立教スポーツ第216号

<4月1日更新>
   

    
【ボート部】  
68年分泣けた!!創部史上初の大偉業
  舵手なしフォア 中田 安藤 勝又 根本
全日本 制覇
 

   創部68年目にして立大ボート部が史上初の快挙を成し遂げた! 第94回全日本選手権大会、男子舵手(だしゅ)なしフォアの部において悲願の優勝。社会人屈指の強豪であるトヨタ紡織を緻密な戦略で打ち破った。これまで立大ボート部に関わった全ての人の思いを乗せクルー4人が大仕事をやってのけた!

頂点への出漕

    敗戦の中にも確かな光を見いだした。9月のインカレ。2か月後に控える全日本選手権へ弾みをつけるためにも、ここでの優勝はノルマに近い。ところが、大会前にまさかの事態が襲う。中心選手の勝又(法4)と安藤(コ4)が故障で離脱。4人の息を合わせて漕(こ)ぐ当種目では致命的だった。ようやく練習を再開できたのは大会前日。不安を拭えぬままレースに臨み、無念の準優勝に終わった。
    「もう負けたくない」(安藤)。悔しさもあったが、この結果は別の意味も示していた。たとえ故障者が出ても準優勝はできる。これまで苦楽を共にしてきた4人のチームワークは、すでに完成形に達していたのだ。だからこそ、主将の中田(コ4)は全日本に向けてあえて練習量を減らすという決断ができた。焦って練習するよりも、全員が最高の漕ぎができることを優先した。
    全日本選手権、当日。2か月前の苦い経験があったとはいえ、根本(観3)を除く3人は昨年のインカレ優勝メンバー。その実力を存分に発揮し、予選と準決勝はともに快調に勝ち進む。そして迎えた運命の決勝戦。「日本一」という目標を掲げ、これまで血のにじむような思いで練習してきた。ボートのことを24時間考える生活は、生半可な覚悟ではできないことだ。全ては今日という日のために。いま、夢をかなえる時がきた。

勝負を分けた13M

    レースは2000bで行われた。開始直後、先頭に出たのがトヨタ紡織。社会人のトップチームであり今大会最大の強敵だ。加えて今年は意気込みが違う。ボートの花形種目であるエイト(8人で漕ぐ種目)に人数不足で出場できず、本来出場するはずのトップ選手を全てこの種目にぶつけてきたのだ。
    打倒トヨタのキーワードは「一艇身」。船1つ分(約13b)の差を付けることだ。トヨタはラスト500bに強い。勝つためには、1500b地点で一艇身リードして逃げ切るしかなかった。「それができれば勝てる、できなければ負ける」(中田)。
    この戦略は、ボート界の常識を覆すものである。通常のレースでは後半まで力を温存し、最後の500bで勝負をかける。しかし、立大は序盤からトップスピードで突き進む。中盤、首位に立っても加速の手を緩めない。攻めて攻めて、攻め続けた。「相手も驚いたと思う」。ついに1500b地点で目標の一艇身のリードを確保する。その後トヨタの猛追を受けるも、最後まで首位の座を守り切りゴール。会場が歓喜に包まれた瞬間だった。
    日本の頂に立ったクルーたち。実は4人ともボートを始めたのは大学からだ。高校まで決して目立つ存在だったわけではない。それでも日本一への一途な思いでここまで登り詰めた。熱き男たちの、最高の晴れ姿である。(槙本大将)

 





【洋弓部】
叶えた悲願夢!夢への一矢を打ち放て!! 大貫 日本代表 選出


    立大から世界へーー。大貫(済4)が選考会を勝ち抜き日本代表に選出された!これまで彼が唯一届かなかったナショナルチーム入り。国内最高峰の選手たちがそろう今大会を見事2位で突破した。悲願を達成した大貫は、日の丸を背負い未来へ走り出す!

 

待望


   「四年間ナショナルチームを目指してやってきた」。これまで立大で数々の歴史を塗り替えてきた大貫が唯一届かなかったもの。それが日本代表入りだった。  
   今大会には日本のトップ選手12名が集結。3日間にわたり、日本代表の切符が争われた。代表入りを決めると国際大会の出場機会が増え、世界への道が開ける。
  大貫にとっては初の選考会出場だった。一昨年・昨年は共にあと数点の差で涙をのむ。今回もギリギリの差で競い、やっとの思いでつかんだ代表への挑戦権だった。
  大会前、海外遠征の影響で練習不足に陥った。本番に向けて不安が大貫を襲う。そこからは普段以上の打ち込みで筋力を強化。自らを徹底的に追い込んだ。全ては念願の代表入りを果たすために。
   男は今大会で快進撃を見せる。四年間で磨かれた射術によって放たれた矢が、狙い通りの軌道で的を捉えていく。順調に得点を重ねて初日を2位で終える。「これはいけるぞ」。予想以上の好発進で気が楽になった。2日目も2位を維持。上位8名が選出されるためこの時点で代表入りを確信する。だが油断は一切なかった。その先にまだ高い壁があったからだ。  

標的

   ロンドン五輪銀メダリストの古川高晴(近大職員)。日本洋弓界の第一人者である。今大会も他選手を全く寄せ付けず、独走を続けていた。常に世界と戦ってきた彼とは大きな差がある。最終日も気を引き締め、攻めの射を見せた。
   大貫は終始2位の座を譲らず、日本代表入りの瞬間を迎えた。実力的にはどの選手も差はない。万全の準備をして集中力を最大限まで高めたことが好結果を生んだ。
   世界を見据えれば、今回の点数は満足できるものではなかった。古川にはまだ及ばない。しかし、大貫は代表入りをずっと目指してきた。最大の目標を達成したことにはこれ以上ない喜びがあった。   
   「立大だからこそ日本代表になれた」。良い結果が出せたのは自分自身を受け入れてくれた人々のおかげだ。立大で過ごした四年の月日。彼は輝かしい功績を残し続け、ついに日本代表となった。
   ここから始まる戦いに大貫は思いをはせている。そして、世界の頂点を目指すことを誓った。「東京五輪で金メダルを取りたい」。3年後に迫る五輪へ向けてまず、「始めの一歩」は踏み出した。大貫はこれからも見せてくれるだろう。夢の続きを。 (渡邉紘也)

 




【サッカー部】
積年の思い、ついに花開く 史上2人目 Jリーガー 菅本 グルージャ盛岡へ


  立大史上2人目のJリーガー誕生だ!菅本岳(済4)がトライアウトの末J3グルージャ盛岡へ入団を決めた。スピードを活かした積極的な攻撃参加が武器のMF菅本。活躍の場を富士見から盛岡のピッチへ移し、観客を沸かせてくれるはずだ。

 

暗中模索

   「素直にうれしかった」。入団が内定して、ほっとした表情を見せた菅本。プロを目指してからここまでの道のりは、決して平たんなものではなかった。
   大学からプロ入りするには、関東リーグ所属の強豪校への入学が有利だ。立大はその下の東京都1部リーグに所属。「自分が関東昇格に導きたい」。その挑戦心で立大を選んだ。
   入学した菅本を待っていたのは思いもよらぬ状況だった。価値観の違いからチームはまとまりを欠き、都2部に降格。関東リーグが遠のいたが、部の方向性を一つにして都1部に復帰。チームの士気が再び高まる中で菅本に海外で力を試すチャンスが舞い込む。だが仲間と上を目指したいという気持ちも捨てきれない。「どこでサッカーをするべきか」。正解のない決断を迫られ、心が揺れ動く。
   葛藤の末、選んだのは海外だった。プロを意識するがゆえの決断。それでも部のために最後まで戦うと心に誓う。
  迎えた渡航前ラストゲーム。主将・三浦(15年度卒)がチームに声をかける。「岳のために頑張ろう」。仲間がくれた最高のエール。背中を押された菅本は試合でゴールを決めた。最終戦を勝利で飾り、オーストリアへ飛び立った。

 

一念通天


   異国の地での経験は、彼に大きな刺激を与えた。激しく競り合い、強引にゴールを狙うサッカーを目の当たりにする。「サッカーってやっぱり面白い」。新たなプレースタイルを吸収し自分の世界が広がった。
  帰国すると、立大は昇格まであと一歩のところだった。果敢に戦ったが、チームは残り一分で失点し敗北。念願の昇格を果たせなかった事実が、彼を一層夢へと駆り立てる。プロになって、ボールを蹴り続けたい。
  その一心でトライアウトに挑む。練習にも呼ばれ、持ち味のスピードを発揮。一方で自らの技術不足も痛感した。「プロになれないかもしれない」。不安に支配される中、クラブから連絡が入る。告げられたのは入団内定。ひたむきに追い続けた夢が現実になった瞬間だった。
  J3から上を目指すグルージャ。その現状は、関東昇格が目標の立大と重なる。見据えるのは、立大で果たせなかった昇格だ。攻守の切り替えが早いグルージャで、菅本のスピードは即戦力として期待される。「この一年が勝負――」。プロとしてどこまで行けるか。新生Jリーガーの新たな挑戦は、まだ始まったばかりだ。(広瀬春香)  

 



 

 


 
 






Copyright (C) 立教スポーツ編集部, All Rights Reserved.