レスリング部

「背負うもの」

レスリングにも、一本背負いがある。



  
 二人の男。身にまとうものは違えど、同一の格闘家だ。柔道部元主将・本橋永至(社4)は10月5日、東京六大学レスリングチャンピオンシップ会場にいた。レスリングと聞くと、個人的にはどうしても「寝技」というイメージが拭い去れない。この大会出場者もその範疇(はんちゅう)にある。本橋を除いては――。
 敵の腕を抱え込み、豪快に投げ倒すスタイルは、明らかに周囲のレスラーのそれとは違う。161aの本橋に背負われて、180a以上の巨体が宙を舞った瞬間、彼はこの日一番の歓声を背に受けた。
 3年次よりレスリング部と交流を持ち、人数不足の同部に顔を貸している。だが、それはもはや単なる人数合わせではなく、一戦力として彼の存在は欠かせないレベルにまで達していた。「(レスリングをやってると)柔道にすごく役立つ」。前向きで柔軟な姿勢には、ただただ感服するばかりだ。
 しかし、これはあくまで仮の姿。真の本橋は柔道部主将として、周囲の期待を一身に背負う身だ。
 
 10月27日、柔道発祥の地、講道館。聖地ともいうべきこの場所で、本橋は最後の試合を迎えた。
                                                       
(安部)