女子ラクロス部

全員が主役のラクロスを〜準リーグに掛ける思い〜



   5月19日に開幕した、女子ラクロス部・ULTIMATESの準リーグ。心配されていた天気も、予報を覆すかのような晴天。立大のグラウンドに16校のラクロッサーたちが集って意気込みを語るなどし、今年度も準リーグを実りあるものにすると誓った。



ゼロからのスタート
  そもそも"準リーグ"とは一体何なのか。始まりは4年前に遡る。主力メンバーで構成された、いわゆるAチームが学生リーグ戦で華々しい活躍を見せる一方で、それ以外のメンバーで構成されたBチームには、なかなか試合出場機会が無かった。Aチームには具体的に目指す目標があるけれど、Bチームにはそれが無いという状況。「何の為に練習しているんだろう」という声さえも上がり始める。リーグ戦に出られないBチームの不満は日々積もり続けた。そんな中、彼女たちの心を動かしたのは、佐藤ヘッドコーチ(99年卒)の零した何気ない一言だった。「じゃあ、自分たちでリーグ戦を作ればいいじゃん」。
  ULTIMATESは動き出した。立大のようなラクロスの強豪校は、抱える部員数が多い。その為、他大学でもリーグ戦に出られずに嘆く選手は、至る所に溢れていた。また、そもそも部員数が少なく、リーグ戦への参加自体が叶わない学校も沢山あった。そのような学校を対象としたリーグ戦を、自分たちの手でゼロから作り上げたのだ。こうして誕生したのが準リーグである。


改革の年
  立大主催で始まった準リーグも、今年で4回目に突入。「チーム全体の底上げによる、ラクロス界全体の底上げ」を理念に、精力的に活動を続けてきた。年々参加希望校は増え続け、その名は確かにラクロス界で浸透し始めている。
  今年度、準リーグはある革新を試みた。それは、試合会場となっている大学が自ら、自校での試合を管理・運営するということだ。例年は主催校である立大が、会場管理も試合運営も全て行っていた。しかしこのような形態では、運営における負担が大きくなる一方で、貴重な練習時間も削られてしまう。チームの底上げを図るという、準リーグ本来の機能を果たせなくなっていたのだ。現在1部から4部までで構成される関東学生ラクロスリーグ。いずれ準リーグをそのような規模にまで拡大するためにも、組織としての基盤づくりは必須だった。
  そのような変化に対応する為、今年度は抽選により参加校数を減らしての開催となった。元来「リーグ戦に出られない人たちの為」のものとして始まった準リーグが、その規模を縮小すること。それにはOGなどから反対の声も押し寄せた。選手たちも、参加希望校を減らすことに心苦しさを感じているという。しかし、これは将来的に準リーグが大きく成長をするために必要不可欠なこと。未来のためにも、今年は我慢、そして改革の年となった。


準リーグの目指すもの
  今年度、準リーグの大会責任者を務めるのは伊澤(観3)だ。"てれ"というコートネームで親しまれる彼女は今年、自ら大会責任者という重役を買って出た。「1年生の時からずっと、準リーグの係をやりたいと思っていて」。入部した当初から準リーグを見てきた伊澤は、そこに携わりたいという思いをずっと持ち続けてきた。「私たちは入部したときからずっと準リーグがあったから「あって当たり前」と思ってしまうけれど、元々は「試合に出られない不満を解消しよう」と始まったものなんですよね。だから今年は、みんなでその意味を考えながらやっていけたらいいなと思っています」。
  原点を振り返る大会にしたいと語る伊澤は、これから閉幕まで今大会の先頭に立つ。彼女は準リーグ運営に当たり、ある目標を掲げている。それは「準リーグに参加する人全員が、準リーグを作る」ことだ。大会運営方針を変えた年だからこそ、参加者全員が大会を構成する大事な存在であると自覚をすることが必要とされる。「参加する全員が「準リーグのために何が出来るだろう」と考えてくれたら、それほど嬉しいことは無いですね」。目標達成に向けて、彼女の挑戦が始まった。


全員が主役
  「準リーグが始まって、部全体が本当に変わった」。準リーグ創立当初のメンバーであるOGたちは、現在のULTIMATESを見てそう口にするという。準リーグが部にもたらした1番の変化、それは「全員が何かを目指している」という状況が生まれたことだ。加藤(現3)は今年立大αチームを中心にプレーする、期待のディフェンダーだ。彼女もまた、準リーグにより成長を遂げたラクロッサーの1人である。「準リーグは、リーグ戦のメンバーに選ばれるための砦(とりで)でもあって。私もずっとこの大会に出させてもらっているけれど、準リーグが無いと成長できなかったな、って思います」。準リーグへの感謝の思いを胸に、彼女はレギュラー入りを目指し日々の練習に励む。
  このような声は、立大内のみならず他大からも多く寄せられている。「毎回各校一人ずつにインタビューをしているのですが、その時に青学大のマネージャさんが「今まではAチームは応援をすることがなかったけれど、いつも横で頑張っているBチームの人をAチームが応援している姿が見られて嬉しかった」とおっしゃってくれて。他にも「目指す目標が出来た」と言ってくれているチームもありますし…」周囲からの嬉しいレスポンスに、伊澤の顔からは思わず笑みが零れる。これは彼女の目指す「全員で作る準リーグ」への、大きな一歩だ。


先駆者として
  プレーする人、運営に携わる人、そして応援する人。そこに関わる全ての人に価値ある大会として、成長を続けてきた4年間。立大発の試みは、目に見える形で徐々に多方面へと広がりつつある。今年度は、準リーグに参加の出来なかった数校が集まり、同じようにBチーム対象の試合を組んだという嬉しい知らせが届いた。「立教だけで全部は出来ない分、そのような学校が出てきてくれたのは本当に良かったと思います」と伊澤。「ラクロス界全体の底上げ」という理念の達成に、確かに近づいている証拠だ。メジャースポーツと比較すると、まだまだ知名度が低く競技人口も少ないラクロス。そのような中で、競技全体の活性化のために準リーグはとても大きな役割を果たしているのである。
  ULTIMATESには夢がある。それは「準リーグを全国規模にまで大きくする」ことだ。「準リーグを関東学生リーグくらいの規模にしたい、というのは4年前からずっとあって。いずれは関東でも関西でも開催して、頂上決戦まで出来たらいいな」と伊澤は語る。その為にも、今年は勝負の1年となるはずだ。

日本全国、全てのラクロッサーたちが"主役"となる、そんな瞬間を目指して。ULTIMATESはこれからも、ラクロス界のパイオニアであり続ける。

(6月21日・高宮明日香)






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