柔道部

ーそれがすべてー


  
161a、60`と小柄な体格ながらも、これまで幾人もの巨漢を投げ飛ばしてきた本橋(社4)。その姿はアトランタオリンピック金メダリストの野村忠宏を彷彿とされる。
 10月27日、引退試合となる第44回東京学生柔道二部優勝大会に大将として登場した。本橋が勝てば本学の初戦突破が決まる。177a、81`の敵を前にして、本橋もおのずと気合いが入る。「始め!」の合図とともに果敢に攻める本橋。だが、相手の上背に阻まれ、間合いが取れない。無情にも「注意」を受ける。そのまま苦手な組み手へもつれ込み、「効果」を取られまさかの一本負け。人一倍負けず嫌いの本橋は、いつになく納得のいかない表情を見せた。試合後、「柔道を続けていく上での課題が見つかった」と一言。きっと彼は一生涯かけても己に満足することはないだろう。
 柔道はあくまで個人競技。しかし、彼は一人じゃなかった――。熊木(理4)と宮原(文4)という素晴らしい同期に恵まれたのだから。ユーモラスな雰囲気を醸しながらも、主務を2年間務め上げた熊木。部で最上段の参段を所持していながら、肩のケガで思うように試合に出場できなかった宮原。プライベートでは全く会わなかったというほど、本当に性格も考え方も異なる三人。けれど、そんな三人が四年間をともにしてこれたのは、柔道があったからこそ。柔道が帯となり、彼らを固く結び付けていたのだ。
 聖地・講道館に柔道家としての四年間をしっかりと刻み付け、彼らは静かに去っていった。
                                                       
(西野)