サッカー部

連載第1回 「再帰」 

 97年4位、98年3位、そして99年2位で入れ替え戦出場――。 
 東京都大学リーグ戦2部において、本学サッカー部は念願の1部昇格へ向け、ここ数年着実に前進しつつあった。しかし、99年に味わった悔しさを晴らすはずだった昨年は、無念の6位に終わる。
 そして迎えた2001年春。1部昇格への旅路に、彼らは再び帰ってきた。

今年最初の戦い

 4月15日、富士見グラウンドで行われた関東選手権予選2回戦が、本学にとって今年初の公式戦となった。対戦校は3部の都立大。格下の相手ではあったが、慎重な試合運びになることが予想された。
 しかし、その予想は良い意味で裏切られることとなる。本学は左サイドを基点に素早いパス回しで相手を圧倒。試合開始からわずか8分で、3点のリードを奪う。1点返されて前半を折り返すものの、後半は攻撃的になった都立大の裏を突くカウンターを連発し、終わってみれば12−1という大差での勝利となった。チームの調子の良さを感じさせる内容だったが、主将の下和田(経4)は試合後「次は1部の大学との試合となるかもしれないが、勢いをつけるためにも何とか勝ちたい」と
改めて気を引き締めていた。
     
 続く4月22日、東洋大グラウンドで行われた明星大(3部)との3回戦は、強風が吹き荒れる中での一戦となった。普段は短いパスをつなぐサッカーを展開する本学だが、風の強さを生かし、この日は前線へロングパスを放り込む攻撃が中心となる。相手の明星大は1部の上智大を破って勢いに乗っていたが、下和田がハットトリックを達成する活躍で、4−1で快勝。規定により、本学は2年ぶりに関東学生選手権への出場を決めたのだった。
(写真=強烈なシュートを放つ主将・下和田)

 そして4月29日、東洋大グラウンドで行われた準決勝の相手は、同じ2部の東経大。昨年のリーグ戦の時は1−1で引き分けている。すでに関東学生選手権への出場は決めていた本学だったが、この試合に勝てば、さらに天皇杯予選にも出場できるようになるとのことだった。
 曇り空の下で始まった試合は、まず東経大がペースをつかんだ。速く正確なパス回しで本学の両サイドを突破し、何度もチャンスを作っていく。対する本学も、全員一丸となっての組織的な守備で対抗する。島崎(文3)の好セーブ連発もあって前半は何とか0−0で折り返した。
 しかし後半になると、立場は一気に逆転する。前半に飛ばしすぎたのか運動量が激減した東経大に対し、本学は左サイドを基点に猛反撃を開始。田中(観4)が力強いドリブル突破から精度の高いセンタリングを中央へ送り、何度も決定的なチャンスを演出する。だが、下和田・水野竜(文4)・木村(法2)ら攻撃陣のシュートがなかなか決まらない。10分ハーフの延長戦でも決着がつかず、勝負はPK戦へ。ここで本学は7人目のキッカーがシュートを外してしまい、結局0−0(PK5−6)で敗北。惜しくも決勝進出を逃すこととなった。

変革のきざし

 「練習試合を含め、どんな試合でも勝つこと」を今年の目標としている本学にとって、準決勝での敗退は悔しさが少し残る結果だったと言える。しかし、今回の予選3試合を取材することで、新らしくなった本学イレブンの特徴をいくつか見出すことができた。
今季本学のスターティングメンバー
55水野竜 16木村 FW
 
9下和田
10 田中 22 蔵前 MF
52高橋 11 水野広
 
27吉木      6中村 DF
3大石
 
1島崎 GK

 まず最も注目したいのが、昨年から今年への代替わりに伴う選手の入れ替えがうまくいったこと。昨年から守備陣の中心として活躍している大石(経2)を含めても、今年度は2年生が5人もスターティングメンバーに入っている。しかも、これは3・4年生の層が薄いから仕方がなくということではなく、彼らが自分の力で勝ち取ったものであろう。昨年はFWで出場していたDFの吉木(経2)は、184cmの長身を生かし、守備だけでなくセットプレイでの攻撃参加も見せている。右サイドを務める蔵前(社2)は、縦への豊富な運動量が最大の魅力。木村は相手DFの裏を突く鋭い突破から今予選では3得点を記録し、水野広(法2)は本職の左サイドに戻った田中の後を完全に継いだ。
 もちろん3・4年生も負けてはいない。田中は左サイドを駆け上がる強烈なドリブル突破と精度の高いパス&フリーキックが冴え渡っている。昨年の4年生が抜けて心配されていた攻撃陣も、下和田や水野竜らのコンビネーション抜群の攻撃は強力だ。170cmとGKとしては小柄ながら、大きな声で最後尾からチームを鼓舞し、好セーブを連発する島崎も健在なのに加え、中村(社3)や高橋(経4)も堅実な守備でチームに貢献している。

 さらに、本学は今年度からJリーグの監督を務めることができるS級ライセンスを持ったコーチの指導を受け始めた。まだ技術的・戦術的に詳細な練習はしていないそうだが、これによって選手たちは精神的にも変化を遂げつつある。主務の細田(経4)曰く「練習により集中するようになったし、私生活の管理(おかしは食べない。炭酸飲料を飲まず、飲み物は水とお茶のみ、など)をするようになった」とのこと。また、何か悩みや問題があった時は主将である下和田1人に任せることなく、みんなで話し合うようにし、ピッチの外でもチーム一丸となって取り組んでいるそうだ。
(写真=今季の本学を担う2人。左から田中、下和田)

 5月20日には1部・2部の大学が入り乱れる春季対抗戦が開幕した。富士見グラウンドで行われた本学の第1戦の相手は、昨季1部4位の國学院大。苦戦が予想されたが、終わってみれば2−0というスコア以上に両校の差が出た内容となる。國学院大がミスを連発して退場者まで出す散々な内容だったのに対し、本学は攻守ともに最高の出来。大型ストライカーとして期待の高まる森田(経2)が先制点を挙げるなど、さらなる新戦力の台頭もあった。
 今年こそ自分たちにとっての秋を実り多き季節にするため、走り続ける彼らを今後も注目していきたい。
(五十嵐)