの飛躍によって得た大きな自信に満ちあふれていた。彼女の勢いは今後さらに加速していく。世界に「河合」の名が知れ渡る日も遠くはない。(大越恵里香)

 


 

【洋弓部】常勝へと歩み出す 一部昇格


   黄金時代の幕開けだ!!  
  昨年昇格した2部リーグで圧倒的な力を発揮して優勝。入れ替え戦に駒を進め、見事1部昇格を果たした。  
  実に45年ぶりとなる1部の舞台に、実力で戻ってきた立大。「歴代最強チーム」の勢いはまだまだ止まらない。

 

期待と重圧
 「実力はある」。リーグ戦4ヶ月前、2部で戦っていく自信についての問いに前主将の山村(済4)はそう答えた。しかし、言葉とは裏腹にチームは調子を落とし続けることになる。
  昨年、立大は他校を圧倒しての昇格を果たした。その有り余る力は、次なる舞台での活躍を思わせずにはいられないものだった。周囲からは当然のように1部昇格へ期待の声がささやかれる。しかしその一方で、就職活動やけがなどの理由で練習も思うようにできずコンディションは一向に上がらない。「期待」が「重圧」となって選手たちにのしかかっていた。
  そんな中迎えた初戦。不調の続くチームを救ったのは下級生だった。高橋(現2)と大河原(済2)はこの日、新主将・小木曽(法3)に次ぐスコアで勝利に貢献。チームに流れをもたらすと、この活躍に上級生たちが黙っているはずがなかった。続く2・3戦目では意地を見せる上級生と好調を維持する下級生が一丸となる。そしてチーム最高の3790に迫る得点をたたき出すとともに連勝を飾った。
  勢いに乗る彼らを止められる相手はもういないかに思われた。しかし、このまま順調にいくほど昇格への道は平たんなものではなかった。

 

苦境乗り越え
 
リーグ戦4戦目の相手は東洋大。小木曽は「序盤に主導権を握れば強い」と自身のチームを評価する。ところが、この日はスタートダッシュに失敗。試合は接戦の様相を呈した。入れ替え戦進出を懸けた一戦だけに勝利が欲しい。しかし後半に入ってもいつもの射が戻らず、調子を取り戻せないままリーグ戦初黒星を喫した。試合後、山村は「勝つのが当然だと思ってしまった」と敗戦の要因を口にした。  
  昇格へ後がなくなり、いっそう気を引き締め迎えた東大戦。ここで気を吐いたのは川島(コ3)だった。12エンド中11エンドで赤字(60点満点中50bは45点以上、30bは55点以上)を記録。抜群の安定感でチームを勝利へと導き、昇格への望みをつないだ。そして翌週、2部昇格を懸けて再び東洋大と対戦。同じ相手に二度は負けられないと意気込む選手たちは、今までの努力と経験を胸に弓を引く。応援にも熱が入り、共に相手を圧倒。リベンジを果たすと、勢いそのままに入れ替え戦も制し、1部昇格を決めた。  
  洋弓部男子の1部復帰は45年ぶり。目指し続けた舞台でようやく戦えることに部員たちの喜びもひとしおだ。それでも余韻に浸ってばかりはいられない。ここはまだスタートライン。彼らの戦いはこれからだ。   (粟ヶ窪勇大)

 


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