春季リーグ戦2011

―チームの成功事例・那賀裕司―


 全14試合フルイニング出場、55打数23安打10打点。那賀は間違いなく今季の立大に欠かせない選手の一人だった。



試合 打数 安打 本塁打 打点 四死球 打率
14 55 23 10 .418


 首位打者・ベストナインの2冠に輝き、「コツコツ積み上げてきたものがやっと最高の賞として形になった」と受賞の喜びを露わにした那賀。「華々しい成績の陰に、並々ならぬ努力」とはよく言われるが、常々努力を怠らない彼である。練習なら例年人一倍やってきた。ではなぜ4年目の今季、リーグトップの.418という爆発的な打率が生まれ得たのか。3年間の努力を花開かせた背景には、新しく身につけた打法の習得があった。

 昨年の秋。出場試合は増え、周囲からの期待が上がっていく反面、那賀自身は納得のいく打撃ができていなかった。試行錯誤していたある日、テレビで大阪桐蔭の先輩にあたる西岡(ツインズ)が大阪桐蔭時代の那賀のチームメート、中田翔(日本ハム)にバッティングを指導しているのを目にする。この指導を参考に習得した打ち方こそ、今季の彼の打率を生み出した「体の近くで振る」打法だった。「プロのやっていることはアマチュアから見れば、ほとんど正解みたいなものですから。西岡さん以外にも多くのプロ野球選手がやっているし」とすぐに取り入れた。普段から野球を解説している番組はよく見ているという研究熱心な那賀。2月頃から「誰の目から見ても、明らかに変わってきた」(大塚監督談)という。それもそのはず、振り込みに加えて逆手打ちなども試み、左右のバランスを心掛けた。右手を体に近づけ、打球はセンターから右にしか打たない。「打つ時に右手が強く、引っ張ってしまっていた」という悪い癖を直すべく、これを毎日繰り返していたのだ。そのストイックさ、テーマ意識の高い練習によって新打法は定着していった。

 そして迎えたリーグ戦。新打法は見事機能し、とにかくここぞという場面で打った。特に法大二回戦、岡崎の後の二者連続同点弾は優勝の望みをつなげた一本として自他ともに認める一発だった。しかしそれでも満足はしていない。今季の反省点を聞くと打線に関しては「一戦目での打率」、守備に関しては「カバーリングの遅さ」を秋への課題として冷静にあげてくれた。  

自分がどんな位置にいようと、常に向上心を持って改善点を探す。チームにとってこのような選手の存在というのは本当に大きい。成績はもちろんだが、そんな真摯な姿勢を監督は評価している。

 「那賀?言うことないね。練習をやった選手が出てくると俺も俺もって奴が出てくる。チームの成功事例、見本だね」大塚監督の言葉からも那賀に寄せる信頼の厚さがわかる。秋は大学生として迎える最後のシーズン。「やることを変えるつもりはない。今やっていることの精度を上げる」という言葉通り、春の実績は確実に自信となっている。秋に向け「チームの成功事例」はこれからも努力を惜しまない。目標はただひとつ、"優勝"だ。



次回は松本幸一郎(コ3)選手です。

(7月4日・田中大志郎)


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