ヨット部

或る日の取材から  
―風になれたら―

 4月29日、午前8時25分。白いマストを広げ、無数のヨットがいっせいに沖を目指した――。
 相模湾に面し、右手に江ノ島を臨む森戸海岸。そんな景勝地もこの日ばかりは戦いの舞台へと姿を変える。関東学生ヨット春季選手権大会。本学は、この日が予選の1日目。取材にやってきたわたしの胸は、やけにざわついていた。
 緊張感に高揚感、いろんな感情が入り交ざっていた。目前には応援歌「行け立教健児」にのって演舞する応援団の姿がある。7時30分頃、わたしたち取材班がやって来たとき、彼らはもう応援の準備を始めていた。船出の前、選手一人ひとりにエールを送る。その躍動感には圧倒され、感動せずにいられない。やはり、応援団にしか出来ない「応援」がある。
 そこで考えるのだ。立教スポーツに出来る「応援」とはどんなものだろう、と。それを自分がどこまでできるのだろうか、と。
 本学の三艇が沖合に小さく見えるようになった頃、海岸から程近い葉山マリーナに向かった。ヨット部OBのクルーザーに同乗し、そこからレースを観戦、写真を撮るのである。
 ヨットレースを間近に見るのはこれが初めてのこと。足りない知識を何とか埋め合わせようと必死にメモを取る。そのうちに気分が悪くなる。船酔い。OBの皆さんに助けてもらう。遠くを見ていたほうが酔わないそうだ。
 その遠くにはヨットの影がある。“間近に見る”といっても、レース中はヨットに近づける機会はそんなにない。風でふくらむ本学艇の緑色の帆が、様子をうかがい知る唯一の手がかりである。追い抜いたとき、あるいは追い抜かれたとき、選手はどんな表情をしているのか、気になるけれど見ることは出来ない。
 レースを終え、浜へ帰っていく三艇を見とどけ、マリーナへ、そして浜へと戻る。選手たちは、すでにヨットの手入れを始めていた。主将の坂井にインタビューをしている間も、他の選手たちの手は休まることがない。現在、部員5名。今大会にも助っ人を交え出場した本学ヨット部。人数が少ないだけに彼らの仕事はことのほか多い。部員の不足は、否定しようのない事実だ。
 そんな状況のもとで、本学は決勝進出を果たした。それもまた、事実。この事実を伝えよう、そう心に決めた。
 立スポにしか出来ない応援をしたい。取材を通して知った彼らの姿を広く伝えること、そのための取材を力を注ぐこと、それが立教スポーツに出来る、いや、するべき「応援」の姿だと思う。
 いよいよ6月号が発行になる。ヨット部は、もう次の目標に向かって進み始めていることだろう。この6月号の紙面が、彼らの背中を押す風になれたら、と思っている。
(岩田)