「戮力同心」

秋季リーグ戦直前

野球部智徳寮インタビュー@


田中誠也投手、手塚周投手


    その活躍ぶりは、今季の立教快進撃を象徴するものである。週末の神宮球場。1戦目には小さな大エースである彼が登板。感情をむき出しにした投球でスコアボードに0を並べる。続く日曜日には、冷静沈着な兄貴分が登板し、ゲームを作る。チームの勝利は彼らに託され、まさに立教黄金時代の序章は彼らの両腕で築かれていった――。今春の日本一を支えた先発両腕、#11田中誠也、#19手塚周。秋季は真価が問われる2人に、心のうちに秘めた熱い想いを聞いた。

◆田中誠也(コ2=大阪桐蔭)◆

――まさに飛躍の春季となりました。日本一の2カ月間、いかがでしたか?
   野球は個人競技ではないので、勝ち抜けたシーズンであったというだけで嬉しかったと思っています。自分の結果も(主力として登板したシーズンとなる)一年目でうまくかみ合っていたというだけなので。ここからどうなるか分からないですが、今後自分がやらなければならないことが分かりましたし、チームとしても磨きがかかったので良かったと思います。(――今後やらなければならないこととは)いろいろな展開で運が味方をしてくれたという試合が多かったので。秋は、技術をしっかりとつけて向かわないと勝てないということは目に見えていると思います。監督さんもおっしゃっていたのですが、個々のレベルアップがチーム力につながって、「勠力同心」という全員野球につながると思います。春が終わってからチームでそういった点を再度意識して、チーム全体でやってきたと思います。
飛躍のシーズンを振り返る田中誠


――ご自身の成績に関して、満足のいっている点はありますか
   やはり三戦目まで続く試合が多かった中で、全部投げ抜けたというか、大きなケガなくしっかりと投げることができたのが一番の収穫だと思います。

――リーグ戦では最多投球数となる834球。疲れはありますか
   第一戦目(の登板)と第五戦目(の登板)では、やはり第五戦目が疲労というのはかなり違いました。ですが、どこのチームもそうなので、投げているからしんどいなという部分はなかったです。逆に、自分は先発として出させてもらった初めてのシーズンで、最後まで先発として出させてもらえたというところは本当に嬉しかったですし、良い方向につながったと思います。

――東京六大学覇者として臨んだ全日本選手権。雰囲気はいかがでしたか
   戦ったことのないチーム、バッターと勝負するということで、相手どうこうではなくて、自分のピッチングができるかどうかがカギだと思っていました。当たり前のことを当たり前のようにやるというか、ヒットを打たれても最小失点で切り抜けるという意識を持った中でやれば、ゲームは作れるのだなと感じた大会でした。

――逆に、春季を通じて課題に感じた部分はありますか
   やはり(リーグ戦において)一戦目を勝てないということは、相手チームの主力となるエースに一発目となる初戦で勝てないということなので、実力で投げ勝ったというよりは、いろいろな助けがあったり運もあったりのシーズンだったと思います。やはり一戦目で勝てるだけの実力がなかったというところが自分の中ではまだまだだったと思います。

春季の反省を忘れない田中誠。エースとして、

一言一言に力を込める



――秋季は連覇が期待されます。重圧は感じますか
   自分の中では春のことか置いておいて、秋のリーグ戦を戦うという気持ちしかないです。春優勝したということは関係なく、プレッシャーというのは特に感じず、個人的にしっかり数字を残すことができるようにしたいなと思います。

――秋季に向けて、夏のキャンプやオープン戦で取り組んだことはありますか
    新しい変化球を覚えるのではなく、一球の質を求めていくことを重点的に投手陣としてやってきました。(オープン戦は、)春季の自分の球質まではいっていないのですが、試合を追うごとに上がっていければいいかなというのが今の考えです。まだピークは来なくていいですし。悪くも良くもない感じなので、しっかりと上げていければと思います。

――夏のキャンプ中には甲子園で後輩が活躍しました。刺激になるものですか
   一発勝負を勝つ難しさというのは、高校野球でしか一番わからないと思います。全国大会も一発勝負ですが、やはり高校野球の各県の代表チームが戦っているの見れば、一球一球の気持ちというか、自分も初心に戻ってもう一度投げることが大切だなと思いました。

――夏にはオールスターもありました。初の出場でしたがいかがでしたか
   そうですね、もう全然違う感じでした(笑) 楽しむプラス、ストレートはどのくらい通用するのかという気持ちで臨みました。ストレートだけ投げているピッチャーもいた中で、抑えている人もいればうまくいかない人もいて、自分はどうなのかなというふうに投げました。案の定、150キロで投げれるピッチャーでもないので。良い経験になったかな、と思います。

――春季覇者として臨む秋季。やはり1戦目で投げたい気持ちはありますか
   まだ一戦目か二戦目かはわからないのですが、投げるからにはチームを引っ張れる存在になりたいですし、もう2年生の秋というのは自分にとっては(下級生としての)最後で、来年から上級生になるということで、そういう心持ちも必要だと思います。本当に優しくしていただいた4年生と試合をするのもこのリーグ戦が最後なので、良い結果で先輩たちと喜び合いたいと思います。

――やはり4年生への想いは強いものでしょうか
   そうですね。本当に優しくしていただいたので。特に自分は1年生の時からリーグ戦でベンチに入らせていただいていますし、本当にずっと支えてもらったりしているので、自分がこういう場面で投げさせてもらっているからには、このシーズンは良い形で終わらせられるような投球をしたいと思います。

連覇には「魂」が必要と答えた田中誠也。

彼の魂のこもった投球に、秋も期待したい



――では、最後に今季の意気込みと、応援してくださるファンの皆様に一言お願いします
   春は良い結果につながりましたが、秋はどうなるのかわからないので、しっかり自分の役目を果たすというか、チームに貢献できるようなピッチングをして、チームに良い流れをもっていけるようにがんばりたいと思います。ファンの方へは、春はすごい応援の数でたくさんの力をもらったので、これからも大きなご声援よろしくお願いします!

――どうもありがとうございました!

◆田中誠也(たなか・せいや)1997年10月27日大阪府生まれ。コミュニティ福祉学部2年。左投左打/投手/大阪桐蔭/171a65`


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◆手塚周(コ2=福島)◆

――日本一になって3か月が経ちました。反響はすごいものですか
   どうですかね、でも福島テレビの方がわざわざ取材に来てくださって、少し地域貢献できたかなと実感できた部分があったので、良かったかなと思います。特に生活が変わるとかそういうのは無いので、また次の機会を待とうかなと思います(笑)

日本一になった春季を振り返る手塚
――オフには陸前高田での野球教室にも参加されました。いかがでしたか
   地元(福島県出身)の人には会わなかったんですけど、東北関係のテレビ局の方が来てましたし、現地の方も自分が東北出身と言うことを知っていたので、そういった部分でいろいろなお話しをさせて頂いて。そういう面で、貴重な経験をさせて頂いたなと感じています。

――飛躍をとげた春季。ご自身の成績で誇れる数字等はありますか
   SNSで自分も知ったのですが、ランナーを出す数がリーグの中で一番少なかったという数字です。それはホームランを結構打たれたので、それもあるとは思いますけれど。でもランナーが出ていないに越したことは無いと思うので、意識して出た結果では無いですけど、結果としてそういう結果が出たというのは良かったなと言うか、自分が調子よかったんだなと言うのを感じました。

――では、逆に春季を通じての課題を挙げるならどういった点になりますか
   やっぱりホームランを打たれるところが多かったので、そこの修正というか。一発打たれちゃいけない場面で、しっかり抑えられるようにと言うのはオープン戦ですごく課題に取り上げてやってきた部分だったので、それが出来てるから今も防御率というか、良くここまで調整できてると思うので、そういうものはリーグ戦でも継続してやっていきたいと思います。

連覇に必要なことを聞かれ、このリアクション。

悩み抜いた末に、手塚が出した答えは・・・

――課題を克服するため、具体的に意識していることはありますか
   やっぱり一人一人のバッターに向かっていくんですけれど、初球の入りであったり、意図を持って投げないボールと言うのがあると油断したときに気づいたらホームラン入ってるというようなことがリーグ戦であったので、しっかり流れを渡してはいけない場面であったり、そういう場面で特に気をつけて投げたいです。特に先頭バッターにホームランを打たれることが多かったので、初球の入りであったり、高 さであったり、球種であったり。そういう部分で出し惜しみせずに、一人一人と戦っていかないといけないなと言うことを思いますね。

――春季は全日本選手権という大舞台を経験しました。やはり、リーグ戦とは違いましたか
   リーグ戦との一番の違いはデータの量だと思いますね。本当に生で全く見たことの無い選手たちと戦ったんで、試合の中で探りながらリーグ戦には無い緊張感がありました。リーグ戦ではある程度相手の戦力も分かった上で戦うので、ペース配分であったり事前の準備がしっかり出来る部分があったのですけど、全日本に関しては本当にバーチャルな相手と戦っているような感覚というか、だからこそ慎重になりすぎる部分もあって、1試合通じてフルで気を張っているような戦いだったなという風に印象は残っていますね。

――春季を通じて1番思い入れのある試合はありますか
   どうですかね…やっぱり武大さん(国際武道大)ですかね。リーグ戦ももちろん全試合鮮明に覚えているんですけど、あの大一番というかもう経験できないかも知れないような舞台で、調子の悪い中で先発に上げてもらって。でも天理大戦での反省を生かしきれなかった部分が自分の中であったので、そういう部分ではすごく悔いとはまた違うんですけど、自分の力不足というか。もっと出来ると思っていた自分が正直いたので、そういった部分では自分の実力の無さをすごく感じた試合という意味で、すごく印象に残っていますね。もっともっと頑張んないといけないなという風に思いましたね。

――連覇のかかる秋季。どのような形で貢献していきたいですか
   チームの中心として投げさせてもらうので、マウンドの上以外のこともしっかりと先頭に立ってやっていきたいなという風にはまず思っていて。敬宥さん(熊谷。コ4=仙台育英)もかなり試合の中でのびのび出来ない部分が春は多かったと思うので、そういう部分も敬宥さんに限らず4年生には最後楽しんでもらいたいです。のびのびと立教の野球を体現して欲しいので、そのために自分が出来ることを一つでも多くやりたいなと思ってます。

「飾」。尊敬する4年生に錦を飾ってほしいと

この1文字を選んだ手塚。彼の活躍にも期待だ

――「立教の野球」とはどんな野球でしょうか
   諦めずに最後まで戦い抜くこと。春も結構ミラクル的に見える試合も多かったんですけど、ああいう形で勝った試合が多いって言うのはやっぱり立教ならではというか、明るく最後まで、良い意味で開き直って試合の中で切り替えて出来るというのが立教の強みだと思います。もちろん厳しい展開に自分が持っていってはいけないと思うんですけど、そこは助け合いというか。そうなった場面でもしっかり自分が攻撃の部分に回って、粘り強く勝利を信じてやりきるって言う面を前面に出して頑張りたいなと思います。

――最後に応援してくださるファンの皆さんに一言お願いします
   なんとしてもまた優勝って気持ちで臨みますし、戦う中でいろんなことを思わせてしまう部分もあると思うんですけど、一緒に諦めずに最後まで戦い抜いて欲しいなと思うので、自分たちを信じて春よりも大きな声援をいただけたら幸いです!

――どうもありがとうございました!

◆手塚周(てづか・しゅう)1996年5月28日福島県生まれ。コミュニティ福祉学部2年。右投左打/投手/福島/180a75`


第2回は、林田景太選手(観3=島原)、林中勇輝選手(コ1=敦賀気比)です。お楽しみに!



(8月31日 取材・入江萌乃、渡邉紘也/編集・川村健裕)