第3回 準硬式野球部

Mr.野球少年

 
 突然だが、この春わたしはすっかり捕手・猿田宏貴(法2)のファンになってしまった。野球の静と動が織り成すプレーの中でも一際冴えるエキサイティングなプレー。これが猿田の野球にはある。特に自慢の「強肩」をフルに見せつけ、盗塁を刺した瞬間は実に痛快。高鳴る鼓動が間近に聞こえてくる気さえするのだ。
 猿田は今年2月に1年遅れで準硬式野球部に入部。まさに彗星のごとく現れた「肩が強く、しかも打てる」期待の新人である。
 
 高校は野球の名門・秋田高校にこだわって入学した。そこで初めて捕手というポジションのおもしろさと出会う。監督に肩の強さを買われてのことだ。それ以前は「キャッチャーなんて…」と気嫌いしていたが、今では「楽しい」「自分に向いている」と一変、捕手にハマっている。
 野球づけの毎日を送っていた猿田だったが、高3の夏、野球選手として肝心要のひじを痛めてしまう。自由選抜で本学への入学も決まり、大学でも野球を続けるつもりだったのでひじの治療に専念した。しかしいざ練習を再開するとけがは完治していなかった。思いきり野球ができない。初めての大きな挫折を味わう事になった。大学1年の間は「サークル(野球サークル)・家・バイト」の生活。物足りなさと、自分自身への嫌悪感。高校の監督が言っていた言葉が胸に刺さる。「夢見る者は現実に負けてはいけない――」。将来も野球を続けていく「夢」があったにも関わらず、ひじ痛という「現実」に負けてしまった。このままではいけないと猿田が選んだ選択肢は「準硬式野球部」。そしてテスト明けの2月、野球を思いきりできる準硬式野球部に入部したのだ。

 現在、猿田は充実の表情をみせる。6月8日の法大戦で幕を閉じた春季リーグ戦をスタメンで全試合出場。初戦の早大と明大戦では緊張のため本領発揮とまではいかず、バッティングも湿りがちであった。しかし後半は守っては盗塁を鮮やかに刺し、打率も急上昇をみせた。初めてのリーグ戦の感想は「自分の力量を試せました。ここで(トップを狙って)やっていけるという光を見出した感じがします」と力強い。手応えは十分だったようだ。

 大学1年の苦悩の時期を経て、野球ができることの喜びに気づけたことで、結果的に今の猿田をより輝かせているように思う。一度閉ざされたかに思えた、野球を続けていく夢も今は再び視野に入っている。
 野球が好きで好きでしょうがない野球少年は、新たな打ち込める場所をみつけた。可能性を内に秘め、見てる方をワクワクさせる猿田のスター性は抜群である。今後の猿田の活躍がとてつもなく楽しみなのである。
(江幡)