立教スポーツ第206号

<4月1日更新>
   

    
【陸上競技部】  
雨中の力走!開いた栄光への道
出水田 千葉クロカン 2位
 

 立大のエースが日本陸上界に一躍その名をとどろかせた! 豪雨の中で行われた第50回千葉国際クロスカントリー大会一般女子八`の部で、出水田眞紀(いずみだ=コ1)が日本人最高位の2位。名だたる強豪選手をも抑え、自らの実力を遺憾なく発揮した。

折れない心
 今年の千葉クロカンは最悪な天候の中で行われた。空気は冷え込み、大雨でコースは泥沼状態。自然との厳しい闘いを強いられる、過酷さを極めたコンディションだった。多くの選手が戦意を喪失しかける中、出水田だけは違っていた。  
  まさかの順位だった。世界クロカン日本代表選考レースとなる今大会で、出水田が狙っていたのは日本人3位以内。実力者が名を連ねる中での日本人トップは思いがけない快挙だった。
  雨でぬかるんだコースを目の当たりにし、スタート前こそ不安が募った。それでも決して曲がることのない彼女の志。「ここで勝負ができないと、世界では勝負できない」。 強豪選手に精神面で負けないように自らを奮い立たせ、強い気持ちでレースに臨んだ。
  随所に丸太があり起伏に富んだ険しいコースは、中学2年生から出場している彼女にとって得意なフィールドだ。1周目、他の選手は苦しそうな表情を見せていた。その中で出水田は千葉クロカン最大の難所であるクロカン坂を駆け引きの起点に定めた。
  「次の上り坂で勝負できる」。 そう判断し、2周目の坂で意識的にペースを上げる。徐々に集団から抜け出し、そのまま独走状態に持ち込んで日本勢を制した。
  後続に大差をつけてゴールに飛び込んだ彼女の勝因は気持ち=B「楽しかった」と、なかなか体験できない状況にも充実の声が漏れた。劣悪な環境でも士気を下げることなく走り切った彼女。いつでも前向きな姿勢が、予想もしていなかった栄光を手繰り寄せた。

どこまでも
 千葉クロカンで好走を見せた出水田だが、この結果は彼女にとってあくまで通過点に過ぎなかった。その視線の先にあるものは世界という最高峰のステージ。彼女には世界にこだわる理由があった。
  初めて日の丸を背負ったのは高校2年生の時。世界クロカン日本代表として、初の海外試合に挑んだ。国内のレースとは全く異なる気候、雰囲気。「日本の環境は当たり前じゃない」。 初めての国際大会での経験は彼女の視野を大きく広げる。それ以降、さらなる高みを目指してひたすら走り続けてきた。
  今大会はジュニアの部に出場できる年齢でありながら、一般の部に出場。それも今後戦う舞台となるシニアのレベルを直接肌で感じるためだ。そして、この好成績が大きく影響し、今年も世界クロカンの代表権を獲得。しかし彼女はここで満足することはない。
  「競技をやっている以上は徹底的にやりたい。中途半端は嫌い」。 彼女のまなざしには強い意志が秘められている。今出場できている世界大会のその先に、さらに大きな目標を掲げている。オリンピックのマラソンでメダルを獲得するために、今はとにかく経験を積む段階だ。
  今後も彼女の挑戦は続いていく。世界大会の出場権をつかむためなら、どんなチャンスも無駄にしない。日本での選考会にも全て挑む意気だ。世界クロカン、ユニバーシアード、東京五輪――。数年後の輝かしい姿を追い求めて。未来へとつながる物語は、着実に紡がれている。(添田美月)

クロカンとは
クロカンとはクロスカントリーと呼ばれる長距離種目の一つだ。他の種目と異なり、競技場の中ではなく森や公園など自然の中に設けられたコースを走りタイムを競う。
  クロカンの見どころは何といっても独特なそのコースにある。細かいカーブや急勾配な丘による激しいアップダウン、足場の悪い凸凹な地形。これらの自然のフィールドが選手たちを苦しめる。
  不整地にも対応できる優れたバランス感覚が求められるランナーたち。トラック種目以上にコースの特徴やスパートのタイミングを見極める判断力が試される。そして最後に勝負を分けるのは、過酷なレースに耐えうる屈強な精神力だ。
  大自然の中で、選手たちは肩と肩をぶつけ合いながら果敢に難コースに挑んでいく。クロカンは、選手のそんな野生味をも引き出す魅力あふれる競技だ。

 





【レスリング部】
挑み続けたレスラー 久保 内閣総理大臣杯 57s級 8位


  レスリング部主将・久保貴(コ4)が有終の美を飾った。日本全国の大学から代表選手が集う内閣総理大臣杯。この大舞台で、立大にとって約40年ぶりとなる8位入賞を達成! 部のために戦い続けた男が自身の引退に華を添えた。

 

「やりきった」

 今シーズンは久保にとって苦しいシーズンだった。けがに悩まされ、インカレを棄権。レスリングをしたい気持ちを抑えて、現役最後の試合に全てを懸けて臨むことを決意した。
   昨年の同大会ではベスト16にとどまった久保。その結果を塗り替えるべく練習に取り組み、片足タックルを強化。7`もの厳しい減量にも意地で耐え抜いた。そしてレスリング人生の集大成を見せる日を迎える。
   初戦は得意の寝技で点数を重ね9?2で勝ち星を挙げた。続く2回戦、世界クラスの強豪に力の差を見せつけられ敗北。敗者復活戦へ回ることになった。 
   「1分1秒でも長くレスリングをしたい」。湧き上がるレスリングへの思いを胸に、敗復1回戦のマットに上がった。この試合で、練習を積んだ片足タックルが効果を発揮。相手の動きの固さも見逃さず、13ー4と大差をつけ、本人も満足の内 容で勝利を飾った。
  次戦では昨年の準優勝者に敗北を喫したが、堂々の8位入賞。「強い選手と戦えたことが本当にうれしかった」と、晴れやかな表情で大会を振り返った。

「生きる希望」
レスリングと出会ったのは高校入学時。始めたばかりのころは女子選手にも勝てず、唇をかみしめる日々を過ごした。それでも悔しさをばねに練習に打ち込み、ついには埼玉県2位まで上り詰める。競技を始めて2年、初めてレスリングの楽しさを感じた瞬間だった。
   そして立大レスリング部に入部。リーグ戦では1部昇格のために先陣を切って戦った。より良い部にするため、練習から積極的に声を出して雰囲気作りに着手。それでも成果は得られず、やり場のないもどかしさに悩まされた。その中でも支えになったのは、両親と慕ってくれる後輩の存在。「本当に頼りになる」。彼らが久保の背中を後押しし、奮い立たせた。
   今大会、支えてくれた人たちの思いを一身に背負って戦った久保。「自分一人だったらレスリングを続けてこられなかった」。人とのつながりが彼を強くした。8位という結果は周りへ向けた精一杯の恩返しだ。
   約40年ぶりの快挙を成し遂げ、久保は立大の歴史に名を刻んだ。レスリングに魅せられた男が駆け抜けた7年間。喜びと笑顔にあふれる幕引きとなった。 (鈴木育太)

 




【スケート部フィギュア部門】
奏でた感動のフィナーレ 下川 インカレ Cクラス V


  全国の舞台で圧倒的な存在感を見せつけた! 第87回日本学生氷上選手権大会女子Cクラスにおいて優勝を飾った下川麻里奈(文4)。確実な滑りで他大のライバルを制し、誰よりも強い勝利への思いを演技で表した。

 

至高の演技

 4年間渇望していた頂点に上り詰めた。「納得できる演技ができました」。 満足げな表情で演技を終えた下川は、万感の思いで振り返った。自身のスケート人生最後の公式試合。そして全国覇者へのラストチャレンジ。熱い思いとは裏腹に、冷静な表情でリンクに立った。仲間の大きな声援が会場に響く。バイオリンの音色が聞こえるとすぐに演技の世界に入り込んだ。  
  冒頭のコンビネーションジャンプできれいに着氷し絶好のスタートを切ると、笑顔が花開く。指先まで神経をとがらせて演技に集中する姿は、まるでスケートに対する今までの思いを静かに爆発させているかのようだった。  
  続く中盤の大技である3連続ジャンプを成功させ、会場を自らが作る空気に引き込んだ。得意なアクセルジャンプも決め、動きはより軽く研ぎ澄まされてゆく。勢いはそのままに美しいコンビネーションスピンでフィニッシュ。圧巻の演技に送られた拍手に、満面の笑みで喜びを表す。力強いガッツポーズを決めた下川に、堂々たる「女王」の姿を見た。積年の思いが実を結んだ瞬間だった。  
  「ノーミスでとても楽しく滑れた」。 最高の出来に大満足の下川は、表彰台の真ん中で涙をにじませた。10年以上ものフィギュアスケート人生において、最初で最後の日本一。悔いなき演技への心からの喜びと、申し分ない点数で有終の美を飾った。 

 

気持ちを糧に
 大学入学以来毎年インカレに出場していたものの、下川は表彰台に立ったことがなかった。4年間、あえて級を上げずにCクラスで戦い抜くことを選んだ彼女。勝ちへの執念は誰よりも強い。  
  プログラムは、インカレ優勝のために2年間かけて磨き上げてきた。しかし、秋に行われた東インカレでは自信を持って臨んだものの2位。危機感を覚えた下川は演技構成を一から見直すことにした。 
  苦手なダブルトーループを避け、より成功率の高いサルコーを組み込む。さらには東インカレで足を引っ張ったスピンも猛練習をした。「見栄えがしなくても、勝ちにこだわるスタイルで挑む」。 挑戦するよりも確実に得点を狙う 演技。総合力で攻める戦い方が下川を勝利へ導いた。  
  この4年間、厳しい練習を共に乗り越えた仲間たち。後輩にはより部活を楽しんでもらおうと、運営面の改革にも尽くした。その中で生まれた団結力に後押しされ、つかんだ4年生全員でのインカレ出場。それは1年生の頃からおのおのが抱いていた夢であり下川に大きな力を与えた。  
  執念でつなげた優勝という結果は、立大にとって大きな前進である。誰よりも勝ちにこだわり真剣にフィギュアスケートに向き合った下川の意志は、強く次の代に受け継がれた。彼女の残した情熱を胸に後輩たちは未来を築き上げていく。  (西村南海子)

 



 

 


 
 






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