【洋弓部】
よっ射ー!
59年目で射止めた
王座進出
洋弓部男子が創部59年で史上初の王座進出を決めた! リーグ戦を3勝2敗で通過し、5位決定戦で専大に勝利。肌がひりつくような激闘は最後の一矢まで行方が分からなかった。ついに挑む全国の大舞台。王座での戦いは6月16日から始まる。
|
専大に勝利し、王座進出を決めた選手たち。須藤(一番右)は最高学年としてチームをけん引した【撮影・東海林航平】 |
「いつもとは違う」
勝利が絶対条件だった。相手は専大。実力は五分五分、厳しい試合になることは優に想像できた。
50b離れた場所から的を狙う前半は「緊張との戦いだった」と粕谷(済4)。 そもそも須藤(済4)以外の7人にとっては初めての大舞台。硬くなるのも無理はなかった。ペースをつかみ切れず、35点の大差が開いた。捉えるには遠過ぎる距離。厳しい展開になることは目に見えていた。
これまでの立大は後半に弱かった。だが「いつもとは違う感じがする」。 後半の30bに臨む前に大川(コ3)はそう感じていた。これまでになく、味方からの声援が聞こえる。
応援を先導していたのは主将・有村(社4)。 部員全員が声を張り盛り上げ、何度も流れを引き寄せた。王座に行きたい。弓を構える者と応援する者、思いは一つだった。
立大の猛追が始まった。全員が捨て身で攻めていく。その姿勢は放つ矢にも表れていた。誰かが良い点数をマークすると、チーム全体が盛り上がる。繰り返すうちに相手は射程圏内に入っていた。
合計1920本。両大学でそれだけ矢を撃ちながらも、決着はたった4点の差でついた。立大の勝利だった。
「勝てる気がする」
起きた瞬間、有村はそう思った。靴を履き家を出ると、空が青く風が気持ちいい。予感は当たる気がした。
この日、自分が弓を持てないことは知っていた。前日告げられたメンバーの中に自分の名は無かった。実力が足りない。分かってはいたが落ち込んだ。「有村さんらしくないです」。 普段の明るい彼を知る後輩からも心配された。
しかし、頭を切り替えた。あいつらはきっとやってくれる。だから誰よりも俺が声を出そう。喉がつぶれて声が枯れようと、一度も声援はやめない。そう誓った。
一時は35点の大差がついてしまった。脳裏には不安もよぎったが、ひっくり返せると信じて声援を送り続けた。チームに終始漂っていた明るく元気な雰囲気。他でもない彼が作り出したものだった。
勝利が決まった瞬間は鳥肌が立った。同じ日に女子が1部昇格を果たし、自分たちも王座に行ける。全員に抱き付きたいぐらいのうれしさが込み上げた。お疲れ、よく頑張ってくれた、ありがとう。心からそう伝えたくなった。
ついに勝ち取った王座への出場権。歴史を動かしたのはチーム全員の力だった。勝てる気がする。予感はまだ続いている。 (酒井大河)
【水泳部】
55秒台見えた!自己ベストタイでも夢の決勝へ0秒61及ばず
石森100b自準決勝11位
「もっと上を目指したい」悔しさかみしめ前を向く
立大のエース石森瑞奈(観3)が国内最高峰の日本選手権で準決勝11位。自身最高成績をつかんだ。3日前の200b自由形は20位で予選敗退に沈むも100bで本領を発揮。しかし今年の石森はここで満足しない。次戦、夢の55秒台へ再び挑む!
|
準決勝へ向けて足取り確かに入場する石森【撮影・池田真由香】塩]み及ばず額に手を当てる |
55秒台「出たと思った」
「悔しいです」。 レース直後、質問には笑顔で答えながらも石森(観3)の声は暗かった。
「何秒が出るだろう…」。 朝一番のレースのため体が動くかは泳いでみないと分からない。3日前の200bの結果が20位と思わしくなかっただけに、予選は不安でいっぱいだった。緊張と静寂の中、水に飛び込んだ。結果は自身にとって2番目の好タイム。自己ベストの更新はもちろん、夢の決勝で十分戦える“55秒台“はすぐそこ。予選を終えた石森の顔は安どと自信に満ちていた。
準決勝の緊張は予選とは一味違った。「何秒が出るかな」。 わくわくしていた。予選でつかんだ感触が心を軽くする。
ホイッスルが鳴り響いた。得意の前半は27秒14と好ペースで泳ぎ切り持久力が課題の後半も必死に食らいついた。そのまま勢いよくゴールの壁をタッチ。泳いだ感覚は確かに良かった。「55秒台が出たかも…」。 期待を寄せ電光掲示板を見上げる。
56秒31―。自己ベストタイ記録だった。タイムをじっと見つめ、すぐに水から出た。“自分”を超えることはできなかった。
裏には変化
入学以来、水泳を純粋に楽しめない時期が続いた。エースは知らぬ間に後ろ向きになっていく。「結果を出さなきゃ」。 その一心だった。
そんな彼女に転機が訪れたのは去年のインカレのとき。4年ぶりに待望の自己ベストを更新し、初の表彰台で喜びを爆発させた。「水泳が楽しい。楽しいときこそ結果は出る」と確信した。「もっと上を目指したい」。 一つ上の段階へ進もうとしていたその矢先、災難が彼女を襲う。
練習の帰りに自動車と衝突し、ろっ骨を骨折。W杯を直前に控えた、昨年10月のことだった。仲間が泳ぐ姿から感じるもどかしさ。「泳ぎたい」。 けがから3日後、誰もいないプールに向かった。痛みを我慢し必死にもがく。乱れたフォームに修正を重ねた。水に入らない時間はけがに関する本を読んだ。逆境でさえも自分の成長の糧に。水泳への思いがまた、彼女を前に向かせた。
「悔しい。もうだめだ」と予選敗退で涙をのんでから1年。今年は様々な経験をしたからこそ、感じられた苦みがあった。「だけど強くなりたい」。 下は向かない。新しい“自分”がそこにはいた。(中條万緒)