重量挙部
〜一人じゃない 前編〜

 蒸し暑さが残る8月の終わり、滴る汗をぬぐいながら新座体育館ウエイトリフティング場の扉をノックした。私は立教スポーツとしても何年ぶりかの重量挙部取材に胸を躍らせていた。しかし、…返事がない。誰もいないのかな、と思い扉を開けたその瞬間、大音量の音楽が耳に突き刺さった。私たちがあっけにとられて立っていると、「すいません」と言って駆け寄り、ラジカセを止める丸刈りの青年がいた。彼こそが本学体育会重量挙部唯一の部員、工藤宗裕(営1)だ。いつも音楽をかけて練習しているのですか?と聞くと、「はい。静かで寂しいんで(笑)」とはにかむような笑顔を見せた。

重量挙げは高校から始めたという。「友達が重量挙げ部に入ると言っていたので、僕もつられて入ったって感じですね。部員は20人ぐらいいました。高校時代に学んだこと? ウエイトリフティングは一人の練習では乗り切れない、チームで乗り切るんだってことです」。

仲間に支え合い、めきめきと力をつけた工藤は国体で総合7位と輝かしい成績を残した。そして立大へ。「部活での自分の成績を生かせる大学に進学しようと思っていました。それで調べていったら立教があって…。オープンキャンパスにも行きましたよ。その時に、部が厳しい状況(当時4年生が一人だけ)にあることを聞きました。ですが僕はマイナスに考えず、逆にチャンスだと思いました。自分で重量挙部を盛り上げていこうと。周りの友達には『一人なの!?』って笑われましたけどね(笑)」。そう振り返る工藤の姿は、その言葉ほどの気丈さはなく、むしろ自然体のように見えた。しかし同時に、わたしには一種の違和感があった。なぜ、笑っていられるのか? 仲間と苦楽を共にした高校時代とは打って変わり、たった一人での練習は寂しくないのか? 工藤に問うてみた。

「練習する上ではそれ(寂しさ)は感じませんし、気になりません。一人のメリットは好きなときに練習でき、メニューも自分で組めることですね。また現在週3回練習しているのですが、早稲田大学にも行ってあちらの部員と一緒に練習しています」
この言葉を聞いたときはただうなずいていただけだった私だが、その後本当の意味を知ることになる。  

 (後編へ続く)

(2006年12月4日・須部)







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