ルーキー石川特集

〜強気が命のテニス道〜




スーパールーキー登場!
ストロークを放つ石川
   大いなる希望を抱かせるルーキーの登場だ。立大ソフトテニス部の1年生・石川仁貴(いしかわ・まさき=現1)が大学の舞台でもその実力を存分に発揮している。5月の春季リーグでは負傷の山田(文2)に代わって急遽シングルスに抜てきされ、4勝1敗の大活躍。東日本大学対抗やインカレの団体戦でも大事な1本目を任されるなど、この半年間で間違いなくチームに不可欠な存在となった。石川にとって最も印象的だった試合を振り返るとともに、そこから見えてくる彼のプレーヤー像に迫った。



百戦錬磨の男
   愛知県が誇るソフトテニス強豪校、岡崎城西高から立大に入部した石川。高校3年生だった昨年は東海大会で個人・団体の二冠、インターハイでも団体3位、個人戦も300組の猛者が名を連ねる中でベスト32に勝ち残るなど、実力は折り紙付きだ。その実績を買われ、立大にはアスリート選抜で入学した。やはり高校時代から全国レベルで戦ってきた身。「もともと大学でも勝てる自信はあった」。その自信を確信に変えた決定的な試合がある。7月の東日本大学対抗戦、自らが憧れてきた選手との一戦だ。

カギとなった試合
   準々決勝に進出した立大は、ベスト4を懸け全国屈指の強豪校である日体大と対戦した。厳しい戦いが見込まれる状況に、石川は小野勇(現2)とのペアで一本目に登場。対する日体大も一本目を確実に取るべく村田・産屋敷ペアを投入した。この2年生ペアは、その世代を代表する最強の2人と言っても過言ではない。後衛の村田は高校時代に2013年度インターハイで個人・団体の二冠、前衛の産屋敷は同大会の団体戦で準優勝した経験を持つ。

「俺もこの人みたいに…」
   「憧れの選手」。石川は後衛の村田をそう称する。自身とプレースタイルが似ていることから、戦い方の参考にしてきた。「ハードヒッターでどんどん打つタイプ。打つし、中ロブで相手の後衛を動かしたりもする」。村田のプレーは石川にとってまさに理想形だ。「身長も同じくらいでプレースタイルも似ていて、ラケットも(石川と同じ)1本シャフトを使っていて、俺が強くなったらこんな風になるんだろうな」。


試合開始
カウンターを決める石川
   憧れの選手を前にしても、この男の闘争心は揺るがない。試合が始まると、石川は村田に対して一歩も引かないラリーを展開する。「試合が始まったら思いっきりやるだけ。プレッシャーは感じていない」という強心臓の持ち主だ。貫いたのは攻めの姿勢。「きれいにロブを使ったテニスをしようとすると負ける。番狂わせを起こすためには自分からどんどん打って攻める」と、相手の前衛にも果敢にアタックを打ち込んだ。一進一退の攻防が続き、迎えたファイナルゲーム、ポイント5オール。この緊迫した場面で石川が立て続けに最高のプレーを見せる。まずは6ポイント目を奪ったプレー。ロブが浅くなって村田がトップ打ちしてきたところを強烈なカウンターで返して得点した。「カウンターは高校時代からの武器だったけど、この試合で自信がついた」。


「このワンチャンスしかない」
渾身のサーブを放つ石川
   勝利まであと1ポイント。強心臓の石川とはいえやはり緊張が走る。「その時けっこう考えたよね。このワンチャンスをものにしたら勝てるっていうの。勝つとしたらこの1ポイントしかない。デュースに追い付かれたらたぶん負けると思ったから。」しかし決して守りに入ろうとはしなかった。強気こそが石川の真骨頂だ。「マッチポイントで、こっちのサーブ。サーブで攻めるしかない」。反動で足が浮き上がるほどに振り抜いたサーブは、レシーバーのバック側の角に突き刺さった。「サービスエース級のサーブがいい感じに入ったね。良かった。思い切り攻めた甲斐があった」。


石川仁貴というプレーヤー
試合後、仲間に手を振る石川
   試合後、仲間の喜ぶ顔を見て笑顔がこぼれた。「みんなが『うおー!』と盛り上がってくれて嬉しかったね」。だから、石川は個人戦より団体戦が好きだ。「そういうのがあるから団体戦は楽しい。みんなと戦っている感があるから」。試合中は全て俺に任せろという気概を持つ石川であるが、仲間を大切にする一面も持ち合わせている。 その団体戦を戦うときに、常に秘めている想いがある。「俺は先輩のために戦う。高校の時からそういうスタンスだよね。先輩が出られないのに俺が出ている時は先輩の分まで頑張るぜ、みたいな。これはマタさん(川俣=現4)にもよく言われる。出られない先輩も文句言わないわけだから、まあ頑張れって」。試合中はどんな時でも強気を崩さない。そしてその力は仲間のため、先輩のために使う。これが石川仁貴というプレーヤーの流儀なのだ。


1番の収穫は…
   がむしゃらにコートを駆け回った半年間だった。遠目にコートをのぞくだけで石川と分かるほどの存在感。これほどまでにプレーに集中できる理由は何なのか。そこには、高校時代には忘れかけていた、純粋にテニスを楽しむ心があった。「高校は、負けることは許されないみたいな風潮があって堅苦しかった。だからプレッシャーに押しつぶされそうになることもあったし」。勝利を義務付けられた強豪校の重圧は計り知れない。しかし、今は違う。「立大に入ってテニスが楽しくなったね。これが1番の収穫。高校の時よりのびのびとテニスができている」。単に高校の延長線と捉えられがちな大学ソフトテニスだが、石川は大学に舞台を移すことでプレーヤーとしての原点に立ち返ることができた。


栄冠を手にするまで
   無限の可能性を秘めた石川の挑戦はまだ始まったばかりだ。彼のテニスには、見る者をワクワクさせる魅力がある。しなやかなフォームから繰り出されるサーブ、会場の空気を一変させる痛烈なカウンター。そして格上の選手にもひるまない心の強さを持つ。チームの悲願である1部昇格にも彼の力は欠かせない。今月行われたインカレの大学対抗戦は、ベスト4を期待されながらまさかの3回戦敗退。試合後のインタビューでは「経験不足だった」と振り返った。しかしまだまだ進化の途中。2年後、3年後、経験という鎧を身にまとった彼の活躍が心から楽しみである。

(9月19日/取材・編集=栗原一徳)





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