笑顔のままで



  高校時代は「週6部活」の生活を送っていた2年生。そのそれぞれが一昨年、1部校でも2部校でもなく、あえて選んだのは関東リーグの3部に所属していた立教大学女子バレーボール部。「バレー!バレー!バレー!っていうそんな生活が嫌で、勉強もしたいし、バレーもしたい」(上阪)。しかし、そんな彼女たちが入学してすぐに、チームは2部に昇格。なにより気づいたら、共に入部した仲間はみな強豪校出身の選手ばかりだった。多くは1年生の頃からメンバーとして出場。時には高校バレーとの違いに苦しみ、自分の限界を知ることもあったという。だが、いつしか自分達で作り上げる大学バレーの面白さを知って、部のスローガン「笑顔勝利」についても考えるようにもなった。今年は1年生を迎え、後輩のためにとプレーすることもあった。そんな彼女達の、二年目の秋。記者として良いのかわからないくらいの主観が入ってしまったのだが、リーグ戦を通して印象に残った彼女たちの言葉を借りながら、一人一人にスポットを当てていきたい。


「楽しんでいるときが一番強い」徳納仁依菜(コ2)
笑顔を見せる徳納

  「(観戦していた人に)『立教ってすごく良いチームだね』って言われて! やっぱり、自分たちは楽しんでいるときが一番強いと思う!」。 6連敗のトンネルを抜け、チームが「笑顔勝利」を取り戻した日だった。コートではリベロとして後ろからチームを支え、ベンチでは体いっぱいに喜びを表現する徳納。

  インタビューでは「ちょーうれしかった!」と彼女らしい言葉が返ってくるときもあれば、引退の近づいた4年生への思いを口にして涙するときもあった。そんな真っすぐな彼女の言葉が好きで、1試合1試合が忘れられないものになった。













「お姉ちゃんといっしょにコートに」丸山紗知(文2)
姉妹レシーブ

  「立教ってどんな選手がいるの?」と聞かれたらきっとまず「丸山姉妹」のことが頭に浮かぶ。「顔も行動もそっくり」と言われることが多いという姉の丸山由貴(文4)と妹の紗知(文2)。両親の影響で、小学校からバレーを始め、大学までずっと同じチームでプレーをしてきた。「仲良いっちゃ、良いのかな?」と笑う姉に対し「大学ぐらいは別が良かった」と話す妹。

   最終戦を前に「最後なので一緒にコートに入りたい」と妹は姉への思いを口にしたが「素直に感謝の気持ちは言えないですね」と照れ笑いを浮かべた。



「屈辱的な負け方をした」鈴木柚衣(営2)
真剣な表情の鈴木

  強豪校でキャプテンを務め、バレーキャリアのある鈴木。負け慣れていないはずの彼女の口から「負け癖」「負けに抵抗がない」という言葉がリーグ中は何度も聞かれた。本意であるなら、悲しい言葉。しかし、そんな鈴木にも「屈辱的な負け方をした」とうつむく日があった。

  第6節の国際武道大との一戦。鈴木はサーブで狙われ、徹底的にレシーブを崩された。投げやりになるのもわかる、そんな試合。「今日は(サーブ)キャッチが気になって寝れないかも」と冗談も言うが、やはり「自分に腹が立つ」と悔しさをにじませる彼女の姿が印象に残る。チームが勝ってもなお、ひとり少し冷静な彼女。だからこそ、その日の負けは、鈴木の気持ちが見えた気がしたのだ。





「自分が決めればチームも盛り上がる」高田玲実(コ2)
笑顔はじけるエース・高田

  そう話す高田は、入部してからずっと立教のエース。彼女にトスがあがると、ひときわ周りの視線が集まる。「彼女のスパイクで、流れが変わるかもしれない」。傍目(はため)からこう期待してしまうのだから、彼女が背負う責任というものは計り知れない。1年生の頃は「私にボールをあげてほしい」と試合後もらすこともあった。高校の延長線でバレーをしていたという彼女には「勝たなくてはいけない」という辛さがどこかにあったという。しかし、今では下級生のことを考えてプレーする余裕もある。コートの中でのはつらつとした笑顔がその証なのかもしれない。来年も立教のエースは高田がいい!














「立教でバレーをするのがすごく楽しい」上阪祥子(コ2)
仲間とハイタッチをかわす上阪(写真中央)

  来季から副主将を任された上阪は、チームメイトも大きな信頼を寄せるムードメーカー。しかし、そんな彼女も1年時はケガで長くボールに触れない日が続いた。「立教でバレーをするのがすごく楽しい」。そう言って笑顔を見せる彼女だからこそ、辛かったであろうリハビリの日々。ピンチサーバーとして控える今も「出たいですけど、それよりコートで頑張っている人の支えになりたい」とベンチから大きな声援を送る。「みんなが笑ってくれるなら、人からどう見られているかは気にしない」と笑う上阪。彼女がいるからこそ"笑顔勝利"はこれからもずっと守られていくのだと、信じることができる。











「『入ってくれてよかったよ』が嬉しくて」西条温香(法2)
試合を見守る西条(写真右)

  バレー経験者が揃う2年生のなかに、ある日入部してきたバレー初心者の西条。カナダに住んでいたこともある帰国子女で、お願いすると流暢な英語で気さくにインタビューも答えてくれる。コートの外からの彼女の見方には長くバレーを続けてきた人にとっても新しい発見があるという。なにより「アメリカン」で「明るくノリがいい」彼女が話しだすと、周りの雰囲気がより明るくなる。部員からも「入ってくれて良かった」と感謝される、チームの人気者となった。








最後に

  ポケットにしまっていると「今日はないんですかー?」と誰かが聞いてくる。いつも試合の度に持ち歩いていたボイスレコーダー。今まで話す機会のなかった彼女たちのことを良く知るため、毎試合後インタビューを録音していた。話し始めると時には15分を超え、そのうち30分も超えた。文字に起こすために聞き直すと、負けた日はしんみりと、勝った日はお祭りのような声が聞こえてくる。いつしか彼女たちの声を聞くことが楽しみで、レコーダーを手にするようになった。
  つらいことも、苦しいこともあるかもしれない。無理に笑ってほしくはないが、楽しそうにプレーする姿には本当にたくさんの笑顔をもらった。できたらでいい、たまにでいいので、そんなことを思い出してほしい。来シーズンもその先も、女子バレーボール部のこれからが楽しみでならない。
(鈴木里未)





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