立教スポーツ第186号

<4月1日更新>
   

    
【陸上競技部】  
走り出した新星
澤田 アジアパラ 金 100m アジア新
 

  立大陸上競技部に新たなヒロインが誕生した。広州2010アジアパラ競技大会で、澤田優蘭(コ1)が女子百bT13クラスにおいてアジア新記録をたたき出して優勝。圧倒的な速さを見せ、“澤田”の名を世界に知らしめた。しかしロンドンパラリンピック出場を目指す彼女にとって、これは序章にすぎない。

越えるべき自分

 「十分に練習して臨めたわけではなかった」。今回のアジアパラ競技大会をこう振り返った澤田。入部してすぐにけがをしたため、練習できない時期があり不安もあったが、自らを奮い立たせ試合に挑んだ。
  彼女にとって今大会は、けがが治ってから初めての試合だった。そのため、どの程度走ることができるのかは全く予想できなかったという。「0.1秒でも速く走れたらいい」。目標は順位や具体的なタイムではなく、自己ベストの更新と自分が納得できる記録を残すことだった。
 試合当日、澤田は適度な緊張感の中、落ち着いてトラックに立った。号砲とともに勢い良く走りだした選手たち。スタートを苦手としていた澤田だが、積極的に取り組んだ練習の成果が表れ、飛び出しに成功。レース中は他の選手を意識することなく百bを走り切った。まさに自分との戦いだった。結果は堂々の1位でフィニッシュ。同時に13秒28で自己ベストを更新し、あまり意識していなかった日本記録、アジア記録も塗り替える好成績を収めた。
 アジアパラ制覇という結果に澤田自身は、「とりあえず1つのステップとしてはよかった がまだまだ課題も多い」と冷静だ。日本記録、アジア記録更新についても「うれしかったが、気持ちはもう次に向かっている」と話し、さらなる挑戦に意欲を見せた。
 現状に満足することなくより上を目指す澤田。これからどのような活躍を見せてくれるか、期待せずにはいられない。(安藤瞳)

ロンドンへの助走
 澤田が陸上競技を本格的に始めたのは15歳の時。スポーツの楽しさを教えてくれた恩師が、彼女を陸上競技の世界へと導いた。しかし当時は練習に専念できる環境になく、時間も十分に取れなかった。その逆境をはねのけたのは彼女の才能にほかならない。
 競技歴2年にして2008年の北京パラリンピックに最年少の17歳で出場。結果は女子百bT13クラスで16位。女子走り幅跳びは9位だったものの、自己ベストを30a更新する躍進を見せた。
 立大陸上競技部に入部したことで、練習環境は格段に向上した。それだけでなく、熱心な部員から得るものは多い。「陸上がどのようなものか分かってきた」と語る澤田。彼らの存在は彼女の陸上競技に向かう姿勢に変化をもたらした。
 澤田は自らの課題を「走力」という。今大会は百bのみでの出場だったが、彼女の専門は走り幅跳び。跳躍種目において、助走スピードは記録を左右する大きな要因となる。助走に必要な走力を鍛えるためにも、今季はトラック競技を主体に練習を重ねている。「ゆくゆくは走り幅跳びを中心にしたい」と決意を口にした。
 次なる目標はロンドンパラリンピック。3月末に発表された標準記録を突破することが出場資格となる。4月には国際大会が控えており、「それまでに自分の走りを完成させて挑みたい」と意気込みをみせた。
 今回アジアパラで頭角を現した澤田。その経験を生かし、新たな挑戦が始まる。(西田茉央)     



【スケート部フィギュアスケート部門】氷上の頂上決戦 世界ジュニア出場! 中村 全日本 8位


   全日本フィギュアスケート選手権大会で、中村健人(営1)が魅せた!世界屈指の選手がそろう中、ジュニア王者の貫録でショートプログラム(以下SP)、フリースケーティング(以下FS)共に安定した滑りを披露。日本中が注目する舞台でシーズンベストをたたき出し、見事8位入賞を果たした。

 

聖夜の贈り物
 12月24日、クリスマスイブ。日本フィギュア界の頂上決戦が幕を開けるこの日、会場は観客であふれ、独特な緊張感に包まれていた。しかしそんな雰囲気の中にあっても中村は凛(りん)としていた。
 迎えたSP。中村がリンクの中央でポーズを決めると、一瞬の静寂が訪れる。そこから観客は彼のとりこになった。「演技の前、早く滑りたくてワクワクしていた」。会場に響き渡る手拍子の中、誰よりも中村本人が楽しんで滑っていた。最初のトリプルアクセルで着氷に失敗するもののすぐに切り替え、その後は持ち前の表現力を存分に生かし、9位につける。
 2日目のFSは、「SPと反対にすごく緊張した」と語る中村。だがその言葉とは裏腹に冒頭のトリプルアクセルをきれいに決めると、その後もミスを最小限に抑え、完成度の高い演技を披露。順位を一つ上げ、見事8位に入賞した。「最初のジャンプを決めた後に歓声が上がったのがすごくうれしかった」と振り返る中村。全日本ジュニアで力を出し切れず悔しい思いをしただけに、今回満足のいく演技ができたことは彼にとって。自信となった。自信となった大きなて 大きな自信となった。
 12月25日クリスマス。実力を発揮することのできた中村は、「良いクリスマスプレゼントになりました」と喜びの表情を浮かべた。(大森薫子)

 

来季へ再発進

 「一瞬で大きな成果を挙げるのはまだ楽。だけどそれを継続させることの方がずっと難しい」。これは中村がジュニア生活を通して得た教訓だ。
 「50点。良い結果もあったし、悪い結果もあった」と中村はジュニアでの競技生活を評価する。今シーズン、目標とする全日本ジュニアで優勝。その一方で、順調だった昨シーズンとは対照的に自分の欲、周りの期待に押しつぶされそうになり理想の演技ができないことも多々あった。だがそれと向き合い闘うことで格段に強さを増した。
 また、支えてくれる家族、仲間への感謝の気持ちも実感した。「とにかく今は、サポートしてくれた人に感謝したい」。言葉で表現しきれないほどの思いが刻まれたジュニアという舞台。そこで最後まで夢中になって演じ続けた彼が得たものは栄冠だけではない。それよりもはるかに大きなものだった。
 来シーズン、彼はシニアに参戦する。そこで待ち構えているのは実力者ばかり。シニアのグランプリで表彰台に上がることを目指し、既に4回転にも挑んでいるという。「もう一度ゼロから始めたい。大変だけどそれを楽しめるくらい強くなって、またリンクで新しい中村健人を表現していきたい」。より磨きをかけた彼が、表情でどんな個性を描き出してくれるか必見だ。(岩間友宏)

                          

 



 

【ホッケー部女子】 チームの力見せつけ 1部昇格


 秋季リーグ戦において、立大が6季ぶりとなる1部昇格を果たした。2部に降格して以来、幾度も入れ替え戦に進出していたが、1部の壁に阻まれ昇格を逃し続けてきた。そして今季、全員の力でついに成し遂げた1部復帰。このチームで臨んだ最後の公式戦を、最高の形で締めくくった。

昇格の瞬間
 「1部昇格」。毎回のように口にしていたその目標を、彼女たちは今季ついに達成した。
 リーグ戦が開幕し第1、第2戦と快勝した立大。第3戦までを1勝1分けで終え、順位決定予選へと進んだ。公式戦で勝利したことのない学習院大が相手だったが終了間際に得点し、接戦を制す。勢いそのままに順位決定戦で成城大を下し、 2部優勝を決めた。「ここまで来たら、1部昇格しかない」。彼女たちの気持ちは一つだった。
 入れ替え戦の相手は、多くの経験者を擁する強豪・東海大。早々に不意を突かれ失点するも、前半を0ー1で折り返す。後半も相手の猛攻を受けるが、粘り強く守り、得点のチャンスをうかがう。試合時間残り8分、その時が来た。ゴール前のボールを前田(文3)が押し込み、土壇場で同点に追いついた。
 そのまま延長戦に突入。それでも決着はつかず、勝敗の行方はペナルティ・ストローク戦に委ねられた。「自信があった」というGK新井ひ(コ4)が堅い守りを見せ、2ー1で立大4回目のストロークを迎える。ストローカーは前田。決まれば昇格と言う場面、彼女の放ったボールがゴールネットを揺らした。
 

涙のわけ
 入れ替え戦終了後、選手たちの瞳に浮かんでいた涙。それは、1部昇格への並々ならぬ思いの表れだった。
 3年前も立大は1部に昇格をしたことがある。当時を、「4年生の力だけだった」と主将・田口(社4)は振り返る。新チームはその後すぐに降格。0ー27という歴史的大敗も喫した。その苦い経験があったからこそ、彼女たちは1部にこだわり練習に励んできた。
 全学年の意識が高かった今年のチーム。4年生だけではなく、下級生も多くレギュラー入りし活躍した。特に入れ替え戦で得点を決めた前田や、2部得点王に輝いた丸茂(文2)が攻撃の要としてチームに貢献。そんな後輩たちが「背中をを押してくれた」と4年生は口口に話す。見つけた課題を試合のたびに克服し、チーム一丸となって最後まで成長し続けてきた選手たち。この昇格は、部員全員で勝ち取ったものだった。
 そして、ここから新たな戦いが始める。いかに1部でプレーしていくのか。田口は、「今季の経験が生きると思う。1部で通用するはず」と来季のチームを激励した。降格の悔しさを知る4年生だからこそ、自慢の後輩に託す “1部残留”への思いは強い。今度こそ結果を残すため、ホッケー部女子は再び1部の舞台に挑む。(鈴木理子)

 



 

 


 
 






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