準硬式野球部
〜砕かれたプライド〜

 
 目覚めることのない悪夢のような光景であった。いったいこの攻撃はいつ終わるのか、厚い曇り空から豪雨が降ってくるのを待つしかないのか、3アウトチェンジが遠かった。

 昨秋、本学準硬式野球部は東京六大学リーグ戦完全優勝という最高の結果を収めた。そのため、各リーグの覇者のみが参加する関東地区大学・社会人準硬式野球王座決定戦にも出場。なみいる強豪を下していき決勝に進出した。決勝では3−4で惜敗するも東都の王者・専大を追い詰める。優勝こそならなかったが、六大学のみならず、関東中に立教の名をとどろかせるのには充分な結果であった。

 そして球春到来を告げる関東地区大学準硬式野球選手権大会が4月1日、開幕した。関東の準硬式野球部が一同に集う今トーナメント、初戦は2回戦の東京農工大。本学は初回から猛攻を仕掛けた。その後も新主将・築島(経4)、そして張替(はりがい=理2)に本塁打が飛び出すなど得点を重ねていく。投げては熊谷(文2)が長身から投げ下ろす角度あるストレートを武器に東京農工大打線を完封。今年度の初陣は16−0の7回コールド勝ち。「打撃には自信がある」という築島の言葉通り最高のスタートを切った。

 3回戦の相手は全国屈指の名門、桜美林大。準硬式野球の日本代表入りを果たした選手や関東選抜の選手も多く、豊富なタレントが揃っているチームである。築島は「粘って少ないチャンスをものにしたい」と試合に臨んだ。本学の先発は今年の主戦投手・石井(経3)。初回、桜美林大のクリーンアップに3連打を浴び3点を献上。四回にも1点を追加され苦しい展開となった。本学も六回表、萬(よろず=文3)のファインプレーでピンチをしのぐとその裏、柳沼(文2)がイチロー(マリナーズ)ばりのフォームから、泳ぎながらも右中間を破る三塁打を放ち好機を演出。内野ゴロの間に生還して1点を返した。しかし七回表、粘りのピッチングを続けてきた石井も100球を越えてついに捕まる。さらに5点を失ってしまった。

 八回にも石井を七回途中からリリーフした折原(理2)が打ち込まれる。桜美林大打線は短打で確実につなぐ。本学外野陣の強肩もあってワンプレイで二者生還することはなかったが、連打が止まらない。集中していないわけではない。しかし、守備の時間が長く、リズムが悪くなり細かいミスも増える。3番手・中川(社4)をもってしても火のついた桜美林大打線の勢いを止めることはできない。一塁側桜美林大ベンチでは大量得点の余裕からか、笑い声が響いていた。本学の選手はどのような思いだったのであろうか。そして相手は控え選手に出場機会を与えるべく次々と選手交代を行なっていった。1−19。八回コールド負け。六大王者のプライドは破壊された。厳しい現実を前に選手たちは「リーグ戦頑張ります」と自分に言い聞かせるように話した。

 悔しさをぶつけるべきリーグ戦は4月15日から始まった。昨秋同様、楽な戦いは一つもないだろう。しかし、春季リーグ戦を制すれば、全日本選手権への出場権が得られて桜美林大へのリベンジも可能となる。練習さえ積めば18点差が簡単に埋められるとは思わない。だが、本学の選手たちが一度の大敗で勝利をあきらめ、二度と立ち上がれずにこのまま終わってしまうはずがない。少なくとも昨年、彼らの公式戦を20試合以上見て、勝利への執念を見せつけられた私はそう確信している。


(2006年4月18日・古矢)







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