立教スポーツ第183号

<7月1日更新>
   

    
【フェンシング部】  
40年ぶりの大舞台へ
男子エペ1部昇格
 

  歴史的な勝利だった。リーグ戦全勝優勝で迎えた男子エペ入れ替え戦。延長にもつれ込んだ末、攻めの姿勢で接戦を制した。近年は満足いく結果が残せずに苦しんでいた立大。しかし悲願達成に対する強い思いが実を結び、待ちに待った40年ぶりの1部昇格を果たした。

逆境を力に
 「エペに懸けていた」。
  日頃の練習からエペに力を入れている立大の、1部への思いは強かった。
相手を見据え、剣を構える赤池

  男子エペは今大会の最終種目で、立大は主将・鈴木(済4)、赤池(済4)、浅間(法1)のメンバーで出場した。この種目は突きのみで攻めていき、全身が有効面となるため、少しの油断も許されない。立大はリーグ初戦から好調な滑り出しで、2連勝を挙げた。2日目、東農大に苦戦を強いられたものの、残り2戦を快勝し2部全勝優勝を遂げる。その結果、15年ぶりに1部昇格を懸けた入れ替え戦へと駒と進めた。
  念願の舞台まであと一歩と迫った彼ら。しかしここまでの道のりは平たんなものではなかった。昨年は昇格を期待されながらも、終わってみれば2部3位。その裏には、男女共に部員不足に陥っているという現状があった。普段の活動では、男子部員と女子部員が入り交って練習をしている。決して満足のいくトレーニング環境とは言えない。しかしそんな環境をも、男女が互いに刺激し合うことによって力へと変えてきた。今回勝ち取った2部優勝。エペに懸ける気持ちが強かっただけに、選手たちはいっそう強く喜びをかみしめていた。
  4年生である鈴木と赤池にとって、今季が昇格の最後のチャンスとなる。赤池は「士気が高まっている」と高揚する思いを語った。入れ替え戦を目前にして、高まる1部への熱意。選手たちは悲願を達成するべく最後の戦いに挑む。
  運命の一戦へ向け、準備は整った。

念願果たす
  迎えた入れ替え戦。相手は守りの堅い日大。OBも駆け付けた会場は、普段以外に盛り上がっていた。
  一番手は鈴木。「(大一番の試合ということを)なるべく考え過ぎないようにした」。立ち上がりからの連続ポイントでチームを勢いづける。続く赤池も得点を重ね、リードを保つ。しかし、三番手の浅間は緊張のせいか、自分の実力を出せずに逆転を許してしまった。その後彼らは日大の堅い守備に苦しめられ、8点もの差をつけられる。
  だが彼らは落ち着いていた。いつものように声を出して士気を高め合う。「自分たちの試合展開にもっていける」。鈴木はそう感じていた。そして浅間の5連続ポイントで劣勢からの反撃が始まった。1点ずつ着実に差を縮める。鈴木が2点差まで盛り返し、最後は赤池。攻める気持ちを忘れることなく果敢に相手を突き、ついに同点に追い付いた。ここで時間切れとなり一本勝負にもつれ込む。
  それまで応援する声が飛び交っていた会場はしんと静まり返り、誰もが勝負の行方を見守っていた。ぶつかり合う剣の音だけが響き渡る。「恐かった」。それでも赤池は攻めの姿勢を貫いた。間合いを取り、一瞬のすきを狙った胴体部分への一突き。立大の勝利を告げるブザーが鳴った瞬間、会場からは一気に歓声がわき上がった。
  1部昇格を決めたにもかかわらず、実感がわかない様子の赤池。一方で、鈴木は「良かった。信じられない」と思わず笑顔をこぼした。最後のリーグ戦を最高の形で締めくくった二人。これまで、彼らは目標に向かってひたすらに突き進んできた。その情熱はきっと後輩たちへと受け継がれていくはずだ。(谷口詩織)      



【陸上競技部】   岡田 10000m競歩 関カレ大会新V


    これまで日の目を見なかった種目での快挙だ。今月19日から行われる世界ジュニアに出場する岡田久美子(社1)が、女子一万b競技で完勝。さらに、松堂永(ひさし=コ1)は男子2部三段跳びで表彰台を射止めた。  明るい未来を象徴するかのような、若さあふれる戦いぶりであった。

圧巻の”歩”
 力強く、しなやかな足取りで"疾歩"する岡田。彼女の活躍は選手たちを鼓舞し、部全体の追い風となっている。
 
  「世界ジュニアへの通過点」と自身で位置づけて臨んだ今大会。スタート直後から先頭に立った岡田は、周回を重ねるごとに後続の選手を引き離していく。2位以下に半周以上の大差をつけて、5000bを22分32秒で通過。「日本学生記録を上回るペース」という場内アナウンスに会場が沸いた。  
  腰の入った美しいフォームを武器に、彼女の独壇場は続く。「半分を過ぎてから疲れが出て遅れてしまった」と反省する岡田だが、10000bを歩き終えてのタイムは45分23秒86。自己ベストであり、大会記録を大幅に更新する驚異的なタイムだった。2位、3位の選手もそれまでの大会記録を上回るタイムを出すなど、ハイレベルな戦いであったことは間違いない。それでも岡田はゴールまで先頭を譲ることはなかった。圧巻の完全優勝であった。  
  世界ジュニアへの意気込みを「立教代表、日本代表として頑張りたい。目標は表彰台」と語る岡田。あくまで上を目指し続ける彼女なら、世界にその名を知らしめるに違いない。(佐山沙穂莉)

開花の兆し 
 活躍しているのは岡田だけではない。同じく一年生の松堂もフィールド種目で価値ある入賞を果たし、部に新たな風を吹き込んだ。  
  ホップ・ステップ・ジャンプの軽快なリズムと力強さを併せ持つ種目、三段跳び。助走のスピードを跳躍の力に変える技術が要求される種目である。松堂の持ち味はその技術力の高さにある。  
  今大会では1本目から14b35をマーク。さらなる記録に期待が膨らむが残りの試技ではファールが重なり記録を伸ばすことはできなかった。「ステップでつぶれてしまった。まだまだいけた」と悔しさをにじませるも、結果は堂々の3位。現状に甘んじることのない彼の姿勢からは、無限の可能性が感じられた。  
  フィールド種目での入賞は実に6年ぶり。練習施設の不備により、今までフィールド種目では表彰台から遠ざかっていた本学。しかし今大会では女子走り高跳びの奥寺(コ3)も入賞まであと一歩に迫るなど目覚めの時は近い。  
  世界を見据える岡田とフィールド種目に光をともす松堂。二人の存在は、跳躍への原動力となるだろう。  
  実力ある選手の入部により、選手層が厚みを増していく立大陸上競技部。男子1部昇格と女子総合8位入賞。その目標に向けて確実に距離を縮めている。一歩一歩。確かな足どりで。 (西田茉央)

 


 

【重量挙部】桐山 48kg級 全日本3位


   立大重量挙部史上初の女子選手、桐山安奈(コ1)の首に3位のメダルが掛けられた。このウエイトリフティング界最大の大会に同部から出場を果たしたのもまた、初の快挙だった。  
  小さな体に「RIKKYO」の6文字が輝く。最高の舞台で堂々たる試技を見せた彼女が象徴するのは、紛れもなく新時代の到来だ。

 

輝く勲章
  試合前、桐山の表情は穏やかだった。しかし最初の試技、スナッチのバーベルを前にすると一変。その目は鋭い眼光を放った。
  桐山は1回目で50`に成功し、同試技に失敗した田窪(早大)を1歩リードする。さらに3回目で、表彰台を狙うため堅実にとりにいったという54`を挙げることに成功。スナッチを終えた時点で3位に立つ。4位の田窪に6`の差をつけるばかりでなく、2位の井上(須磨友が丘高)と1`差に迫る好勝負を展開していた。
  続く種目、ジャークでは1回目に65`を選択した桐山。肩に乗せたバーベルをしっかりと頭上に掲げ、見事にこれを押さえた。だが「フォームが乱れた」と残りの試技を失敗。減量の影響により足が踏ん張れなかった。とはいえトータルで119`をマーク。セコンドの「(スナッチで)3`離していれば確実」との作戦通り、田窪を抑え見事3位のメダルを手にした。
  だが、痛感したのはトップレベルとの壁だった。当初からオリンピック出場を目標としていた彼女。試合後には「甘く見ていた」とこぼす。それでも夢は捨てなかった。「やってやる」。大舞台を経て、その決意は揺るぎないものとなった。

 

継承される意志
 再び夜明けがやってきた。創部54年の歴史をもつ重量挙部。この部を語る上で「部員不足」という言葉は欠かせない。付きまとう活動停止の危機。立大体育会の中でも、特に苦難を経験してきている。だが、終わらない夜は無かった。そして陰にはいつも、懸命に歴史を紡いだ"縁の下の力持ち"の姿があった。  
  主将・河村(コ4)はまさしくその一人だ。独りでバーベルと向き合う日々を送った。逃げ出したくなったこともある。なんとかして下を向きがちな部の流れを変えたい。そんな時、母校の後輩である桐山が立大への進学を視野に入れていることを耳にする。後輩の将来のため、そして部のため。彼は桐山の入部を絶対にあきらめなかった。面接の練習にも毎晩付き合った。そんな彼に桐山も厚い信頼を寄せるようになる。  
  そして今、部に新たな歴史が刻まれる。"史上初の女子選手"、"史上初の全日本出場"。得たものは大きく、それでいて重い。立大重量挙部を支えてきたのは、常に未経験者だった。誰もが成長を実感できるのがこの競技の魅力だからだ。新旧のカラーが融合していく。まさに萌芽(ほうが)期と言えるだろう。新時代の先駆者となるのは、わずか5名の部員たち。彼らの魂は間違いなく後世へと語り継がれる。(池田貴裕)

 


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