「どん底」を見た男たち
   悪夢を見ているようだった。0勝7敗の立大は2015年12月12日、成蹊大との入替戦に敗れ対抗戦Bグループに沈む。涙で篠崎組の幕は閉じた。
   「昇格」―――。チームとして一つの目標を掲げた。主将・御苑(観4)を中心に、練習方法から試合中のプレー一つひとつまで、すべてを改革。厳しい練習で個々の力を伸ばし、チームとしても成長を続けた。


描いた理想の「アタッキングラグビー」
   絶え間ない努力の成果は、春季大会から表れた。昨年入替戦で敗北した成蹊大に45ー36でリベンジを果たし、同じく対抗戦Aグループの日体大相手に40ー36で勝利した。「今年の立大は何かが違う」。チャレンジャーとして挑み続ける立大は、理想のアタッキングラグビーに着実に近づいていた。
   「リバイブ」。タックル後すぐに立ち上がるという意味でディフェンスの際に叫ばれるようになった言葉だ。それはどん底の状態から抜け出し快進撃を続ける立大象徴しているようだった。




「One」になる


   どん底だったチームをここまで引き上げたのは、紛れもなく4年生の力である。SO御苑は主将として大所帯のチームを統率。常にFWの先頭に立ち、身体を張り続けたLO高橋(営4)。SH 濱須(文4)は正確なパスでゲームのテンポをつくり、力強いランでCTB諌山(観4)はトライを奪う。強気なプレーでWTB青木(観4)はBKの後輩たちの憧れとなった。
   4年生の背中を見て、後輩もその熱意に応え始めた。PR柳(済3)は、持ち前の体格でFWを引っ張っていく。タックルされても決して倒れない体幹の強さが武器のLO横山(社3)やパワフルなタックルとランが持ち味のNo.8増田(社3)。WTB山田(営3)は身体の強さと自慢の俊足で幾度となくトライを決めてきた。


   HO山中(観2)とFB大野木(観2)は、今年度学年リーダーを務めリーダーシップを発揮。怪我から復帰したPR眞壁(観2)とFL吉澤(観2)は、ブランクを感じさせないアタックの強さで部の勝利に貢献した。体の大きい相手にも負けない強さがFL荘加(法2)にはあった。
   CTB平間(観1)は安定したキックで得点を重ねる。スーパールーキーとして期待されたFB床田(観1)は、その期待に相応しく対抗戦でもトライを決めた。 15人で果敢に攻め続ける姿には、FW・BK、先輩・後輩の垣根は無く、チームは一つになっていった。



「For the team」勝負の秋
   対抗戦Bグループで立大の強さは圧倒的だった。初戦の上智大戦では76−7で圧勝。東大戦では40−0、一橋大戦でも35−0と二度の完封勝利を達成した。FWのディフェンスは鉄壁のものとなり、BKの得点力は抜群だった。






「Believe」運命の明学戦
   11月27日、立大は対抗戦Bグループ6勝で同じく6勝の明学大と対戦。春のオープン戦では31―33で惜敗し、悔し涙を流した。「絶対明学に勝って昇格する」。決意を新たに練習に明け暮れ、昇格のためには負けられない一戦をついに迎えた。






   前半開始直後2トライを献上し嫌なムードが流れる中、声が響く。「大丈夫、大丈夫」。4年生がチームを盛り上げ、普段通りのプレーを取り戻した。FWがモールでトライすると、負けじとWTB青木とFB床田もトライ。仲間を信じて全力を尽くした結果、44−26でノーサイド。対抗戦Bグループ優勝を決めた瞬間だった。









「Revive」再びあの舞台へ
   対抗戦Bグループ優勝は、彼らにとって通過点でしかない。「昇格」という揺るぎない目標のために血がにじむような努力をしてきた立大。つらい練習を耐え抜き、ようやくここまできた。1年間最高の準備をしてきた立大は、最高のメンバーで入替戦に挑む。今年のスローガンの「One」は、チーム一丸となって戦う立大をまさに表しているようだ。
   3年前、立大は成蹊大に勝利し昇格。現4年生はその昇格の瞬間も戦っていた。昨年の入替戦で敗北した成蹊大に必ずリベンジを果たす。泣いても笑っても4年生はこの一戦で引退だ。立大の誇り、そして4年生への感謝の思いを込め、すべてを懸けて戦う。対抗戦Aグループで再び戦うために、立大は熊谷の地でリバイブする。


編集後記
   2年間立大ラグビー部を取材してきた中で、印象に残っている出来事がある。昨年の帝京大戦は0ー90で敗北。当時3年生の現主将・御苑のインタビューが終わったとき、声を掛けられた。「お疲れ様でした。また来てください」。彼の周りへの気遣いに驚かされ、チームへの思いが人一倍強いことを感じた。そんな御苑組もついに最終戦を迎える。13人の4年生の引退を、笑顔で飾ってほしいと願う。
   ラグビーの魅力は迫力あるプレーだ。タックルの音や響く歓声が、よりラグビーを魅力的にする。一度グラウンドに足を運べば、きっと魅了されるはずだ。立大が昇格する歴史的瞬間を、熊谷で見守ってほしい。
   私の取材が立大の勝利に結びつくことではないが、昇格を祈る気持ちは選手と同じだ。共にグラウンドで戦うことはできないが、精一杯の声援をこのクローズアップで送りたい。


◆関東大学対抗戦A・B入替戦◆
   対成蹊大 12月11日 14:00K.O. @県営熊谷ラグビー場Bグラウンド(JR熊谷駅下車)

(12月9日/取材・編集=梅原希実)





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