韓国・光州の地で世界に挑んだ立大のエース・出水田眞紀(コ2)。学生のオリンピックと称されるユニバーシアードにて、見事ハーフマラソン団体金メダル・個人4位入賞と輝かしい成績を収めた。その活躍は10月1日発行の立教スポーツ209号でも大きく掲載されている。(記事はコチラから!!) 今回は日本代表の一員として過酷なレースを戦い抜いた出水田にユニバーシアードを振り返ってもらった。

「大学生のうちにこういう経験ができたのはすごく大きい」

  
―ユニバーシアードを終えて率直な感想をお願いします
「この大会の2週間前に日本選手権があり、1500mに出たばかりでハーフマラソンに向けての練習がなかなかしっかりつめていませんでした。スピード練習をしながらのハーフマラソンの練習になっていたので、他の選手よりも明らかに練習量が足りていませんでした。ですがそのことはよく分かっていたので、とにかく走りきることと恥ずかしい走りをしないことを考えていました。4位という結果はメダルが個人として取れなくて悔しい部分もあるのですが、1番の目標は団体戦で金メダルを取ることで、私はその役に立ちたいと思って出場したので、まずはその目標を達成でき、チームのみんなと協力し合ってすごく楽しく走れました。」
―個人としての目標はどれくらいを想定していましたか
「良ければ3番以内に入ってメダルを取りたいという思いはあったのですが、海外の選手がどれくらいで走るのかも分からなかったので、最低でも入賞、できれば3位以内ということを考えていました。なので、4位という結果はこんなものかなという感じです。ですが満足はしていません。」
―チームの中で、レース展開などは決められていましたか
「2人ずつで1周が6.8`なのですが、その半分の3.4`ずつを2人で引っ張り合うという計画でした。私は上り坂が多い方を引っ張る役目だったので、引っ張る時は上り坂が結構きついところでかなり苦しかったのですが、自分でレースを作って走れるというのはすごく楽しかったです。しっかり自分の決められたところを引っ張るという役目があったので、その役割を果たさなければという気持ちもありました。それが逆にまだ離れられないというような気持になれたので、やっぱりチームっていうのはいいなと思います。引っ張りあうと決めていたところまではとりあえず役目は果たせたかなと感じていて、みんなで協力しての団体金メダルだったのかなと思うので、こういう風に走れるのはやっぱり代表として選ばれたこのようなロードのレースくらいしかないので、大学生のうちにこういう経験ができたのはすごく大きいです。」
―大舞台でしたが緊張はされましたか
「直前になって結構緊張してきてしまいました。レース前日にチームみんなでミーティングをしたのですが、そこから緊張し始めていてレースも朝が早かったのでもう朝起きてからレースまであっという間で、本当に一瞬でした。朝の2時に起きて2時半から朝練をして、3時に朝食を食べて6時からウォーミングアップだったので、なかなか出来ない経験をしたかなと思います。」
―天候は大荒れだったがその影響はありましたか
「午前中や昼よりは雨風も少なかったので、まだ朝でよかったかなと思いました。ですが1時間以上走るレースなので、走っている間に雨が降ったり止んだりして、しかも悪天候の中でも気温は結構暑くて汗もかいていたので、体力の消耗がかなり大きかったです。普通に晴れているときよりも結構きつかったと思います。」

「また次の大会に向けて、個人のメダルはお預け」


―大まかなレース展開をお願いします
「1周目は日本のペースメーカーとして出ている人が引っ張る予定だったのですが、そのペースが遅かったので、5q手前から私が引っ張ってしまいました。私がペースを上げて、そしたら大きい集団であったのが崩れて、そこで日本の5人とトルコと中国の人になりました。その時点で7人だったので沿道からは「団体戦は大丈夫だ」という声が聞こえていたのですが、20`以上あるレースであとから他の国の人が来るかも分からないので、そこはあまり安心しないようにして走ろうとしていました。1周目の前半は先輩たちが引っ張ってくれて、後半は私と先輩が引っ張って、そこで日本の選手がまた1人遅れて、トルコの人も離れていて、2周目の最初からもう日本の3人と、中国の1人になりました。4人になったのでここからはメダル争いとなったのですが、そこから私が離れてしまいました。ですがメダルを狙える位置で勝負出来て競えたので、また次の大会に向けて個人のメダルはお預けかなという感じです。」
―離されてしまった時はどのような状況でしたか
「ラスト1周の12.3`地点辺りのすごく坂が長いところで、足にきてしまいそのあと離れてしまって、一回追いついたのですがそこから全然ついていけなかったです。これはもう練習量の少なさなので、仕方ないというのもあるのですが、もっともっと練習しないといけないなと思いました。」
―最後4人の集団になった際は中国の人を離していきたいという雰囲気でしたか
「沿道の方で先生から「日本で表彰台独占だ!」「3人で獲ろう!」という声が聞こえたのですけど、なかなか中国の人もしぶとくて。日本人でレースを回して引っ張っていた分、中国の人はずっと後ろに付いていて体力を溜めていたこともあって、結局最後ラスト2`くらいで中国の人が独走になってしまいました。出来れば自分じゃなくても日本の誰かが個人で金メダルを獲ってほしいなと思っていたので、最後中国の選手に優勝されてしまって悔しいです。ですが、上位に日本人が2人入ってさらに走りきった4人全員が8位以内で入賞したので、これは今までの中でもかなりいい結果なのかなと思います。」
―2回目のハーフマラソンですが、前回との違いはありましたか
「前回(松江レディースハーフマラソン)は選考レースではありましたが、初めてのハーフでもあったのであまり何も考えずにずっとついていったようなレースでした。ほとんど平坦で風もなく、とても走りやすいコースで走った分、今回は起伏がすごくて雨風も強くて比較しようがないくらい全然違ったレースになってしまいました。タイムではなかなか比較出来ないですが、これだけの起伏があるコースで21`を走れたというのは、なかなかの経験で足作りにもなったかなと思います。」
―このレースで得たものはありますか
「やっぱり代表としてハーフマラソンやマラソンに選ばれるというのは特別なことで、日本としても一番メダルを狙いたい種目なので、期待も大きい分プレッシャーも大きかったです。ですがそれでもチーム一丸となって走れたことがすごく楽しかったですし、本当にこれまでにない経験でした。やはり陸上が個人競技なだけあって、レース中に協力し合いながら競技をするという場面がなかなかなく、例えば駅伝をやっていてもチームの人と同じタイミングで走ることはないので、やっぱり今回はすごく特別な経験をさせてもらいました。本当にハーフマラソンに出られて良かったなと思います。まだまだ練習量が足りていないので長い距離で勝負するのは難しいのですけれど、でもやっぱり将来はマラソンをやりたいなと強く思いました。」
―松江ハーフマラソンで3位、今回も日本人で3位ですが、その2人に勝ちたいという気持ちはありましたか 「2人とも気持ちも体も強い選手で、練習も本当にしっかりやっているので、私単体で勝てる選手ではないです。逆に松江ハーフで3番に入ったのでユニバでも日本人で3番以内には入りたいなと思っていて、また今回は先輩たちが良い順位を獲れるように私も協力出来たらなと思っていたので、もちろん実力として勝てれば良かったですけど、それ以上に先輩たちに勝ってもらいたかったので、2人がメダルを獲ってくれて良かったです。」

「ずっと同じ練習をやっていたら同じ結果しか残せない」

―ユニバーシアードで団体金メダルという結果はどう感じていますか
「学生の大会なので、まだ長い距離で戦うという国が少ないのかなと思っていて、日本人は他と比べて少し早いうちから長い距離をやっている傾向があるので、その状況だったら日本が勝てて当然といえば当然だと思います。やはりこれまでのユースやジュニア、ユニバーシアードなどの大会は若いうちなので勝てるのですが、シニアの世代になってからなかなか勝てないということが多いです。ユニバーシアードは大学の大会なのでケニアやエチオピアなどの大学になかなか行けないような国の選手たちは出場できない試合なので、そう考えるとまだまだ上がいると考えていないといけないのかなと思います。」
―アフリカ勢と戦っていくために今後日本全体でどのような取り組みを行うべきと考えますか
「日本人は日本人だけで練習をしていて、これまで日本でやってきた練習をずっとやっているような状態です。けれどアメリカやヨーロッパなどの日本と同様にケニアやエチオピアになかなか勝てないような国は、研究をして毎年毎年練習のやり方を変えたり強化の仕方を変えたり、すごく工夫しています。やはり周りのサポートが必要になるのですが、ずっと同じ練習をやっていたら同じ結果しか残せないと思います。海外の色々なところを見習うというか、色々な良いところを吸収したほうが今後日本はもっと強くなれるのではないかなと思うので、もっと広い視野を持ってやっていきたいと思います。」
―大舞台でしたが緊張はされましたか
「直前になって結構緊張してきてしまいました。レース前日にチームみんなでミーティングをしたのですが、そこから緊張し始めていてレースも朝が早かったのでもう朝起きてからレースまであっという間で、本当に一瞬でした。朝の2時に起きて2時半から朝練をして、3時に朝食を食べて6時からウォーミングアップだったので、なかなか出来ない経験をしたかなと思います。」
―ご自身としては世界と戦っていく上でどんな力を伸ばしていきたいですか
「全部なのですけれど、やはり力強い走りができるようになりたいなと思っています。それにはやはり練習が必要で、長い距離を安定して走ることのできる力が一番必要かなと思います。」
―今回が2回目のハーフマラソンとなりましたが、ハーフマラソンはお好きですか
「走り終わった直後は嫌だなと思うのですが、結局また走りたいと思ってしまいます。距離が長くなればなるほど記録も伸びやすいですし、練習の成果がそのまま出るような気もするので、もっともっと上は目指せると思えますし、ハーフマラソンやマラソンであれば海外とも戦うことができるので、やはり長い距離はやりたいなって思います。」
―東京オリンピックでマラソンを走ることが最大の目標だとお聞きしましたが、その上で今後やっていきたいこと
「少しずつ長い距離に慣れていかないといけないということもあるのですが、これまでの世界記録をマラソンで作ったような選手を見てみると、その年に1500mを本当に世界で通用するようなタイムで走っているので、マラソンを走るから長い距離だけというのではなくて、1500mからマラソンまでどの種目もしっかり走れないとどの種目でも勝てないと思うので、学生のうちは本当にもっともっと幅広くやっていきたいと思いますし、それができればタフな選手になれるなと思います。なかなか出る試合も限られてくるので難しいとは思いますが、1500mもやりつつ5000m、10000mも頑張って出場してハーフマラソンは1年に1回くらいしかレースがないのですがそういうところでしっかり結果を残していけたらなと思います。」
―東京オリンピックに向けて学生の間での最大の目標は
「学生の試合である関東インカレや全日本インカレでしっかり結果を残すことです。また、4年生のときにもう一度ユニバーシアードに出場できるチャンスがあるので、そこでもう一度ハーフマラソンへ出場を狙いたいです。今度はしっかり個人で金メダルを狙って走って、その後のマラソンなどにつなげていきたいと思います。」
―ありがとうございました!

   慣れない早朝からのウォーミングアップ、悪天候の中での長時間に渡るレース、他の代表選手と協力しながらのペース作り。初めてのことだらけであった今大会のすべてを「経験」と語った出水田。どんなに大きな困難であっても、それを成長への肥やしとし、次の舞台へつなげていく。日々進化し続ける彼女の背中を、今後も追いかけ続けていきたい。


(10月8日・編集=大島佳奈子、取材・インタビュー=大島佳奈子、柏本晴也、添田美月)



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