硬式野球部
〜新人戦観戦記〜

 1、2年生のみが神宮球場に立つことができる――それがリーグ戦の終了した翌日から行われる新人戦である。通常のリーグ戦と違い、学生席もなければ、選手を後押しする応援団の応援もない。がらんとした観客席は寒さを増す。そんな静かな球場では寒さとは無縁のベンチからの指示の声や守備連携の確認をする声、そしてお互いを鼓舞する必死な声がよく聞こえる。これからのリーグ戦の主力となる彼らは憧れの舞台でどんなプレーをするのか楽しみでしかたない。

 11月1日、春季新人戦で準優勝をしている本学はシード校のため2日目からの登場となる。対戦相手は早大。すでにリーグ戦を経験している選手も多く、昨秋以来の優勝を目指す本学にとって強敵といえる。先発メンバーは以下のとおり。


一番・捕手 東(ひがし=観2)    二番・中堅手 三好(コ2)
三番・二塁手 鈴木(雄)(コ2)    四番・右翼手 五藤(社2)
五番・左翼手 岡部(社2)       六番・三塁手 田島(経2)
七番・ 一塁手 二 場(ふたば=経1)  八番・遊撃手 吉田(経2)
九番・投 手 川 俣(経 2)


 一回表、先発川俣が先頭打者を失策により出塁させると犠打と連打により一気に4失点の苦しい展開。八番打者を三振で打ち取りようやく三死。早く追いつきたい本学の攻撃となる。ところが先頭の東、三好ともに中飛であっという間に二死とされると、三番鈴木(雄)も三振に倒れ後につなぐことができない。予想外の出来事に序盤から祈るような気持ちになってしまう。

 二回表、点差を広げたくない本学は川俣に代わり桑鶴(法2)をマウンドに送る。ストレートはMAX140qを記録し、三者凡退と落ち着いた投球を見せる。その裏、四番五藤が四球で出塁。反撃にでたいところだが後続に1本が出ない。

両校とも三、四回を0点で迎えた五回裏の本学の攻撃。五藤が早大先発の日野からこの日チーム初安打を左翼前へ放つ。無死での出塁に得点の希望を抱く。しかし続く岡部、田島は打ち取られ、1年生で唯一先発に名を連ねた二場も三振とチャンスを生かせない。六回裏、吉田に代わり、田頭(経2)が打席に入るも空振り三振。そして早大打線を無安打に抑える好投を披露した桑鶴の代打に入った白川(社1)も三振に倒れ、反撃の糸口を掴むことができずにチェンジとなってしまう。

七回表、田頭に代わり、間嶋(経2)が投手、白川に代わり、今田(法2)が遊撃に入る。間嶋はこの回を無失点で切り抜ける。するとその裏、なんとか差を縮めたい本学に待望の安打が生まれる。この回先頭の三好がつまりながら内野安打で出塁。なんとしても1点返したい。しかし、またも後が続かない。そして八回表、間嶋は先頭打者を打ち取るものの四球2つと内野安打で満塁のピンチを招いてしまう。これ以上点差を広げられることは許されない。二死にこぎつけながら、押しだしの四球を与え、ダメ押しの1点を加えられ5−0。

最終回、マウンドには神宮初登板の増田(法1)。安打を許すが四番打者から三振を奪い、味方の反撃を待つ。1点でも返して意地を見せたい最後の攻撃。増田の代打に天野(社2)を送るも三振。東、三好も打ち取られて試合終了。わずかに2安打、10三振を奪われ、0−5の完封負けの本学は4季連続の決勝進出を逃し、3位をかけ東大と対戦することになる。

迎えた3位決定戦対東大の先発メンバーは以下のとおり。


一番・捕手 東           二番・中堅手 三好
三 番・ 二塁手 鈴木(雄)       四番・一塁手 五藤
五番・左翼手 岡部         六番・三塁手 田島
七番・遊撃手 吉田         八番・右翼手 坂井    
九 番・ 投 手 高 橋(信)(コ2)

なんとしても勝ちたい本学の先発、新人戦で2勝をあげている高橋(信)は二者連続三振で2死を簡単にとって見せる。続く打者も二飛と完璧な立ち上がり。守備から流れを作り、先制点がほしい二回表、前日も安打を打っている五藤が打席に入ると「狙ってはいなかったけど、初球は振ろうと思っていた」という打球は左翼席へ。「スカッといった。完璧でした」と笑顔の神宮1号で1−0と先制する。援護を受けた高橋(信)はまたも2三振を奪い三回の攻撃へ。一死で高橋(信)が四球で出塁すると、東がしっかり送りバントを決め二死二塁のチャンスも無得点。その裏、高橋(信)は初安打を許すが後続はきっちり抑えて四回表、本学の攻撃はクリーンナップの好打順。三番鈴木(雄)は投ゴロに倒れてしまうが前打席で本塁打の五藤は四球で出塁。続く岡部が左翼前安打で一死一、二塁と東大を突き放すチャンスが到来する。しかし、今日も「あと1本」がでない。

すると四回裏、好投していた高橋(信)が突如崩れてしまう。この回の先頭打者に四球を与え盗塁を許す。どうにかして抑えたいところであるが痛恨の適時打を打たれ、なんと逆転されてしまう。さらに死球を与えてしまい一死一、二塁。依然としてピンチは続くが、ここは高橋(信)が意地を見せ、後続は二者連続三振にしとめる。

一刻も早く追いつき、そして逆転したい本学は2失点も4回を投げ、8奪三振の高橋(信)の代打に小笹(経1)。小笹は期待に応えて中前安打を放つ。続く東は相手の失策により出塁。打者は三好。“センターに返せ”グラウンドから指示の声が飛ぶ。しかしチャンスをものにすることができず三死。次第に焦り、不安が募りだす。

五回裏、代打の小笹が左翼に入り、岡部が右翼へ。投手に前日一回ながら好投した増田が入る。東大打線は三者凡退で本学の攻撃へ。二死から岡部がこの日2本目の安打を打つが、つながらない。六回裏、増田は二死としながら二者連続で打たれると、さらにボークをとられてしまう。失点は許されない緊迫した状況の中、増田は三振で三死とし、見事に抑えた。

 七回表、吉田に代わり田頭から攻撃が始まるが三振。力投した増田の代打、二場も三振と苦しい展開が続く。その裏、「とにかく勝ちたいと思って投げた」という桑鶴がマウンドに立つ。先頭打者にこそ内野安打を許すも2三振を奪う。

 まさかこのまま終わってしまうのか、そんな弱気な気持ちが大きくなってきた八回表、ついに待ちに待った瞬間はやって来る。これまで無安打だった先頭の東が右翼へ二塁打を放つ。三好の当たりはつまってしまうが相手の失策を誘う。無死一、三塁とこれまでにない絶好のチャンスが訪れる。五藤は四球を選び満塁となる。「競っていてチームのムードもよくなく、つなごうと思って打った」と語った岡部の打球は右翼への犠飛となり、ついに同点。二死一、二塁。続く田島も四球で再び満塁とする。打者は途中出場の今田。「センター返しを心がけた」という決勝適時打で逆転に成功し、ベンチも客席も歓喜の声をあげる。

 そして桑鶴は八回を難なく抑え、九回は岡野(経2)を守備固めで起用し、逃げ切った。一時はどうなるのかと手に汗握る試合だったが3−2で勝利し、3位で新人戦は幕を閉じた。

 試合後、大倉新人監督(観4)は「早大戦、東大戦とも打てなかった。練習でできても試合ではできないこともあるので、精神的に強くなってほしい。新人戦のあと、リーグ戦で優勝できるように、また神宮で野球をやりたいという気持ちを忘れないでほしい。優勝する力は持っているチームです。」と思いを聞かせてくれた。

 主力を占めていた4年生がごっそりと抜ける来春、活躍の場を新人戦から立大のプライドを懸け戦うリーグ戦へと移す彼らがこの2試合で、練習を通し得たものは計り知れない。打てなかった、負けた、もっとできたという悔しさ、安打、勝利のうれしさなどそれぞれ感じているのだろう。神宮で野球をやれる、優勝するという気持ちを忘れないでひとまわりもふたまわりも大きくなって、神宮に立つことを願っている。    

 

(2005年12月4日・小林)







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