取材雑記A

洋弓部女子「昇格への道」

 昨年の秋、
「雨より風の方が気になる」と、インタビューで聞いたことがあった。その日は小雨が降っていて、夏が終わったことを感じさせられる薄寒い日だった。

 4月22日、午後1時。東武動物公園駅に着く。日本工業大学にて洋弓部、春リーグの最終戦がある。
 洋弓、いわゆるアーチェリーだ。アーチェリーの試合を生で見たことのある人はそれほど多くはないだろう。が、ルールはいたってシンプル。的があって、その中央を目掛けて矢を放てばいい、それだけだ。しかし、そのシンプルさが逆に難易度を高くする。何故か。シンプルゆえに非常に高度な技術の争いになるからだ。
 本学はここ数年間、2部上位の実力を持ち、何度も1部との入れ替え戦に臨んできた。だが、未だ2部に留まっている。
――今年こそ
 その意思は何代にもわたって受け継がれる。
 そして、今年。
 今回の試合に勝てば2部2位が確定する。2位になれば入れ替え戦出場が決定。まずは入れ替え戦出場権獲得から、だ。

 レンジの風景は春らしくグリーンが広がっていて、中にブルーの小花もちらほら見え隠れする。天気も良い。だがコンディションは最悪。風がともかく強い。強い、と一言にしても様々な強さがあると思うがその日の風の強さはひどいものだった。
 「風は強くて条件は悪いけど、相手も同じです」
 対戦相手の獨協大学の選手の掛け声が強風の中聞こえてくる。そう、条件は同じだ。
 どれだけ風が吹いていても淡々と試合は進む。体が冷えてくる。恐らく選手の体も風で冷えていることだろう。それでも弦の音、的に矢が刺さる音は単調に鳴り響く・・・。
 最初から本学はリードし続け結局そのまま勝利を収めた。2部2位。入れ替え戦出場決定だ。
 「楽しんで試合をすることができた」
半田は笑顔で言った。昨年秋のインカレとは違った答えだ。それは成長の証拠かもしれないし、仲間の力であるかもしれない。ありきたりな問いではあるかもしれないが「入れ替え戦に向けて一言」を聞くと
「気合です」と返ってきた。 「ゴールデンウィークの練習次第」。その入れ替え戦は5月6日。「今年こそ」の意思を来年は持たなくてもいいようになるだろうか。
(篠原)