見せつけた立大バレー部の底力

〜逆境はねのけ、泥臭く戦い抜いた1年間〜


不安だらけの日々
  2012年秋、苦しみながらも2部復帰を果たした立大バレーボール部。その中心にはいつも清水と横山(共に12年度卒)という攻守の要がいた。そして迎えた新体制。エースとリベロが抜け、戦力ダウンは否めなかった。それだけに「せめて落ちないように…」と、当時の3年生5人は受けとったタスキを落とさないことで精いっぱいだった。

  バレーボールという競技は通常6人で行うものだ。リベロを合わしても7人だが、それに対して立大の部員は11人。練習の質に限界もあれば紅白戦もできない。調子が悪いからといって交代することもできない厳しいチーム状況。しかし、「こう
試合前の選手たち
いうチームだからこそ全員で同じ方向を向いて戦っていかないと」(庄司=営4)と少しでも前向きに考えるように意識する。一人が折れればそれこそチームとして成り立たなくなる。だからこそ、絶対的エースがいない立大が生き残るために選んだのは文字通りの「全員バレー」を貫き通すこと。しかし現実はそう甘くない。迎えた春季リーグでは序盤から厳しい戦いが続く。勝つどころかセットすら簡単には取らしてもらえず、昨季からの不安が的中する。途中ケガで離脱する選手もいるなど苦しい状況が続き、最終的には12チーム中11位で 入れ替え戦が決まってしまった。



芽生えた自信
  運命の入れ替え戦。格下であることはわかっていたため、リーグ戦から気持ちを切り替えて自分たちのバレーをすることに専念する選手たち。全員でつなぎ、全員が決める。その意識が実を結び快勝。入れ替え戦を経てではあったが、残留という最低限の目標は達成した。だからこそ選手の口から出たのは"嬉しい"ではなく"安心"。自分たちだけでなく周りからも不安がられていただけに、ホッとした表情を見せた。それでも、格下相手ではあったが快勝できたことは大きかった。またリーグ戦後に行われた東日本インカレでも、優勝校の明大相手に通用するプレーを見せ、格上とも戦えることを証明した。そうして生まれたのは、「自分たちのプレーをすればどこでもやれる」という自信。2部とのレベル差に委縮していた頃のチームの姿はもうなくなっていた。そして彼らは明確に目標を定める。「入れ替え戦に行かずに2部残留」。言葉だけ聞けば地味でパッとしないかもしれない。それでも半年前にはなかった確かな意思で、勝負の秋季リーグを迎える。自分たちは2部のチームであるという誇りを胸に――。

  秋季リーグも春季同様、序盤は強豪との対戦が続き苦戦を強いられる。それでも選手の顔に悲観の色はない。敗れはしたものの、当時首位を走っていた青学大や中央学大からセットを奪うなど苦しい中でも意地を見せる。負けたとしても、自分たちの力は出し切ることができるだけの気持ちの強さがそこにはあった。それでも、「負けは負け、勝たなきゃ意味ない」(中村=コ4)。入れ替え戦回避に向け、是が非でも勝利が欲しい。その中でリーグは対戦相手との実力が徐々に拮抗してくるようになった後半戦へ。「負けないように」から「勝たなければ」に意識が変わる。そして東経大戦でその執念は形となる。強豪との対戦で養われたサーブカットからリズムを作ると、春で惜敗した相手を全く寄せ付けず見事ストレートで勝利し、残留に大きく近づく。その後も最終戦の平国大に勝利するなど自分たちのバレーを貫き、目標であった入れ替え戦を回避しての残留を決めた。
龍谷大戦後の選手。敗れはしたが笑顔が浮かぶ
  「入れ替え戦の日にバイト入れちゃってたんで(笑)勝ててよかったです」。最終戦後、竹内(コ4)が冗談めかしく笑う。他の選手たちにも安どではなく喜びの表情に満ちあふれる。昨年からの不安から解放され、2013年度のバレーボール部が形となった瞬間だった。そして、4年生最後の大会となる全日本インカレでは、バレー自体を楽しむ選手たちの姿があった。「バレーを楽しんでいる時が一番強い時」(庄司)。結果としては関西2位の実力を持つ龍谷大に敗れ、昨年を超える成績は残せなかったが、第1セットで一時セットポイントを奪うなど、シード校を相手に大接戦を演じた。「勝てそうで勝てないのがバレーボール」(三輪=観4)と言いつつも、4年生は満足した表情を浮かべる。苦しい状況から始まった1年間を自分たちにとって最高に近い形で締めくくり、笑顔でコートを後にした。


"泥臭く戦え"
  大きな不安を抱えながら始まった今年度の立大バレーボール部。結果的には「2部残留、東日本インカレベスト16、約半世紀ぶりの同立定期戦勝利」と最近では、1番とも言える戦績を残してみせた。「どんなに厳しい状況でも泥臭く頑張り続ければなんとかなる」(三輪)。その言葉を体現する一年となった。そして先日、4年生が卒業し春からは6人となる。レギュラーのほとんどが抜け、選手たちが口々に「今度こそはホントにやばいよね(笑)」と話すほどこれまで以上に厳しい戦いが予想される。それでも選手たちには今年1年で培った自信が残っているはず。また、秋季以降チームの柱となった井祐(営1)の成長も大きく、「チームが苦しい時に決められるプレーヤーになる」と語る彼の右腕にも期待がかかる。去年と同じように不安を抱えながらにはなるかもしれない。それでもやってやれないことはない。結果は後からついてくる。その思いを胸に2週間後に迫る春季リーグに向け、前を向いて一歩ずつ泥臭く進んでいこう。

今年引退される5人の選手たち。彼らの思いは後輩に受け継がれていく。

◆2013年度バレーボール部の成績◆
2013年度春季リーグ戦 2部11位(入れ替え戦の末残留)
2013年度東日本インカレ ベスト16
第65回同立定期戦 勝利
2013年度秋季リーグ戦 2部9位
2013年度全日本インカレ ベスト32

(3月30日 長倉慧)



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