3度目のインカレへ 取り戻した自分


  「高校の時の方が全然できてた」。5月のリーグ入れ替え戦で2部昇格を逃した直後、佐藤(コ3)から出てきたのはこんな言葉だった。


  フェンシング部不動のエース、佐藤茜。エペを得意とする彼女のフェンシング人生は実に華々しい。フェンシング一家の末っ子として生まれた佐藤は、小学2年生から競技を始める。高学年になると世界大会に出場するなど、すぐに頭角を現した彼女。地元群馬の強豪、沼田女高時代にはインターハイでベスト8入りするなど輝かしい成績を残してきた。そんな彼女が大学3年の春に発した言葉は衝撃的なものだった。「大学に入って成長していない。高校の時の方が全然できてた」。
  実績では大学入学後も負けていない。1年時には全日本学生選手権(以下インカレ)で4位入賞。2年時も関東学生選手権(以下関カレ)で同じく4位と高校時代に勝るとも劣らない結果を残してきた。それでも彼女の当時の気持ちは「インカレはくじ運がよかっただけ。関カレはたまたま。(両方)実力で勝ったんじゃない」。いつも感じていたのはうれしさではなく、違和感だった。

   「取り戻したい」。その一心で夏場の練習に臨んだ。佐藤の得意とするエペは3つの種目の中で攻撃権が唯一存在せず、有効面も全身となる。そのため攻撃パターンが他の種目よりも多く、試合中は常に駆け引きが続く。そこで彼女が特に意識したのが試合の際の「考え方」だ。高校時代には確かにあった「(相手が)こうきたらこうする」という展開の読み、駆け引きの感覚を取り戻すために、とにかく考え続けた。
   そうして迎えた10月の関カレ。結果はトーナメント3回戦敗退と昨年よりも下回ったが、手応えはあった。「だんだん取り戻せてきた」と冷静に話す彼女からは、春にはなかった何かが、確実に感じられた。
   いよいよ数日後に控えたシーズン最後の大舞台、インカレ。昨年は3人出場した立大も今年は佐藤のみの出場となった。「インカレはすごくレベルが高い。トーナメントで1回勝てれば」と目標は控えめだが、上位進出の可能性は十分にある。自分を取り戻した彼女の躍動に注目したい。
(11月5日 古谷駿太郎)



◆第62回全日本学生個人選手権◆
11月8日 女子エペ
京都・大山崎体育館




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