【特別対談】寺山寛人×飯迫恵士


神戸発・テラサコ、日本一を語る
   日本一の歓喜から2週間後。寺山寛人選手(社3=神戸国際大附)と飯迫恵士選手(社3=神戸国際大附)に突撃し、智徳寮で対談インタビューを行った。

   春季リーグ、寺山は不動のリードオフマンに定着。打率3割4分4厘を記録し、安打は22本放つとリーグ最多安打に輝いた。レギュラーに定着して2シーズン目の飯迫は、安定した打撃を披露。寺山に負けじと安打を重ね、打撃陣をけん引した。神戸国際大附出身、社会学部、左打左投と、共通点の多い二人。“テラサコ”が野球から、私生活まで熱いトークを繰り広げた。

日本一になって
―まず初めに、日本一おめでとうございます。
テラサコ  ありがとうございます!

―日本一になった感想は?
寺山  うーん。実感がないです。パレードやって少し実感でてきたって感じですね。
飯迫  ぼくも実感はないですね。パレードで確かに実感はありましたけど、その後は沈んでいったって感じ。今は落ち着いています。

―優勝号外でテラサコと命名させていただきました。
寺山  なんか言いたいことあるらしいですよ。
飯迫  テラサコじゃだめです!「サコテラ」にしてください。全日本は俺の方が打ったから。
寺山  リーグ戦の結果で決めたんですよね?

―紙面の位置の関係で、上からテラサコになりました。
寺山  でも、飯迫の方が大きいですよね。あれ気になるんですけど。
飯迫  ビシッと言っといたらえーやん。おれ言ったもん。入江さん(本紙記者)に次はお願いしますよって。
寺山  そういうのせこくないですか(笑)。テラサコになったのは気分いいんですけど、少し扱いが小さかったことが気になりました(笑)。

―秋は大きくします。
寺山  頑張ります。
飯迫  秋は自分がセンター守るのでこいつはベンチ外です(笑)。
寺山  はっはっは(爆笑)。

―優勝してから反響はありましたか?
寺山  元々知り合いの人に声かけられるぐらいで。(―新たなファン獲得は)全然ですよ。飯迫さんがすごかった。
飯迫  全然です。
寺山  お前そろそろきてよくない?
飯迫  リーグ優勝した次の日にゼミがあって、おめでとうの一言があるかなと思ってガチャッて開けたら、授業始まっててなんも言われんかった(笑)。
寺山  まじ?!知らんのかい!(笑)。あんまり一般の人たちは知らないんですかね。
飯迫  ファンが欲しい!

―全日本決勝は三塁側がぎっしり埋まりました。
飯迫  ええ景色やったし、きれいな紫でした。
寺山  ああいう時六大学の凄さを感じる。自分は関西の人間なのであまり伝統とかは知らないんです。で、早慶戦初めて行ったんですけどあんなに埋まって、すごいなと思って。

2人の関係とは? ―寺山選手は春のキャンプは新座からのスタートでした。
寺山  そうです。
飯迫  この2人は頑張らないというのがポリシーなので。
寺山  高校からそんな感じで。
飯迫  あんまり練習しないので。
寺山  良い意味で気負いし過ぎずやってるかなと。まあ、ゆうても、それなりにはやるよ。
飯迫  どこまでがそれなりやねん。
寺山  低いレベルの中でのそれなりですけど(笑)。素振り30回とか。1日500は振るとかじゃない。
飯迫  練習時間は真面目にやるねん。効率よく。それ以外はやらんでよくない?
寺山  お互いそういうタイプです。



対談中、終始笑顔の寺山(左)と飯迫
―高校から同じで、学部も同じ。どういう関係でしょうか?
寺山  大好きですよ。
飯迫  嫌です(笑)。
寺山  (爆笑)関係性はそんな感じかもしれないですね。無理に仲良くするんじゃなくて、楽な関係だと思います。

―シーズン前、飯迫さんは4割を掲げていました。
寺山  お前4割掲げてたの。でも、すごいっすね。その目標にそれなりに狙える位置にいたのは。
飯迫  途中まで4割やった。そっから打たれんくなった(笑)。

―飯迫さんのバッティングのすごさとは?
寺山  ツボはすごいある。ポイントっていうのが分かりやすいかな。打てるポイントをもってて確率が高い。自分はまったくないので。たまたまですよ。
飯迫  たまたまで22安打はすごい。
寺山  はっはっは(爆笑)。こいつのすごさは自分のバッティングのイメージを持ってること。でも、ちょっとタイプは変わったな。高校の時はどっちかというと大きいの打ってた。
飯迫  ホームランバッターやった。
寺山  ホームランも20ぐらい?
飯迫  16やな。
寺山  自分なんか5です。自分は高校時代の感じをそのまま大学でも同じ。飯迫の場合はそっから安打系の打者に変わった。だからすごいですよ将来。
飯迫  秋はまたタイプ変わる。ホームランバッターに。
寺山  そういうのができる選手です。
飯迫  そんなに褒めないでくださいよ(笑)。

―飯迫さんから見て寺山さんは?
飯迫  不調とか何も考えてないように見えながら、ハマったら地味に悩んでるパターンの人。
寺山  それは間違いない!
飯迫  なんも考えなかったらいいのに考えだすよな。
寺山  意外と考えてるかも。ただ、調子が悪くない時もそれなりに考えてる。意外とね。適当にやってると思われるけど。けっこう考えちゃうタイプ。

―助言とか求めますか?
寺山  あんまり仰がない。
飯迫  仰いでも聞かない。
寺山  いや聞いてるよ(笑)。
飯迫  仰いでんのに聞かへん。
寺山  うーん。それも間違いではない。
飯迫  でもセンスは感じます。高校の時から。1年ぐらい高校野球してないのに、レギュラーなって、ケガと肝臓いかれて何カ月かいなくて2年半のうち1年やってないのにレギュラーなって。

―ブランクというのは?
寺山  高1の夏が終わってメンタル的にきつい時期があって、全然やらなくて練習がしんどくなって、野球辞めようと考えた時もあって、やり始めたら肩脱臼してその手術で半年ぐらいできなくて、結局1年ぐらいやらなかった。
飯迫  そっからオープン戦パーンと打つじゃないですか、ホームラン打ちよってレギュラー定着ですよ。リーグ戦もそうですよ、キャンプも入ってなくてオープン戦も出てないのに最後の3試合ぐらいスタメンで打ったらリーグ戦も1番でスタメンで。持ってるんですよ。
寺山  そういうことにしといてください。
飯迫  要領がいい。結果出さんくていいところは出さないで出さなきゃいけないところで出すよな。
寺山  そんなうまいこといきません(笑)。 でも、そういう状況は多かった。高校時代も初めて優勝を経験して大学でもなんやかんやで日本一なったもんな。
飯迫  ほんとうに勝負強い。
寺山  それはお前!
飯迫  試合とかじゃなくて、周りの雰囲気を読むところが。なんか大事なところで打つよな。
寺山  それはお互い様ですよ。
飯迫  唯一ほめたいのは、盗塁だけ。
寺山  天理のな。あれは感覚で行ける気がした。あの場面なんで行けない気がしてたら行けないと思う。日ごろあんまり行ける気がしなくてアウトになるイメージが多いんですけど、あの時は行ける気がした。
飯迫  センスですよ。練習じゃなくてセンスでやってる。
寺山  違うんですよ。努力がそういうところで出てくる(笑)。
飯迫  センスで野球やれるってすばらしい。足速いし、肩強いし、バッティング良いし、顔もかっこええしな。
寺山  はっはっは(爆笑)。こいつ、こういうこと言う。けなしてくるんですよ。でも、いいところが、あんまり褒めないです。こいつが4打数4安打してもいっさい自分を褒めないです。打ったやろ、慶応かなんかで。「お前よ―打ったな」とか言ったことないし、言われたこともない。そういう関係も悪くないと思います。本来おれは褒めて伸びるタイプだけど、こいつはけなしてくる。
飯迫  けなして伸びるタイプやろ。
寺山  俺が打てるのはお前のおかげ!?あーそうなんか(笑)。
飯迫  落としに落としかけて、最後に助言をやったら、ピッと伸びる。
寺山  そういう関係です(笑)。

―高校から関係性は変わらないですか?
寺山  高校からこんな関係ですね。クラスも一緒だったんですよ。だから、勝手に仲良くなって。
飯迫  勝手に自分の家来ますし。
寺山  だから、そんなに勝手に自然にこんな感じになりました。
飯迫  勝手に俺の部屋で寝るしな。
寺山  ヤバい関係なので(笑)。

―飯迫さんは大学1年生から出場していましたが、寺山さんはそれをどのように見ていましたか?
寺山  すごいなあという感情は多少。
飯迫  思ってたん?
寺山  思ってた。そんな出れるかって感じ。
飯迫  で、最近気づいたやろ俺の辛さが。
寺山  出てないからわからなかったんだけど、経験して偉大さに気づきましたね。おれは無理。

―2カ月間、リーグと全日本あって疲れましたか?
テラサコ  疲れたな。
飯迫  試合数が多かった。明治戦とか死ぬかと思った。
寺山  慶応もな。
飯迫  負けるし。
寺山  ずっとはよ終わらんかなって思ってた。やっぱ野球のこと考えながらの生活って野球人だったら当たり前だけどしんどいよな。
飯迫  1週間終わるの早っ!って。明治が一番きつかった。
寺山  おれもそうかな。メンタルは明治。
飯迫  嫌やったもん。慶応は笑ってた。あーーってあきらめた。
寺山  早稲田、明治あのあたりですかね。優勝が形になってきてた部分があったので。4戦はきつかったな実際。
飯迫  しかも引き分けっていうのが一番しんどい。
寺山  それ!三試合目で勝ったら勝ち点、負けたらもう一試合で負けた時はけっこうきたね。

―早大一回戦は小島(3年=浦和学院)に完封されましたね。
飯迫  あの時の初ヒットは俺や。
寺山  おれ9回に打った。
飯迫  サードぼてぼてのやつな。よー打ったな。全日本まともに打ったか?
寺山  神宮ヒットって言って、ぼてぼてのやつだったりエラーになりそうなやつでもヒットになりがちなんですよ。まあーせこいよな。
飯迫  それがこいつの凄いとこで、神宮ヒットだけじゃなくて、東京ドームで打ちましたもん。
寺山  東京ヒットな。
飯迫  ピッチャーゴロでセーフでどういうことやねん。
寺山  ちょうどおらんかって、おほほって行った(笑)。

―ルーティンは寺山さんはやらないのでしょうか?
寺山  やってますよ。やってるけどネクスト(バッターズサークル)ではやらない。自分は試合前にやりますね。だからこいつは狙ってるんですよ。おれはこういうのありますよって。
飯迫  高校からネクスト(バッターズサークル)でやっとるわ。やった方がえーよあれは。でも、おれのやつになってるからな。新しいの考えようかな。
寺山  腕立てとかな。
飯迫  おったよ。腹筋せい。
寺山  疲れるわ。
飯迫  スタビライゼーション(トレーニングの一種)とか。ファール打たれたりしたらうざい。
寺山  考えときますわ。
飯迫  おれがセンターやって。
寺山  なんか外野もやるらしいですよ。
飯迫  がっつりやります。

―今まで外野やったことはありますか?
飯迫  高校の時一か月二か月ちょろっとかじったくらい。首になりましたけどね。ライトフライ取り損ねた。

―グローブも飯迫さんのを寺山さんが使っています。
寺山  そんなん知ってるんすか?借りてて、無理やから買わないとって。
飯迫  メーカー付くって。打率3割4分4厘やで。
寺山  つかんつかん。

―なんで寺山さんは自分のグローブを使わないんですか?
寺山  なんでやろ。あるから。俺のがダサいから。高校からのだから古いというのもある。

立大野球部を語る
―黄色組についてお聞きしたいです。
飯迫  フリーバッティングの名前のマグネットが学年ごとに違ってて、3年生が黄色なんですよ。
寺山  黄色って言ったらわかるよな。
飯迫  黄色って言ったらいいイメージは持たんですね。気をつけろみたいな。
寺山  他は上から緑、黄色、青、赤。
飯迫  黄色が集まったらなんか起きるみたいな。
寺山  問題児が多い。監督によく怒られるんですよ。こいつとか。
飯迫  俺はそんなことないよ。
寺山  おれやおれ。
飯迫  (松崎)健造(文3=横浜)は怒られないな。
寺山  個性的なのが多い。

―今の4年生の代はどうでしょうか?
寺山  やりやすくやらせてもらってる。もう一個上は、厳しかった。
飯迫  怖かった。優しいけど、試合になると怖かった。
寺山  それすらも一個上は気を使ってくれてるのかもしれないけど、あんまりなにも言ってこない。やりやすい環境を作ってくれてるのかもしれない。

―熊谷さん(コ4=仙台育英)はどんな方ですか?
飯迫  イケメン!性格は、オンとオフが激しすぎる。
寺山  でも根は真面目やで。
飯迫  根は真面目やねんけど、まあふざけるっすね。
寺山  キャプテンぽくないと言えばキャプテンぽくない。自ら楽な方にいくキャプテンっている?先頭に立ってトレーニング多いねんっていうキャプテン笑。でも、リーグ優勝決まった時ロッカールームで泣いてた。
飯迫  だから根は真面目なんだよな。
寺山  そういうの見たらそうね。だから思ってる部分もあるんですよ。



指さす先には、立教スポーツ優勝号外に載る自身の記事
―いまの目標は何ですか?
飯迫  タイトルっすね。
寺山  おれも言おうと思った。とれる確率が高いのは首位打者なんかな。
飯迫  そうやな。
寺山  だから課題も多いです。がんばります。とりあえずタイトルはとりたいよな。
―2人で競われる形になると思います。
飯迫  こいつには勝てます。
寺山  負けてますけどね(笑)。
飯迫  いや待ってくださいよ。全日本前までの打率を出してほしい。
寺山  だから秋はこうならんように。
飯迫  何割?
寺山  1割。記事あげてくださいよ。「寺山オワタ」、「春だけ」とならないように頑張ります。
取材後記
最初、対談という形でどのようにやるか不安があったが、その必要は全くなかった。終始テラサコペースで進み、笑いの絶えない取材となった。その中で、他の選手から「テラサコ」といじられていたことが印象的だった。命名した名前が定着していることが記者として嬉しかった。秋は、ぜひとも2人同時に首位打者をとってほしい。貴重なお時間、ありがとうございました。



(8月4日/浅野光青)