重量挙部連載企画
プロローグ 〜共存〜

記事:池田(貴)

暑かった夏も終わりを迎えた10月初旬。
本学新座キャンパスの体育館に、異様な重低音が轟いていた。
それは、ウェイトリフティング場から聞こえてくる。

ガシャン…ガシャン――。



場内は、やや寂しげなまでに広い。
床には無造作に並べられたバンとシャフト。


▲シャフト これだけで20kg。


▲バン(オモリ) 0.5〜50kgまでさまざま。

ほぼ、鉄の塊のみで構成された空間。無機質。
その中において唯一躍動する存在、ヒト。証明するのは、ただ挙げることのみ。

重量挙部員である河村(コ3)は、たった一人、練習に取り組んでいた。


まずはバンをはめずにシャフトだけを使い、正面の鏡でフォームの確認から始める。

「シャフトを持っただけでその日の体調が分かる」

河村のこの言葉からは、彼の競技人生で培われてきたのであろう、経験と感性が覗いていた。
だが、それだけではないことをすぐに知ることとなる。



シャフトに少しずつバンをセッティングし、重量を増加させていく。
その都度、遠慮なく床に落とされるバーベル。

ガシャン…ガシャン――。

破壊という形容が相応しいこの音は、ウェイトリフティングの持つ荒々しさを感じ取るのに十分であった。

重量が100kgを超えたあたりから、シャフトがしなり始める。
ヒトと、金属とのぶつかり合い。
肉体の限界への挑戦。

彼の体重は80kg弱である。
自分より重いモノを持ち上げるということ。

「なんか感動するよね」

そう、軽く笑うのであった。

一通り練習をこなした彼の勧めにより、記者もシャフトを挙げてみることにした。


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