春秋連覇!! 見えた春への希望

〜新人戦特集〜


  
立大が春秋のリーグ戦王者早大を4−3で下し、見事新人戦優勝、春秋連覇を成し遂げた。立大野球部創部史上初となる大快挙である。プロ入りを決めた大城(コ4=興南高校)をはじめとする4年生が秋季リーグ戦をもって引退。世代交代が求められており、チームは新たなスター選手の台頭を渇望している。今大会では多くの若き選手が活躍し、レギュラー争いに向け名乗りを上げた。本特集では、収穫尽くしのまさに「実りの秋」となった今大会を振り返る。



準決勝戦 VS法大 3−2〇


春季新人戦の結果を受け、シード校として準決勝からの登場となった立大。対するは、初戦で東大を12安打10得点の猛打で破ってきた法大だ。

初球を鋭いスイングで右前に打ち返す寺山
   初回、立大は鮮やかな攻撃で先制点を奪う。1番寺山(社1=神戸国際大附属)が初球を振りぬき右前打。そして捕逸の間に快足を飛ばし、すかさず二塁を陥れる。3番田中健(営2=大垣日大)が死球でつなぎ、1死一、三塁の好機で4番大東(社2=長良)の打席を迎える。フルカウントから投じられた直球を素直に打ち返し中前適時打。立大は上位が出塁し主軸が返す理想の攻撃で、幸先よく1点を先制した。  今大会1番打者として抜擢され、リードオフマンとして打線を牽引したのは寺山だ。2試合ともに初回から安打を放ち、先制のホームを踏む活躍を見せた。

要所を締め、4回一失点にまとめた池田
   先発の池田(済1=小松)はリーグ戦でもベンチ入りを果たしている横手投げの右腕。毎回走者を背負うも、要所を締める投球で勝ち越しのホームを踏ませない。3回表の1死一、二塁の場面では連続三振でピンチを切り抜けた。 3回裏には田中健の左犠飛で立大が勝ち越す。さらには6回裏、高田(コ2=浦和学院)が目の覚めるような打球で三遊間を抜く適時打を放ち追加点を挙げた。 5回から立大は二番手の加藤郁(コ1=立教池袋)へとスイッチ。大きく曲がるスライダーを武器に、6個の三振を奪う圧巻の投球。9回に代打水谷(1年=大阪桐蔭)に一発を浴びるも、9回までの5イニングを投げ切り見事勝利投手となった。3−2で法大との投手戦を制し、2季連続となる決勝進出を決めた。


決勝戦 VS早大 4−3〇


  出だしから理想的な試合展開だった。相手先発は秋のリーグ戦で3勝を挙げた北濱(2年=金沢桜丘)。リーグ2回戦でも抑えられているが、立大打線は初回からこの相手を打ち崩す。先頭の寺山が左前打で出塁、2死二塁として打席には四番大東。その5球目、甘めに入った直球を左翼中段に叩き込む。準決勝に続く主砲のひと振りで先制点を挙げ、良い流れを作った。 決勝のマウンドを託されたのは中村碧(コ1=聖望学園)。春の新人戦も優勝に貢献した一年生右腕がまたも躍動する。130キロ後半の直球と打者の手元で変化するスライダーを使い分けながら、相手打線にゴロを打たせて取る投球。中村の投球をバックも守備で援護する。初回主将・熊谷(コ2=仙台育英)がセンター前に抜けそうな打球を華麗なフィールディングでアウトにしてみせると、女房役の高田(コ2=浦和学院)も自慢の肩で相手の走塁を再三止める活躍を見せる。

初回、先制本塁打を放った4番大東
  今まで好投をつづけてきた中村であったが、6回に1死一、二塁のピンチを背負い、マウンドを二番手伊藤翔(コ1=桐光学園)に託す。しかし伊藤も早稲田に傾いた流れを止められない。次の打者を安打で出すと、5番吉見(2年=早実)に2点適時二塁打を浴び同点。さらにレフトからの返球は高田のミットからこぼれ痛恨のタイムリーエラー、逆転される。 なんとしても優勝したい立大はすぐさま反撃に転じる。先頭の飯迫(社1=神戸国際大付)が左前安打で出塁すると、犠打と進塁打で2死三塁の好機。ここでバッターは今大会チームの主将を務める熊谷。初球、振りぬいた一打は相手外野手の頭上を越える貴重な同点二塁打。相手に傾きかけていた流れを呼び戻した。 さらに7回裏からは前日の勝利投手、加藤郁が連日のマウンドに上がる。「とにかく気持ちで負けないように」と、気迫を前面に出した快投を披露。8回には1死満塁のピンチを背負うも二者連続三振に切って取り、彼の代名詞ともいえる雄叫びをマウンド上であげる。好リリーフでチームをさらに勢いづける。


最後の打者を三振に切って取る加藤郁
  試合は9回。早大三番手黒岩佑(2年=早稲田佐賀)に対し、先頭の大東はセカンドへの緩い当たり。しかし執念のヘッドスライディングでこれを内野安打とすると、相手の牽制悪送球の間に一気に三塁まで進む。その後1死一、三塁となりバッターは7番高田。その2球目、ここで小林新人監督(済4=長崎西)は強打の高田にスクイズのサイン。「見てのとおりあいつは持ってる男なので」。その言葉通り、高田はピッチャー前にスクイズをきっちりと決め1点勝ち越し。二日連続の決勝点を挙げた。その裏加藤が27個目のアウトをこの日六つ目の三振で取りゲームセット。立大史上初、新人戦春秋連覇の栄冠を手にした。



新人戦でチームの主将を務めた熊谷


「キャプテンをやってよかった」

優勝杯を受け取り笑顔を見せる熊谷
   秋季新人戦の主将を務めた熊谷。「皆がちゃんと付いてきてくれるか不安だった」と語ったが、立大ベンチにはどこにも負けない明るさがあった。逆転された際にも「ベンチの人があっためてくれたので影響はなかった」と振り返る。決勝の相手、早大は全員二年生で個の力は確かに強かった。しかし、立大は個の力とともにチーム力の高さで優ったのではないだろうか。そして、そのチーム力は熊谷キャプテンが引っ張ってこそのものだ。もともと自信のある守備では一年生投手陣をバックアップし、決勝では逆転された直後に振り出しに戻す貴重な同点二塁打を放った。連覇の期待がかかるチームを引っ張っていくのには、大きなプレッシャーがあっただろう。それだけに、表彰式後の胴上げについて聞くと「初めてだったのでビビりましたね。宙に浮く瞬間結構ビビってました。(熊谷コールが起きた時は)嬉しかったですね。キャプテンやってよかったなーって思いました」と顔をほころばせた。今回が熊谷にとって最後の新人戦。この優勝を糧にしてさらなるレベルアップを図る彼に注目だ。


今大会の監督・主将が選んだMVP加藤郁


「出来過ぎ」

連日の好投で優勝の原動力となった加藤郁
   マウンドでの勇ましい姿とは違い、優勝投手は穏やかに謙虚な答えを口にした。自身の投球については「できすぎですけど、やっぱりリード面での助けが本当に多くて。バックの助けが頼りになって投げられた球なので、決して自分のものだけではないです」と振り返る。だが、監督、キャプテンともに今大会のMVPとして加藤を真っ先に挙げた。一戦目は9回に一発を浴びるも、それ以外は5回63球被安打2三振6とパーフェクトな投球。連投となった決勝のマウンドでも、強力早稲田打線から3回で6奪三振の快投を見せた。本人の一番の持ち球はストレート。「投げてて一番気持ちがいい。ダメでも腕を振らなきゃ、ピッチャーは終わり」。マウンド上での雄叫びについては「ゲン担ぎみたいなもので、自分の全部を出し切ろうっていうのが出てると思います」と照れた表情を見せる。チームでのライバルは、同学年の伊藤翔、中村碧、池田。春の新人戦で同期の活躍に刺激され、秋は目覚ましい飛躍を見せた。彼にとって神宮は「成長させてくれる場所」。「神宮のために頑張っているようなもの。そのマウンドに立つことは、本当に自分の成長になりました」と答える口調には、今大会で得た確かな自信が伺えた。その堂々とした投げっぷりをリーグ戦で見る日も近いだろう。期待の新人左腕から目が離せない。



連覇へと導いた小林新人監督


「感無量です!」

試合後に選手から感謝の気持ちを込め、胴上げされる小林
   春季新人戦王者として臨んだ今大会。「連覇を意識しないわけがない」と小林新人監督はその重圧を確かに感じていた。しかし結果は秋季新人戦優勝、史上初の春秋連覇の快挙達成となった。「ほっとしました」。小林はチームについて「ほんとに仲が良くて、すごく素直な気持ちで盛り上がれるやつらでした。自分が発破かける必要もありませんでしたね」と語った。新人監督としてチームを作り上げ、選手のために尽力してきた小林。優勝を決め、歓喜に沸く立大ナインは試合後その感謝と祝福の気持ちを込め、小林を胴上げした。「感無量の一言です!今までの思い出がフラッシュバックしたというかすごくこみ上げるものがありました」。プレッシャーから解放され、宙を舞う小林の目には涙が浮かんでいた。


チームがリーグ戦2季連続Bクラスに沈んだなかで、新人戦春秋連覇という話題は大きな希望だ。来季からは4年生が引退し新チームとなるが、ラストシーズンを迎える澤田圭(コ3=大阪桐蔭)、佐藤拓(コ3=浦和学院)などの主力選手も多く残る。だが立大が悲願の優勝を成し遂げるためには、若手による戦力の底上げは必要不可欠だ。今大会、未来の立大を担う次代のスターたちが神宮の地で躍動した。見えた春への若き可能性。春季リーグ開幕まであと5カ月、これから東京六大学野球はシーズンオフを迎える。彼らが冬を超え、春には大輪の花を咲かせてくれることを大いに期待したい。春の逆襲へ――。今、反撃の狼煙が上がった。




(11月10日 取材=島崎まりん、板橋文恵、入江萌乃、大宮慎次朗、栗原一徳/編集=入江萌乃、大宮慎次朗、島崎まりん)



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