立教スポーツ第203号

<7月3日更新>
   

    
【馬術部】  
史上初!! 待ち望んだ名騎手の躍進
馬力全開で頂点へ
石栗
関東学生女子 金
 

 新緑の馬事公苑で立大史に新たな功績が刻まれた!! 石栗里美(済3)が関東女子馬術界の頂点に君臨。大学での2年間は不振にあえぎ、つぼみを散らしてきた彼女。「馬も自分も楽しく!」をモットーに戦い抜き、ついに大輪の花を咲かせて見せた。

栄光への手綱
   表彰台の頂で、思わず石栗(済3)の顔がほころんだ。たった数十a高い位置でも、そこは彼女だけが立つことを許された場所。「ようやく一番になれたんだ」。多難の道を駆け抜けた先に、初めて見る栄光の景色は待っていた。
  アスリート選抜で入学した1年目から、部の主力として数々の大会で戦ってきた彼女。だが、小さな背中に向けられた期待は重圧となってのしかかる。どうにかそれに応えようと必死になるが、なかなか結果が伴わない。立大の一番馬を任されて挑んだ昨年の全日本大会では、完走すらできなかった。何もかもがうまくいかず、味わった大きな挫折。「一生懸命やろうとするほど空回りになっていた」。
  しかし、いつまでも腐っている彼女ではない。失敗で終わらせず、そこから学ぶ貪欲さがあった。コーチに指導を仰ぎ、練習を改める謙虚さがあった。何より彼女を突き動かすのに十分な、馬へのひたむきな思いがあった。今まで以上に馬と接する時間を増やし、真剣に向き合った分だけ馬も応えてくれると実感する。
  そして努力は成果となって表れた。昨年末の関東大会で堂々の4位入賞。「シャカリキになってやらなくても、やることをやればちゃんと結果は付いてくる」。 この気付きは自信となり、やがて心に余裕を生んだ。
  迎えた3年目の春。上級生として結果を出さなければいけない責任感すら力に変える。得たもの全てを追い風とし、今大会へ歩を進めた。

騎跡の勲章
  1、2回戦は自馬(母校の馬)に乗って競い合う。ここは築き上げてきた馬との絆で、無事に通過してみせた。3回戦からは今大会の特徴である、貸与馬(他校の馬)を駆使しての戦いだ。馬を正確に歩行させる技術が問われる馬場馬術では4分、障害飛越では3分の制限時間で馬に試乗し、特性を見抜いて乗りこなす。いわば騎手としての純粋な実力を試される場でもある。
  大学では障害を中心にやってきた彼女にとって、馬場のみで競う3回戦は大きな鬼門。緊張で良いイメージをつかめず、決して納得いく演技とはいかなかったがなんとか踏みとどまった。「ほぼ奇跡。前に行こうという気持ちが勝ったのかな」。 その後は準々決勝、準決勝と順調に駒を進めていき、ついに決勝戦への扉が開かれた。
  先攻で踏んだ馬場。「いいよいいよ」。 いつものように声をかける。落ち着いて馬と自分の世界をつくり、着実に点を重ねた。続く障害は後攻。前の選手が落馬し、一時会場は騒然となる。しかし、そんな空気も一蹴する会心の走りを見せた。「がんばれ! 跳べ――」。
  コースを回り切ると、馬の首元を叩き勇姿をたたえる石栗の姿があった。顔には安堵(あんど)の表情が浮かぶ。悲運の実力者がヒロインへと生まれ変わった瞬間だった。
  「本当に、本当に良かった」。 胸元で輝く金色のメダルは彼女の未来を明るく照らす。これからはその確かな光を信じ、ひたすらに駆け上がっていくのみだ。(末藤亜弥)

 





【ボート部】
夏インカレへ 全力疾漕 松本 全日本軽量級 女子シングルスカル 4位


  ボート界のエースが集う全日本軽量級選手権で松本愛理(えり=観4)が4位入賞。学生トップの座に登りつめ、確かな実力を見せた。厳しい船旅を経て大きく成長した彼女。次なる舞台へ向け力強く岸を蹴った。       

 

船と友に

 昨年の全日本選手権で5位入賞を果たし、自信をつけた松本。しかし、今回は新たな挑戦を迫られた。それは新艇でシングルスカルに出場すること。大会までの約1カ月、彼女は焦る気持ちを抑え、じっくり船と向き合った。
  「予選通過さえ厳しいんじゃ…」。 新艇は今までの船とは勝手が違い、バランスを取ることも難しい。どれだけ練習してもスピードに乗れず、言うことを聞いてくれない船に悪戦苦闘の日々が続く。不安な気持ちをかき消そうと、とにかく練習を繰り返した。
  そして迎えた今大会。準決勝では、全日本で敗北を喫した青山(関西アーバン銀行)との再戦。松本は序盤から積極的に仕掛け、先頭へ躍り出る。しかし、得意としている中盤でミスを連発。その度に後続との差が縮まるのが分かった。それでもなんとかリードを守りきり、格上相手に6秒差をつけ見事勝利。昨年の雪辱を果たし、不安な気持ちはすっかり消え去った。
  決勝戦の相手は、日本代表を含む社会人の3選手。「チャレンジャーの気持ちで」。 気負うことなくレースに挑むが、相手はやはり手ごわかった。前との差に屈せず最後まで漕(こ)ぎきるも、結果は4位。メダルまであと一歩及ばなかった。「あの時もう少し攻めておけば――」。 悔しい思いがこみ上げた。

仲間と共に
シングルでの出場は本意ではなかった。それでも、日々自分自身と向き合う中で学んだことは多い。体力面で課題が残り、勝負所で全力を出しきれない。今まで気付かなかった、自分の甘さを思い知った。しかし、社会人と対等にレースができたことは、最後の夏に臨む彼女の大きな強みとなるはずだ。
  2度目の学生トップに輝いた松本。しかし、その胸の内には秘めた思いがある。「もう一度クルーボートに乗りたい」。シングルでの孤独な戦いを通して、その思いは一層膨らんだ。みんなで声を掛け合い、喜びを分かち合う。仲間の存在を感じられるクルーボートが一番好きだと改めて実感した。
  立大ボート部最大の目標である、インカレ決勝進出。しかし、松本はさらに上を目指している。「優勝したい」。シングルで感じた悔しさを、仲間とのクォドルプルにぶつける。リベンジを誓った。
  頂点を狙うためには、艇を共にする後輩たちの協力が欠かせない。「自分の経験を伝えていけたら」と松本も後輩の指導に意欲的だ。それぞれが磨き上げてきた持ち味を集結させ、気持ちを一つにオールを漕ぐ。ラストレースに向け、すでに熱い戦いは始まっている。夏の大舞台で、最高の仲間と、最高の結果をつかむために。(平野美裕)

 




【陸上部】
超大型ルーキー現る!! 出水田 関カレ5000m 2位 


  新たなスターの誕生だ! 第93回関東学生陸上競技対校選手権大会女子五千bで、出水田眞紀(コ1)が2位入賞を果たす。鳴り物入りで加入したルーキーが確かな実力を見せつけ頭角を現した。

 

新風

 出水田にとって、大学陸上3度目の大会となる関カレ。「必ず表彰台へ」という強い思いで、レースに挑んだ。2位となった彼女は、安堵(あんど)の表情を浮かべた。  
  大会2日目に行われた千五百bでは惜しくも4位。表彰台にあと一歩届かず、涙をのんだ。その悔しさを糧に、五千bまでの1週間ひたすら練習に取り組む。「優勝する」と自分を奮い立たせた。
  そして迎えた本番。想定通り、有力選手らが引っ張っていくレース展開に。最初の1000bを2分台のハイペースで試合は進む。「ラストまでは絶対に前に出ない」。先頭集団に食らいつき、好機をうかがった。
  3000b地点で3位につけ、優勝争いは上位3人に絞られた。レースが佳境に入ると昨年度の優勝者・福内(大東大)がラストスパートをかけ、トップを独走。離された出水田は、木村(大東大)との2位争いを強いられることに。互いに譲らないデッドヒートを繰り広げる。残り200bで一度抜かれたものの、最後の力を振り絞り、ゴールイン。激闘の末、2位という結果を勝ち取った。
  13年ぶりに大会記録を更新し、さらに立大新記録も樹立した。だが彼女は満足していない。「ラストの詰めの甘さが負けた原因だった」。今ある実力を出し切ったが、彼女は現状に甘んずることなく、確かな強さを求め続ける。

 

未来への助走
  高校時代から陸上界で、その名を轟(とどろ)かせてきた彼女。「人として成長したい」。そんな思いを胸に立大陸上競技部に入部した。体育会で活躍する選手も学業をおろそかにしない。それが立大を選ぶ決め手となった。    
  学業の合間を縫って、陸上に充てる時間をつくる。今までとは大きく異なる環境に初めは戸惑うことも。与えられる練習だけではなく、自ら考え試行錯誤する日々。しかしあえて厳しい環境に身を置いたことで、陸上選手として、さらに人として成長する糸口を見つけた。  
  そんな中迎えた今大会は、自身の存在感を示す格好の舞台。慣れない環境の下で収めた2位という成績は、彼女にとって今後の活躍につながる自信となったに違いない。  
  日本を代表するエース・福士加代子(ワコール)らがトラック競技を離れた今、自分がレースをつくり、盛り上げたいと考えている。「見ている人に面白いと思ってもらえるレースを」。トップ選手を目指し、彼女はひたむきに走り続ける。  
  「長距離は素質ではなくて努力次第で結果が変わる」。練習を重ねれば重ねるほど、成長の証しが目に見える。そのような競技性によって彼女は一層磨かれる。努力を惜しまず進み続けるその先には、輝かしい未来が待つだろう。立大に誕生したホープが築く歴史は、スタートを切ったばかりだ。(都丸小百合)

 



 

 


 
 






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