アイスホッケーに捧げた4年間


フェイスオフ開始前の佐久間
2−5。試合時間残り5秒。

江守(社4)、佐久間(営4)、阿部(文4)の4年生3人が監督の指示で初めてセットを組み、リンクに立った。けがのため出場できなかった平林(済4)はベンチから3人の姿を見つめ、「なんで俺は出られないんだろう」と涙をこぼす。



位置に着く江守



フェイスオフから試合が再開。
審判が落としたパックは相手に渡り、無人の本学ゴールへ向かって流れた。得点を知らせる赤いランプが点いたと同時に、試合終了のブザーがリンクに響く。



膝を突きうなだれる阿部


膝を突きうなだれる選手。肩を落としてうつむく選手。涙を流す選手――。

ベスト8を目標に挑んだインカレで無念の1回戦敗退が決まり、4年生が引退を迎えた瞬間だった。







翌日、主将・江守良介、副将・佐久間健二、主務・阿部皇宗(こうしゅう)、平林祐樹、そしてマネージャーの山崎絵美(観4)に引退を迎えた心境を伺った。

――インカレを終えて、今の心境は?
佐久間 ふざけ倒しています。昨日から萎えています。
平林 実感湧かない感じ、ね。
阿部 負けてショックだけど、終わったともまだ思ってない。
江守 ショック大きい。実感なくて、負けてないみたい。だんだん終わりたくないと思ってきた。

――4年間振り返ってみて
平林 昨日飲みながら語ったけど・・・。
佐久間 くだらない話ばっか。本当に仲良くなった。
平林 佐久間と江守は仲良くなりすぎ。仲良くなりすぎるのはどうか?と。
阿部 1回1回の練習は長いけど、全部合わせたら短かった。
佐久間 2年で辞めたくなった。でも去年から気持ちが変わってきて、引退したくなくなった。
平林 4年始まってどうしよう、どうしようという間に終わった。一瞬で終わった。
江守 一瞬だった。もっとやりたかったな。
佐久間 俺は体力の限界を感じ始めてたけどね。
江守 いろいろ「辞めてー」とかあったけど、結果的に昇格やインカレ出場できて、未経験者の自分にとっては
  高いレベルで貴重な体験ができた。4年間しかやってないけどホッケーを知れてすごい良かった。
佐久間 大学では深く考えずに入ったから辞めたくなって、でも今年度残留を決めたりいろんなことが経験でき
  た。なんだかんだ辞めなかったのは正しい選択だった。
平林 スケート滑れるくらいやっていて、レギュラーなれると思って立教に入った。でも次の年からアスリート選抜
  入試始まって。最初ガン萎え。でも、そのおかげで昇格できたし、インカレにも出場できて、引退も延びて。
  そういう意味では良かった。
阿部 僕は小学校から同じ友人と、同じチームでやってきた。大学では違うバックグラウンドで、全国からの
  強豪が集まっている。八戸でやっているだけでは出会えなかった人とホッケーができたのはいい刺激だった。
  誇りに思う。

――同期はどのような存在ですか?
阿部 昨日も飲みながら語ったけど、深夜遅くまでくだらないことを話せる。信頼関係が築けた。
佐久間 同期のことを話すなら絵美も呼ぼうよ。

佐久間が電話を掛け、マネージャーの山崎を呼ぶ。

山崎 同期ですか?変態しかいないです(笑)。
江守 絵美は、マネージャーが一人で大変だと思うけど、辞めずに続けてくれて良かった。結果的に
  あんまり集まろうとはしないけど、なんだかんだ仲良い。話すし。遠すぎず、近すぎず。一緒にいて
  面倒くさくないね。

――ご自分にとってのアイスホッケーとは?
佐久間 他のスポーツと比べて、大げさじゃなく人生を左右するもの。小学生からやっている人は、人生のキャ
  リアパスになる。うまくいけば大学だって行けるし。大学入ってからも、大学生は遊べるけど、人と比べ
  たらオフもない。良い意味でも悪い意味でも人生を変えた。生涯、大きなものです。
阿部 アイスホッケーとは…クサクて嫌だな(笑)。生活そのもの。小学校から2、3日に1回氷の上に乗って、
  日々のルーティンワーク。学校選ぶにしても、学びたいことをホッケーの尺度で計る。生活全てを体現
  しています。
佐久間 やっぱり生活の一部で!あ、でも引退しちゃったから"元"生活の一部で(笑)。
江守 4年しかやってないから立教のアイスホッケー部でもいいですか?この部活を通じて辛いことも
  楽しいことも全部経験できて。…まとまってない。
佐久間 じゃ、バヤシ(平林)。
平林 中学からやってたけど、遊びみたいな感じだった。だから大学は体育会だから厳しい感じだと思っていた。
  …まとまってないわ。
佐久間 じゃ、絵美は?
山崎 私にとって、アイスホッケーは初体験です。
全員 えー(笑)
山崎 え?ダメ? マネージャーというものが初体験だし、体育会入ったのも。深夜起きて練習に行くのも。
  悩んで、辞めようか相談して、続ける道を選んだ。初めて学ぶものが多かった。だから初体験です!
佐久間、江守 すばらしい!
江守 この部活でいろんな人と知り合えた。体育会の友達ができて、話したり応援に行ったり。一生ものの
  横のつながりも、後輩も先輩も。いろんな人と結び付けてくれた。バイトもスケートリンク。最初は
  親父がホッケーやってて、「やれ」と言われると「うぜぇ」って感じで。でも、いざやると楽しくてハマって。「なん
  で昔からこのスポーツをやらなかったんだろう?」って今は思う。結局、4年間の全て。一生誇りにできるもの
  かな。
  一生この4年間のことを話し続ける。そこだけは胸張って言える。この部活と出会えて良かった。
平林 アイスホッケーとは…。僕にとってはとても辛いものだけど、その辛さを味わう価値のあるものだと思う。
  辛いってのは、練習も、走って当たって体力も必要だし。この部活は練習遅いし、生活はグチャグチャ。金
  もかかるし、車も必要。同期はバカだし。そういうの全部入れてもやる価値がある。アイスホッケーは見て
  ても不思議と面白い。まず滑れなきゃいけないし、スティックも使って、すげぇやつらが体当たりしてくる
  のも面白い。だいたいそんな感じ。辛いけど、良いと思うスポーツ。

「結果がどうであっても、自分が一生懸命やれば悔いはない」。まっすぐな眼差しで、江守はそう語る。

1部Bグループへの昇格や昨年果たした13年振りのインカレ出場と、密度の濃い4年間を過ごしてきた5人。それぞれが、アイスホッケーにささげたこの4年間で得たものは計り知れない。

"やりきった"という充実感を抱いて――。5人はリンクを後にした。

(2011年3月29日・小澤かほり)





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