〜大空へ〜

まだ夏の暑さが残る9月上旬。立大航空部は埼玉の妻沼で練習合宿を行っていた。晴れ渡った空に機体があっという間に吸い込まれていく。なんて高くまで飛んでいくのだろう。旋回する姿はまるで優雅に飛ぶトンビのようである。少し目を離すと、機体を見失ってしまいそうになる。グライダーには動力となるエンジンが搭載されておらず、代わりにウィンチと呼ばれる機械を用いて飛行する。このウィンチが機体にくくりつけられたロープを高速で巻き取り、その引っ張る力を利用することで飛ぶのだ。この飛び立つ瞬間が最も恐怖を感じるのだという。ちょっとしたトラブルやミスが大きな事故につながってしまうためである。滑空場一帯にピンと張りつめた空気が漂う。 しゅるしゅるとロープを巻き取る音が静寂を打ち破り、あっという間に大空へと飛び上がっていった。操縦自体はなんと自転車よりも簡単であるという。ただし、飛んでいる間は常に判断の連続。危険と隣り合わせの過酷な世界なのだ。
部長の辻(済4)はライセンスの取得を目指しながらも大黒柱として部を支えてきた。部員不足により一度は廃部の危機にたたされた航空部。 現在部員は着実に増えてはいるものの、決してフライトの人員として十分な人数であるとは言えない。さらに、経験者はほとんどおらず、大半が大学から始める。その目的もさまざまで、フライトが好きな人もいれば機体を修理するのが好きな人など様々な人がいる。「多岐にわたる活動の中で自分がどのようにグライダーと関わっていくかがとても大事」と辻も語った。実際に部員一人一人は本当に楽しそうに活動に取り組んでいた。これは誰にやらされるでもなく自分から本気で航空と向き合っているからこそのことなのだろう。12月には関東大会が控えている。これまで積み重ねてきた努力は決して彼らを裏切らないだろう。
(2011年1月26日・田島尚斗)





Copyright (C) 「立教スポーツ」編集部, All Rights Reserved.