洋弓部男子

「這い上がれ」

 「何が起こってもおかしくない」

 アーチェリーという競技を取材して感じることだ。そして、本学洋弓部男子の今季も、このことを実感するシーズンとなった。
 昨夏に書いたクローズアップでも触れたが、アーチェリーでは気候のみならず風の向きや強弱など、試合中にも変化する気象条件がスコアや試合結果を左右する要因になる。



    関東学生アーチェリーリーグ戦三部Aブロックでの本学の戦績

 第1戦 3月28日(晴天・微風) 対神奈川工科大  ○ 3324−3257
 第2戦 4月 4日(雨天・強風) 対電気通信大   ○ 3226−3061
 第3戦 4月11日(晴天・微風) 対武蔵大      ○ 3514−3103
 第4戦 4月25日(晴天・強風) 対立正大      × 3262−3290

 (上位2校が2部との入れ替え戦へ進出。3勝1敗で上位3校が並んだため、1〜3位を決める順位決定戦が5月2日に東京国際大にて行われる)




 天候が与える影響は、上記の試合結果を参照すれば一目瞭然だろう。しかし、それを差し引いても、同じチームの成績ながら最多得点と最少得点に300点近くもの差が生まれたことは注目に値する。
 今季は特に、本学が「若いチーム」だからこそ、得点差が顕著に表れているようにも思うのだ。

 今大会では、各校11人以内の出場選手中、上位6名の合計得点を総合成績にするという方式がとられる。
 本学は、主将・福島(文4)、牟田口(社4)、中野(文4)とともに、3人の3年生と5人の2年生が出場している。リーグ戦では、その良い面、悪い面がともに明らかになった。

 万全の調子ではないが確実に二試合をものにして臨んだ第3戦。本学は驚異的なスコアを記録する。次期主将の豊田(文3)が自己記録を大きく上回る625点を、好不調の差が少なく安定した力を持つ伊藤(文3)が611点を挙げ、彼らを筆頭にチーム新記録の3514点をたたき出したのだ。
 この試合は、「波に乗ったら止まらない」チームカラーを印象づけた。(写真=沈着冷静に矢を放つ福島)

 ここまでの3試合で、金澤(経3)、赤尾(文2)、上田(文2)、坂巻(理2)も上位6名に入る活躍を見せ、試合ごとにヒーローが誕生する好循環が生まれた。
 成長を続ける彼らの“可能性”について福島は、「きっと来季は今季以上の結果を出してくれると思う」と期待を寄せる。


 しかし、勝てば1位通過が決まる最終戦に、落とし穴が待っていた。

 序盤の強風によりスコアが伸び悩んだことは確かだが、終盤まで約10点差の競り合いを続ける中、勝利を手繰り寄せる「勝負強さ」が欠けていたことは否めない。土壇場の50b射的第6エンド。その前半の3本の射的で相手のリードがさらに広がった時、一様に陰りを見せた選手たちの表情が、不完全燃焼に終わった無念さを代弁した。

(写真=成長著しい2、3年生と、経験豊富な4年生。それぞれが一丸となって勝利を目指す。左から金澤、豊田、上田、中野)

 以前から「まだ実戦での経験が少ない」と福島は懸念していたが、その通りに、若いチームならではの“可能性”と背中合わせの“もろさ”が露呈した格好になった。



 「厳しい状況になったが、一試合一試合に集中していく」
 その最終戦の後、福島は一戦必勝の姿勢を強調した。

 4年生は、今季をもって引退する。
 入れ替え戦を含めれば、残る戦いは2試合。だが、順位決定戦で3位に終われば入れ替え戦への道は断たれ、その時点で現役生活を締めくくることになってしまうのだ。
 それだけに、彼の「一試合一試合」という表現に、“一試合だけでは終わらせない”という強い意志を感じるのである。
 牟田口も言う。「2部昇格を手土産に、笑って引退したい」と…。

 そのために越えなければいけない壁――今週末に控える順位決定戦で、このチームの真価が問われることは間違いない。


 このまま失速して終わるのか――。
 それとも、この状況から次の舞台へと這い上がるのか――。


 「(順位決定戦は)大差になるとは思えない。それだけに、いかに自分に自信を持って射つかが勝負を決める」と福島が語れば、牟田口も「自分のためにもチームのためにも、なんとしても結果を残す」と胸中を明かす。
 彼らだけでなく2、3年生もまた、今季の初黒星を糧に勝利への決意を新たにしたはずだ。

 だからこそ、迎える決戦に大きな可能性を感じるのである。11人の意志が一つになり、その意志が誰にも止められない大きな力に変わる“可能性”を――。
 そのときは、彼らの決意が結果になって実るとき。
 その瞬間が訪れることを、強く願う。

 幕切れはまだ、早すぎる。

(2004年4月30日・小見)