立教スポーツ第190号

<12月1日更新>
   

    
【自動車部】  
衝撃の快走劇
6時間耐久 優勝
 

 創部史上初の快挙だ! 第15回関東学生対抗軽自動車6時間耐久レースで立大が圧倒的な走りを見せつけて優勝を手にした。実際にコースを「走った者」と彼らを「走らせた者」。まさに全員で勝ち取った栄冠だった。

圧巻の縦走

 「表彰台は見晴らしが良かった」と、主将・久保寺(法4)は喜ぶ。未舗装路を6時間走り周回数で勝負を決するレースで、立大が最高の輝きを放った。
  トップバッターは立大最速の男・神山(法2)。エースが集う激戦の中「テンションが上がり、アクセル全開で走った」と攻撃的な走りで首位に躍り出る。続く大島(観2)は「速く走れる自信があった」。神山のベストラップを上回る好走でトップの座を揺るぎないものとする。3走目も務めた神山は「大島に負けるわけにはいかない」。エースの自覚が彼を突き動かした。危険を顧みない激走で驚異的なラップタイムをたたき出す。立大は独走態勢に入った―。
 久保寺が立てていた作戦は「前半は速く。後半は安全に」。主導権を握った立大は狙い通りの継走でレースを支配していく。次期主将・野間(法3)は安全な運転を心掛けたというもののリードを広げ、昨年屈辱の横転をした太田(法3)にバトンを託す。「つなぐ だけ」。太田は己の役割に徹することでリベンジを果たし、アンカー久保寺へとつなぐ。5時間も走ってきた車は傷んでいた。それでも「表彰台で何を言おうか考えていた」と余裕の走りだった。
 長丁場の末、ついに訪れた歓喜の瞬間。真っ先に振り下ろされたチェッカーフラッグが久保寺を迎える。2位と19周差という圧巻の走りで立大自動車部の歴史に大きな足跡を残した。  

男たちの7日間
 なぜ彼らは偉業を達成できたのだろう。今回のレースは半分のチームが完走さえできない過酷な大会だ。ドライバーの技術だけではく、質の高い車が求められる。圧勝の裏側にはドライバーを支える男たちの想像を絶する奮闘があった。
 「今回の車はできたてホヤホヤ仕様」。大会1週間前の練習中に事故を起こしレースカーが使用不可能となった。しかし、緊急事態に陥った彼らは冷静に対応した。すぐに車を購入し、急ピッチで整備を開始。部員全員で車を完成させ、困難を乗り切った。
 その中心人物は久保寺と並び自動車部の顔ともいえる市川(異4)だ。ドライバーが「速く走れるのは車があるからこそ。意見を取り入れてくれる」と感謝するように連携を徹底してきた。部員からは「工具の管理がしっかりしている」「知識が豊富で何でもできる人」と尊敬されている。彼は今回の大会をこう振り返る――。「やれることは全部やった」。
 さらに市川が「ドライバーと同じくらいすごい」と認める存在が入部したばかりの4人の1年生だ。ピット作業を必死に行いチームを支えた。エース、神山は言う。「走りやすい環境を作ったのは1年生」だと。ドライバーと整備に専念する者。仕事は違うが全ては勝利に向けられている。
 優勝という大輪の花。それを咲かせたのは土の中で張っている大きな根だったに違いない。(地代所正)    



【陸上競技部】岡田 国体成年女子10000mW 2年連続2位


  安定した歩みは今年も健在だった。岡田久美子(社2)が国体成年女子一万b競歩で2年連続の2位入賞。強豪相手に互角の勝負を演じ、今後待ち受ける大会に弾みをつけた。

 

示した存在感
 日本の競歩界をけん引するのは大利(富士通)、渕瀬(大塚製薬)、川崎(富士通)の3選手。今大会はこの3人に存在感を示すことが岡田の目標だった。
 レース序盤「速いペースに驚いて、付いていけなかった」と大利の飛び出しに圧倒される。また「気持ちで負けた。一秒でも一歩でも大利さんの前を歩きたかった」と勝負に対し消極的になったことを悔やんだ。
 岡田は渕瀬と激しい2位争いを繰り広げることに。渕瀬にぴったりと付き、様子をうかがった。レース中盤、競歩の醍醐味(だいごみ)の駆け引きが勝負を白熱させる。手に汗握るデッドヒートは渕瀬に軍配が上がり、岡田は3位でフィニッシュ。しかし、渕瀬の失 格によって2年連続の2位が決まった。「今大会はトップの3選手を焦らせるレースをしたかった」。渕瀬とは互角の勝負を演じた岡田。トップ選手を相手に十分戦えることを確かに証明した。
 来年2月には、ロンドン五輪の選考会を兼ねた日本選手権が控えている。岡田は「(今大会で)優勝を逃したのは悔しい」と話す一方で「負けたことでやる気が出た」と振り返る。「日本選手権に向けてモチベーションが上がった。今燃えている!」と闘志を前面に押し出す。確かな自信と今後への意欲を高めた岡田。日本選手権に大きな一歩を踏み出した価値ある大会となった。

 

すべてを競歩に

 ロンドン五輪――岡田が競歩を始めてから目標としてきた夢の舞台。その切符を懸けた戦いが刻々と迫っている。
 五輪出場には、二つの大きな壁を乗り越えなければならない。一つは参加標準記録の1時間33分30秒を切ること。岡田の自己ベストは1時間34分30秒。20`競歩の経験は浅く成長途中のため、練習を重ねれば記録突破の可能性は高い。もう一つは強力なライバルたちを抑え、2位以内に入ることだ。世界で戦う経験豊富な相手に岡田がどのように勝負を挑むかがレース最大の焦点となる。
 トップ選手と競い合い、レベルの高さを肌で感じた岡田。それがいい刺激となり、モチベーションを高く維持できている。五輪を視野に入れたハードな練習から、それは明らかだ。長い距離に慣れるため、週に1度25`を歩くなど、1週間で累計88`の距離を踏んでいる。「最初は憂鬱(ゆううつ)だったけど、ほかの選手もやっているから負けられない」と厳しい練習にも決して妥協しない。
 また調整と視察を兼ねた元旦競歩に出場するため、正月も返上。日本選手権に向けて万全を期す。
 ここまで彼女を突き動かすのは競歩が好きという強い思いだ。「大学生活、今しかできないことは今やるべき」。今この瞬間を競歩にささげる岡田の努力が実る時、ロンドン五輪への道が開かれる。(野佑太)

                          

 



 

【軟式野球部】秋リーグ戦連覇 全日本出場


 彼らが今年もやってくれた!! 軟式野球部がリーグ戦秋連覇、全日本出場の「Wで史上初」の快挙を達成。優勝を決めた試合では東大に1―0と接戦をものにした。彼らはこのリーグにさまざまな「思い」を懸けていた。

ひとつになって
 「俺たちの秋」。この城崎(法3)の言葉には深い意味が隠されていた。
 6連勝でマジックを1として迎えた東大戦。先発のエース・中道(コ4)は安定感のある投球でスコアボードに「0」の字を描く。一方、打線は突破口を開けず投手戦の様相を呈した。
 だが4回、試合が動く。立大の4番・鈴木(法3)が二塁への強烈な打球で出塁するとベンチは盛り上がる。その後6番・城崎の内野安打などでこの試合初めて三塁に走者を進めた。続く菅原(コ3)に主将兼監督の小島(コ3)はささやく。「ノーサイン」。打球は浅い中飛。三塁走者の鈴木は「ここしかない」とスタートを切る。際どいタイミングだったが主審の両手が広がり、立大は大きな「1」点を刻んだ。
 その裏、1死三塁のピンチも捕手の城崎がけん制で走者を刺し、相手に流れを与えない。「ありがたかった」と中道。息の詰まる投げ合いは続き9回裏、マウンドにナインが集まる。「ここにいる9人だけじゃない。チームメイトみんなのためにアウトを」。最後の打者を外角いっぱいの直球で三振に切ると選手たちは史上初の喜びをかみしめた。
 「今の3年生が絡んでの試合がなく今年が最初で最後のチャンス。優勝を狙う」。そんな思いが「俺たちの秋」に込められていた。(川村亮太)  
 

自慢のチーム
 チームは練習が終了すると、学年関係なく団らんする。そしてある後輩は言った。「僕、先輩たちが大好きなんすよ」。
 今年、部を率いる小島は厳しい口調でメンバーを叱るが、頭の中ではチームのことを常に一番に考えていた。部員全員へ気を配り、誰一人として見放すことはなかった。
 春季リーグ戦、菅原の打率は良くなかった。それを知りながらも、小島は菅原を使い続けた。「秋に向けて、俺はあいつに期待しているから」。菅原はそんな小島の気持ちに応えようと諦めずに全力を振り絞る。その努力は秋に実った。マジックを1とした明大戦、優勝を決定付けた東大戦では決勝点を挙げる大活躍を見せた。
 小島にも落ち込むことがある。ため込む性格は悩みを表に出すことができない。同期はその様子に気付くと、すかさず彼を支える。彼の熱い思いは全員に伝わっている。それは、小島が一人一人の力を尊重しているからだ。普段は冗談を言い合う個性派ぞろいの仲間たち。試合中にベンチを見れば、いつも笑顔で緊張をほぐしてくれる。
 監督を雇わず、専用のグラウンドもない。しかし自慢のチームを彼ら全員で作り上げた。「一日でも長く、このチームで野球をやっていたい」。この気持ちを胸に、いざ全国へ。(大瀬楓)

 



    
【バレーボール部】  
40年ぶり 2部昇格
 

  ついに2部へ返り咲く。震災のため春季リーグ戦がなくなり、4年生にとって最後の今リーグにかけていた。3部2位で臨んだ入れ替え戦。リーグを通じて手に入れた「チーム力」を武器に2部7位の亜大に見事ストレート勝ち。40年ぶり2部昇格を決めた。

チームの転機

 8年前まで8部だった立大。怒涛(どとう)の快進撃で、2年前の春に3部へたどり着いた。それ以来2部だけを見据えてきたが、昨年までは上位に食い込めるチームではなかった。ミスを引きずり、重い空気が漂う――。しかし今年、転機が訪れチームは大きく変化する。
それは春季リーグ戦が中止の中、臨んだ東日本インカレだった。1回戦、東北2位の福島大を激戦の末下し、続いて同じ3部校の桜美林大にも快勝。1点を奪うたびに笑顔がはじけ、喜びを分かち合う。「楽しむことで勝ち方が分かった」(横山=コ3)。技術よりも、まずは楽しく自分たちのバレーを。そうすれば自然と結果がついてくる。目指すべきプレーが見え、チームは一つにまとまった。
ついに秋季リーグ戦が幕を開けた。開幕2連勝を飾り、一番重要と意識した大東大戦を迎える。だがいざ試合が始まると、相手の気迫に圧倒され選手たちは立ちすくんでしまう。「元気がない、立て直そう」。 エース・清水(文3)が声を掛けるも悪いムードを断ち切れなかった。全勝優勝を狙っていたが、まさかのストレート負け。「意識し過ぎてあだになった」と主将の真貝(しんかい=コ4)は涙を浮かべた。やはりこのチームに必要なのは「楽しむ」こと。それを再認識させられた。

 

取り戻した輝き
第4戦以降、雰囲気作りを重視してスタメンを決めた。気持ちでトスを上げる村前(コ1)、声でチームを鼓舞する田上(コ3)や大井(コ4)を投入。全員の力が合わさり、敗戦ムードを一掃。試合を重ねるごとにチーム力は増し、勢いも加速した。そして一戦も 落とすことなく連勝し、2位でリーグ戦を終える。
悲願の2部へ、亜大との入れ替え戦が始まった。序盤から清水や田上の活躍でリード。さらにスパイク賞と敢闘賞を受賞した大井のクイックで畳み掛け、一気に相手を引き離す。いつも通り、自分たちのバレーを楽しむ選手たちの姿は輝いていた。第3セットも主導権を譲らず、次々と多彩な攻撃を仕掛ける。そして25点目、相手のスパイクが大きくアウト。その瞬間、会場は彼らの快挙をたたえる拍手で包まれた。
4年生の入部時6部に所属していた立大。当時は2部など夢の舞台だった。だが実力ある下級生がチームに加入し、希望をもたらした。後輩たちは「4年生のため」と邁進(まいしん)し、4年生は「感謝している」(大峰=コ4)と後輩をねぎらう。上下の垣根がなく仲の良い彼らは、信頼関係を深め、チームとして成長を遂げた。この昇格劇は決して個々の力だけではない。紛れもなく、チームが一つに結束したからこそ達成したものだった。(小澤かほり)


    
【ローラーホッケー部】  
史上初 インカレ男子 連覇
 

  立大ローラーホッケー部男子の強さは本物だった。学生で最高峰の大会、インカレで立大史上初の連覇を達成。常に高みを目指すことで得た自信と経験が、彼らを勝利へと導いた。春に行われた東日本選手権と合わせて学生大会を全て制し、念願の完全制覇を成し遂げた。

“完成”の時

逆境に負けない強さと前回覇者としてのプライド。彼らの目には、頂点の輝きしか見えなかった。  昨年日本一となった立大は1回戦を免除され、準決勝からの登場となった。日没が迫り薄暗い状況の中、近大を相手に力の差を見せつける。開始直後に主将・松村(社4)が鋭いシュートをたたき込むと、前半だけで5点のリードを奪う。後半に入ってからも攻撃の手を緩めず、終わってみれば13−1の圧勝。1年間貫いた攻撃的なチームカラーが存分に発揮された立大らしい勝利だった。「チームが完成した」。準決勝終了後の松村の表情は自信と充実感に満ちあふれていた。  これまで、「学生には負けない」という精神の下で白星を積み重ね、社会人から金星を挙げることもあった。しかし、今シーズン学生で唯一黒星を喫した相手がいる。   5月に行われた東日本学生選手権、立大を倒すために入念な作戦を立てた日大を前に1−2で屈した。決勝の相手はその日大。雪辱に燃える選手たちは、特別な対策は立てず「自分たちの色」を出し、押していくことを決めた。  迎えた翌日の決勝。4年生にとっては学生生活最後の大一番。日本一を決める戦いは、雲ひとつない快晴の下で始まった。
 

劇的な幕切れ
予想通り日大はフィールドプレーヤー全員が奇麗な正方形の守備陣形を作り、立大の攻撃を阻んできた。前半5分、ゴール前でGK金井(済4)がクリアしたパックが相手に当たり、押し込まれる。「事故のような失点」だった。
 しかし、立大は落ち着いていた。いつもの果敢な攻めで次々と日大ゴールへ迫る。ハーフタイムも冷静に戦術を確認。時折笑顔も見せ、負けているチームとは思えない雰囲気があった。
 後半7分、これまで守備に徹していた秋本(観4)が、右サイドに抜け出す。「相手のGKが動いたのが見えた」と一瞬の隙を逃さず豪快にシュート。同点に追いつく。
 刻一刻と迫る試合終了のブザー。そんな状況の中でも「勝っちゃうんだろうなとしか思えなかった」(松村)。残り30秒、矢崎(文4)が左サイドでパックを持ち全速力で走りこんだ奥村(文4)へ。「仲間からもらった、最後のパス」。迷わずニアサイドにたたき込んだ。リンクを駆け回り喜びを爆発させる選手たち。試合が終わると、ベンチメンバーもリンクに飛び込んだ。
 「幸せです」。リベンジを果たし、完全優勝を遂げた彼ら。太陽の下で抱き合い流した歓喜の涙は、まぶしく輝き続けていた。 (古谷駿太郎)
     


 

 


 
 

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