立教スポーツ第220号

<12月7日更新>
   

    
【野球部】  
タカい目標!!ヒロいセ界へ!!
虎が惚れた守備職人
 阪神ドラ3 熊谷(くまがい)開幕一軍
 


   4年間の努力が報われた! 2017年プロ野球ドラフト会議にて、熊谷敬宥(コ4)が阪神タイガースから3位指名。今年、半世紀ぶりの快挙を成し遂げた立大野球部。3年連続でのプロ輩出で、歴史的な年に華を添えた。主将としてチームを率いてきた彼。その陰にはたゆまぬ努力と頼れる仲間たちの存在があった――。

プロへの挑戦権を手に入れ、喜びをあらわにする熊谷(写真中央)。

苦楽を共にした大勢の野球部員が主将の新たな門出を祝った【撮影・川村健裕】













悔しさ踏みしめ

   小学校からの夢だったプロの世界。近づくために故郷を離れ、立大の門をたたいた。ついに四年間の集大成となるその日、彼の顔色は暗かった。「きっと指名されないよ」。同期に漏らす弱気な言葉。智徳寮の食堂は、期待と不安で満ちていた。
  大学での野球人生は順調そのものだった。主将を務めた秋季新人戦では立大史上初の連覇を果たすと、3年次からはスタメンに定着。自慢の守備力を生かし、引退した大城(現オリックス)の穴を埋めた。
  しかし、1つの試合が転機となる。昨秋の対明大2回戦。1戦目を落とし、後がない状況だった。2点を追う6回表、二死満塁のピンチ。放たれた打球は彼のもとに。これを拾い、二塁へ――。
  送球は大きくそれた。走者が生還し、手痛い失点を喫する。得意としていた守備でまさかのミス。挽回はならないまま、試合終了を迎えた。4年生と過ごす最後の秋。自らの手で終わらせてしまった試合。相手の凱歌(がいか)が響く中、むなしく神宮を後にした。
  この雪辱から彼は変わる。キャッチボールから見直し、エラー1つにも徹底的にこだわった。悔しさをばねに、愚直に取り組んだ基礎固め。野球と真剣に向き合った日々は、いつしか自信へとつながっていった。地道な努力が評価され、4年次には監督からキャプテンへと推薦される。
 

プロへと羽ばたく

  背負うと決めた背番号10。主力が抜けた後だけに、責任の重さはひとしおだった。重役を担った彼に、前主将・澤田(現オリックス)は一言。「気楽にやれよ」。だが、個々の力では劣る新チーム。どう束ねていくか。その胸には一抹の不安が残っていた。
  リーグ開幕前のオープン戦。結果はなかなか振るわなかった。「自分が主将でよかったのか」。大きな疑念が彼を襲う。それでもショートから、ひたむきにチームメートへ声をかけ続けた。
  主将の不安をぬぐったのは、他でもない仲間だった。実直な姿勢に呼応するよう、一丸となって練習に取り組む。結果は自然とついてきた。「自分が頑張りすぎなくてもいいんだ」。仲間の助けで、主将の"気楽さ"を体得した。
  そして臨んだ春季リーグ戦では18年ぶりの優勝。続く全日本でも快進撃を続け、59年ぶりに全国の頂へ。名実ともに「日本一の主将」となった瞬間だった。
  訪れた運命の日。3順目、呼ばれたその名。守備力とキャプテンシーが評価されての指名だった。安心した表情の彼を包む割れんばかりの歓声。「支えてくれた仲間に少しは恩返しできたかな」。寄せられた祝福の言葉に、喜びが込み上げてきた。「日本を代表する遊撃手に」。りりしく輝くその目には、未来が映る。夢への扉は開いたばかりだ。(久保田美桜)  
 

 





【ボート部】
全力疾漕!!執念燃やし手にした
全日本 男子舵手なしフォア 銅


  立大ボート部が2年連続のメダル獲得だ。昨年、チームにとって悲願の全日本選手権初優勝を男子舵手(だしゅ)なしフォアで達成。今季、根本拓海(観4) が主将に就任し、全員で1年間戦ってきた。周囲からの連覇の期待を背に戦った漢たちが、十字のオールを全国に見せつけた!     

レース終盤となりオールを漕(こ)ぐ手に一層力が入るクルー。

左から根本・石政(法1)・吉田・真下【撮影・谷崎颯飛】













 

折れぬ闘志

  
   新チーム発足以来、インカレ優勝と全日本制覇を目標に掲げてきた立大。しかし、インカレは悔しい3位に終わる。だからこそ全日本制覇への想いは一層強くなった。
  今大会は社会人も出場する日本最高峰の舞台。根本と真下(ましも=法4)にとっては最後の試合だ。思い返されるのはインカレの決勝戦。優勝の中大にレース中盤で引き離される。立大は相手の仕掛けに対応できなかった。この課題を克服しなければ日本一はない。
  約2カ月間の練習では自分たちを限界まで追い込んだ。艇に乗らない時は、水上での動きを意識した練習法で鍛錬。体力のさらなる向上に努めた。
  また4人で艇を動かす種目の舵手なしフォアでは、息の合ったオールの動きも肝心だ。乗艇での練習を通じてチームの完成度を上げていく。そして、1年間の集大成の試合が始まった。 
  予選A組は事実上の決勝戦だった。相手は因縁の中大。そして、社会人チームの中でも強豪のNTT東日本(以下=NTT) と関西電力美浜(以下=関電)。しかし、社会人に完成度の高さを見せつけられ、敗北を喫した。もう負けることのできない立大は、気持ちを切り替えて翌日の敗者復活戦に回る。

見せた意地

   再び関電とは同組。スタートから相手が先頭に出る展開だ。ラスト500bで捉え、そのままゴール。A組1位で準決勝に進出する。「準決勝は一番の山場」。負ければ優勝の夢は消える。組2位以上が絶対条件のレースだった。
  序盤は早大が先頭に踊り出る。だが立大は焦らなかった。「絶対に中盤落ちる」(根本)。我慢がついに実を結ぶ。「落ちて来たぞ」(吉田=営2)。士気の上がったクルーは、1500bを過ぎて抜く。練習の成果が出た瞬間だった。1位のNTTには及ばずも、決勝への切符をつかんだ。
  迎えた決勝の大一番。連覇を意識せず、挑戦者の気持ちで挑んだ。しかし、NTTの巧みな試合運びに対応できず、優勝争いから脱落。それでも諦めなかった。
  立大は中盤まで3位。関電と激しい2位争いを繰り広げる。しかしゴール2000b地点手前で2位へ浮上。逃げ切れるか。両者は、ほぼ同着かに見えた。結果は0.13秒差の“3位”。壮絶な結末だった。
  夢をかなえることができなかった立大。この悔しい思いが、王座奪還の原動力となる。厳しい練習を乗り越えた時、新たな景色が彼らの目の前に広がるだろう。 (槙本大将)

 




【男子ラクロス部】
1部へ殴り込め!野心全開で
昇格


  ようやくたどり着いた! 3年の時を経て立大が1部に舞い戻った。2部Bブロックは4勝1敗と堂々のトップ通過。入れ替え戦の独協大も撃破し一気に昇格への道を駆け上がった。全ては1部で戦うためにーー。磨いてきた力が通用すると証明された瞬間だった。     

入れ替え戦に勝利し、全身で喜びを表す山本(コ4)。

悲願の昇格にチームが沸き立った【撮影・大宮慎次朗】













 

勝利は必然


   これが1部に昇格するチームか。ボールを取られても、リードをされても負ける気がしない。今年のSAINTSには見ている者にそう思わせる強さがあった。
  1部の、1部たるチームになる。レベルアップの鍵をフィジカルと捉えパワーとスタミナの強化に注力した。相手を次々になぎ倒し、4Qを通して暴れ回る姿はまさに圧巻。その真骨頂は東洋大戦だ。3点ビハインドの後半に一挙7得点。大逆転劇を演じ、観客を大いに沸かせた。
  部内の競争激化がレベルの底上げにつながった。リーグ戦中盤、オフェンスリーダー・村井(観4)が離脱。攻撃の要が不在の事態も、塩田(済4)ら日替わりのヒーローが救った。「崖っぷちでやっているんで」(塩田)。Bチームから這い上がってきた雑草組が躍動する姿は今年の強さの象徴だ。
  学習院大に勝利し、ブロックを1位で突破してもなお目線は上を向いていた。「こんなところで満足していられない」と中村(社4)。主将の言葉からはプライドがにじむ。彼らにとって1部昇格以外は無意味だった。
  すさまじい執念に裏打ちされた強さ。それらを兼ね備えたSAINTSの昇格は必然だった。

 

裏には葛藤

 
  立大が2部に降格してから3年。唯一1部を知る4年生にとって、今年が後輩を連れていけるラストチャンスだった。経験者として、そして先輩として。使命感が彼らを突き動かした。
  だがプレーでけん引できない。第一線で活躍する4年生が少ないことは彼らを悩ませた。「リーダーの肩書が本当に邪魔だった」(村井)。自分のことだけに集中できればどんなに楽だろうか。そんな思いも彼らの責任感が許さなかった。
  今までの努力に自信はある。だが彼らにとって結果が全てだ。昇格するか、しないか。一発勝負の不安、後輩を1部へ押し上げなければならない責任感にさいなまれつつ4年生は戦い続けた。
  昇格の瞬間、中村は膝から崩れ落ち、村井の涙は頬を伝っていた。あまりに大きな重圧から解き放たれた反動だろうか。「この1年間は間違っていなかった」。チームのために悩み、全てをささげた主将がつぶやいた精一杯の喜びだった。
  彼らは最高の置き土産を残し引退する。昇格への強い思いがありながらも、プレーではチームを引っ張れない。そんなジレンマを抱えながら戦い結果を残した彼ら。その姿に、あるべき先輩の形を見た。 (山田裕人)  
 

 





【ローラーホッケー部】
女王奪還!!2年ぶりに見た景色
女子インカレ制覇


   ローラーホッケー部女子が学生女王に返り咲いた! 1年前、課題だらけの状態からチームはスタート。信じた仲間と共に苦しい時期を乗り越えた。全てはインカレ優勝のため。全員の思いが一つになったその時、長野のリンクで数々のドラマが生まれた。    

 

最高の結果を残し、熱い抱擁を交わす選手たち。

笑顔とともに歓喜の涙をにじませた【撮影・越智万悠子】













長い助走

  
  始まりはどん底だった。去年のインカレで涙の準優勝。雪辱を誓ったものの、残されたのは試合経験が少ないメンバーばかり。まとまりにも欠け、不安だらけで始動した。
  「全員が勝ちを喜べるチーム」。理想を掲げ、主将・福山(営4)を中心に改革を図る。成果は結果に表れた。8月の全日本で絶対王者の社会人を延長戦まで追い詰める。また福山、菊地(コ4)、多田(文3)が日本代表として南京へ遠征。そこで受けた刺激をチームに還元する。「仕上がりは100%」(福山)。最高の状態でインカレを迎えた。
  初戦は国学院大戦。この1年、1勝どころか1点も奪えていない。シュート数を増やす戦術が功を奏し福山が先制点を奪う。直後の失点も渡部(現3)が取り返す。勝利が見えてきた。だが残り2秒。相手にフリーシュートを献上。反撃を許し2―2で延長戦に持ち込まれる。また勝てないのか。不安が頭をよぎる。
  だが積み上げた努力が、自信へと形を変えていた。果敢に攻め続け、福山のパックがネットを揺らす。同時にリンクは沸いた。全員が涙を流し、抱き合って勝利をかみしめた。

そして頂へ

   歓喜に浸るチーム。しかし決勝には昨年、フリーシュート戦で敗れた専大が待ち受ける。同じ轍(てつ)は踏まない。目標はあくまで優勝。気持ちをリセットし試合に臨んだ。
  去年と同じ展開になる前に試合を決める。堅守を誇る専大の厳しいマークに強気の攻撃で対抗。苦しい状況が焦りを生む。それでも隙を狙い続け、得点のチャンスをうかがう。
  そして運命の瞬間は訪れた。渡部の放ったシュートのこぼれ球を福山が押し込む。全員の思いが、1年前に崩せなかった鉄壁を打ち破った。GK菊地の好セーブを皮切りに、1点を全員で守り抜く。一瞬たりとも気は抜けない。ようやく試合終了のブザーが鳴る。「ほっとした」(多田)。彼女たちの1年は安堵(あんど)の笑顔で締めくくられた。 
  「うれしいの一言です」。主将としてチームをけん引した福山は、晴れ晴れとした表情を見せる。優勝からは程遠い場所にいた彼女たちは、女王の風格をまとっていた。激闘の1年間を走り抜き、喜びを全員で分かち合った彼女たち。そこには確かに、理想として描いてきたチームの姿があった。   (古村満里奈)
 
 

 





【女子バドミントン部】
創部70年目の美挙 新星ペアが凱歌を奏す
インカレ女子ダブルス 史上初16強 有川遠山


   若きペアが、史上初の快挙を成し遂げた! 今後、部の中心を担っていく遠山きよら(済2)と有川友理奈(文1)。全国の強豪たちを次々と撃破し、史上最高のベスト16に輝いた。今年、創部70周年を迎えた女子バドミントン部が今熱い!    

 

気迫のこもった力強いプレーで

破竹の勢いをみせる遠山・有川ペア【撮影・松下咲貴子】













望外

  
   1回戦で対戦するのは、遠山の高校時代の先輩。やりづらさがある中で鉄壁のレシーブを見せ、相手のミスを誘い辛勝する。
  続く2回戦では、インハイ4強の相手と対戦。「レベルが上の人とはやりやすい」と有川が語るように、試合の中で調子を上げていく。チャレンジャー精神で本人たちも驚くような技を見せ"覚醒"した2人。3回戦まで駒を進めた。
  「怖いけどここまで来たらやるしかない」。 腹をくくりお互いを信じるのみ。なおかつ勝利への欲が出て力まないようにーー。
  遠山が球を拾って前に入り、後衛の有川が強烈なスマッシュを決める。この攻撃スタイルを徹底し、無心で球を追った。試合はファイナルゲームのデュースまでもつれ込む大接戦に。猛攻を仕掛けてくる相手に必死に食らいつく。緊張感漂うコートに遠山のレシーブショットが決まった。22―20。試合を制した瞬間、2人からは笑みがこぼれた。
  「まさか勝てるなんて思わなかった」(遠山)。 突破は難しいと思われた3回戦を、驚異の粘りで劇的勝利。強者が勢ぞろいする中史上初の16強が決定した。4回戦は関西王者に屈するも、2人の快 進撃は立大の歴史に名を刻んだ。

超克

  
  試合前、彼女たちには大きな不安があった。敗者復活戦で必死につかんだインカレへの切符。本番に向けて調整するも、ペアリングがかみ合わない。
  コンビネーションが問われるダブルスの世界。多くのペアが長年組むことで、強い連携力を養っていく。それに対して、遠山・有川は今大会初めてタッグを組んだ。まだ1、2年と若く結成して間もないペアは、どこまでいけるのか。
  目標は初戦突破だった。2人は「お互いできることをやろう」と謙虚な気持ちで臨む。試合が始まると長いラリーで相手のミスを誘う。不安を覆す予想外の活躍を見せ、トーナメントを上がるごとに勢いづいていった。史上最高の結果を残したことは、今後の自信につながったに違いない。
  シングルスで鍛えたフットワークと技術の繊細さが持ち味の遠山。最後まで諦めない粘り強さが特徴の有川。長いラリーにも耐えられる体力で、次々に点を奪っていく。2人の強みが重なれば攻撃力は無限大。立大史上、最強ペアである。
  熱き魂をもつ彼女たちなら、この先記録を塗り替えるのも夢じゃない。伸び盛りにある若きマドンナたちの今後の活躍が楽しみで仕方がない。(松下咲貴子)
 

 



 

 


 
 



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