立教スポーツ第199号

<10月3日更新>
   

    
【陸上部】  
世界へ踏み出す1歩!!
岡田 インカレ V4 10000mW
 

  学生競歩界に敵無し!第82回日本学生陸上競技対校選手権大会において岡田久美子(社4)が女子一万b競歩で優勝。5月の関東インカレに続き4連覇を達成した。次に彼女が目指す先は、3年後のリオデジャネイロ五輪。世界への飽くなき挑戦は続く

"超克"
 「すごくほっとした」。日本インカレ4連覇という快挙を成し遂げた岡田の第一声。初めて挑んだインカレで優勝して以来、最後までトップの座を譲ることはなかった。世界ジュニア3位入賞、関東インカレ4連覇。これまで数々の功績を残し続けてきた一方で、常に勝たなければいけない重圧が彼女を追い詰める。プレッシャーを抱えたまま試合に臨んだ。  
  それまで降り続いていた雨はやみ、スタート開始を告げる合図が鳴る。直後先頭に躍り出たのは、関西インカレの優勝者、西日本では抜群の強さを誇るライバルの前田(立命大)。 そのすぐ後ろに岡田が付いた。1600bに差し掛かり、2人は後続集団を徐々に引き離し始める。前だけを見据え、自分のペースを崩さない。4000b通過時には、完全に勝負はこの2人に絞られた。
   岡田が前に出ればすかさず前田も抜きにかかる。一進一退の大接戦。「記録よりも勝負に徹した」。 レース終盤に突入しても、冷静さを失わなかった。
  残り2000b。前田の前に抜け出すと同時に、ペースを一気に引き上げる。ラップタイムは、1000b通過ごろと同じほどまでに戻っていた。前田が食らいつくも、2人の距離は徐々に広がっていく。
  最後の直線に入り勝利を確信した岡田。帽子とサングラスを外すと、大歓声に応え両手をあげてゴールした。その光景は、彼女が重圧に打ち勝ち、4連覇を達成した証しでもあった。

"眺望"
 確かな手応えをつかんでいた。7月に基礎的な筋力トレーニングを積み、8月には初めて陸上競技連盟の合宿に参加。順調にコンディションを整え、けが無く夏を乗り切った。
  万全の状態で今大会に挑むことができた岡田。そんな彼女には、常に心強い支えがある。声を張り上げラップタイムを伝えてくれる仲間たち。寄せ書きの入った給水ボトルを贈られたこともあった。「みんなの応援が本当に力になる」。 競技中に聞こえる声援は、しっかりと彼女の耳に届いていた。
  これまで学生相手に無類の強さを誇ってきた岡田。そんな彼女の学生生活も、残り約半年で終わりを迎える。彼女が見据えるその先にあるもの。今改めて、学生女王としての決意を力強く口にした。「私がこれからの日本競歩界を引っ張っていく」。
  やり投げのディーン(早大)、 短距離走の飯塚(中大)らと共に“プラチナ世代”と評されている岡田。しかし彼らとは違い、これまでに五輪や世界陸上の出場経験はない。彼女の目指す最大の目標。それは、3年後に控えるリオデジャネイロ五輪出場だ。派遣設定記録である、20`競歩での1時間29分31秒。このタイムを破れば、世界への扉は開かれる。
  曇天を吹き飛ばすかのような晴れやかな笑顔が国立競技場に咲き誇る。見慣れた表彰台の一番上からの景色。彼女の澄んだ瞳の奥には、すでに世界の舞台が映っている。  (竹中進)

"悲願の表彰台"
 自己ベストと立大記録の更新、日本インカレB標準突破。男子2部百十bハードルで3位入賞を果たした長谷部(営3)だが、その快挙の陰には表彰台への強い思いがあった。
  「決勝は順位だけを狙っていた」。第5レーンの長谷部の両隣にはインターハイ入賞経験のある高畠(東学大)と矢田(東学大)。「強い選手の隣で走れることは光栄」と謙遜しながらも、彼らには決して屈しない。今年は関カレ一本でいくと決め、コンディションを整えてきた。
  スタートから真っすぐに前だけを見つめてハードルを軽快に跳び越える。次第に高まる歓声と共にスピードは加速していき、そのままゴールを迎えた。
  「3着 長谷部君 立教大学 14秒39」。会心の記録を伝えるアナウンスが会場に響く。表彰台に立ち、鳴りやまない長谷部コールにガッツポーズで応えた。





 

【射撃部】
ハートで狙い撃ち!! 塚本 春関 女子 50MP60 2位


銃声こだまする春関の舞台で塚本麻由美(社3)が立大の歴史にその名を刻んだ。50MP60種目で自己新記録となる580点をマーク。3年間地道に撃ち続けてきた成果を実らせ、2位入賞の快挙をやってのけた。

めっちゃ悔しい!
各選手が昇順を合わせ、毎年ハイスコアが飛び交う春関。塚本が50MP60(スモールボアライフルを用いた50bの伏射)でその実力を知らしめた。
  やり直しの利かない一発勝負。「最初は震えが止まらなかった」とその時の緊張を振り返る。射撃は精神的な強さがものを言うスポーツ。いかに集中力を持続させられるか、そしてそれを支えるだけの高いメンタリティーが要求される。
  さらに50分以内で撃ち終えなければならないという制約もある。限られた時間でテンポよく撃つことに手を焼く射手が多い中、塚本は淡々と丁寧に自分のペースで撃ち続ける。優勝も視野に入る580点を叩き出してみせた。
  全60発を撃ち終え、入賞への確かな手応えと共に周りの射手の様子を見渡す。隣のレーンで撃っていた高橋(日大)の581点が目に入った。「めっちゃ悔しい!」。目標だった自己ベスト更新と、立大史上最高順位となる2位入賞を果たした彼女。それでも僅差で優勝を逃した悔しさは隠しきれなかった。
  喜びと悔しさが入り混じった複雑な心境。しかし、自分の入賞を喜ぶ仲間たちの姿が目に映ると、自然に笑みがこぼれていた。銀色のメダルを授与された彼女は「立教の名を残せてうれしい」と改めて自らの快挙を実感した。

ロックオン
文句なしの自己新記録。得意種目だというP60種目だが、始めたての昨季からすれば580点台は雲の上の点数だった。スモールボアライフルを扱い始めてから1年足らず。彼女は目覚しい成長を見せている。
  大学から射撃を始め、真面目に自らとの戦いを積み重ねてきた。塚本のモチベーションは常に、過去の自分自身を超えること。「負けず嫌いとかはない。前の自分より成長したいという方が大きい」。
  約7`の重さがある銃を支え、わずか0・5_の的の中心を狙う繊細な世界。わずかなズレが命取りになる。「標的を狙いすぎちゃダメ」。塚本がコーチから受けたアドバイスだ。自分の体が正しいポジショニングをとれていればおのずと10点に入る。競技中、疲れてきても銃口を下げないように自分に言い聞かせた。
  彼女は射撃を「究極の個人戦」と表現する。仲間が後方でアシストについていても、競技中は孤独な戦いを強いられる。それだけに今後も自律的な姿勢がより必要になっていく。
  次なる目標は、50M3×20(スモールボアライフルを用いた50bの立・膝・伏射それぞれ20発)での上位入賞。実力通りの力を出せれば十分射程圏内だ。充填(じゅうてん)期間は長くないが、目下の自分を超えるべく精神的な武器をさらに研ぎ澄ます。(大山稜)

 




【スケート部フィギュア部門】
響く歓喜の二重奏 中村 春関 2部 団体 W優勝


  ついに新シーズン到来! 圧倒的な実力で中村健人(営4)が男子7・8級で優勝。さらに女子団体も初級から上級者まで全員が一丸となって頂点をつかみ取った。共に昨年から順位を一つ上げ、今季最高の滑り出しを見せた彼ら。立大王国の始まりを予感させた。

 

王者の歩み

 「点数とか順位はもう考えてない」。中村は自身の演技と向き合うことだけに集中して試合に臨んだ。曲はベートーベンのピアノ協奏曲第5番『皇帝』。厳かな音楽に合わせて演技が始まった。冒頭の三つのジャンプを軽々と決め、細やかな音色に乗せたステップは観客をくぎ付けにする。後半のジャンプにミスが出たものの全ての要素を丁寧にこなし、滑り切った。  
  結果は2位以下を大きく引き離しての優勝。昨年同大会で2位だった自身の得点を20点近く上回る成長ぶりだ。表彰式ではようやく手にした金メダルを胸に笑顔がはじけた。  
  今回公式戦で初披露となったプログラム。世界で活躍するデイビッド・ウィルソンが選曲と振り付けを手掛け、難易度の高い仕上がりとなった。しかしこの難曲を中村は「僕らしい」と受け止め、滑ることを心から楽しんでいる。曲の持つストーリー性が中村のスケート人生と重なるからだ。曲調の変化に合わせた表現は彼自身の経験によって深みを増し、感性豊かな演技を作り出している。  
  日常生活の質が演技に直結すると考える中村。睡眠時間などの生活リズムを見直すことによって力を蓄えている。この地道な日々の積み重ねを続け、さらなる進化を目指す。「オリンピックに出る」という大きな目標に向かって。

 

1年越しの開花

 中村だけではない。今大会は2級以下の選手が出場できる唯一の公式戦。団体戦では初級から8級までを二つに分け、順位に応じて与えられるポイントの合計を競う。2部に出場した立大8選手のうち、まず力を発揮したのは1級の選手たちだ。愛らしい演技で渡部(理4)が優勝を果たすと三宅(文4)が4位、中尾(法4)が6位と入賞者が続出。団体戦の順位にも貢献する。  
  勢いに乗った立大は3・4級でも華やかな演技で実力を見せた。エースの下川(文3)は去年の悔しさから「勝ちたい」という強い思いがこもった新しいプログラムで2位に輝く。主将の根本(文4)も6位とポイントを重ねた。
  「来年は優勝しようね」(根本)。そう誓ってから1年。張り出された順位表の一番上には立大の文字が躍っていた。昨年度は僅差で敗れた青学大に80点以上の差をつけての圧勝。優勝杯を手にした選手たちの表情は喜びに満ちていた。  
  それぞれの目標を胸に、重ねてきた練習が今大会で実を結んだ。「少しずつ変わってきている」と練習を共にする中村も彼女たちの意欲の向上を感じ取っている。秋から始まる本格的なシーズンに向け、自らの改善点を挙げた彼女たち。努力を重ねた先で、また大輪の花を咲かせくれるに違いない。

                          

 



 

 


 
 






Copyright (C) 立教スポーツ編集部, All Rights Reserved.