立教スポーツ第185号

<12月2日更新>
   

    
【軟式野球部】  
はじける歓喜の笑顔!!
31年振り 優勝 3年連続東日本優勝
 

 全員野球を貫いた立大が最後に笑った。東京六大学軟式野球秋季リーグ戦において、立大が31年ぶりの優勝を成し遂げた。春に悔しい思いを味わった彼ら。しかし、成長を遂げた"エース"と築き上げられた"チームの一体感"を武器に、幾多の接戦でも白星を重ねた。

新たなエース
 変わらなければいけなかった。準優勝した昨年のチームからエースの岡本(09年度卒)が引退。さらに、「去年はチームが崩壊していた」(小久保=観3)。春を終えても、その大きな穴は埋まっていなかった。
 春、主将の小久保は結果を出せないでいる中道(コ3)を使い続けていた。「秋季リーグは中道と心中する」。エースになれるのは中道以外いないと信じていた。夏に猛練習をチームに課した時も、中道を限界まで追い詰めた。時には厳しい言葉も使った。だからこそ、小久保が寄せてくれる信頼に中道も応えようとした。「小久保についていけば、勝てる」
 8月末、秋季リーグ開幕。立大は7試合を終えた時点で首位を独走していた。中道の惜しまぬ努力は、6勝1敗という結果に証明されていた。そして、8戦目の明大戦。勝てば東日本大会出場が決まるこの試合でも、9回表までは6−0と優位に立っていた。
  しかし最終回、勝ちを焦った中道に明大打線が襲い掛かる。二死から安打を重ねられ、瞬く間に満塁。さらに、9番には走者一掃のタイムリーを許し6−3。突然の乱調に、小久保はたまらずマウンドの中道の元へ。「オレを信じて、オレのミットへ投げて」。この一言で落ち着きを取り戻した中道。よみがえったエースの直球が、粘る明大打線をねじ伏せた。

一体感が加わり
「今日は三振で終わらせる」。優勝が懸かった法大戦の前、小久保は中道とこんな約束を交わしていた。だが、あと1勝というプレッシャーが中道の調子を狂わせる。四球に失策、そして失点。明大戦で見せたもろさがこの日も出てしまう。こんな沈んだ雰囲気を盛り返すだけの勢いが、春のチームにはなかった。だが、この日は誰一人諦めていなかった。途切れない声。夏を乗り越え、自信をつけた選手たちの間には、昨年にはなかった一体感が生まれていた。「ああこれはいけたな」。小久保はそう確信した。マウンドに立つエースを声援が後押しする。2回以降、スコアボードには0だけが並んだ。
  そして、1点を追う9回、エースの好投についにチームが応えた。一死から高橋(コ3)が四球で出塁すると、ここから代打攻勢を仕掛ける。この作戦が功を奏し、満塁。全員でつないだこのチャンス。初球を振り抜いた加藤尚(コ2)の鋭い打球は、ライトスタンドに突き刺さった。土壇場での逆転満塁本塁打。中道を奮い立たせるには十分過ぎる一発だった。
  「チームに助けられてここまで来られた」。今度は中道がチームメイトの期待に応える番だった。2アウト2ストライク。「今日は三振で終わらせる」。中道の投じたこん身の118球目。打者のバットは空を切り、ボールは約束通り小久保のミットに収まった。抱き合うバッテリーの元へ駆け寄るチームメイトたち。春の立大の姿はもうそこにはなかった。(田島尚斗)

     



【スケート部フィギュアスケート部門】銀盤のプリンス 中村 東日本ジュニア 優勝


  世界を知るルーキーがついに実力の片鱗(へんりん)を見せた。輝かしい実績を持つフィギュア界のホープ・中村健人(営1)が東日本ジュニアで見事優勝。課題は残ったものの、ショートプログラム(以下SP)ではシニアにも迫る点数で自己ベストをたたき出し、さらなる成長を予感させた。

 

越えるべき壁
 1日目のSP。中村は持前の表現力を存分に発揮し、観客を魅了した。冒頭のトリプルアクセルもきれいに決め、ノーミスの演技で自己ベストを更新。首位に立った。演技を終えた中村からは自然と笑みがこぼれ、会場も彼をたたえる歓声に沸いていた。「やってやる、という気持ちで滑った」。その意気込みが功を奏した、圧巻の演技だった。
 しかし、2日目のフリースケーティング(以下FS)は一転、彼にとって不本意なものとなった。SPとは対照的にジャンプのミスが目立ち、「全く満足のいくような演技ではなかった」という。
 確かに今シーズンの中村はFSで精細を欠いていた。だがその分SP以上に何度も滑り込み、修正に修正を重ねてきた。さらに「強い自分に戻る」という意味で衣装を好調だった昨シーズンのものに変更。技術的にも精神的にも準備を整え臨んだ大会だった。それだけに、結果は優勝でもやり場のない悔しさが残る。
 「気持ちの問題」。彼自身不調の原因をそう分析する。この大会で「スランプを抜け出したかった」という中村。トップ選手なら誰もがぶつかる壁が彼の目の前に立ちはだかっている。その壁を越えたとき、さらに輝きを増した中村がリンクに帰ってきてくれるだろう。(伊藤衣璃子)

 

何事にも真摯

中学時代から7年連続で日本ジュニア選手権に出場。昨シーズンは四大陸フィギュアの日本代表に選ばれるなど輝かしい経歴を持つ中村は、自分に厳しい姿勢を崩さないストイックな青年だ。
 「演技をする上で多少のプレッシャーはありますが、間違いなく自分の成長に必要なことです。それに、トップ選手はもっとプレッシャーを抱えている。僕はそんなこと言ってる場合じゃないな、と思います」
 また、勉学に対しても積極的な一面を見せる。そもそも立大に進学したのも練習環境より授業を優先させてのこと。練習や試合で授業に出席できる回数が限られているものの、決してそのことを言い訳にしない。「大学に入ったからには、その授業一つ一つに興味と楽しみを見いだしたい」。スケートはもちろん、何事に対しても真摯(しんし)に向き合う姿勢を貫いている。
「一度やると決めたら、やり遂げるまで気が済みません」。真っすぐな瞳と、丁寧な言葉づかい。スケートについて語る中村の姿を見れば、彼の演技が吸い込まれるような魅力に満ちていることにも納得がいく。優雅さと力強さを兼ね備えた彼のスケーティングに、その人柄が大きく影響していることは、確かだ。      (大森薫子)

                                               (谷口)

 



 

【陸上競技部】 国体 岡田 2位 学生新


  岡田久美子(社1)が千葉国体の成年女子一万b競歩で見事2位入賞。学生新記録、日本ジュニア新記録を打ち立て、快挙に花を添えた。五輪の表彰台を目標とする岡田。日本記録保持者を破り、夢の五輪へとまた一歩前進した。来年はシニアデビュー。20`転向への区切りとなる今大会で、ジュニアとしての有終の美を飾った。

狙った学生新
 来季からシニアとなり、20`のロードレースに出場する岡田。彼女にとって、今回の国体は一万b競歩の総決算となる大会だった。その舞台で、目標としてきた選手であり、日本記録保持者の川崎(富士通)を抑え堂々の2位入賞。「満足できる結果だった。これで心置きなく20`にいける」と、彼女は屈託のない笑顔を見せた。
 大会当日のコンディションは良好。「最低でもジュニア日本記録更新が目標。調子が良ければ日本学生記録を更新したい」とレース前から狙っていた。多くの有力選手と共に成年の部に出場した岡田は、競技開始から先頭をいく大利(富士通)と川崎についていく。しかし1000bを通過した時点で予想よりラップタイムが速く、自分の判断で冷静にペースを落とした。その後、2つの反則を取られ慎重にならざるを得なくなった川崎に対し、岡田は反則を取られにくいという強みを生かして、実力を存分に発揮。44分34秒13でゴールし、目標のジュニア日本記録、日本学生記録の更新を見事実現させた。
「大人の世界に一歩近づいた。世界で戦う人にもついていけるんだ、と自信になった」。今回の結果をうれしそうにこう振り返った岡田。着実に目標を実現する彼女は、これからも前進を続けていく。(安藤瞳)
 

来季に向けて 
 今季はジュニアとして迎える最後の年。岡田は出場したすべての大会で表彰台に上るという偉業を成し遂げた。この活躍は、単に技術の高さによるものではない。随所で成長できたからこそのものだった。
 高校と大学の相違点について、岡田は「ピークに持っていく時期が違う」と語る。去年までは夏のインターハイにすべてを懸けてきたが、大学では9月のインカレ、2月の日本選手権と2度大きな大会がある。特に寒さが苦手な岡田にとって2月の大会は大きなヤマ場となる。その対策として今季の冬は体質改善に取り組むという。メインは筋力強化と食事管理で、筋力強化では体幹トレーニングに重点を置く。食事の面では体を冷やさない工夫として「サラダの代わりに温野菜を食べたい。これは川崎選手からのアドバイス」。ここまで食事に気を使うのは初めてだという。この点からも国体2位に満足しない彼女の姿勢がうかがえる。
今季は大きな精神的変化も見られた。世界ジュニアで世界のレベルに触れたことで、フォームについて自分なりに考えるようになった。「前は話を聞くだけだったが、今では自分で指導内容の取捨選択ができる。これは大きな進歩」と自身を分析する。重ねた努力と成長は来季も実を結ぶことだろう。 (佐山沙穂莉)

 




【ローラーホッケー部】 最高のフィナーレ アベックV


  さわやかな秋晴れの空の下、リンクに笑顔がはじけた――。学生ローラーホッケー界最大の大会で、立大がアベック優勝を果たした。男子は3年ぶり、女子は4連覇の偉業達成だ。昨年の雪辱に燃えた男子と、プレッシャーと戦い続けた女子。インカレ優勝への熱き思いと、培ってきたチームワークでつかみ取った、日本一の座だった。

 

強さの証明
 昨年のインカレで3位という結果に終わった男子。当時のメンバーが多く残る立大が、この大会に懸ける気持ちは大きかった。
1回戦で日大を下し、準決勝では昨年敗北を喫した国学院大と対戦。試合開始から均衡状態が続いたが、主将・大久保(済4)が後半13分ゴールネットを揺らす。「自分たちは去年の敗戦がバネになった。それが差になって表れた」と試合を振り返ったのはGK児島(済4)。その1点を最後まで守り抜いてリベンジを果たした。勢いに乗る立大は決勝で専大を破り、悲願を達成した。
 「当然の結果です」と語る大久保。「学生には負けない」という高い目標の下一つも試合を落とさずに勝ち続けてきたことで、彼らは強さを証明した。
  昨年のインカレでのんだ悔し涙。その思いをかみしめて進み続けてきた1年間が、彼らを学生王者の座に導いた。(中村賢太)

 

刻まれた歴史
   女子は4連覇がかかっていた。周囲の大きな期待に応えるべく、立大は優勝だけを狙っていた。
 初戦の相手は日大。シュートを増やすという作戦を立てていた立大の攻撃的な姿勢が功を奏した。前半10分に上山(観4)が右サイドからパックをたたき込み先制。そのまま相手に流れを渡すことなく、勝利を挙げた。女子キャプテンの秦(文4)は、「次は(自分も)得点に絡めれば」と決勝戦に向け意気込んだ。
  そして1年間の集大成となる、緊張の一戦が始まった。決勝の相手は国学院大だ。序盤から次々とシュートを打たれるが、GK廣瀬(社4)の堅い守りで、失点を防いだ。そんな中、ついに秦が魅せる。相手ディフェンスのこぼれ球を、秦が逃さずスティックでとらえ、豪快にゴールに突き刺した。その後も、優勝をめぐり激しいせめぎ合いが続いたが、最後に笑ったのは立大だった。彼女たちは4連覇を達成し、記録を塗り替えた。(大杉香帆里)

 

大切な仲間
   今大会を最後に引退した4年生。彼らには今まで一緒にローラーホッケー人生を送った"仲間"への大切な思いがあった。
 「みんなで高め合っていけることがローラーホッケーの魅力」(上山)、「仲間とは一生仲良くしたい」(得丸=法4)と彼らは語る。周囲からの信頼も厚い主将・大久保も「同期がいなかったら今の自分はいない」と言う。どんな困難にぶつかっても、彼のそばには必ず同期がいた。
  男女のつながりも強く、互いの勝利を喜び合うことはもちろん、同じ目標に向かって共に成長してきた。先に優勝した女子の勇姿が男子の学生王者への思いをさらに加熱させ、立大をアベック優勝に導いた。"仲間"なしに彼らのローラーホッケーは語れない。
 空高くスティックを掲げる彼らの表情には笑顔と涙があふれていた。この栄光はいつまでも輝きを放ち続けるだろう。(清水亨介)

 



 

【フェンシング部】鮮烈デビュー 佐藤 女子エペ個人 インカレ4位


  また一つ、立大フェンシング部が新たな歴史を刻んだ。佐藤茜(コ1)が女子エペ個人で4位に入賞。期待の新人によってもたらされた快挙に、部は喜びに沸いた。長らくインカレ出場から遠ざかっていた女子にとって、未来への展望が開かれる結果となった。

次のステップへ
 自身初となるインカレの舞台。1年生の佐藤にとって、見事その実力を証明する場となった。
 「目標は1回戦を勝ち抜くこと」。全国の強豪が集うインカレには、挑戦の姿勢で臨んだという。予選はブロックごとに総当たりで行われた。関西1位の強敵と同ブロックになり、厳しい戦いを強いられた。しかし、5戦全勝の活躍で本選へのシード権を獲得。弾みをつけた。
 本選はトーナメント方式で行われた。「思い切りやればいいと考えたら吹っ切れた」と緊張感が漂う場でも、佐藤は落ち着いていた。初戦では延長戦にもつれ込むが、焦らず突きを決めて5−4で競り勝つ。続く3回戦も15−14で接戦をものにし、ついにベスト4まで上り詰めた。
 しかし大舞台でのプレッシャーが佐藤の動きを鈍らせた。迎えた準決勝を7−15で落とすと、続く3位決定戦も9−15で敗北。初のインカレで4位と躍進を遂げるも、頂点が見えただけに悔しさの残る内容となった。「弱点を突かれてしまい、完敗」と試合を振り返り、ベスト4という結果については「まだ実感がわかない」と語った。
今大会で全国レベルを体感した佐藤。これからの成長の糧を得て、さらなる活躍へつなげていくだろう。

佐藤の軌跡
 大型新人の登場に部も期待を寄せる。新主将の高柳(社2)は「1年生なのにすごい」と、後輩の活躍を喜ぶ。特に人数不足で団体戦に出場することもままならなかった女子にとって、佐藤は頼もしい存在だ。彼女の実力の裏には積み重ねてきた経験と努力があった。
 佐藤は兄の影響を受け小学2年からフェンシングを始めた。その後、高校3年時のインターハイで上位に入賞。そこでフェンシングは終わりにするつもりだった。しかし「負けた試合がすごく悔しくて、大学でもやってやろうと思った」と立大フェンシング部に入部。インカレの前に行われた新人戦では優勝を飾り、それが自信にもつながった。自身のプレイスタイルについては、相手が感じる「やりづらさ」が持ち味だという。また新人戦、インカレともに好成績を残したエペは、佐藤の得意種目だ。「相手をだまして、技を予想できる」と、その魅力を語った。
 部員からは「真面目で優しい」と評価をされる佐藤。「(フェンシングを)楽しんでやれることがうれしい」と話す彼女だからこそ、競技に対してひたむきに取り組めている。今、新エースとしての一歩を踏み出した彼女の姿は、未来への大きな可能性に満ちあふれている。  (田島麻央)


 

 


 
 






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