※この記事は雑誌「立教」12月号に掲載した記事の転載になります




戦い抜く「Change」の精神


  関東大学ラグビー対抗戦。六大学野球と並び大学スポーツの花形となる大会だ。身を呈(てい)しボールを守り、一歩でも前に進むためには衝突をいとわない。「One for All All for One」。かのフレーズから見えてくるのはチームプレーの極致ともいえる競技性。フィールドに立つ15人はチームの勝利のためまさしく粉骨砕身、邁進(まいしん)する戦士だ。そして、立大の濃紺の戦士たちは再び大学ラグビーの頂たる舞台に舞い戻ってきた。上位8校がしのぎを削る対抗戦Aグループに。

引き継ぐ「Vitality」
秩父宮ラグビー場に整列するフィフティーン
  2013年度対抗戦は結実のシーズンとなった。降格を喫した立大に新しい風を呼び込むべく押し進めたチーム改革。ヘッドコーチとして招き入れられた遠藤哲氏(U20日本代表コーチ)の下、掲げられたのは常にグラウンドを目いっぱい使った攻撃を目指すアタッキングラグビーとスローガン「Vitality」だ。Aグループに復帰するために、いずれはグループで勝てるチームになるために、質の高い練習を追い求めた。 1年後の熊谷スタジアム、日体大との昇格を懸けた一戦。スローガンに恥じぬ活力あふれるチームの姿がそこにはあった。縦横無尽にフィールドを駆け巡りトライを重ねる。目指していたアタッキングラグビーを体現した。試合を終始支配し大差で勝利を収めた立大。晴れてAグループ復帰を決めた瞬間だった。だが、彼らの「Vitality」はまだ志半ば。上で勝てるチームに。戦うための活気は満たされた。そして精神は次代に受け継がれる。
帝大のアタックを阻む主将・眞壁

王者に報いた一矢
  意志を受け継ぎキャプテン眞壁(現4)が率いる今年の立大。掲げたフレーズは「Change」。昇格と降格を繰り返す現状からAグループに定着できるチームに、そしてチームの歴史を変える――。そのためのスローガンだ。二つの世代の精神を胸に開幕戦、聖地・秩父宮ラグビー場に濃紺の戦士が降り立った。相手は王者・帝大、今シーズンを占う試金石にはふさわしい。
  キックオフから王者の赤いユニフォームに果敢に食らいつく。堅固な守りをこじ開けんと突進を繰り返す。しかし大学ラグビーの頂点、その壁は厚かった。タックルに投げ出した体ははじかれ、決死の走りはゴールラインに届かない。スコアは5−118。まさに完敗、トライはわずか1本だった。されど1本、1回だけだが王者の砦(とりで)を破ったのだ。2年前はその1本のトライを生み出すことがどうしてもできなかった。帝大の固い守りを打ち破ったのは眞壁。少ない得点のチャンス、突破力を生かしてゴールラインに体をねじ込んだ。歓声が湧く秩父宮。まだまだ彼我の差が大きいことは分かっている。一矢報いただけだ。だがこの一矢から彼らの「Change」は幕を開ける。チームを、リーグを、変革の渦に巻き込む第一歩だ。
  黒星発進、だが一度の敗北で膝をつくほど弱い精神を立大ラグビー部は持ち合わせていない。胸にあるのは2年分の思いなのだから。今年最後に鳴るノーサイドの笛はきっと立大ラグビー部の歴史が塗り替わる瞬間だろう。冬になればこの予感は確信に変わっているに違いない。
(大山圭太)





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